もしAIに営業をさせたら

株取引の世界はすっかりAIが牛耳っています。
AIで全取引をしているヘッジファンドが大きな成果を上げているそうです。
そんな世の中になりつつあるなかで、AIに営業をさせたら、どうなるのでしょう?
AIは間違わないし、サボらないので、マネジメントや指導が不要ということになります。
ということは、マネージャーは全員不要になってしまいます。
もし、マネージャーがAIに向かって説教していたら、それこそ漫画です。
AIが間違えたら、そのバグはプログラマーが修正します。
そういう世界が来るでしょうか?

INDEX

1: しゃんしゃん経営からの脱却
2: AIで出来るならことを営業が代替しているのであれば意味がない
3: 改善の歴史
4: 先取りで動く
5: 飲み屋さんのAI
6: 競合会社のAIとの戦い
7: 属性や嗜好をきめ細かく把握して需要を喚起する
8: 営業AIは、アメフトに近くなる
9: 営業のカーナビ化
10: 営業の仕事は地図を埋めることになる
11: AI時代のマネジメントとは
12: AIモデル、数理モデルの単純な限界
13: 営業のAI化で解決できることは、とても少ない

外から経営者がくることはなく、内部からの昇進で構成される経営層。
事前に根回しが完了し、意思決定はしゃんしゃんで終わっていく。
なかなか生産性が上がらない。
ここから日本の組織はなかなか抜けられません。
聖徳太子の十七条憲法が語源とされている
「和をもって尊し」という日本文化も絡んでいると思います。
AIは、外から強風によってやってきます。
今までとは違う判断基準で経営が動いていきます。
ものすごくスローな経営に強風が吹き荒れます。
これを受け入れる経営層は少ない。
自分たちの存在意義がなくなってしまうからです。

商談は出来ない。
コンピュータは、命令されたことを100%忠実にこなすツールです。
どう命令を出したらよいのかわからないことに対しては無力です。
たとえば、製品の性能を数値だけで説明して売れるのであれば、
AIは数字の説明は100%正確に行うことができます。
そうであれば、わざわざ営業が商談する必要がありません。
考えてみれば、顧客は本音は言わないし、製品に期待する効果も顧客によってバラバラです。
これらは、まさに、営業があうんの呼吸で補っているものです。
営業は、勘や経験がものをいう世界なのは事実だと思います。

従来の業務改善は、小さな改善の積み重ねで行われていたのに対して、
ビジネス・プロセス・リエンジニアリングという、仕組みをゼロから作り直すという発想が出てきました。
小さな改善は現場で対応可能でしたが、
ゼロから作り直すためには、経営トップがリーダーシップを取らなければなりません。
今は、AIブームです。
人間がやるより、コンピュータがやった方が成功するという考え方です。
数学や統計の知識を駆使して、ビジネスの仕組みを作り変えようとしています。
さらに、今は、もうひとつRPA(ロボットによる業務自動化)というカテゴリも出てきています。
その結果、今まで10日掛かっていた業務プロセスが1日でできるような仕組みを作り出していきます。
対応が早ければその分コストは低く押さえることができます。
その対応スピードが、そのまま企業活動やコストに反映します。
このコスト競争力は、利益を上げる競争力と同じです。
それは、そのまま企業の競争力になります。
RPAは、確実性が高いのですが、これを攻めとしてやるか、守りとしてやるか、企業の置かれている状況によって違ってきます

店員もベテランになると、
お店に入って来たとたんに、「ひやかしの客」か「買う客」なのかが、瞬時にわかるそうです。
お店に入って来た人が何を買うかはわかりませんが、
この商品を買ったということは、これも買う可能性が高いは想像できます。
「先取り」して、動く。
まさに、将棋AIでしていることです。
将棋、囲碁とAIが進んできました。
将棋と囲碁のAIが成立するのは、過去の棋譜がすべてあることと、
天文学的な数字にはなりますが、組み合わせには限界があるからです。
AIが判断できるようにするための営業情報を入力することが出来れば、営業のAIは成立するかもしれません。
ただ、それができるのであれば、わざわざAIを利用しなくても、受注できるというオチかもしれません。
現に囲碁で有名なAlphaGoというAIは、運用コストは年間約30億円だそうです。

これがAIで出来るなら、そのAIの開発にいくら掛かるか知らないが、AIに任せた方がいい。
まず、お店に入ると「○○さんいらっしゃい」と名前で呼ばれます。
→ワン・ツー・ワンマーケティング、パーソナルな対応
好みを知っていて、いいネタが入っていれば、教えてくれます。
→お客様のニーズの把握と、それに基づく有用な情報の提供や提案
同じお任せでも、同僚と飲む時と、商談で飲む時で料理を変えてくれます。
→お客様の目的・状況に応じたソリューションの提供
また、メニューにない注文とか、他の店からの出前とかわがままにも応えてくれます。
→定型商品からオーダーメイドまで、自社製に拘らずお客様に最適な商品・サービスを提供
飲み過ぎたりすると、さりげなく身体を心配してくれます。
→お客様の健全な成長・発展を絶えず考え、時には諌言も
多少お金を払っても、気持ちよく飲めるため、行きつけになります。
→継続的な高付加価値サービスの提供による、長期的なリレーションシップの構築
その結果、お客様も満足を得られるし、お店も儲かるのです。
→「顧客満足度の向上」と「売上/収益の向上」の同時実現
さらに、こういう飲み屋さんは、
しばらく行かないと給料日にタイミングよく「お誘い」の電話がかかってきたり、「アフターフォロー」もしっかりしています。
友達を連れて行くと、いつのまにかその友達も常連になっていたりします。

AIが正解を出してくれるのであれば、競合会社のAIと自社のAIがどちらが強いかという話になります。
どちらの企業が、強いAIを育てられるかという話になります。
今後は、勝てるAIと負けるAIという世界が出てきます。
証券取引のAIなどは、そこに向かっていると思います。
また、強いAIを作るのは誰でしょうか?技術者でしょうか?
技術者に営業ができるでしょうか?
この戦いはいつまで続くのでしょうか?

新車買い換え率を現在の40%から60%へと高めるのが狙い。
だったら、買い換えの決断に絡む属性とは何か?
その属性を設定して、その情報を入力したら、どのようにアプローチできるか?
その答えを出してくれるシステムがあったら、面白い。
たぶん、デキル営業が頭の中でやっていることを、システムに置き換えることになります。
面白いと書いたのは、これは現実味があるかということ。
新車の購入には、最後のひと押しが必要で、営業が担う部分はまさにそこにあるはずです。
決断のきっかけになるような情報を顧客にすばやく見せられるようにすることです。
顧客によって、その決断のきっかけになる情報は違います。
値引きなのかもしれませんし、納車時期なのかもしれません。
また、家族が気に入るかどうかなのかもしれません。
それが何になるのか、見極めることができれば、AI化は確実に1歩進むはずです。
しかし、それがすぐに出来そうなECサイトでも、なかなか、ここらへんの進歩は進んでいないようです。

営業をゲームとみなして、営業ルールを作ろうとしたら、
おそらく、アメフトのゲームの進め方(ルール)に近くなると思います。
簡単に説明すると、次の4つのルールになります。
・4回の攻撃権が与えられます。
・「4回の攻撃で10ヤード前進」が出来ないときに、攻撃権が移動します。
・1回1回のプレーごとに作戦会議をします。(「ハドルを組む」と言う)
・攻撃には、大きく「ラン」と「パス」の2種類の攻撃方法があります。
アメフトのように4回攻撃したら終わりにはなりませんが、これを営業に置き換えて考えてみると、
・商談は無制限に行なえるものではなく、ある程度の回数でクロージングすることが必要です。(4回の攻撃)
・商談に失敗すれば競合にもっていかれてしまいます。(攻撃権の移動)
・顧客ごと、商談ごとに上司を含めて作戦や方針を決めます。(作戦会議)
・商談の進め方には、いろいろな方法があります。(攻撃方法)
また、アメフトではゴールを獲得するために、1回1回の攻撃ごとに、目標を決めてプレーをしています。
ゴールから遠いところでは、10ヤードをいかに進めるかを考え、ゴールに近いところでは、いかにタッチダウンを取るかを考えて、プレーを選びます。
しかも、プレーごとに選手も入れ替えられます。
「このプレーをするなら、この選手の出番だ」というように、
それぞれのプレーごとに目的を明確にして、ベストな選手で挑むのです。
再び、これも営業に置き換えると、
商品に興味を持ってもらうステップでは、どのような営業をすべきか、
商品を欲しいと思わせるためには、また、購入を決断して頂くためには、
つまり、それぞれのプロセスごとに営業スタイルが異なるはずです。
現在、どのプロセスにいるかを明確にして、それぞれのプロセスの目的やゴール、選ぶべき営業手法を決めます。
ドアオープンに強い、クロージングに強いなど、プロセスごと最適な営業担当が担います。
このように、すべてをルール化、数値化することで、状況を判断し、次に何をすべきかAIは教えてくれることでしょう。

営業にAIが入るとしたら、カーナビみたいに、目的地を入れると、そこまでの道順を示してくれる
そのまま進めば、目的地にたどり着くつまり、受注できることになる。
・どれくらいの距離で、どのくらいの時間が掛かるかなどプランを立てる
・効率のよい道を検討する(近道や高速道路の利用の有無)
・同乗者の役割分担を考える(ナビゲーション、運転の交替)
・進んでいる道が正しい道なのかチェックしてくれる
・道を間違えた場合は地図をもとに軌道修正を促す
・めでたく目的地に到着営業だったら音が出る
現在の営業は、地図なしでドライブに出かけるようなもので、
目的地に到着できるかどうかわからないし、どれくらい時間がかかるかもわかりません。
そのような営業をいつまでも続けていては、やがて迷子になって、途方に暮れてしまうことは目に見えています。
「うちは、いつも同じ道しか通らないから大丈夫」と思っていても、
今は、その道、すなわち市場環境そのものが大きく変わろうとしています。
今までと同じような営業しかしていなければ、現状の売上を維持することすら難しくなっています。
また、カーナビが特に便利なところは、「自分の居場所がわからなくなったとき」「標識がわかりずらい夜中の走行」などです。
営業に置き換えてみると「にっちもさっちも進まなくなってしまう」「見込度不明のまま、だらだらと営業を重ねる」等いくらでも似たような状況はあります。
まさに、営業の初心者にとっては、カーナビは必需品ということでしょう。
そんな営業のカーナビができれば使ってみたい人は多いはずです。

地図を埋めること。
つまりAI用の学習用の教師データを作ること。
・お客様の多様化したニーズに応じて個客情報量が増えていく
・提案を繰り返すことにより個客情報量は増えていく
・個客を深く知れば知るほど個客情報量が増えていく

AI時代になれば、マネジメントは不要。
AIを叱ることはできない。
指導することもできない。
AIにPDCAも必要ない。
目標の数字を管理する必要もない。
営業が一言しゃべるごとに商談受注率がどんどん変わっていく。
優勢、劣勢がリアルタイムでわかる。
マネージャーは不要になる。

成長しているときは、比較的モデルで解明できるが、
後退期や、ダメからの回復は、モデルではなかなか解決できない。
そして、その思考や解決出来たときの利益が一番大きく、
モデルで解明できるというこは、誰もが同じ条件になっていく傾向にあり、
利益という側面では、大きな果実を期待することが難しい。

何年にも渡って営業が努力してきたことが、一瞬で解決する。
それはAIのイメージに近いと思います。
たとえば、10ページの報告書のサマリーを作成するのに、
人間なら、10ページ読んで、要点をまとめていく。
そのまとめ方は、その人の頭の中にある。
特に決まったルールはない。
まとめた内容を、移動中の車の中で役員に伝える。
AIは、文書の中身を判断することはできないために、
コンピューターが理解できるように、文書の構造化を行っていく。
ネコがどうかを判断するのであれば、しっぽの部分と足の部分、目の部分を把握してして、
他の動物と比較することで、それは猫であるという判断をするわけだが、
文書だと、猫のように判断するための構造化は難しい。
たとえば、文書から、固有名詞(顧客名)、金額や数値などを抜き出すことはなんなくできる。
学習データを用意すれば、その精度を上げていくことができる。
しかし、その関係性まで構造化していくのが難しい。
さらに、営業では、
コーヒの味は言葉で表現できない。
自転車の乗り方も、言葉で表現したとしても、とても自転車に乗れるとは思えない。
営業も同じところがある。
ましてや、将棋AI等ですでに実現できている
この局面なら、次の最適な1手は、これですが、
営業であれば、顧客との状況や関係性を把握して、
この状況なら、こう対応すべきなどの答えを導き出すのは不可能に近い。
人間は、AIを使うまでもなく、章立て、目次、小見出し、タイトル、マーカなどで、
構造化や重要部分な部分がわかる仕組みを誰でも使って実現してきた。
また、顧客の反応を見ながら、何をすべきなのか考えるのが営業であり、
それが出来ない人は、そもそも営業はできない。