製品のライフサイクルと営業の関係

市場や製品にライフサイクルがあるというは聞いたことがあると思います。
製品が生まれてから死ぬまで、これをプロダクトのライフサイクルといいます。
ライフサイクルは、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つに分かれます。
それぞれ、営業先の担当者を、「ビジョナリー」「実利主義者」「保守主義者」と分けられています。
そして、それぞれのフェーズで、あるべき営業の姿は異なります。

INDEX

1: 顧客の分類と購買要因
2: 製品ライフサイクルの導入期
3: あくなき理想を追い求めるビジョナリー
4: ビジョナリー客の価値観
5: 製品ライフサイクルの成長期
6: 実利主義者の価値観
7: 何を実利と思うか、キーマンの数だけ存在する
8: 成長期の顧客である実利主義者とは
9: 製品ライフサイクルの成熟期
10: 保守主義者の価値観
11: 急激な変化を嫌う保守主義客
12: 買う場所も決まっている
13: 日本の個人金融市場は保守主義者
14: 体験版や返品の施策を喜ばない顧客
15: 衰退期の中で営業が出来ること

・導入期→ビジョナリー(変革のための手段を探している)
・成長期→実利主義者(具体的な効果を探している)
・成熟期→保守主義者(変化を嫌う、楽を探している)
・ビジョナリーは、製品ではなく、変革を買っています
・実利主義者は、製品ではなく、効果と満足を買っています
・保守主義者は、製品ではなく、安心を買っています
・材料買って自分で作る人(ビジョナリー/自分で作りたい)
・バイキングが好きな人(実利主義者/自ら選択したい)
・お弁当が好きな人(保守主義者/定番お弁当しか選択しない)

製品が開発され、製品が徐々に売れはじめている状態です。
まだ知名度の低さもあり売上は低水準状態です。
一方、広告宣伝費等のマーケティングコスト負担が大きく、
とにかく新製品を顧客に認知させる事を中心に実施されます。
財務的には、損益分岐点を越える時期までを導入期として、赤字状態です。

ライフサイクル初期のころは、ビジョナリー相手に営業をしなければなりません。
理想も高く、知識やスキルもあり、厳しいニーズを要求してくるお客様になります。
実は、ビジョナリーに対しては営業は必要ありません。
ビジョナリーは自分が納得すればセルフで買ってくれます。
むしろ技術者やサポート窓口が重要にになります。
逆に、ビジョナリーから飛んでくる厳しい質問に的確に答えることができなければ、
すぐに去っていき、二度と戻ってくることはありません。

・新しいもの好きで、新しい技術を積極的に評価する
・今までの連続、延長線上とは違うものを好む
・早い時期に製品を採用する人たちで、機能の評価眼を持っている
・その機能が自社の戦略や目的に合うかどうかを洞察できる
・自らがリスクを負って現実のプロジェクトに展開する
・独自の仕様を好む
・利点を検討し、理解し、正当に評価を下すことができる
・いいと思えば、進んで製品を購入する
・他社の導入事例よりは、自らの直感と先見性を信じる
・変革の価値に対する対価を自分の価値で判断する

良い製品であれば導入期の顧客から口コミで評判が伝わったり、
メディア等で紹介されるなどして人気が上昇しはじめます。
また初期の宣伝効果が現れるのもこの時期です。
まだ類似商品が少ないために、比較的強気な価格設定でも売ることができます。
そのため利益率はライフサイクルを通して最も高いフェーズになります。
この時点で、大企業がプレイヤーして新規参入し、プレイヤーが入れ替わります。
財務的には、新企業の参入がはじまりますが、
市場全体の成長力によって、利益を分け合うことができます。

数字的表現、実績、事例を好みます
数字があるということは、すでに実績があり、成果についても測定可能な状態になります。
新製品でも実績が出て来て、成果については効果が測定できる段階です。
コンセプトはどうでもいいです。
すでに、その製品やコンセプト、メリットはわかっているからです。
興味は、具体的にどの程度の成果が出るのか?です。
それゆえ、数字的表現、実績、事例が的確に出せなければ購入してもらうことはないです。

実利主義者は、上司からミッションを受けた窓口担当者が最初に対応します。
窓口の奥には、部署や役職に応じて、多くのキーマンが存在しています。
そして、それぞれミッションや判断基準が異なります。
さらに厄介なのは、その部署間で、トレードオフの関係になるケースが多いことです。
たとえば、システムを導入する場合は、エンドユーザ部門は、その効果を実利と考えるますが、
情報システム部は、そのシステムが安定的や柔軟性を実利と捉えています。
尖った機能や最新の機能は大きな効果を得ることができるかもしれませんが、
新しさゆえシステムは不安定になるケースが多いという判断を下します。
また、旦那さんは、夢を買いますが、奥さんはコストと機能を購入基準にします。

・情報収集期間が長く、すぐには買わない
・その技術が製品としてもたらす効用を極めて実利的に評価する
・価格に対してシビア(費用対効果を必ず判断基準にする)
・着実に効果測定できる進歩を要求する
実利主義客は、製品ではなく、効果と満足を買いにきます。
獲得できる利益に対するコストは適正かという判断をします。
価格に対してシビアです。値下げは当たり前に要求されます。
数字を見て判断するため、比較検討が好きなので、すぐには買わないです。
特定の反対者が居れば、それは効果がないと見做すので、そこを自ら説得するようなこともしないです。

供給が需要を追い抜いた状態。
いわゆる飽和状態です。
この時期になるとディスカウントショップなどでの安売り商品として使われたり、同等のPB商品を販売されます。
売上はまだ伸びますが、他社との価格競争が激化して利益率は低下し始めます。

・古くからの習慣や制度、考え方などを尊重し、急激な改革に反対すること
・取り残されないために、そこに手を出す
・邪魔される、混乱を招くことを極端に嫌う
・業界標準にしか手を出さない
・リーダ企業から買う
・将来の安定を望む
・リスクを避けるためのサービスを重視する
・何か問題が発生したときに電話すれば済む相手を望む
・もしかしたら、一番賢い買い方かもしれない

保守主義客は、製品ではなく、安心を買いにきます。
多少高くても、購入する場所、企業を決めているお客様です。
保守主義客とはもはや斬新では無くなったことに出てくる
古くからの習慣制度考え方などを尊重し、急激な改革を嫌います
混乱を招くことを極端に嫌うリスクを避けるためのサービスを重視する保険という意味合いが強く、それを好む傾向があります。
そのため、製品だけでなく、付帯サービスも同時に買う傾向が強いです。
営業の力量というよりは、企業力を求めてきます。

このフェーズで、新規開拓に注力しても効果は得られません。
買うとなれば、購入する企業、場所を決めている顧客だからです。
リーダ企業の製品を好む、リーダ企業からしか買わないと決めています。
恩恵を受けるために、多少高くても、保険という意味合いが強くまた、それを好む傾向がある。
この層を攻めるためには、販売代理店、アライアンス販売が営業手法になります。
つまり、いつも買っている企業から、買ってもらうために、その企業と組んでいきます。
製品だけでなく、付帯サービスも同時に販売するなど、保守主義者用の製品に仕立てていきます。

日本の個人金融資産市場であるが、外資が仕掛けては撤退していく。
この層は新しいものに動かない、一番ブランドが強い郵便局ということにも頷けます。
金利が多少低くてもそれは大きな問題にはなりません。
金利が多少低くてもそれは大きな問題にはなりません。
コンピュータ業界では、ターンキー・ソリューションという呼び方があります。
これは、リターンキーを1回押せば、あとは全自動でインストールしてくれるものです。
つまり、いちいち面倒な設定が必要ありません。
もちろん、あとから設定したければ、設定できる仕様になっています。
面倒なことは一切やりたくないという、保守主義者のニーズを反映しています。
そして、これができると、市場が一気に広がっていきます。
では、最初からターンキー・ソリューションにして提供すればいいという話になりますが、
ターンキー・ソリューションは、いろいろなケースを想定していないと提供することが出来ず、
そこには、相当の実績とノウハウが求められ、市場が成熟したフェーズでなければ提供することができないです。

体験版や返品オッケーは、本来買いやすくする、リスクを負わないというメリットを訴求しているものです。
リスクを負いたくない実利主義者には効果がありますが、
自分でチェックしなければならないために、保守主義者には見向きもされません。

一度は市場制覇するも、いずれは衰退していくものです。
たとえば、白黒テレビからカラーテレビに、やがてデジタルテレビになる。
頑固に白黒テレビがよいといっても、それをビジネスとして行っていくことは不可能です。
このように商品は時代とともに消えていきます。
営業だけはどうにもなりません。
ただ、営業が一番身近に、その変化を感じているはずです。
その変化の声を早くキャッチして、
撤退するか、イノベーションにより新たな価値創造を行うか、
早めに戦略転換をすることの判断基準の役割を担っています。