営業DXは、欲張れば欲張るほど失敗する

情報化が無駄に終わっている現場の特徴は、理想論に走っているところです。
情報システムを導入するとなると、すべてをシステムに置き換えようと考えがちです。
あれもやりたい、これもやりたいと機能がどんどん膨らみ、複雑になってきます。
思った以上に手作業が増えてしまったり、一番欲しい情報は簡単に引き出せないなどの現象が起きます。
そうなってしまうと、システムは使いにくくなり、使われなくなります。
あくまでも目的は、コンピュータの操作を覚えることではなく、見たい情報が簡単に見られることです。
そのことを考えて設計することが必要です。
具体的には、マウスやタッチパネルを中心にほとんどの処理ができるようなシステムが望まれます。
インターネットを見るのと同じ感覚です。
もし、インターネットをやるために、難しいコンピュータの操作を覚えなければならないとしたら、
こんなに普及することは無かったことでしょう。

INDEX

1: 営業DXはコンテナとパレットで構成する
2: 欲張らない情報化の代表が、紙のシステムです
3: 「効果が実感できない」「負担が増した」はなぜ起こるのか
4: これ以上削れないところまで機能は削る
5: 現場参加型のシステム構築が必要
6: なぜ、コンピュータを嫌がる人がいるのか?
7: コミュニケーション不足はコンピュータで解決されるか
8: 入力してくれなくても、構わない
9: 重要な項目から埋める
10: どう活用できるのか、考えながら蓄積していくこと
11: 情報が蓄積されることで、担当者の引継ぎ作業が一切不要
12: 操作性を無視した情報化は致命傷になる
13: それぞれにあわせて専用のメニューを作る
14: 疲れたら、一時的にシステムの使用を止める

物流は、パレットに荷物を積み、パレットをコンテナに収納し、トラックや船で荷物を運ぶことで
肉体労働からの解放と効率化を達成した。
IT化は、パレットに情報を積み、コンテナに収納し、システムで、情報を運ぶことで、
無駄な情報化の解放と効率化を達成する。
営業DXは、このパレットとコンテナとは何かを考えることになると思う。
何から解放されたいのか考えること一番必要なことだと思う。
この解放という視点から考えないと、営業DXは、無駄なIT化に戻るだけである。
情報化で、逆に増えた無駄な仕事とも言えるだろう。

欲張らない情報化の代表が、紙です。
紙が優れているところは、持ち運びが便利、見やすい。
余白にも自由に書ける。
とても手軽です。
使えない人はいません。
システムも紙と同じです。
紙より便利なことがシステムにあります。
重要なのは、その紙に何かを書くかです。

入力の手間ばかりが増えた。
何の役に立っているのかよくわからない。
現場から不満が出てきます。
これは、可視化できる短期的な効果がないシステムだからです。
効果が見えないものを延々と使いづづける人は、おかしいです。
使ったその日から、効果が実感できることが重要です。
効果が実感できるのであれば、そのシステムは使われ続けられます。
たとえば、自分が発信した情報に対して、コメントが付いただけでまったく状況は変わります。
何かアクションを起こせば、次のアクションが起こる。
この連鎖がある仕組みにしないと、上手く行きません。
システムの先に、人が居るが見えないシステムは、誰に対して、何をしているのかわかりません。
企業の情報システムであれば、決して難しいことはではありません。
相手が見えないでメールを書いている人がいないと同じです

現場から10個要望が上がってきたら、9個は削除してください。
もっとも効果のある1個に絞ってください。
とにかく、簡単なところからシステムはスタートします。
全部が中途半端よりも、ひとつでもいいから着実にこなしていく。
これが、営業の情報システムが成功する鍵です。
そして、1個成功したら、もう1つ機能を追加してください。
現場の負担がなく、どんどん機能を拡張していくことができます。
また、使わなくなる機能も出てくると思います。
そういう機能は削除してください。
1リットルの水槽で、水が溢れないするためには、
減らしてから、追加することでしょう。
そうすることで、中の水は、いつまでも新鮮な状態が維持できます。
新鮮な情報が担保されるようになります。

経営者やマネージャーが見たい情報から設計したシステム。
これは危険です。
見たい情報が見れるようにするためには、まずは情報の入力が必要です。
この情報の入力を担うのが、現場であり、
現場に入力を強制しているだけあれば、情報はだんだん入力されなくなります。
たとえ、業務命令と言ったところで、情報を入れなければ怒られる程度の意識のもとでは、
形式的な情報だけしか入力されません。
これは、入力側に、なんらメリットがなく、ただ管理されているという意識が強くなるからです。
形式的な入力するぐらいなら、最初から入力しない方が、よっぽど生産的です。
このシステム使って営業の効率をどのように上げるのか?
どんな情報があると現場が便利になるのか、現場の参加型のシステム構築が重要です。
そして、何より、現場参加型のシステム開発は、営業の意識付けに最も大きな効果を発揮します。
よくありがちな「使ってもらうワザ」として、システムインセンティブ手当なる給与項目があり、
一定量の情報が入力された場合は、毎月手当てが付くという制度です。
お金欲しさに入力することになるのですが、ある意味、入力側にメリットはあります。
本末転倒のような気もしなくはないですが、それはそれで現場にメリットという意味では正しいです。

情報は大切だけど、基本は人です。
効率や生産性だけで営業は語れません。
非効率であっても、長期の信頼関係を築くためにやらなければならないことはたくさんあります。
コンピュータや情報、ましては生産性というひとつのモノサシだけで、営業を見ることはすごく危険です。
このことをきちんとシステム導入側に理解して欲しい。
コンピュータを嫌がる人こそ、コンピュータの本質を見抜いています。
是非、そのような人の意見は、積極的に聞きましょう。

一人に与えられている時間は有限です。
限られた時間では、1対1のコミュニケーションはなかなかできません。
それが、コンピュータを使って、その時間を効率的、効果的にしたところで、
その限らえた時間をコミュニケーションに使うようになるかと言えば、そうではありません。
そもそもコミュニケーションは、そこからヒントを得る場であったり、調整する場であったりします。
そして、そこから新しい価値が創造されていきます。
よい情報があるから、コミュニケーションするのであって、
コミュニケーションしやすいツールがあるから、コミュニケーションをするわけではないのです。
会社員が、他人の悪口や人事の話で、裏で活発なコミュニケーションするのは、
そのような情報が、重要な情報と捉えれている証です。

情報システムは、情報を入力するための道具です。
しかし、思うような情報が集まらずに、全く活用できないという状態になりがちです。
しかし、それでいいのです。
入力することが目的ではなく、利益をあげることが本来の目的だからです。
利益をあげるということは、複雑な要因が絡みあって、
その結果として財務上の数字になって表れるものです。
入力することより、もっと大切な優先順位の高いことはいくらでもあります。
それを意識することこそ、重要なのです。
意識が変われば、会社の売上も必然的に変わってきます。
情報システムは、あくまでも道具です。
その道具の良し悪しにこだわる前に、もっとこだわることがないか?
考えるようにしましょう。

無地のノートに自分でメモを取るなら、必ず重要なことしか書きません。
しかし、それがシステムになると、入力箇所を入力しなければいけないと思ってしまします。
埋めるためだけに無駄な時間を費やします。
何も設計せずに、無地のシステムで構わないと思います。
その代わり、ひとつでもいいから、着実に進めていくことで、
そこからたくさんのことが見えてくるはずです。

言うまでもありませんが、
システムに情報が溜まっているからといって、それだけでは利益は生み出しません。
情報は、お客様に受け入れられたときに、初めて情報が利益をもたらします。
最も重要なのは、その情報を、お客様に対して、どのように活かすのかを考えながら蓄積していくことです。

情報化を導入することで、日々の営業情報はすべて蓄積され、引き継ぎ作業が一切不要になります。
不完全な引き継ぎによる重複営業や顧客損失の防止になります。
会社にとっても、引き継ぎを受けた営業にとっても、最高です。
しかし、現実は違います。
そもそも、すべての情報が蓄積されていることはありません。
仮に、すべての情報が蓄積されていたとしても、
誰が引き継ぐかで、顧客損失や機会損失は起こります。

どんなに機能が優れたシステムであっても、操作が不便であると現場の不満が募り、その結果、そのシステムが使われなくなってしまいます。
そのため現場で使いやすいユーザインターフェースを重視し、シンプルでわかりやすい入力や操作性を重視して設計しなければなりません。
システムの導入時は、機能が優先になり、かつギリギリまで行われるために、
どうしても、ユーザインターフェースは後回しになってしまいます。
機能よりも、ユーザインターフェースを大切にしたほうが、最初の1歩のシステムとしては、重要です。
第一印象に失敗すると、その損失を取り返すのは、至難の業です。

必要な情報を、必要な人が、いつでも見れるようにすること。
たとえば、経営トップの方が見たい情報、マネージャーの方が見たい情報、現場の担当者が見たい情報は、それぞれ異なります。
そのために、それぞれにあわせて専用のメニューを用意します。
パソコンを開くだけで、そこに欲しい情報が出てくるようにします。
朝会社に出社して、パソコンで勤怠システムを起動して勤怠を登録し、メールを起動してメールをチェックし、
どうでもいいメールを眺めながら、1日がスタートしていく。
パソコンを開いただけで、自動で勤怠処理が終わり、必要な情報だけが、手元に表示されている。
朝一の時間の有効性は、差がついていって当然のような気がします。
最低限のパソコンとマイクロソフトoffice製品がインストールされている。
それが情報化投資だと思っている、もしくは、それしか情報システム予算がない。
それでは、戦うといっても、戦えません。
日本の戦中を見ている感覚になります。
専用メニューとか、遠い先の話ではなく、
働きやすい環境を作ることが、営業の情報システム投資になるのです。

普通のシステムは、システムが止まったら仕事が出来なくなります。
しかし、営業のシステムは、システムが止まったからと言って営業が出来なくなるというものではありません。
そういう、つまり業務とは直結しないシステムを目指しています。
無駄な作業を繰り返しているコストとモチベーションを考えたら
自分の仕事に役に立たないのであれば、使わないという判断ができるのも立派なリテラシーです。
操作になれて使いはじめたとしても、効果が実感できなくなれば、システムの利用を一旦ストップする
そして、再考すべきです。
そういう判断が出来ない、一度始めたことはとにかくやり続ける。
それは、ワンパータン営業を続けている情報システムみたいなものです。
その限りは、企業成長は出来ません。
そして、なにより、企業成長のために、すぐできることは、無駄は辞めていくことです。