営業DXと人事制度のデザイン

コロコロ人事制度を変える会社はあります。
どうすれば社員が動くのかわかっている会社です。
情報化が進んでも、同じ人事制度では意味がありません。
情報化を前提にした人事制度に変える必要があります。
人事制度に着手しないと、社員は変わってくれません。

INDEX

1: 終身雇用時代終焉し、優秀な人材から流動化が始まる
2: 生かすも殺すも人事次第
3: なぜアフターフォローが疎かになるのか
4: 営業担当は独自の情報を公開することに消極的である
5: 歩合制度は不要なのか?
6: 営業は、ほぼ全員、正しく評価されていない不満がある
7: 予算達成率の中身を複数のモノサシで評価する

終身雇用時代は、人事制度と給与が連動してました。
周りの人を見ていれば、何歳で課長、年収いくらがわかりました。
それが人事制度になっていました。
仕事が出来るのに、年齢が若いというだけで、役職も給与も抑えられ、
本来は、そういう人にとっては不満になるはずですが、
特に不満も言わず、働くことが終身雇用制度でした。
経済成長が前提であれば、この終身雇用制度を支えることは可能でしたが、
今は、日本が再び経済成長に突入することは期待することは出来なくなり、
今まで黙って仕事をしてきた人達から、不満が表面化してきました。
これから会社がどうなるのかわからない状態で、終身雇用を保証するなど言えるわけがありません。
終身雇用の保証が無くなれば、人材の流動化が始まります。
外資企業からの引き抜きもあるでしょうし、キャリアアップを目指した転職もあることでしょう。
転職ビジネスにも支えられ、人材の流動化が進み、終身雇用が終焉を迎えつつあります。
いずれにしても優秀な人材から、流動化していきます。
営業であれば、取引先や顧客までも一緒に持っていかれることも珍しくありません。
転職しないような仕組みを作ることも大切ですが、ゼロにすることは不可能です。
それよりも、人がいなくなくなっても、強い会社であり続けるための仕組みを作ることが先決です。

会社は、顧客満足を実現し、効率よく儲ける仕組みを作るために存在しています。
社員も、時間をかけずに効率よく働いて高い給与が欲しいはずです。
本来、会社も、社員も一致しているはずの「効率よく」がうまくかみ合っていません。
社員が思ったように働かないと嘆いても、
人事制度がそのように働きたいと思うような制度になっていなければ、それは仕方がありません。
言ってみれば、人事制度によって、その会社の社員像が出来上がっていくのです。
たとえば、営業で「訪問件数」をインセンティブとして与えられるなら、
訪問件数を上げる仕事は積極的に行います。
本来訪問すべきではない顧客にも、積極的に訪問するようになります。
また、アタマを使って収益を上げる仕事であれば、
長い時間を会社に束縛するような人事制度では、意味がありません。
意味がないどころか、できる人や、やる気のある人が、どんどんやる気に無くすだけです。
社員のやる気を、社員に任せて成立している時代は、
終身雇用の終焉とともに、終わりました。
達成すべき成果を明確にして、その仕事に対する報酬を見直していく必要があります。

アフターフォローは、直接的な売上に貢献しないからです。
また、それが人事のインセンティブになっていないからです。
人事もしくはインセンティブとして設定するのが難しく制度を避けているからです。
それであれば、必然的にアフターフォローは疎かになります。
ヤレと指示を出しても、最初だけで、継続性がありません。
人事制度を変えない限りは、アフターフォローは疎かのままになります。

今のように複雑な時代は、個人で何から何までカバーすることができません。
協力し合うこと、組織として対応することが、より重要です。
ただ、見返りがなく、リスクを負うだけならば、誰も協力しようとは思いません。
たとえば、組織で、失敗事例を共有しようと決めても、
積極的に協力することを期待するのは間違っています。
情報に価値を設定して、その価値に対して報酬を支払うは、
まだ非現実だと思いますが、
根幹では、情報により意思決定が行われ、その意思決定による仕事や行動が規定され、
それが最終的に売上につながっていくわけですから、
情報と売上の関係を見ながら、その情報の価値を判断していく仕組みが必要です。

情報化時代。
歩合制度は、あったほうがいいか?、無くした方がいいか?
どうでしょうか?
歩合を獲得できる社員は賛成し、無理だと思っている社員は反対します。
これが答えです。
なので、歩合制度は無くすことは出来ません。
これが答えならば、2つの制度を作る必要があります。
歩合派は、基本給なしで、すべて歩合制にして、徹底したインセンティブ制度にします。
ある意味、個人事業主に近い考え方です。
非歩合派は、仕事を進めるプロセスを評価します。
仕事のプロセスを評価するうためには、プロセスの可視化の仕組みが必要です。
たとえば、
・攻めるべき顧客を攻めているチームとして役割を果たした
・クレーム対応を片付けた
・誰よりも先に、新商品で実績を作った
・将来に貢献する情報素材を提供した
など、今までとは違うモノサシと、それを可視化、数値化できる仕組みが必要です。
これがなければ、プロセスの評価が出来ないだけではなく、
誰もチャンレジしようとしません。
また、プロセスを可視化する仕組み出来たら、
可視化された情報にもとづき、情報やプロセスをマネジメントする担当者も必要になります。
一方で、インセンティブ派は、個人事業主に近いので、マネジメントは不要になります。

営業の不満は、デキル営業を基準した単一的な予算達成というモノサシになっているです。
複数のモノサシを作ることで、不満は無くなります。
そのモノサシは社員の合意を得る必要はありません。
会社として必要なモノサシを定義して、そのモノサシを誰が担当するかです。
個々人の営業ががんばるだけの時代は終わりました。
企業は、営業の役割を再定義して、新たなモノサシを作らなければなりません。

利益の成果を定義するのはが難しいです。
複合的な要因が絡んでいるからです。
しかし、難しいからといって、人事考課の対象外にすると、そこに不満が発生します。
システムを使っていると、単品管理ではありませんが、
細かい数値を見ることが可能になります。
この領域にシステム投資を行うことは人事的にも意味があります。
具体的には、予算が達成されていれば、その中身まで踏まえ評価し、未達成ならば、そのプロセスを評価する仕組みを作ります。
たとえば、予算達成率だけ見ると営業Aが74%、営業Bが82%であり、営業Bが営業Aよりも評価されるのが一般的です。
しかし、顧客ランク別の予算実績達成率を見ると、
営業担当Aは攻めるべき顧客にアプローチして成果を出している一方で、
営業担当Bは、攻めるべき顧客の予算は達成されておらず、予算が達成しやすいところだけで成果をあげています。
この分析によれば、攻めるべき顧客にアプローチして、成果を出している。
つまり、将来につながる営業活動を行なっている営業Aを高く評価すべきと判断も加えなければなりません。
これを、絵にかいた餅と捉えるか、一度分析してみる価値があると思うか?
そこで営業の成長戦略に差が出ます。