営業を取り巻く環境の変化

国勢調査によれば、日本には2000年まで468万人の「営業職」がいました。
ところが2015年までに336万人に減りました。
いろいろな要因があるにせよ、
誰でも営業ができる時代は終わったという意味だと思います。
これからの営業は、才能がある人が対応していく仕事になるはずです。
その才能とは、従来の営業の才能とは限りません。
さらに、それは、人ということにも限定されません。
営業が取り巻く環境が変わってきています。
企業は、売上がなければ維持することが出来ません。
その売上を作る役割を担うのが営業ということは変わりません。

INDEX

1: 「売る」から「買っていただく」時代に
2: 売りやすくする方法から、買いやすくする方法へ
3: 気づいてみれば、海外のサービスを使うのが当たり前になっている
4: 経済のスピードアップ
5: 商品のライフサイクルスピードアップ
6: 顧客アクセスポイントのマルチチャネル化
7: 世界で一番安いところから商品を購入する
8: 企業と顧客がコンピュータがつながる
9: アマゾンの凄さは、誰でもがアマゾンになれる時代を作ったこと
10: ネットワークされた口コミ情報
11: 簡単に顧客と接触することができる
12: 現代の飛び込み営業-テレマーケティング
13: ネットが苦手な顧客だけを相手にしていればいいのだろうか?
14: インターネット広告
15: eCRM上の営業機能代替

市場シェアを獲得するためには、膨大な人材と資金を必要としますが、
顧客シェアは、人材と資金だけでは達成できない。
ものを作れば売れた時代は、「ものを手に入れること=顧客が満足すること」の方程式がありました。
とにかく、欲しいものがたくさんあり、それをひとつずつ買い揃えていくことで、顧客は満足を得ることができました。
それに伴い市場は成長を続け、「市場の成長率=企業の成長率」という方程式も成立していました。
まさに大量生産・大量消費の時代でした。
そこで求められた経営は、大量生産による製品コスト削減、いち早く製品を市場に投入するための製造体制の構築、
不特定多数の人に新製品発売のメッセージを届けるためのマス広告と、大量生産、大量消費をを前提にした経営手法でした。
ものが一巡したあとは、ランクアップを狙った買い替え需要が中心になり、今までのような市場成長が望めなくなりました。
市場成長が望めないとなると、その市場からどれくらいのシェアを獲得できるかが、企業の成長の鍵になりました。
限られた利益を各社が取り合うことになります。
今、求められている経営手法は、「顧客満足を高めるためには、どうすればよいか」ということです。
市場成長が余り望めず、限られたパイの中でいかに顧客を掴むか、企業は顧客満足を向上させるための取り組み始まりました。
顧客が一生涯に使う金額は決まっています。
その中で自分ところで買ってもらう割合を最大にすること、つまり顧客生涯シェアを最大にすることに向かっていきます。
製品であれ、サービスであれ、顧客に満足を与えられる企業しか顧客シェアを獲得することができません。

多様な価値対応と同時に行われているのが、利便性を高めることです。
購買の本質そのものというよりは、購買の周辺を充実させることです。
・ジャストインタイム:必要なときに必要な形で(鮮度が高い、すぐに届く、コンビニでATM)
・マスカスタマイゼーション(部品単位で購入してアセンブリ、パソコン)
・セットで提供、割安感と利便性で勝負(メテプロダクト)
・すべての関連商品が1つにまとまった利便性(ワンストップ)
・品揃えが多い、品目、品種が多い(見切れないほどのネット販売)
・金銭的に購入しやすい環境を作る(金利ゼロサービス)

なぜ、スピード化社会が到来したかといえば、
それは、情報が伝播するスピードが早く、また情報を費消するスピードも早いからです。
インターネットという情報網が整備されたことにより、情報へのアクセスタイムも驚異的に短縮しました。
これが、物理的な、量的なスピードだけの問題であればいいのですが、そこには、グローバルという今までとは異なる質的な変化が加わりました。
気づいてみれば、海外のサービスを使うのが当たり前になっています。

鉄道が出来たことにより、流通スピードに革命が起こり、商売の形態が大きく変わりました。
今は、携帯電話、インターネット、スマートフォンが革命が起きています。
これらの情報機器は、コミュニケーションの大幅なスピードアップをもたらします。
どこからでも、いつでも、さらには移動しながら、24時間コミュニケーションすることができるようになります。
そもそもコミュニケーションは「情報の交換」を目的として行われるものであり、
「情報の交換」は経済活動そのものであると捉えることができます。
たとえば、顧客ニーズという情報を具現化したものが製品であり、
顧客に情報を提供するのが営業活動になります。
この考え方によれば、情報のコミュニケーションスピードが速くなれば、情報をベースにして行われる経済活動そのもののスピードも速くなります。
このスピードに付いていけない企業、いつまでももたもたしている企業は、すぐに経済活動から置いてきぼりにされてしまいます。

新商品が出たと思えば、すぐに消えしまいます。
商品の寿命があまりにも短くなりました。
ものが豊かになり消費者はインパクトや刺激を求めています。
インパクトや刺激は長期的に継続するものではなく一過性のものであり、
それが商品の寿命を短くしている理由につながっています。
また、企業の宿命として止まっていることは出来ません。
次から次へと新商品の投入を繰り返し、さらに商品のライフサイクルを早めています。
しかも、競合の商品が持っている機能は必ず追随し、
ほぼ同じような機能を実現するとともに、独自の機能を付けて差別化するという競争が行われています。
市場では、その繰り返しが行われ、しかもその対応スピードはますます加速しています。

昔は、営業からしか情報を得ることが出来ませんでした。
今は、いろいろなところから情報を得ることが出来ます。
営業が言う言葉よりも、ネットの情報を信頼することすらあります。
お客様が接するあらゆる場面において、お客様の満足と信頼を獲得すること。
それを実現するための仕組みを考えることが重要です。
そんな中で、もう一度、営業の役割を見直すとともに、
広告、コールセンター、インターネット、電子メール、SNSなど、
あらゆる場面で、情報をコントロールする必要が出てきています。

誰もが、安いところで買いたいというニーズがあります。
これは、ネットで実現してしまった。
言うまでもなく、ネットを武器にり新しい顧客を獲得した企業がいます。

コンピュータはもともと技術者が扱うもので、必ずしも一般の人にとって使いやすいものではありませんでした。
しかし、最近は一般の人が使えるものになり、今では、コンピュータを使えるからといって、特別視されることもなくなりました。
このような利用者の増加は、コンピュータの利用目的の拡大をもたらしました。
そして、今では、電子メールアドレスが記載されている名刺が当たり前です。
実際に取引先と電子メールでやりとりすることも珍しくありません。
自分は関係ないと言っても、あなたは、すでに情報化社会の中に存在しています。
否応なしに情報化社会に取り込まれているのです。
既に、電子メールの何歩か先の動きがある状態です。
チャット、リモート会議、テレワークなどです。
これから、先も、勝手に情報化社会は進んでいきます。

アマゾンの凄さは、とても手作業ではできそうもないサービスをコンピュータを使うことにより、可能にしたところです。
新商品を開発したわけでも、画期的なコスト削減をしたことでもありません。
不可能だったサービスを可能にしたことです。
それらのサービスは、顧客にも高い付加価値を提供し、高い成長率を維持しつづけています。
周りの友人を見る限りは、ネットのECサイトで購入した経験のある人がほとんどで、時代は確実に変わってしまいました。
ネットで1度購入すれば、その購買履歴に応じて、顧客をセグメントしながら、
そのセグメントに応じた特定情報やクーポンの送付も当たり前です。
これのすごいところは、すぐ始めることができることです。
そして、毎日繰り返し行われることです。
すごいタフな営業です。

モノが満ちてしまった、成熟してしまったお客様は、
商品やサービスを求めていません。
自身の問題解決を求めています。
それを提供しなければなりません。
とても手間が掛かり、とても面倒な存在です。
言い方を変えると、簡単に儲けさせてくれないお客様になってしまいました。
だからといって、
お客様は、企業との協働や対話を積極的に望んでいるかと言えば、そうではありません。
自分のことだけで精一杯です。
その企業の行末にまで興味を持っているわけではありません。
敢えて、あるとすれば、それは企業ではなく、見知らぬ顧客同士の相互関係に着目しています。
つまり、インターネット上に存在する製品評価サイトや口コミ情報です。
企業からの情報発信よりは、顧客同士の情報の方が信頼性が高いと感じています。
この傾向は、今後さらに増長されると思われます。
この延長線上で考えれば、営業は不要ということになるかもしれません。

比較的に簡単に顧客のパーミションを得ることができることもインターネットの特徴です。
つまり最大のメリットとはリード獲得の容易さにあります。
すなわちインターネットでプレゼントキャンペーンを実施して、ユーザーにフォームから応募させれば、
面倒なハガキの集計も、住所氏名の手入力の人件費もかからずに、大量のリードを獲得できます。
しかしながら、労せずして得たリードは価値の半減もとても早いのも事実です。
すでに個人で複数のメールアドレスを所有しているのは当たり前に近く、
それぞれの目的に応じてメールアドレスを使い分けを行っています。
営業は、顧客とのファーストコンタクトに苦労しているのに比べると羨ましい。

当たればラッキー、人海戦術。迷惑なイメージ大ですが、
いまだに無くならないのは一定の成果を得ているからです。
アポとりはアルバイトに任せて、時給+1件アポ獲得で報奨金をつける。
アポが取れたら、営業が客先に訪問し、日ごろ鍛えられているロープレをやってくる。
最後に、マネージャが同行して、クロージングする。
かなり商材は限定されますが、
今までより、もっと安くできますで、あれば、一定の確率で成約していきます。
営業が強いと言われている会社は、この仕組みの精度が高く、素直で根性のある人材が担っています。
この根底には、ダメ部分を評価して無くす努力をするより、
当たる部分の損益分岐点だけを意識しています。

証券会社の営業は、どうなっていくのだろう。
「営業担当者にあれこれ言われるのは勘弁」、「自分の好きなように株式を売買したい」という層に、
オンライントレードはマッチしました。
また、新しい顧客も創造しました。

2019年 日本の広告費』によると、テレビメディア広告費は1兆8612億円。インターネット広告費は2兆1048億円と初の2兆円の大台を突破。
ついに日本の広告メディアの首位が交代しました。
広告出稿前に、アクセスログ分析からコンバージョン率を導き出し、そこからアクション単価を推定し、広告のの最適化を図るこです。
広告出稿後は、媒体ごと、広告原稿ごとのアクションをリアルタイムに測定しながら、出稿量や内容の微調整を繰り返します。
デキル営業が、その場で判断して、どんどん修正をしていくのと似ています。
ネット広告は、TVに比べれば時間の制約から解放され、雑誌に比べればスペースの制約から解放されます。
つまり、見たい人、興味のある人はじっくり見ることができます。
営業が話すよりは、ロジカルに大量な説明することが出来るとも言えます。

◆eCRM上の営業機能代替
インターネットは以下のような営業代替機能が実装されています。
・マッチング:中立・客観的視点でニーズに合うものを捜す
・レコメンデーション:ニーズを予測しピンポイントで提案(提案性あり)
・カスタマイゼーション:オーダーメイドの効率化、低価格化
・ワンストップ:必要なニーズを1箇所で提供
・ジャストタイミング:消費者にふさわしいタイミングで提供基本機能
・オンラインカタログ
・オンライン発注
・引き合い情報取得
・顧客登録
・ウェブ・セルフヘルプ
・オンライン・サーベイ(調査、リサーチ)
・パーソナライズされたeメール
・パーソナルされたWeb
・営業への橋渡し(引き合い伝達)