企業を取り巻く環境の変化

経済成長は様々な問題を先送りしてくれる魔法でした。
成長しているからといって、問題が存在していなかったわけではなく、
それを解決せずに、曖昧のままにしておくことが出来ました。
ある意味、すごくラッキー時代だったと思います。
その魔法が無くなりつつあります。

INDEX

1: 企業は成長を捨てたら終わりである
2: 淘汰されている企業がある一方で、急成長している企業
3: 2010年から社員高齢化社会到来が最大の落とし穴だった
4: 優秀な人材の集まりである大企業が苦戦
5: コンビニが銀行になった日
6: 競争力の源泉
7: 強い会社は偶然の産物ではない
8: 企業が正しいポジションを保つために
9: 20世紀のマネジメントと21世紀のマネジメント
10: DXは破壊的イノベーションなのか?
11: アジリティとDX

財務的な危機になれば、会社は変わらざるおえませんが、
まず最初にやることは、コスト削減です。
これは課題を先延ばしをしているだけで、根本的な解決にはなっていません。
様々な問題が浮き彫りになり、もう曖昧なままにしておくことが出来ません。
それを解決しようと様々な変革プロジェクトが社内に立ち上がります。
しかし、変革はなかなか上手くいきません。
なにより、上手く行かない変革は、社員を振り回すだけで、
さらに状況を悪くするだけです。

売れないのではなく、買う場所が変わっただけです。
それを示すかのように、淘汰されている企業がある一方で、急成長している企業も存在します。
なぜ会社は赤字になるのでしょうか?
それは、旧来のものがすっかり頼りにならなくなったからです。
昔、黒字にしていたやり方が通用しなくなったからです。
今までうまく行っていたものがうまくいかなくなると赤字になります。
過去と同じことしかしていないと、赤字になります。
リーマンショップ以降は、借金してまで設備投資しなくなってしまった企業。
成長しないことを前提に、内部留保をためること、株主のために最適化することに注力してきました。
これらを打破するが、イノベーションです。
イノベーションをしてきた企業が、今、急成長しています。

総務省の推計によると、日本の65歳以上の高齢者は3588万人で過去最多を更新し、
総人口に占める割合も過去最高の28.4%で、世界で最も高くなっています。
企業は、年功序列や終身雇用を支えるだけのコストを負担できないことをすでに知っています。
そこに向けていろいろな人事制度改革、たとえば、早期退職制度、リストラ、採用の抑制などすでにあらゆる手を打ってきました。
すべてコスト削減であり、企業規模を縮小均衡するための施策でした。
単に企業を延命しているにすぎません。
また、不景気になると社員を営業に回す企業も多いです。
人が増えれば、やらなくてもいい仕事を作り、本来訪問しなくてもいいお客様も訪問しています。
これも、全くもって無駄なことであるにも関わらず、どんな企業でもやっています。
なぜ、企業は無駄なことをやるのか、それは雇用を守るためだと思います。
これで社員に夢を持って仕事をしようというのは無理な注文です。
入社3年以内で50%の退職率という事象も仕方ありません。
コスト削減施策は、いずれ限界がやってきます。
先延ばして曖昧にしてきたツケが大きくのしかかってきます。
延々と危機感を煽るだけで、あとは社員のがんばりに頼るというのは、企業としては罪でしかありません。

いわゆる優秀な人が集まる大企業。
そんな大企業が苦戦しています。
どんどん企業がダメになっていきます。
それはなぜか?
モノがない時代は、おそらく大企業は簡単に儲けられました。
量的な施策が有効に効きました。
人海戦術であれ、設備投資であれ、広告投入であれ、
量的な施策を可能とする大企業が競争優位を保つことが出来ました。
スケールメリットを追求し、成長してきました。
今は、質的な変化が求められています。
図体が大きくなりすぎて、質的に変化に大企業は対応しずらく、
また、質的な変化に応じた小さなマーケットでは企業を維持することが出来ません。
それが苦戦している理由になる。
では、なぜ、優秀な人が大勢いるにも関わらず、
それに気づき質的な変化に対応することが出来ないのか?
一昔前は、大企業病という言葉で片付けられていましたが、
おそらく、その答えは、優秀な人にはわからないはずです。
優秀な人は、自分達がやっていることを常に正しいと思っています。
また、過去にそれで成功した経験も持っています。
それに気づいた人は、大企業を飛び出し、起業していることでしょう。

従来の競合会社と勝った、負けたをしていては、
知らぬまに、新しい競合会社に市場を奪われているかもしれません。
市場は着実に変化しているのです。
たとえば、金融ビックバンは、いろいろな変化を起こしました。
たとえば、スーパーやコンビニが金融業務に参入してきました。
これからの競合会社は、違うところからやってきました。
コンビニが銀行になるのも近いことでしょう。
外資企業の戦略は、今までの商慣習もおかまえなしに、
大胆な戦略で市場に参入してきます。
しかも、諸外国からは、NO.1の企業が参入してきます。
大企業は、100億円の市場価値がなければ参入しませんが、
起業家は、1億円の市場でも喜んで参入してきます。
アイデアには、企業の規模の大小は関係ありません。
アイデアは知恵の勝負です。
従来は、アイデアがあっても、それを実現するための基盤がベンチャー企業にはなく、
なかなかビジネスに昇華させるのは困難でした。
これは、設備投資や人的投資が必須の時代の話です。
今は、ネット上で安価に新しいビジネスをスタート出来ます。
おそらくネット上では、日々新しいビジネスがスタートしていることでしょう。
今まで聞いたことのないベンチャー企業が突如競合となって現われます。

何で競争するかは、業界によって、ある程度決まっています。
そこにイノベーションを起こすのがベンチャーになります。
・生命保険業界では販売チャネル数(営業の数)こそが競争力の源泉
・アジアは安い労働力による低コストが競争力の源泉
・アメリカは金融や知的所有権が競争力の源泉
・コンサルティングファームは人材が競争力の源泉
・情報化会社はイノベーションが競争力の源泉

狙って自社の強さを育てて行かなければ、強くなるものではない。
・価格競争やサービス競争に巻きこまれないものを持っている
・お客様にとって、価値のある商品・サービスを提供し続けている
・従業員にとっては、やり甲斐のある仕事と活気があふれる
・他社との違いが明確であり、尊敬と脅威をいだかれる
・継続的な成長性の仕組みが組織に組み込まれている(属人的ではない)
・常に、過去より未来を見ている
・大きな目標のために皆の気持ちが1つになって力を発揮している
・規模ではなく人の絆である
・同じ失敗を2度しない
・社員の士気と顧客の支持が重なり合い好循環を生み出している
・製品で優位性を持っている
・顧客との関係性が深い
・市場フェアが高い
・財務的にすばらしい売上成長著しく高収益で
・投資家からは株主になりたいと思われる
これらの強さを継続的に発揮できる仕組みを持っている企業こそが、真の強さです。

会社が正しい位置にいるためには、
企業が正しい位置にいるための仕組みを持っている必要があります。
・売上より、信頼関係
・成果より、検証
・本番より、事前準備
・成功事例より、失敗事例
・既にある事例より、これから作る事例
・売れる先より、売りたい先
・競合対策より、顧客の価値観
・現在より、未来
・アウトプットより、インプット(顧客対応)
・インプットより、アウトプット(社内対応)
さて、この中でデキル営業が得意としていることは何か?
また、デキル営業が不得意、もしくは担うことが出来ないことはないか?
デキル営業が担うことが出来ないことは、組織の誰が担うのか?
そこにダメ営業の活路が見えてきます。

Business Week誌"The 21st Century Corporation"(Aug. 21-28, 2000)より
時代は繰り返すものなので、20年経って、昔のやり方に戻りつつある気がします。
【組織】 ピラミッド型→ウェブ型orネットワーク型
【フォーカス】 内部→外部
【スタイル】 構造的→伸縮的
【強さの源泉】 安定性→変化
【組織構造】 自己完結的→相互依存的
【資源】 物的資産→情報
【オペレーション】 垂直統合→垂直統合
【製品】 大量生産→マスカスタマイゼーション
【リーチ】 国内→グローバル
【会計】 四半期→リアルタイム
【在庫】 月単位→時間単位
【戦略】 トップダウン→ボトムアップ
【リーダーシップ】 独断的→鼓舞・激励的
【従業員】 社員→社員とフリーエージェント
【仕事への期待】 保証→個人の成長
【モチベーション】 競争すること→創ること
【改善】 増分的→革新的
【質】 許される範囲でベスト→妥協を許さないベスト

石油から電気に変われば、あらゆる分野で破壊的なイノベーションが起こることは想像しやすい。
また、「紙」には課税されるが、デジタル文書には課税されない印紙税などはメリットがわかりやすい。
DXの実体や方向性がなかなか見えない。
破壊的イノベーションが進んでいく方向は、「安いけど、ものもいい」の再来なのか?
フォードからはじまったた「安いけど、ものもいい」が1つの経済の成長路線の定石であることは間違えない。
そこには、安い人件費と連続的な改良が繰り返された結果として達成されたものだった。
MBAではなく、QCサークルによる連続的な改善が競争力の源泉になっていた。
可能にするためには、若年層を大量に採用して工場勤務するという人口構成も前提条件として必要だった。
「安いけど、ものもいい」は、どうやら、DXとしては無理な方向だとわかる。
では、どんな方向なのか?それは分からない。わからない世の中で生き抜くことがDXとも言える。
もうひとつは、DXは、サイバー空間の戦いになるので、スピードはとてつもなく早くなること
サイバーの戦いとは、インターネット×モバイルを駆使すること。
たとえば、仕事環境もサイバー空間上で組織化、マネジメントできるか?
さらに、サイバー空間の戦いになるから、変化のサイクルがとても早くなる。
その変化していける企業体でなければならない。
たとえば、年功序列、終身雇用、プロパー、労働組合は、変化を妨げる壁になる。
稟議や根回しなど、見切り発車しない日本的なやり方も変化の阻害要因になる。
手順が明確な野球は得意だけどダイナミックに攻めと守りが変わるサッカーはできないとたとえられている。
さらには、株主主導で、変化に応じて経営者を入れ替えるぐらいの変化感を持つ必要もある。
曖昧を得意とする日本的な組織形態で運用することが難しい。
日本にとっての、DX推進とは、日本的経営を破壊するためのイノベーションだと思う。
そして、いずれ、DX企業が台頭してくるだろう。
そんなDX企業を競合相手として、戦わなければならない。

「アジリティ」(Agility)とは、機敏さ、素早さ、敏捷性(びんしょう)といった意味ですが、
ビジネスでは、不確実性が高く、不透明な時代という外部環境変化に即応していくために、
スピード、効率、フレキシビリティの対応可能な経営や組織のあり方を示す言葉として使われます。
これに、思い切ったビジネスモデルの変革や、破壊的な対応まで含めると、「DX」という流れになり、
戦術が「アジリティ」であり、戦略が「DX」という位置づけになります。
DXを実現するために、アジリティ性の高い組織とアジリティ性の高い情報システムを構築していく。
そのために「必要な要件とは何か?」を考えていくのがDXであり、アジリティのタスクになります。