財務諸表

CoverPage

提出書類、表紙有価証券報告書
提出日、表紙2024-06-27
英訳名、表紙Kumagai Gumi Co.,Ltd.
代表者の役職氏名、表紙取締役社長  上 田  真
本店の所在の場所、表紙福井県福井市中央2丁目6番8号(同所は登記上の本店所在地であり、実際の業務は下記で行っている。)
電話番号、本店の所在の場所、表紙
様式、DEI第三号様式
会計基準、DEIJapan GAAP
連結決算の有無、DEItrue
当会計期間の種類、DEIFY

corp

沿革 2【沿革】
 当社は1898年1月熊谷三太郎が個人経営の土木建築請負業を開業したことに始まる。以来、各地の鉄道工事、水力発電所工事等に従事し、1938年1月資本金40万円の株式会社に組織を改め、近代経営の第一歩を踏み出した。 設立後の主な変遷は次のとおりである。 1945年10月建築部を発足、建築部門に進出1948年2月札幌、横浜、名古屋、大阪、広島、福岡支店を開設1949年3月東京支店を開設1949年10月建設業法により、建設大臣登録(イ)第118号の登録完了1958年10月豊川工場を設置1962年12月仙台支店を開設1963年11月当社道路部を分離独立させ熊谷道路㈱(現 連結子会社)を設立1964年1月東京営業所を東京本社に改称1964年12月北関東支店を開設1966年12月四国支店を開設1970年4月東京、大阪証券取引所市場第二部に上場1971年2月東京、大阪証券取引所市場第一部に上場1973年6月建設業法の改正に伴い、建設大臣許可(特-48)第1200号を取得(以後3年毎に免許更新)1973年12月北陸支店を開設1974年3月東京本社新社屋完成1974年6月宅地建物取引業法により、宅地建物取引業者として建設大臣免許(1)第1842号を取得(以後3年毎に免許更新)1988年3月筑波技術研究所(現 技術研究所)を開設1990年4月仙台支店を東北支店、福岡支店を九州支店に改称1991年4月北関東支店と新潟営業所を統合し、関越支店に改称1994年4月関越支店を北関東支店に改称 熊谷道路㈱が㈱ガイアートクマガイに商号を変更1995年2月神戸支店を開設1995年10月東関東支店を開設1996年4月豊川工場を分社化、熊谷テクノス㈱(現 連結子会社)を設立1997年4月札幌支店を北海道支店に改称1997年6月建設業法の改正に伴い、建設大臣許可(特-9)第1200号を取得(以後5年毎に免許更新)2001年2月東京、横浜、北関東、東関東支店を統括する首都圏支社及び大阪、神戸、四国支店を統括する関西支社を設立2002年3月熊谷テクノス㈱が、連結子会社の三豊テクノコンストラクション㈱を吸収合併し、テクノス㈱に商号を変更2003年7月首都圏支社を首都圏支店及び関西支社を関西支店に改称2003年10月不動産事業、海外PFI等に係る投融資事業及び債権の回収事業を新設会社のニューリアルプロパティ㈱に承継させる会社分割を実施2003年12月大阪証券取引所上場廃止2004年4月㈱ガイアートクマガイが飛島道路㈱と合併し、㈱ガイアートT・Kに商号を変更2009年4月広島支店と四国支店を統合し、中四国支店に改称2016年10月㈱ガイアートT・Kが㈱ガイアートに商号を変更2022年4月東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所の市場第一部からプライム市場に移行2024年4月東京建築支店を開設
事業の内容 3【事業の内容】
 当社グループは、建設事業及びその周辺関連事業を主たる事業としている。事業の内容及び当該事業に係わる位置づけは次のとおりである。 なお、以下は主要な事業の内容により区分しており、セグメント情報におけるセグメント区分と同一ではない。 建設事業     当社及び連結子会社である㈱ガイアート、関連会社である笹島建設㈱他が建設事業を営んでいる。  また、連結子会社であるテクノス㈱は建設事業のほか、建設用資機材の製造販売等を行っている。 その他の事業   連結子会社である㈱テクニカルサポートは保険事業及び事務代行事業を営んでおり、当社は事務業務の一部を委託している。  また、連結子会社である㈱ファテックは建設技術商品の提供事業を営んでおり、当社はその一部の提供を受けている。  事業の系統図は次のとおりである。
関係会社の状況 4【関係会社の状況】
名称 住所資本金(百万円)主要な事業の内容議決権の所有割合又は被所有割合(%)関係内容(連結子会社) ㈱ガイアート 東京都新宿区1,000建設事業100当社の建設事業において施工協力している。また、当社より建物を賃借し、当社に建物を賃貸している。役員の兼務   1名テクノス㈱ 愛知県豊川市470建設事業100当社の建設事業において施工協力している。また、当社より土地を賃借している。役員の兼務   3名ケーアンドイー㈱ 東京都千代田区300建設事業100当社の建設事業において施工協力している。また、当社より建物を賃借し、当社に建物を賃貸している。役員の兼務   4名㈱テクニカルサポート 東京都新宿区70その他の事業100当社へのサービスを行っている。また、当社より建物を賃借している。役員の兼務   2名テクノスペース・クリエイツ㈱ 東京都豊島区30建設事業100当社の建設事業において施工協力している。また、当社より建物を賃借している。役員の兼務   3名㈱ファテック 東京都新宿区20その他の事業100(10.0)当社と協力して技術商品の提供を行っている。また、当社より建物を賃借している。役員の兼務   4名華熊営造(股)
(注)2台湾台北市百万NT$800建設事業100当社の建設事業において施工協力している。また、当社に建物を賃貸している。役員の兼務   2名(持分法適用関連会社) 笹島建設㈱ 東京都港区150建設事業35.0当社の建設事業において施工協力している。役員の兼務   1名㈱前田工務店 東京都江東区98建設事業40.0当社の建設事業において施工協力している。役員の兼務   1名共栄機械工事㈱ 神奈川県鎌倉市50建設事業40.0当社の建設事業において施工協力している。役員の兼務   1名(その他の関係会社) 住友林業㈱
(注)3東京都千代田区55,089住宅事業被所有22.0当社と資本業務提携契約を締結している。役員の兼務   1名
(注) 1 議決権の所有割合の( )内は間接所有割合を内数で示している。2 2024年5月23日付で増資を行い、資本金が1,320百万NT$となっている。なお、本増資によって、当社の所有割合に変更はない。3 有価証券報告書を提出している。
従業員の状況 5【従業員の状況】
(1)連結会社の状況 2024年3月31日現在セグメントの名称従業員数(人)土木事業892建築事業1,279子会社1,778全社(共通)483合計4,432
(注) 従業員数は就業人員数である。(2)提出会社の状況 2024年3月31日現在従業員数(人)平均年齢(歳)平均勤続年数(年)平均年間給与(円)2,65444.118.98,481,654 セグメントの名称従業員数(人)土木事業892建築事業1,279全社(共通)483合計2,654
(注) 1 従業員数は就業人員数である。2 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいる。(3)労働組合の状況 労使関係について特に記載すべき事項はない。(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異① 連結会社当連結会計年度管理職に占める女性労働者の割合(%)(注2)男性労働者の育児休業取得率(%)(注3)労働者の男女の賃金の差異(%)(注2)全労働者うち正規雇用労働者うち非正規雇用労働者5.577.660.259.550.5
(注) 1 「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第2条第5号に規定されている連結会社を対象としている。2 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものである。なお、華熊営造股份有限公司は対象外としている。 ② 提出会社 a 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率当事業年度管理職に占める女性労働者の割合(%)(注1)男性労働者の育児休業取得率(%)(注2)5.275.6
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものである。  b 労働者の男女の賃金の差異 当事業年度女性男性全体労働者の男女の賃金の差異(%)雇用形態社員区分人数(人)平均年齢(歳)年間平均給与(円)人数(人)平均年齢(歳)年間平均給与(円)人数(人)平均年齢(歳)年間平均給与(円)全労働者42237.35,520,7252,22247.19,044,0462,644(注4)45.58,481,65461.0正規雇用総合職17530.86,239,4451,78143.09,323,5021,95541.99,047,62666.9エリア職(注2)21340.35,167,466843.47,439,34522140.55,249,73769.5非正規雇用契約社員、シニア社員等(注3)3448.84,042,64043463.67,926,28846862.47,642,34451.0
(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものである。2 住居の変更を伴う勤務地の変更がない者又は住居の変更を伴う勤務地の変更が支店管轄内に限定されている者。3 契約社員は、1年以内の一定の期間を定めて雇い入れられた者であり、シニア社員は、会社を定年退職した者のうち、1年以内の一定期間を定めて雇い入れられた者。4 年間の平均人数のため、「(2)提出会社の状況」の従業員数と異なっている。5 労働者の男女の賃金の差異について、賃金制度上性別による差異はなく、階層・職位等が同等であれば男女間で賃金の差異は生じることはない。なお、差異の主な要因として、女性活躍推進の観点から女性の新卒採用強化に取り組み始めてから10年程経過しているものの、相対的に女性の勤続年数が短く、上位階層の女性の割合が低い水準にとどまっていることなどが挙げられる。
経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。(1) 経営方針 熊谷組グループビジョンのもと持続的成長と企業価値向上を目指し、2024年5月に前「中期経営計画(2021~2023年度)」において掲げた「長期構想」を踏襲した『熊谷組グループ 中期経営計画(2024~2026年度)~持続的成長への新たな挑戦~』を策定した。「社会から求められる建設サービス業の担い手」という役割のもと、時代を問わず社会課題と真摯に向き合い、目指す社会の実現を図っていく。 ■熊谷組グループビジョン〈熊谷組グループが目指す企業像〉 「高める、つくる、そして、支える。」 独自の現場力(優れた技術力を豊かな人間力で活かす現場力)を高め、独自の価値であるしあわせ品質(建造物の外形的・機能的な品質に加え、そこに集う人、そこを使う人が満足し続けられる品質)をつくり、時代を超えてお客様と社会を支え続ける。 ■長期構想〈2030年以降を見据えた経営方針〉 社会から求められる建設サービス業の担い手として、限りある資源が循環し、ひと・社会・自然が豊かであり続ける社会の実現に貢献する。 ■中期経営計画〈2024~2026年度の方針・戦略・目標〉 「持続的成長への新たな挑戦」をスローガンとして掲げ、これまでの取組みを継続させ「稼ぐ力」「選ばれる力」を徹底的に強化するとともに、周辺事業を加速させ、両利きの経営を目指す。
(2) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 我が国経済は雇用・所得環境が改善する下で、政府の各種政策の効果により緩やかな回復が続くことが見込まれるが、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れがリスクとして存在している。さらに、中東地域をめぐる情勢など地政学的な問題が経済に与える影響にも十分留意する必要がある。 建設業界においては、民間企業の建設投資は企業収益の改善等を背景に底堅く推移すると思われる。また、公共投資については、2024年度予算は前年度とほぼ同水準が確保され、自然災害の激甚化・頻発化や社会インフラの老朽化など、人々の暮らしや産業の発展を支える基盤の持続性に大きな懸念が生じる中、防災・減災、国土強靭化への計画的な投資により引き続き堅調に推移すると予想される。一方で、原油高や建設資材高といった採算悪化や需要減退を招くリスク要因の動向を注視していく必要がある。 (3) 経営戦略 当社グループは2024年度を初年度とする「中期経営計画(2024~2026年度)」を策定した。今般策定した計画は、前「中期経営計画(2021~2023年度)」において掲げた「長期構想」を踏襲し、当社グループが目指す「限りある資源が循環し、ひと・社会・自然が豊かであり続ける社会」の実現に向けた取組みを示しており、「目指す将来の姿」として掲げていた2030年度の“連結経常利益500億円”を、改めて2035年度の長期構想上の目標とした。また、本計画のスローガンとして「持続的成長への新たな挑戦」を掲げ、①建設事業の強化、②周辺事業の加速、③経営基盤の充実を基本方針として、計画期間中の“連結経常利益300億円”を数値目標と定めた。 (4) ESG課題への取組み 熊谷組グループビジョンのもと事業活動を通じて社会課題解決に貢献するとともに持続的成長による企業価値向上を目指していくため、2019年4月に「ESG取組方針」を策定し、CO2排出抑制、再生可能エネルギー事業、都市再生事業、人財育成、ステークホルダーとの関係強化などに全社を挙げて取り組んでいる。 なお、2024年5月に重要課題(マテリアリティ)の改定と個別課題の見直しを行った。 「ESG取組方針」 ■当社は、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の視点から解決すべき重要課題(マテリアリティ)を特定し、持続可能な事業活動を追求していく。  ■当社は、グループが保有する技術・経験・ノウハウを活用して新たな価値を創造し、SDGsに代表される社会課題の解決に貢献する事業活動を展開していく。  ■当社は、事業活動を通じてステークホルダーとのコミュニケーションによる信頼関係の構築に努め、企業価値の向上を目指していく。  「ESG取組方針」のもと、持続可能な社会の形成と自らの持続的な成長のため、ステークホルダーにとって重要と考えられる課題をESG視点で特定し、事業活動を通して社会課題の解決(社会価値)と事業収益の拡大(経済価値)の双方を追求する。  なお、2023年4月に当社を代表とする特定建設工事共同企業体が施工する「北海道新幹線、羊蹄トンネル(有島)他」工事における、コンクリート品質管理試験において、試験実施頻度に関する虚偽報告を行っていたことが判明した。本事案判明後、社長を委員長とする特任対策委員会を立ち上げ、経営から独立した法遵守監査委員会の監視・指導・勧告のもと、原因究明及び再発防止対策、当該コンクリートの健全性、他の工事における同様の不正の有無の調査を実施した。この調査の結果、虚偽報告期間中に施工したコンクリートの健全性に問題はないことを確認するとともに、他の工事においても問題は確認されなかった。また、原因究明のためのヒアリング等の結果、コンプライアンス意識の不足、品質管理に関する基本的認識の不足、作業所における報連相の不足、マネジメント能力の不足、品質管理体制の不備が当事案の主要因であることを確認し、これらの原因の分析・精査を踏まえ、役職員の教育の徹底、品質管理体制の強化及び作業所における諸問題の把握といった再発防止対策を講じ、これを実施している。 当社は、「ものづくりの原点」に立ち返り、確かな品質こそが「信頼」の核であることを改めて認識し、信頼回復に向け、不退転の決意をもって引き続き再発防止に取り組んでいく。
サステナビリティに関する考え方及び取組 2【サステナビリティに関する考え方及び取組】
 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりである。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。 当社グループは長期的な成長を実現し、かつ持続可能な社会の形成に貢献していくため、ESGの視点を経営に取り入れており、事業活動を通して社会課題の解決(社会価値)と事業収益の拡大(経済価値)の双方を追求していくことをサステナビリティの基本方針としている。 (1)ガバナンス 当社は、サステナビリティ分野を含む経営上の重要事項を「経営会議」(議長:社長)にて審議している。また、経営会議を補佐する機関として「サステナビリティ推進委員会」(委員長:経営戦略本部長)を設置している。 「サステナビリティ推進委員会」は、事業本部長等により構成されており、ESG・SDGsの視点から、企業の長期的な成長・持続可能な社会形成に資する施策全般を検討する組織である。他の経営会議体と連携し、サステナビリティ分野を推進するための方針や制度の検討などを行っている。 取締役会では、上記プロセスについて報告を受け、取組状況の監督を行っている。 (2)戦略 ① 環境保全 当社グループは、限りある資源が循環し、ひと・社会・自然が豊かであり続ける社会を目指して、「持続可能な社会」の実現のために「気候変動リスクへの対応」「ゼロエミッションの達成」「ネイチャーポジティブの実現」などを個別課題に挙げ、目標を定めて取り組んでいる。 当社は、2010年よりエコ・ファースト企業として、持続可能な社会の実現に向けた取組みを推進している。 当社グループとして2021年2月にRE100に加盟し、事業活動における使用電力を100%再生可能エネルギーとする取組みを進めており、温室効果ガス排出削減の中長期目標では、国際的な枠組みであるSBT認定を取得し、目標達成を目指している。情報開示では、国際的な環境非営利団体CDPより、気候変動部門において最高評価である「Aリスト」に選定され、サプライヤー・エンゲージメント評価においても、最高評価である「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」に3年連続で選定された。 2023年1月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、気候関連のリスク及び機会の特定・評価と、事業活動に与える影響についてのシナリオ分析を行い、その結果を踏まえた情報を開示した。 今後は、事業活動において重機や車両で使用する化石燃料をさらに削減し、再生可能エネルギーを積極的に導入するとともに、当社が提供する建物の大幅な省エネに寄与するZEBの普及促進、再エネ発電事業に取り組むなど、脱炭素化をさらに加速していく。   気候変動リスクへの対応 気候変動に伴う「リスク」には、GHG排出に関する規制の強化等の「移行」に起因するものと、自然災害の頻発・激甚化等の「物理的」な変化に起因するものが考えられる。一方で気候変動に伴う「機会」として、新たな市場における需要の増加等が考えられる。当社では短期(概ね3年以内)・中期(概ね3年超~10年以内)・長期(概ね10年超)の3つの時間軸から気候変動関連の「リスク」(「移行」と「物理的」に分類)と「機会」を特定した。  ② 人的資本 a 基本的な考え方 当社グループは、人財を「資本」と捉え、その能力を最大限に引き出すことが中長期的な企業価値の向上につながるという考え方に基づき、持続的な成長の源泉であり、事業活動の核となる人財への投資を拡充し、量と質の両面で人財価値の最大化を図り、企業価値の向上に寄与するための人財基盤を構築する。 b 人財戦略 2024年5月に策定した「中期経営計画(2024~2026年度)」において、60億円規模の人財投資を計画している。持続可能な人員体制を構築するための採用活動、次世代を見据え従業員のスキルアップやキャリアパスの充実を支援するための人財育成、従業員のモチベーションアップのための報酬水準の向上、従業員が安心して働くことができるための職場環境の整備などに注力し、これらの取組みを通じて、従業員の意欲や誇り、自信を促し、従業員エンゲージメントの向上、組織力の向上、そして人財価値の最大化を図る。 c 人財採用について 世代間の人員構成の不均衡を是正するとともに従業員の高齢化による離職に備えるため、当社はダイバーシティを意識した採用活動を行っている。事業環境の変化や今後の業績推移に基づいて5年後・10年後の人員数・職種構成・年齢分布を考慮した採用計画を策定し、技術力及び競争力の維持・向上を図る。新卒採用については、入社後のミスマッチを防ぐために現場見学や社員面談、若手社員との座談会などを積極的に実施し、将来を担う人財の確保に努めている。またキャリア採用については、事業戦略に基づく注力すべき分野の専門スキルを保有し、即戦力となる人財の確保に努めている。 d 人財育成について 育成指針となる「人財育成計画」のもと、「自らを高め、未来をつくり、人を支える」、そのような人財を目指して、様々な取組みを実施している。  当社の人財育成は、自ら目標を定め、計画をたて、強い意志で自己の能力開発に努める自己啓発を前提とするものとし、社員自らの能力開発に対し、その効果を高め会社の目標と連動させるべく、会社が行う人財育成の基本方策を次の4つと定めている。ⅰ ジョブローテーション 複数の職場や異なった職務を経験することで、幅広い知識と考え方を修得させることを目的にジョブローテーションを行っている。社員のキャリアと将来的に希望する職務や、社員一人ひとりの適性を踏まえて、計画的、段階的な異動により、キャリアパスを形成している。ⅱ OJT 日常の業務を通して、上司及び先輩が、部下及び後輩に対し、職務遂行に必要な知識、技能、態度等を意識的、計画的、体系的、継続的に指導・育成していく。「目標設定」「達成度確認」の面談を実施するとともに、求める人財像に即したスキルの習得状況チェックを行っている。ⅲ 集合研修 OJTの補完と専門知識の修得、自己啓発の意欲を向上させることを目的として、教育訓練や研修を計画的に行っている。社員が修得すべきスキルのガイドラインを定め、専門知識を高めるための各分野別研修と階層別研修を年次毎に実施している。目的に合わせて集合研修とオンライン研修を使い分け、高い受講率を維持しながら効果的な研修を実施している。ⅳ 自己啓発支援 技術士、一級建築士などの公的資格の取得を奨励し、受験者を対象に補講や模試を実施し、社員のスキルアップにつながる自己啓発を支援、促進している。  なお、人事評価や業務遂行におけるコミュニケーションとして、期初に目標設定面談、半期に進捗確認面談、期末に自己評価確認面談、さらに評価結果についての面談と1年間で計4回、社員とその上司による面談を実施している。また、将来の職場配置や能力開発についての希望は、全ての社員が社内の申請システムから「キャリアプラン申告」をいつでも人事部へ直接申告することができる仕組みがある。 e ダイバーシティ企業として 当社は、性別、年齢、国籍、性自認・性的指向(LGBTQ)、障がいの有無等にかかわらず、全ての人が活き活きと働くことができる職場環境の実現に取組み、ダイバーシティ、働き方改革の推進による業績の向上を目指している。 当社は、社長を委員長として各本部長で構成する「ダイバーシティ推進委員会」を設置し、本部・支店・グループ会社よりダイバーシティ推進担当者を選任して、推進体制を構築している。また、各部門の代表者により制度・施策を検討する「働き方改革ワーキング」を設置し、全社横断型でダイバーシティ及び働き方改革を推進している。 当社のダイバーシティ推進部はそれらの運営や実効性を高める役割を担っており、人財活躍推進と働き方改革推進を統合して取り組んでいる。また、当社は女性活躍推進法に基づく第四次行動計画(2023年1月~2026年3月)を策定した。定量的な目標として①新卒採用者に占める女性割合を25%以上、②新任女性管理職比率を新任管理職の7%以上、③子の出生に伴う男性の休暇取得率70%以上の3点を掲げている。 ダイバーシティの推進により、9年間で女性管理職数は11名から78名と7.1倍、現場配属の女性技術者も14名から37名と2.6倍になった。男性の両立支援制度の利用も増加している。長時間労働は改善され、月平均時間外労働は、社員一人当たり30.0時間減少する成果を上げた。 障害者基本法で定める「障害者週間」(毎年12月3日~12月9日)の期間を拡大し、2021年度から毎年12月を当社の「障がい者月間」として制定した。「障がい者月間」では、障がい者への理解を深めようというテーマでeラーニングを実施している。また、特別支援学校生徒のインターンシップ受入れの実施、本社ビルのバリアフリー化を進め、社員通用口に自動ドアやスロープを設置し、エレベーターやトイレの改修を行った。多様な社員が安心して働くことのできる環境を整えている。 2024年4月、同性パートナーや事実婚の社員も社内制度を利用できるよう「ファミリーシップ制度」を導入した。「同性パートナー」及び「事実婚のパートナー」(以下、パートナー)に配偶者(法律上の婚姻関係にあるもの)と同等の福利厚生や規程を適用し、会社が認めたパートナーの子を社内制度上「家族」として認める。また、LGBTQ等に関するガイドラインを策定し、LGBTQ等に関する基礎知識をはじめ、SOGIハラスメントやアウティング防止、相談対応について等、わかりやすくまとめ社員に周知している。 定年再雇用については、定年退職後65歳までの雇用を前提とした制度を運用し、働く意欲のある定年退職者の雇用維持に貢献している。2024年4月現在、在籍する定年再雇用者は301名である。 f 働き方改革の推進について 当社は、これまで働き方改革として、テレワーク・時差出勤・フレックスタイムなどの制度を導入、業務プロセスの見直し・DXの推進など生産性の向上や業務の効率化に関わる施策、また意識改革に努めてきた。2023年度に策定した「働き方改革アクションプラン2023」のもと、2023年4月から建設業でも適用となる時間外労働の上限規制に1年前倒しで取り組み、一定の成果を上げた。しかし、残業の要因は個人だけでは対応できない事由も多いことから、組織(チーム)として取組みを強化する必要があることなどを踏まえ、新たに「働き方改革アクションプラン2024」を策定し取り組むこととした。土木・建築事業部門、内勤部門における組織の取組方針を加え、さらにチーム力を高めるために各本部長・各支店長や各作業所長・各部署長の取組方針を掲げた。このように組織(チーム)でアクションプランに沿った行動に取り組み、さらなる多様な働き方の促進、職場環境の整備、業務の効率化など働き方改革を推進していく。 〈働き方改革アクションプラン〉  全社員が「働き方改革アクションプラン2024」に沿った行動計画に取り組む  社長方針→土木・建築・内勤部門の取組方針→各本部・各支店の取組方針→部署・作業所の取組方針→各社員が取り組む行動計画 業務効率化・平準化に向けた取組の強化について <土木・建築事業部門>  ・週休2日(4週8閉所)を基本とした工程を発注者に提示し、適正工期を確保していく  ・内勤部門にて現場支援部署(担当者)を配置し、作業所業務の一部を支援部署で担うことにより業務の平準化を実施  ・全社的なICTツールの利用推進と活用支援の強化 <内勤部門>  ・繁忙期を見据えた適正な人員配置・業務配分により、長時間労働を未然に防ぐ  ・常に効率化を考慮しながら業務を進め、改善可能であれば変更していく 行動計画 <時間外労働の上限規制の遵守について>  ・目標設定において、各部署で上限規制の遵守につながる業務改善・工夫等を設定する <労働時間の把握について>  ・全員が自身の労働時間を確実に把握する  ・上司は部下個人とともに部署・作業所単位での労働時間の状況についても把握する  ・上限規制に抵触するおそれが生じた場合は、上司と協議して早期に改善策を立案・実行する g 従業員エンゲージメントについて 当社は、社員の会社への愛着や仕事への情熱の度合いを測るため、2023年度よりエンゲージメント調査を開始した。初年度の回答率は99%となり、多くの社員の思いを可視化することができた。調査結果を様々な切り口で分析して会社の施策に反映させ、課題の解決により社員の貢献意欲を高め、組織力の向上につなげていく。また、「中期経営計画(2024~2026年度)」において、計画期間中にエンゲージメントレーティング(注)を「BB」へ向上させる目標を設定している。 (注)株式会社リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」 h 健康経営について 当社は、社員の健康を何よりの経営資源と捉え、本社人事部内に健康推進室を設置し、全支店の産業医並びに健康推進担当者が連携して社員の健康を全面的にサポートする体制を整えている。また、社員健康推進計画を年度毎に策定し、PDCAのスパイラルアップを図った健康推進活動を行っている。 優良な健康経営を実践している法人として、経済産業省と東京証券取引所が創設した「健康経営優良法人」の認定を取得しており、今後は社員だけではなく、当社の現場作業員への健康施策も強化していく予定である。・ハイリスク者への取組み 社員の健康診断結果は全て産業医による入念なチェックが行われ、フォローが必要な社員には受診・面談の勧奨並びに継続的なサポートを行っている。また、長時間労働による脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調を防止するため、対象者への疲労蓄積度チェックと希望者への産業医面談を毎月欠かさず実施している。その他にも、海外、震災復旧現場など特殊な環境下にある職場に対しては産業保健専門職による訪問や社員面談などによる特別なフォローアップを行っている。・メンタルヘルスに関する取組み ストレスチェック、社員研修(セルフケア&ラインケア)、職場復帰支援等、一次予防から三次予防まで幅広く活動を行っている。  ③ 人権の尊重 当社グループは、全ての役職員がお互いの多様性を認め合い、事業に関わる全ての人の人権を尊重している。 当社が行動の原点としている「熊谷組行動指針(1998年4月)」を踏まえて、2023年1月に熊谷組グループ人権方針(以下、本方針)を策定した。当社グループの全ての役職員の人権を考慮するほか、ビジネスパートナー、サプライヤー及びその他の関係者に対して本方針の支持を求め、人権を尊重し、侵害しないように求めている。  熊谷組グループ人権方針(抜粋) 1.適用範囲   熊谷組グループ(熊谷組と連結子会社7社(国内6社、海外1社))を対象とし、すべての役職員に適用されます。また熊谷組グループのビジネスパートナー、サプライヤーおよびその他の関係者に対して本方針の支持を求め、人権を尊重し、侵害しないように求めます。 2.規範や法令の尊重・遵守   世界のすべての人々が享受すべき基本的人権について規定した人権に関する国際規範を支持、尊重します。また事業を行う国や地域で適用される法令を遵守し、各国や地域の法令が国際的な規範と異なる場合は、より高い基準を優先します。 3.企業活動全体を通じた人権の尊重   事業活動を通じて起こりえる人権への負の影響を防止し、人権尊重の責任を果たしていきます。 4.人権デューデリジェンスの実施   人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、これを継続的に実施します。 5.救済、是正   人権に対する負の影響を引き起こした場合は、その是正・救済に取り組みます。 6.教育、研修   すべての役職員が本方針について十分な理解を得られるよう適切な教育、研修を実施します。 7.対話、協議   事業活動が人権に及ぼす影響について関連するステークホルダーとの対話と協議を継続して行います。 8.情報開示   人権尊重の取組について、定期的な開示を行います。  人権デューデリジェンス  2023年度の取組み a 負の影響を特定   当社グループの事業領域を対象として、国際的なガイダンス「ビジネスと人権に関する指導原則」や「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」などを参考に、人権課題を認識、整理し、自社及びサプライチェーンにおける発生可能性と深刻度の指標によって評価・マッピングした。   自社については、ESG取組方針において重要課題(マテリアリティ)及び個別課題を特定したうえで、様々な取組みを進めている。サプライチェーンについては、当社事業において特にリスクの高い人権課題を優先的に取り組むべき重点課題として特定した。 b 実態の調査   2023年度は全国の協力企業(熊栄協力会)の中で関わりの深い200社へアンケート調査を実施した。事前にウェビナーを開催し、「熊谷組グループ人権方針」や取組みの趣旨を説明することでサプライチェーンにおける人権への理解促進を図った。   4つの重点課題(①過剰・不当な労働時間 ②パワーハラスメント ③賃金の不足・未払、生活資金 ④外国人労働者の権利)に加え、情報セキュリティ・労働安全衛生などの設問も追加しており、より網羅的な内容とした。重大なリスクとなりえる回答については、当該企業へヒアリングを行い、対話することで誤りや認識の違いを改めた。法令違反に該当する回答は認められなかったが、引き続き人権リスク低減のための取組みを進めていく。 c 負の影響の停止・是正   アンケート調査の対象企業には、ウェビナーにて回答結果の共有と解説を配信した。また、同配信にて人権への取組みの好事例や具体的な対応策の紹介などの教育を実施するとともに、当社グループの相談窓口の案内をした。 d 情報開示   これらの結果をもとに引き続きサプライヤーの皆様と対話を行いながら取組みを進めていく。今後は、重点課題の深堀り・調査対象の範囲などの見直しや、人権への取組みを推進するための施策の検討を行っていく。  <救済へのアクセス>  当社では、全従業員含むすべてのステークホルダーがいつでも相談・通報ができる窓口を社内外に複数設置している。また、内部通報者に対する不利益措置の禁止をすると共に、匿名による通報を許容している。  人権に関する教育  新入社員研修にて、人権についての教育として同和問題・LGBTQ・障がいのある人に対する差別・ハラスメント全般・インターネットによる人権侵害等、幅広く理解を深める機会としている。また2023年度は、有識者を招き、グループ会社含む当社職員へ「ビジネスと人権」をテーマに講演会を開催した。  ハラスメントの防止  当社グループでは、全社員に向けてeラーニングを実施している。①パワーハラスメント ②セクシュアルハラスメント ③妊娠・出産・育児休業・介護休業に関するハラスメント ④ハラスメントの対処方法 ⑤確認テストという内容で、99%以上の社員が受講している。また管理職研修においてもハラスメントの防止は必須の項目と位置付けている。  ④ ステークホルダーとの関係強化 当社は、ステークホルダーとより良好な関係を築くため、2023年4月に「マルチステークホルダー方針」を策定した。企業経営において、株主にとどまらず、従業員、取引先、顧客、債権者、地域社会をはじめとする多様なステークホルダーとの価値協創が重要になっていることを踏まえ、ステークホルダーとの適切な協働に取り組んでいく。 a お客様との関わり 当社は、1998年にCS推進室(現サステナビリティ推進部)を、翌年全支店に「お客さま相談室」を設置した。“しあわせ品質”をお届けできるように組織連携を図り、お客様からの評価の向上に努めている。当社のCS機能は、本社では経営戦略本部に置かれており、お客様の声が直接経営に反映されるよう組織設計をしている。 b 従業員との関わり 「マルチステークホルダー方針」に基づき、従業員の能力開発やスキル向上を通じて、持続的な成長と生産性向上に取り組む。具体的な取組みとして、従業員の処遇改善や階層別の集合研修、公的資格支援等を実施している。 当社では、従業員同士の親睦と福祉の増進及び会社と社員の意思の疎通を図り、会社の発展に寄与することを目的として、職員会を設置している。全社員から会社への要望事項を募り、職員会の支部代表者と社長が意見を交わす場を設けている。2023年度は社員からの要望が多かった項目である福利厚生に関して社内規程の改正へとつながった。今後も引き続き職員会を通じ社員の要望を把握し、その実現に向けて検討を進めていく。 c 株主・投資家との関わり 当社では、株主・投資家との建設的な対話に関する方針を含む「ディスクロージャー・ポリシー」を策定(2024年3月)した。持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、経営及び事業活動等に関する情報を、適時、適切かつ公平に開示するとともに、建設的な対話の実施に努める。 2023年度は、前年度に引き続き、オンラインツールを活用した国内外の株主・投資家との個別ミーティング・電話会議やスモールミーティング、決算説明会、建設現場見学会の開催や投資家カンファレンスへの参加など対話の手段の充実に努めた。また、IR専任部署を新設するなど建設的な対話を促進するための体制整備・取組みを進めるとともに、その実施状況等についてコーポレートサイト並びにコーポレートガバナンス報告書にて開示した。 2024年度に改定したESG・SDGs戦略のひとつに「機関投資家等との積極的な対話」を掲げ、業績動向、経営戦略、株主還元などのほか、環境・社会課題やガバナンスへの取組み等について積極的に意見交換を行っている。対話を通じて把握した株主・投資家の意見や要望等については、取締役会メンバーや関係部門にフィードバックし、企業価値向上に活かしている。今般の「中期経営計画(2024~2026年度)」策定に際しても、株主還元、資本政策、投資戦略などにおいて、対話によって得られた意見を一部参考に方針を検討した。 d パートナー企業・取引先との関わり 当社は、健全な事業活動を推進するために「調達方針」及び「調達方針ガイドライン」を策定している。調達活動におけるガバナンスやコンプライアンスの向上を目指し、パートナー企業、取引先とともにバリューチェーン全体の付加価値向上に取り組んでいる。 専門工事会社を中心とした施工協力業者で組織された「熊栄協力会」は当社の協力会社879社を中心に組織されている。「熊谷組と熊栄協力会会員相互が良きパートナーとして連携協力しながら、QCDSE全般にわたり活動し、良好な職場環境づくりを推進する」という方針のもと活動している。2022年度より活動目標として「SDGsの理解と推進」を掲げ、活動計画には協力会の各活動がSDGsの17のゴールのうち、どれに該当するかを表示した。また、現場の要である技能者の技能と経験に応じ適正な評価や処遇を受けられるように、「建設キャリアアップシステム」の導入を推進している。 当社及び協力会社の安全・品質の向上、業務・作業の効率化、低コスト化などを目的として、「業務改善・創意工夫提案制度」がある。業務の改善、創意工夫、アイデアの提案を当社社員、協力会社社員から広く募集し、2023年度は87件の応募があった。優秀な提案は社内表彰するとともに社内・協力会社共通のデータベースに登録し、各支店、作業所で採用され、安全、品質、環境、生産性の向上に役立っている。 e 地域社会との関わり 当社の社会貢献活動のプラットフォーム「熊谷組スマイルプロジェクト」は、マッチングギフトの仕組みを応用している。社会貢献活動に参加した社員数を集計し、年度ごとの累計人数に応じた社会貢献費を会社が拠出するものである。2023年度は全国132件の活動で1,105名の社員が参加し、2024年度の社会貢献費は1,234万円を拠出した。拠出金は、当社独自の社会貢献活動であるKUMAGAI STAR PROJECTの活動、自然災害発生時の義援金、社会課題に取り組む団体への支援などに充当している。 また、当社グループ及び熊栄協力会は、「令和6年能登半島地震」による被災地を支援するため、1,400万円を石川県に、600万円を輪島市に寄付した。 当社は、2024年度も以下の団体を支援している。・公益財団法人 日本対がん協会      ・認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ・NPO法人 子育てひろば全国連絡協議会 ・一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟 (3)リスク管理 当社は、事業活動に伴うリスクの把握・低減及び機会の最大化に努めており、重要な事項については、個別案件毎にリスク・機会を抽出・評価のうえ、経営会議・取締役会にて意思決定を行っている。各事業部門においては、業務プロセスに内在するリスク・機会を抽出・評価のうえ、必要な対応策を検討し年度計画に反映している。この取組みの状況については四半期毎にモニタリングを実施し、経営会議体にて報告している。気候変動を含む環境リスク・機会に関しては、「サステナビリティ推進委員会」における報告・議論を経て、経営会議・取締役会にて報告・審議している。 (4)指標及び目標 ① 気候変動 当社は、「(2)戦略 ① 環境保全」において記載した、気候変動リスクへの対応について、温室効果ガスの削減目標(スコープ1・2・3)を設定しており、当該目標及び実績は以下のとおりである。 熊谷組単体の温室効果ガス削減目標 基準年2020年(2019年度実績)2022年度実績2030年目標2050年目標スコープ1+27.43万t-CO25.84万t-CO22020年比 42%削減カーボンニュートラルスコープ3378.20万t-CO2294.11万t-CO22020年比 25%削減カーボンニュートラル※2023年度実績は現在算定中  ② 人的資本 当社は「(2)戦略 ② 人的資本」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いている。当該指標に関する目標及び実績は以下のとおりである。 事業における取組み・具体的行動指標3か年の目標(2024年度~2026年度)2023年度の実績新卒採用活動新卒採用者数各年度の検討119人従業員エンゲージメントの向上エンゲージメントレーティングレーティング「BB」
(注)2  -国家資格の取得支援一級土木施工管理技士保有率90%以上(各年度)
(注)2  -一級建築施工管理技士保有率2024年度→1%以上/年UP
(注)2  -一級建築士保有率2024年度→1%以上/年UP
(注)2  -ICTの標準化による現場管理の効率化新規現場導入率100%(各年度)
(注)3  -仕事とプライベートの両立等休日取得4週8休(作業所)(各年度)
(注)2  -業務の効率化・平準化への取組み時間外労働時間数30時間以下(各年度)19.7時間女性活躍推進行動計画新任管理職に占める女性の割合7%以上25.0%子の出生に伴う男性の休暇取得率70%以上75.6%現場公開による担い手確保現場・職場見学会の開催100件以上(各年度)
(注)2  -従業員の健康管理二次健康診断受診率100%(各年度)
(注)2  -
(注) 1 人的資本に関する「目標及び実績」は、当社グループ各社で会社規模や事業形態が異なるため、各社において実態に即した指標を設定している。そのため当該「指標及び目標」は単体の計数としている。2 2024年度に設定した指標のため、2023年度の実績は記載していない。3 2024年度に設定した指標の算出方法と2023年度の実績の算出方法が異なるため、2023年度の実績は記載していない。
戦略 (2)戦略 ① 環境保全 当社グループは、限りある資源が循環し、ひと・社会・自然が豊かであり続ける社会を目指して、「持続可能な社会」の実現のために「気候変動リスクへの対応」「ゼロエミッションの達成」「ネイチャーポジティブの実現」などを個別課題に挙げ、目標を定めて取り組んでいる。 当社は、2010年よりエコ・ファースト企業として、持続可能な社会の実現に向けた取組みを推進している。 当社グループとして2021年2月にRE100に加盟し、事業活動における使用電力を100%再生可能エネルギーとする取組みを進めており、温室効果ガス排出削減の中長期目標では、国際的な枠組みであるSBT認定を取得し、目標達成を目指している。情報開示では、国際的な環境非営利団体CDPより、気候変動部門において最高評価である「Aリスト」に選定され、サプライヤー・エンゲージメント評価においても、最高評価である「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」に3年連続で選定された。 2023年1月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、気候関連のリスク及び機会の特定・評価と、事業活動に与える影響についてのシナリオ分析を行い、その結果を踏まえた情報を開示した。 今後は、事業活動において重機や車両で使用する化石燃料をさらに削減し、再生可能エネルギーを積極的に導入するとともに、当社が提供する建物の大幅な省エネに寄与するZEBの普及促進、再エネ発電事業に取り組むなど、脱炭素化をさらに加速していく。   気候変動リスクへの対応 気候変動に伴う「リスク」には、GHG排出に関する規制の強化等の「移行」に起因するものと、自然災害の頻発・激甚化等の「物理的」な変化に起因するものが考えられる。一方で気候変動に伴う「機会」として、新たな市場における需要の増加等が考えられる。当社では短期(概ね3年以内)・中期(概ね3年超~10年以内)・長期(概ね10年超)の3つの時間軸から気候変動関連の「リスク」(「移行」と「物理的」に分類)と「機会」を特定した。  ② 人的資本 a 基本的な考え方 当社グループは、人財を「資本」と捉え、その能力を最大限に引き出すことが中長期的な企業価値の向上につながるという考え方に基づき、持続的な成長の源泉であり、事業活動の核となる人財への投資を拡充し、量と質の両面で人財価値の最大化を図り、企業価値の向上に寄与するための人財基盤を構築する。 b 人財戦略 2024年5月に策定した「中期経営計画(2024~2026年度)」において、60億円規模の人財投資を計画している。持続可能な人員体制を構築するための採用活動、次世代を見据え従業員のスキルアップやキャリアパスの充実を支援するための人財育成、従業員のモチベーションアップのための報酬水準の向上、従業員が安心して働くことができるための職場環境の整備などに注力し、これらの取組みを通じて、従業員の意欲や誇り、自信を促し、従業員エンゲージメントの向上、組織力の向上、そして人財価値の最大化を図る。 c 人財採用について 世代間の人員構成の不均衡を是正するとともに従業員の高齢化による離職に備えるため、当社はダイバーシティを意識した採用活動を行っている。事業環境の変化や今後の業績推移に基づいて5年後・10年後の人員数・職種構成・年齢分布を考慮した採用計画を策定し、技術力及び競争力の維持・向上を図る。新卒採用については、入社後のミスマッチを防ぐために現場見学や社員面談、若手社員との座談会などを積極的に実施し、将来を担う人財の確保に努めている。またキャリア採用については、事業戦略に基づく注力すべき分野の専門スキルを保有し、即戦力となる人財の確保に努めている。 d 人財育成について 育成指針となる「人財育成計画」のもと、「自らを高め、未来をつくり、人を支える」、そのような人財を目指して、様々な取組みを実施している。  当社の人財育成は、自ら目標を定め、計画をたて、強い意志で自己の能力開発に努める自己啓発を前提とするものとし、社員自らの能力開発に対し、その効果を高め会社の目標と連動させるべく、会社が行う人財育成の基本方策を次の4つと定めている。ⅰ ジョブローテーション 複数の職場や異なった職務を経験することで、幅広い知識と考え方を修得させることを目的にジョブローテーションを行っている。社員のキャリアと将来的に希望する職務や、社員一人ひとりの適性を踏まえて、計画的、段階的な異動により、キャリアパスを形成している。ⅱ OJT 日常の業務を通して、上司及び先輩が、部下及び後輩に対し、職務遂行に必要な知識、技能、態度等を意識的、計画的、体系的、継続的に指導・育成していく。「目標設定」「達成度確認」の面談を実施するとともに、求める人財像に即したスキルの習得状況チェックを行っている。ⅲ 集合研修 OJTの補完と専門知識の修得、自己啓発の意欲を向上させることを目的として、教育訓練や研修を計画的に行っている。社員が修得すべきスキルのガイドラインを定め、専門知識を高めるための各分野別研修と階層別研修を年次毎に実施している。目的に合わせて集合研修とオンライン研修を使い分け、高い受講率を維持しながら効果的な研修を実施している。ⅳ 自己啓発支援 技術士、一級建築士などの公的資格の取得を奨励し、受験者を対象に補講や模試を実施し、社員のスキルアップにつながる自己啓発を支援、促進している。  なお、人事評価や業務遂行におけるコミュニケーションとして、期初に目標設定面談、半期に進捗確認面談、期末に自己評価確認面談、さらに評価結果についての面談と1年間で計4回、社員とその上司による面談を実施している。また、将来の職場配置や能力開発についての希望は、全ての社員が社内の申請システムから「キャリアプラン申告」をいつでも人事部へ直接申告することができる仕組みがある。 e ダイバーシティ企業として 当社は、性別、年齢、国籍、性自認・性的指向(LGBTQ)、障がいの有無等にかかわらず、全ての人が活き活きと働くことができる職場環境の実現に取組み、ダイバーシティ、働き方改革の推進による業績の向上を目指している。 当社は、社長を委員長として各本部長で構成する「ダイバーシティ推進委員会」を設置し、本部・支店・グループ会社よりダイバーシティ推進担当者を選任して、推進体制を構築している。また、各部門の代表者により制度・施策を検討する「働き方改革ワーキング」を設置し、全社横断型でダイバーシティ及び働き方改革を推進している。 当社のダイバーシティ推進部はそれらの運営や実効性を高める役割を担っており、人財活躍推進と働き方改革推進を統合して取り組んでいる。また、当社は女性活躍推進法に基づく第四次行動計画(2023年1月~2026年3月)を策定した。定量的な目標として①新卒採用者に占める女性割合を25%以上、②新任女性管理職比率を新任管理職の7%以上、③子の出生に伴う男性の休暇取得率70%以上の3点を掲げている。 ダイバーシティの推進により、9年間で女性管理職数は11名から78名と7.1倍、現場配属の女性技術者も14名から37名と2.6倍になった。男性の両立支援制度の利用も増加している。長時間労働は改善され、月平均時間外労働は、社員一人当たり30.0時間減少する成果を上げた。 障害者基本法で定める「障害者週間」(毎年12月3日~12月9日)の期間を拡大し、2021年度から毎年12月を当社の「障がい者月間」として制定した。「障がい者月間」では、障がい者への理解を深めようというテーマでeラーニングを実施している。また、特別支援学校生徒のインターンシップ受入れの実施、本社ビルのバリアフリー化を進め、社員通用口に自動ドアやスロープを設置し、エレベーターやトイレの改修を行った。多様な社員が安心して働くことのできる環境を整えている。 2024年4月、同性パートナーや事実婚の社員も社内制度を利用できるよう「ファミリーシップ制度」を導入した。「同性パートナー」及び「事実婚のパートナー」(以下、パートナー)に配偶者(法律上の婚姻関係にあるもの)と同等の福利厚生や規程を適用し、会社が認めたパートナーの子を社内制度上「家族」として認める。また、LGBTQ等に関するガイドラインを策定し、LGBTQ等に関する基礎知識をはじめ、SOGIハラスメントやアウティング防止、相談対応について等、わかりやすくまとめ社員に周知している。 定年再雇用については、定年退職後65歳までの雇用を前提とした制度を運用し、働く意欲のある定年退職者の雇用維持に貢献している。2024年4月現在、在籍する定年再雇用者は301名である。 f 働き方改革の推進について 当社は、これまで働き方改革として、テレワーク・時差出勤・フレックスタイムなどの制度を導入、業務プロセスの見直し・DXの推進など生産性の向上や業務の効率化に関わる施策、また意識改革に努めてきた。2023年度に策定した「働き方改革アクションプラン2023」のもと、2023年4月から建設業でも適用となる時間外労働の上限規制に1年前倒しで取り組み、一定の成果を上げた。しかし、残業の要因は個人だけでは対応できない事由も多いことから、組織(チーム)として取組みを強化する必要があることなどを踏まえ、新たに「働き方改革アクションプラン2024」を策定し取り組むこととした。土木・建築事業部門、内勤部門における組織の取組方針を加え、さらにチーム力を高めるために各本部長・各支店長や各作業所長・各部署長の取組方針を掲げた。このように組織(チーム)でアクションプランに沿った行動に取り組み、さらなる多様な働き方の促進、職場環境の整備、業務の効率化など働き方改革を推進していく。 〈働き方改革アクションプラン〉  全社員が「働き方改革アクションプラン2024」に沿った行動計画に取り組む  社長方針→土木・建築・内勤部門の取組方針→各本部・各支店の取組方針→部署・作業所の取組方針→各社員が取り組む行動計画 業務効率化・平準化に向けた取組の強化について <土木・建築事業部門>  ・週休2日(4週8閉所)を基本とした工程を発注者に提示し、適正工期を確保していく  ・内勤部門にて現場支援部署(担当者)を配置し、作業所業務の一部を支援部署で担うことにより業務の平準化を実施  ・全社的なICTツールの利用推進と活用支援の強化 <内勤部門>  ・繁忙期を見据えた適正な人員配置・業務配分により、長時間労働を未然に防ぐ  ・常に効率化を考慮しながら業務を進め、改善可能であれば変更していく 行動計画 <時間外労働の上限規制の遵守について>  ・目標設定において、各部署で上限規制の遵守につながる業務改善・工夫等を設定する <労働時間の把握について>  ・全員が自身の労働時間を確実に把握する  ・上司は部下個人とともに部署・作業所単位での労働時間の状況についても把握する  ・上限規制に抵触するおそれが生じた場合は、上司と協議して早期に改善策を立案・実行する g 従業員エンゲージメントについて 当社は、社員の会社への愛着や仕事への情熱の度合いを測るため、2023年度よりエンゲージメント調査を開始した。初年度の回答率は99%となり、多くの社員の思いを可視化することができた。調査結果を様々な切り口で分析して会社の施策に反映させ、課題の解決により社員の貢献意欲を高め、組織力の向上につなげていく。また、「中期経営計画(2024~2026年度)」において、計画期間中にエンゲージメントレーティング(注)を「BB」へ向上させる目標を設定している。 (注)株式会社リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」 h 健康経営について 当社は、社員の健康を何よりの経営資源と捉え、本社人事部内に健康推進室を設置し、全支店の産業医並びに健康推進担当者が連携して社員の健康を全面的にサポートする体制を整えている。また、社員健康推進計画を年度毎に策定し、PDCAのスパイラルアップを図った健康推進活動を行っている。 優良な健康経営を実践している法人として、経済産業省と東京証券取引所が創設した「健康経営優良法人」の認定を取得しており、今後は社員だけではなく、当社の現場作業員への健康施策も強化していく予定である。・ハイリスク者への取組み 社員の健康診断結果は全て産業医による入念なチェックが行われ、フォローが必要な社員には受診・面談の勧奨並びに継続的なサポートを行っている。また、長時間労働による脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調を防止するため、対象者への疲労蓄積度チェックと希望者への産業医面談を毎月欠かさず実施している。その他にも、海外、震災復旧現場など特殊な環境下にある職場に対しては産業保健専門職による訪問や社員面談などによる特別なフォローアップを行っている。・メンタルヘルスに関する取組み ストレスチェック、社員研修(セルフケア&ラインケア)、職場復帰支援等、一次予防から三次予防まで幅広く活動を行っている。  ③ 人権の尊重 当社グループは、全ての役職員がお互いの多様性を認め合い、事業に関わる全ての人の人権を尊重している。 当社が行動の原点としている「熊谷組行動指針(1998年4月)」を踏まえて、2023年1月に熊谷組グループ人権方針(以下、本方針)を策定した。当社グループの全ての役職員の人権を考慮するほか、ビジネスパートナー、サプライヤー及びその他の関係者に対して本方針の支持を求め、人権を尊重し、侵害しないように求めている。  熊谷組グループ人権方針(抜粋) 1.適用範囲   熊谷組グループ(熊谷組と連結子会社7社(国内6社、海外1社))を対象とし、すべての役職員に適用されます。また熊谷組グループのビジネスパートナー、サプライヤーおよびその他の関係者に対して本方針の支持を求め、人権を尊重し、侵害しないように求めます。 2.規範や法令の尊重・遵守   世界のすべての人々が享受すべき基本的人権について規定した人権に関する国際規範を支持、尊重します。また事業を行う国や地域で適用される法令を遵守し、各国や地域の法令が国際的な規範と異なる場合は、より高い基準を優先します。 3.企業活動全体を通じた人権の尊重   事業活動を通じて起こりえる人権への負の影響を防止し、人権尊重の責任を果たしていきます。 4.人権デューデリジェンスの実施   人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、これを継続的に実施します。 5.救済、是正   人権に対する負の影響を引き起こした場合は、その是正・救済に取り組みます。 6.教育、研修   すべての役職員が本方針について十分な理解を得られるよう適切な教育、研修を実施します。 7.対話、協議   事業活動が人権に及ぼす影響について関連するステークホルダーとの対話と協議を継続して行います。 8.情報開示   人権尊重の取組について、定期的な開示を行います。  人権デューデリジェンス  2023年度の取組み a 負の影響を特定   当社グループの事業領域を対象として、国際的なガイダンス「ビジネスと人権に関する指導原則」や「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」などを参考に、人権課題を認識、整理し、自社及びサプライチェーンにおける発生可能性と深刻度の指標によって評価・マッピングした。   自社については、ESG取組方針において重要課題(マテリアリティ)及び個別課題を特定したうえで、様々な取組みを進めている。サプライチェーンについては、当社事業において特にリスクの高い人権課題を優先的に取り組むべき重点課題として特定した。 b 実態の調査   2023年度は全国の協力企業(熊栄協力会)の中で関わりの深い200社へアンケート調査を実施した。事前にウェビナーを開催し、「熊谷組グループ人権方針」や取組みの趣旨を説明することでサプライチェーンにおける人権への理解促進を図った。   4つの重点課題(①過剰・不当な労働時間 ②パワーハラスメント ③賃金の不足・未払、生活資金 ④外国人労働者の権利)に加え、情報セキュリティ・労働安全衛生などの設問も追加しており、より網羅的な内容とした。重大なリスクとなりえる回答については、当該企業へヒアリングを行い、対話することで誤りや認識の違いを改めた。法令違反に該当する回答は認められなかったが、引き続き人権リスク低減のための取組みを進めていく。 c 負の影響の停止・是正   アンケート調査の対象企業には、ウェビナーにて回答結果の共有と解説を配信した。また、同配信にて人権への取組みの好事例や具体的な対応策の紹介などの教育を実施するとともに、当社グループの相談窓口の案内をした。 d 情報開示   これらの結果をもとに引き続きサプライヤーの皆様と対話を行いながら取組みを進めていく。今後は、重点課題の深堀り・調査対象の範囲などの見直しや、人権への取組みを推進するための施策の検討を行っていく。  <救済へのアクセス>  当社では、全従業員含むすべてのステークホルダーがいつでも相談・通報ができる窓口を社内外に複数設置している。また、内部通報者に対する不利益措置の禁止をすると共に、匿名による通報を許容している。  人権に関する教育  新入社員研修にて、人権についての教育として同和問題・LGBTQ・障がいのある人に対する差別・ハラスメント全般・インターネットによる人権侵害等、幅広く理解を深める機会としている。また2023年度は、有識者を招き、グループ会社含む当社職員へ「ビジネスと人権」をテーマに講演会を開催した。  ハラスメントの防止  当社グループでは、全社員に向けてeラーニングを実施している。①パワーハラスメント ②セクシュアルハラスメント ③妊娠・出産・育児休業・介護休業に関するハラスメント ④ハラスメントの対処方法 ⑤確認テストという内容で、99%以上の社員が受講している。また管理職研修においてもハラスメントの防止は必須の項目と位置付けている。  ④ ステークホルダーとの関係強化 当社は、ステークホルダーとより良好な関係を築くため、2023年4月に「マルチステークホルダー方針」を策定した。企業経営において、株主にとどまらず、従業員、取引先、顧客、債権者、地域社会をはじめとする多様なステークホルダーとの価値協創が重要になっていることを踏まえ、ステークホルダーとの適切な協働に取り組んでいく。 a お客様との関わり 当社は、1998年にCS推進室(現サステナビリティ推進部)を、翌年全支店に「お客さま相談室」を設置した。“しあわせ品質”をお届けできるように組織連携を図り、お客様からの評価の向上に努めている。当社のCS機能は、本社では経営戦略本部に置かれており、お客様の声が直接経営に反映されるよう組織設計をしている。 b 従業員との関わり 「マルチステークホルダー方針」に基づき、従業員の能力開発やスキル向上を通じて、持続的な成長と生産性向上に取り組む。具体的な取組みとして、従業員の処遇改善や階層別の集合研修、公的資格支援等を実施している。 当社では、従業員同士の親睦と福祉の増進及び会社と社員の意思の疎通を図り、会社の発展に寄与することを目的として、職員会を設置している。全社員から会社への要望事項を募り、職員会の支部代表者と社長が意見を交わす場を設けている。2023年度は社員からの要望が多かった項目である福利厚生に関して社内規程の改正へとつながった。今後も引き続き職員会を通じ社員の要望を把握し、その実現に向けて検討を進めていく。 c 株主・投資家との関わり 当社では、株主・投資家との建設的な対話に関する方針を含む「ディスクロージャー・ポリシー」を策定(2024年3月)した。持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、経営及び事業活動等に関する情報を、適時、適切かつ公平に開示するとともに、建設的な対話の実施に努める。 2023年度は、前年度に引き続き、オンラインツールを活用した国内外の株主・投資家との個別ミーティング・電話会議やスモールミーティング、決算説明会、建設現場見学会の開催や投資家カンファレンスへの参加など対話の手段の充実に努めた。また、IR専任部署を新設するなど建設的な対話を促進するための体制整備・取組みを進めるとともに、その実施状況等についてコーポレートサイト並びにコーポレートガバナンス報告書にて開示した。 2024年度に改定したESG・SDGs戦略のひとつに「機関投資家等との積極的な対話」を掲げ、業績動向、経営戦略、株主還元などのほか、環境・社会課題やガバナンスへの取組み等について積極的に意見交換を行っている。対話を通じて把握した株主・投資家の意見や要望等については、取締役会メンバーや関係部門にフィードバックし、企業価値向上に活かしている。今般の「中期経営計画(2024~2026年度)」策定に際しても、株主還元、資本政策、投資戦略などにおいて、対話によって得られた意見を一部参考に方針を検討した。 d パートナー企業・取引先との関わり 当社は、健全な事業活動を推進するために「調達方針」及び「調達方針ガイドライン」を策定している。調達活動におけるガバナンスやコンプライアンスの向上を目指し、パートナー企業、取引先とともにバリューチェーン全体の付加価値向上に取り組んでいる。 専門工事会社を中心とした施工協力業者で組織された「熊栄協力会」は当社の協力会社879社を中心に組織されている。「熊谷組と熊栄協力会会員相互が良きパートナーとして連携協力しながら、QCDSE全般にわたり活動し、良好な職場環境づくりを推進する」という方針のもと活動している。2022年度より活動目標として「SDGsの理解と推進」を掲げ、活動計画には協力会の各活動がSDGsの17のゴールのうち、どれに該当するかを表示した。また、現場の要である技能者の技能と経験に応じ適正な評価や処遇を受けられるように、「建設キャリアアップシステム」の導入を推進している。 当社及び協力会社の安全・品質の向上、業務・作業の効率化、低コスト化などを目的として、「業務改善・創意工夫提案制度」がある。業務の改善、創意工夫、アイデアの提案を当社社員、協力会社社員から広く募集し、2023年度は87件の応募があった。優秀な提案は社内表彰するとともに社内・協力会社共通のデータベースに登録し、各支店、作業所で採用され、安全、品質、環境、生産性の向上に役立っている。 e 地域社会との関わり 当社の社会貢献活動のプラットフォーム「熊谷組スマイルプロジェクト」は、マッチングギフトの仕組みを応用している。社会貢献活動に参加した社員数を集計し、年度ごとの累計人数に応じた社会貢献費を会社が拠出するものである。2023年度は全国132件の活動で1,105名の社員が参加し、2024年度の社会貢献費は1,234万円を拠出した。拠出金は、当社独自の社会貢献活動であるKUMAGAI STAR PROJECTの活動、自然災害発生時の義援金、社会課題に取り組む団体への支援などに充当している。 また、当社グループ及び熊栄協力会は、「令和6年能登半島地震」による被災地を支援するため、1,400万円を石川県に、600万円を輪島市に寄付した。 当社は、2024年度も以下の団体を支援している。・公益財団法人 日本対がん協会      ・認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ・NPO法人 子育てひろば全国連絡協議会 ・一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟
指標及び目標 (4)指標及び目標 ① 気候変動 当社は、「(2)戦略 ① 環境保全」において記載した、気候変動リスクへの対応について、温室効果ガスの削減目標(スコープ1・2・3)を設定しており、当該目標及び実績は以下のとおりである。 熊谷組単体の温室効果ガス削減目標 基準年2020年(2019年度実績)2022年度実績2030年目標2050年目標スコープ1+27.43万t-CO25.84万t-CO22020年比 42%削減カーボンニュートラルスコープ3378.20万t-CO2294.11万t-CO22020年比 25%削減カーボンニュートラル※2023年度実績は現在算定中  ② 人的資本 当社は「(2)戦略 ② 人的資本」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いている。当該指標に関する目標及び実績は以下のとおりである。 事業における取組み・具体的行動指標3か年の目標(2024年度~2026年度)2023年度の実績新卒採用活動新卒採用者数各年度の検討119人従業員エンゲージメントの向上エンゲージメントレーティングレーティング「BB」
(注)2  -国家資格の取得支援一級土木施工管理技士保有率90%以上(各年度)
(注)2  -一級建築施工管理技士保有率2024年度→1%以上/年UP
(注)2  -一級建築士保有率2024年度→1%以上/年UP
(注)2  -ICTの標準化による現場管理の効率化新規現場導入率100%(各年度)
(注)3  -仕事とプライベートの両立等休日取得4週8休(作業所)(各年度)
(注)2  -業務の効率化・平準化への取組み時間外労働時間数30時間以下(各年度)19.7時間女性活躍推進行動計画新任管理職に占める女性の割合7%以上25.0%子の出生に伴う男性の休暇取得率70%以上75.6%現場公開による担い手確保現場・職場見学会の開催100件以上(各年度)
(注)2  -従業員の健康管理二次健康診断受診率100%(各年度)
(注)2  -
(注) 1 人的資本に関する「目標及び実績」は、当社グループ各社で会社規模や事業形態が異なるため、各社において実態に即した指標を設定している。そのため当該「指標及び目標」は単体の計数としている。2 2024年度に設定した指標のため、2023年度の実績は記載していない。3 2024年度に設定した指標の算出方法と2023年度の実績の算出方法が異なるため、2023年度の実績は記載していない。
人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略  ② 人的資本 a 基本的な考え方 当社グループは、人財を「資本」と捉え、その能力を最大限に引き出すことが中長期的な企業価値の向上につながるという考え方に基づき、持続的な成長の源泉であり、事業活動の核となる人財への投資を拡充し、量と質の両面で人財価値の最大化を図り、企業価値の向上に寄与するための人財基盤を構築する。 b 人財戦略 2024年5月に策定した「中期経営計画(2024~2026年度)」において、60億円規模の人財投資を計画している。持続可能な人員体制を構築するための採用活動、次世代を見据え従業員のスキルアップやキャリアパスの充実を支援するための人財育成、従業員のモチベーションアップのための報酬水準の向上、従業員が安心して働くことができるための職場環境の整備などに注力し、これらの取組みを通じて、従業員の意欲や誇り、自信を促し、従業員エンゲージメントの向上、組織力の向上、そして人財価値の最大化を図る。 c 人財採用について 世代間の人員構成の不均衡を是正するとともに従業員の高齢化による離職に備えるため、当社はダイバーシティを意識した採用活動を行っている。事業環境の変化や今後の業績推移に基づいて5年後・10年後の人員数・職種構成・年齢分布を考慮した採用計画を策定し、技術力及び競争力の維持・向上を図る。新卒採用については、入社後のミスマッチを防ぐために現場見学や社員面談、若手社員との座談会などを積極的に実施し、将来を担う人財の確保に努めている。またキャリア採用については、事業戦略に基づく注力すべき分野の専門スキルを保有し、即戦力となる人財の確保に努めている。 d 人財育成について 育成指針となる「人財育成計画」のもと、「自らを高め、未来をつくり、人を支える」、そのような人財を目指して、様々な取組みを実施している。  当社の人財育成は、自ら目標を定め、計画をたて、強い意志で自己の能力開発に努める自己啓発を前提とするものとし、社員自らの能力開発に対し、その効果を高め会社の目標と連動させるべく、会社が行う人財育成の基本方策を次の4つと定めている。ⅰ ジョブローテーション 複数の職場や異なった職務を経験することで、幅広い知識と考え方を修得させることを目的にジョブローテーションを行っている。社員のキャリアと将来的に希望する職務や、社員一人ひとりの適性を踏まえて、計画的、段階的な異動により、キャリアパスを形成している。ⅱ OJT 日常の業務を通して、上司及び先輩が、部下及び後輩に対し、職務遂行に必要な知識、技能、態度等を意識的、計画的、体系的、継続的に指導・育成していく。「目標設定」「達成度確認」の面談を実施するとともに、求める人財像に即したスキルの習得状況チェックを行っている。ⅲ 集合研修 OJTの補完と専門知識の修得、自己啓発の意欲を向上させることを目的として、教育訓練や研修を計画的に行っている。社員が修得すべきスキルのガイドラインを定め、専門知識を高めるための各分野別研修と階層別研修を年次毎に実施している。目的に合わせて集合研修とオンライン研修を使い分け、高い受講率を維持しながら効果的な研修を実施している。ⅳ 自己啓発支援 技術士、一級建築士などの公的資格の取得を奨励し、受験者を対象に補講や模試を実施し、社員のスキルアップにつながる自己啓発を支援、促進している。  なお、人事評価や業務遂行におけるコミュニケーションとして、期初に目標設定面談、半期に進捗確認面談、期末に自己評価確認面談、さらに評価結果についての面談と1年間で計4回、社員とその上司による面談を実施している。また、将来の職場配置や能力開発についての希望は、全ての社員が社内の申請システムから「キャリアプラン申告」をいつでも人事部へ直接申告することができる仕組みがある。 e ダイバーシティ企業として 当社は、性別、年齢、国籍、性自認・性的指向(LGBTQ)、障がいの有無等にかかわらず、全ての人が活き活きと働くことができる職場環境の実現に取組み、ダイバーシティ、働き方改革の推進による業績の向上を目指している。 当社は、社長を委員長として各本部長で構成する「ダイバーシティ推進委員会」を設置し、本部・支店・グループ会社よりダイバーシティ推進担当者を選任して、推進体制を構築している。また、各部門の代表者により制度・施策を検討する「働き方改革ワーキング」を設置し、全社横断型でダイバーシティ及び働き方改革を推進している。 当社のダイバーシティ推進部はそれらの運営や実効性を高める役割を担っており、人財活躍推進と働き方改革推進を統合して取り組んでいる。また、当社は女性活躍推進法に基づく第四次行動計画(2023年1月~2026年3月)を策定した。定量的な目標として①新卒採用者に占める女性割合を25%以上、②新任女性管理職比率を新任管理職の7%以上、③子の出生に伴う男性の休暇取得率70%以上の3点を掲げている。 ダイバーシティの推進により、9年間で女性管理職数は11名から78名と7.1倍、現場配属の女性技術者も14名から37名と2.6倍になった。男性の両立支援制度の利用も増加している。長時間労働は改善され、月平均時間外労働は、社員一人当たり30.0時間減少する成果を上げた。 障害者基本法で定める「障害者週間」(毎年12月3日~12月9日)の期間を拡大し、2021年度から毎年12月を当社の「障がい者月間」として制定した。「障がい者月間」では、障がい者への理解を深めようというテーマでeラーニングを実施している。また、特別支援学校生徒のインターンシップ受入れの実施、本社ビルのバリアフリー化を進め、社員通用口に自動ドアやスロープを設置し、エレベーターやトイレの改修を行った。多様な社員が安心して働くことのできる環境を整えている。 2024年4月、同性パートナーや事実婚の社員も社内制度を利用できるよう「ファミリーシップ制度」を導入した。「同性パートナー」及び「事実婚のパートナー」(以下、パートナー)に配偶者(法律上の婚姻関係にあるもの)と同等の福利厚生や規程を適用し、会社が認めたパートナーの子を社内制度上「家族」として認める。また、LGBTQ等に関するガイドラインを策定し、LGBTQ等に関する基礎知識をはじめ、SOGIハラスメントやアウティング防止、相談対応について等、わかりやすくまとめ社員に周知している。 定年再雇用については、定年退職後65歳までの雇用を前提とした制度を運用し、働く意欲のある定年退職者の雇用維持に貢献している。2024年4月現在、在籍する定年再雇用者は301名である。 f 働き方改革の推進について 当社は、これまで働き方改革として、テレワーク・時差出勤・フレックスタイムなどの制度を導入、業務プロセスの見直し・DXの推進など生産性の向上や業務の効率化に関わる施策、また意識改革に努めてきた。2023年度に策定した「働き方改革アクションプラン2023」のもと、2023年4月から建設業でも適用となる時間外労働の上限規制に1年前倒しで取り組み、一定の成果を上げた。しかし、残業の要因は個人だけでは対応できない事由も多いことから、組織(チーム)として取組みを強化する必要があることなどを踏まえ、新たに「働き方改革アクションプラン2024」を策定し取り組むこととした。土木・建築事業部門、内勤部門における組織の取組方針を加え、さらにチーム力を高めるために各本部長・各支店長や各作業所長・各部署長の取組方針を掲げた。このように組織(チーム)でアクションプランに沿った行動に取り組み、さらなる多様な働き方の促進、職場環境の整備、業務の効率化など働き方改革を推進していく。 〈働き方改革アクションプラン〉  全社員が「働き方改革アクションプラン2024」に沿った行動計画に取り組む  社長方針→土木・建築・内勤部門の取組方針→各本部・各支店の取組方針→部署・作業所の取組方針→各社員が取り組む行動計画 業務効率化・平準化に向けた取組の強化について <土木・建築事業部門>  ・週休2日(4週8閉所)を基本とした工程を発注者に提示し、適正工期を確保していく  ・内勤部門にて現場支援部署(担当者)を配置し、作業所業務の一部を支援部署で担うことにより業務の平準化を実施  ・全社的なICTツールの利用推進と活用支援の強化 <内勤部門>  ・繁忙期を見据えた適正な人員配置・業務配分により、長時間労働を未然に防ぐ  ・常に効率化を考慮しながら業務を進め、改善可能であれば変更していく 行動計画 <時間外労働の上限規制の遵守について>  ・目標設定において、各部署で上限規制の遵守につながる業務改善・工夫等を設定する <労働時間の把握について>  ・全員が自身の労働時間を確実に把握する  ・上司は部下個人とともに部署・作業所単位での労働時間の状況についても把握する  ・上限規制に抵触するおそれが生じた場合は、上司と協議して早期に改善策を立案・実行する g 従業員エンゲージメントについて 当社は、社員の会社への愛着や仕事への情熱の度合いを測るため、2023年度よりエンゲージメント調査を開始した。初年度の回答率は99%となり、多くの社員の思いを可視化することができた。調査結果を様々な切り口で分析して会社の施策に反映させ、課題の解決により社員の貢献意欲を高め、組織力の向上につなげていく。また、「中期経営計画(2024~2026年度)」において、計画期間中にエンゲージメントレーティング(注)を「BB」へ向上させる目標を設定している。 (注)株式会社リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」 h 健康経営について 当社は、社員の健康を何よりの経営資源と捉え、本社人事部内に健康推進室を設置し、全支店の産業医並びに健康推進担当者が連携して社員の健康を全面的にサポートする体制を整えている。また、社員健康推進計画を年度毎に策定し、PDCAのスパイラルアップを図った健康推進活動を行っている。 優良な健康経営を実践している法人として、経済産業省と東京証券取引所が創設した「健康経営優良法人」の認定を取得しており、今後は社員だけではなく、当社の現場作業員への健康施策も強化していく予定である。・ハイリスク者への取組み 社員の健康診断結果は全て産業医による入念なチェックが行われ、フォローが必要な社員には受診・面談の勧奨並びに継続的なサポートを行っている。また、長時間労働による脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調を防止するため、対象者への疲労蓄積度チェックと希望者への産業医面談を毎月欠かさず実施している。その他にも、海外、震災復旧現場など特殊な環境下にある職場に対しては産業保健専門職による訪問や社員面談などによる特別なフォローアップを行っている。・メンタルヘルスに関する取組み ストレスチェック、社員研修(セルフケア&ラインケア)、職場復帰支援等、一次予防から三次予防まで幅広く活動を行っている。  ③ 人権の尊重 当社グループは、全ての役職員がお互いの多様性を認め合い、事業に関わる全ての人の人権を尊重している。 当社が行動の原点としている「熊谷組行動指針(1998年4月)」を踏まえて、2023年1月に熊谷組グループ人権方針(以下、本方針)を策定した。当社グループの全ての役職員の人権を考慮するほか、ビジネスパートナー、サプライヤー及びその他の関係者に対して本方針の支持を求め、人権を尊重し、侵害しないように求めている。  熊谷組グループ人権方針(抜粋) 1.適用範囲   熊谷組グループ(熊谷組と連結子会社7社(国内6社、海外1社))を対象とし、すべての役職員に適用されます。また熊谷組グループのビジネスパートナー、サプライヤーおよびその他の関係者に対して本方針の支持を求め、人権を尊重し、侵害しないように求めます。 2.規範や法令の尊重・遵守   世界のすべての人々が享受すべき基本的人権について規定した人権に関する国際規範を支持、尊重します。また事業を行う国や地域で適用される法令を遵守し、各国や地域の法令が国際的な規範と異なる場合は、より高い基準を優先します。 3.企業活動全体を通じた人権の尊重   事業活動を通じて起こりえる人権への負の影響を防止し、人権尊重の責任を果たしていきます。 4.人権デューデリジェンスの実施   人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、これを継続的に実施します。 5.救済、是正   人権に対する負の影響を引き起こした場合は、その是正・救済に取り組みます。 6.教育、研修   すべての役職員が本方針について十分な理解を得られるよう適切な教育、研修を実施します。 7.対話、協議   事業活動が人権に及ぼす影響について関連するステークホルダーとの対話と協議を継続して行います。 8.情報開示   人権尊重の取組について、定期的な開示を行います。  人権デューデリジェンス  2023年度の取組み a 負の影響を特定   当社グループの事業領域を対象として、国際的なガイダンス「ビジネスと人権に関する指導原則」や「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」などを参考に、人権課題を認識、整理し、自社及びサプライチェーンにおける発生可能性と深刻度の指標によって評価・マッピングした。   自社については、ESG取組方針において重要課題(マテリアリティ)及び個別課題を特定したうえで、様々な取組みを進めている。サプライチェーンについては、当社事業において特にリスクの高い人権課題を優先的に取り組むべき重点課題として特定した。 b 実態の調査   2023年度は全国の協力企業(熊栄協力会)の中で関わりの深い200社へアンケート調査を実施した。事前にウェビナーを開催し、「熊谷組グループ人権方針」や取組みの趣旨を説明することでサプライチェーンにおける人権への理解促進を図った。   4つの重点課題(①過剰・不当な労働時間 ②パワーハラスメント ③賃金の不足・未払、生活資金 ④外国人労働者の権利)に加え、情報セキュリティ・労働安全衛生などの設問も追加しており、より網羅的な内容とした。重大なリスクとなりえる回答については、当該企業へヒアリングを行い、対話することで誤りや認識の違いを改めた。法令違反に該当する回答は認められなかったが、引き続き人権リスク低減のための取組みを進めていく。 c 負の影響の停止・是正   アンケート調査の対象企業には、ウェビナーにて回答結果の共有と解説を配信した。また、同配信にて人権への取組みの好事例や具体的な対応策の紹介などの教育を実施するとともに、当社グループの相談窓口の案内をした。 d 情報開示   これらの結果をもとに引き続きサプライヤーの皆様と対話を行いながら取組みを進めていく。今後は、重点課題の深堀り・調査対象の範囲などの見直しや、人権への取組みを推進するための施策の検討を行っていく。  <救済へのアクセス>  当社では、全従業員含むすべてのステークホルダーがいつでも相談・通報ができる窓口を社内外に複数設置している。また、内部通報者に対する不利益措置の禁止をすると共に、匿名による通報を許容している。  人権に関する教育  新入社員研修にて、人権についての教育として同和問題・LGBTQ・障がいのある人に対する差別・ハラスメント全般・インターネットによる人権侵害等、幅広く理解を深める機会としている。また2023年度は、有識者を招き、グループ会社含む当社職員へ「ビジネスと人権」をテーマに講演会を開催した。  ハラスメントの防止  当社グループでは、全社員に向けてeラーニングを実施している。①パワーハラスメント ②セクシュアルハラスメント ③妊娠・出産・育児休業・介護休業に関するハラスメント ④ハラスメントの対処方法 ⑤確認テストという内容で、99%以上の社員が受講している。また管理職研修においてもハラスメントの防止は必須の項目と位置付けている。  ④ ステークホルダーとの関係強化 当社は、ステークホルダーとより良好な関係を築くため、2023年4月に「マルチステークホルダー方針」を策定した。企業経営において、株主にとどまらず、従業員、取引先、顧客、債権者、地域社会をはじめとする多様なステークホルダーとの価値協創が重要になっていることを踏まえ、ステークホルダーとの適切な協働に取り組んでいく。 a お客様との関わり 当社は、1998年にCS推進室(現サステナビリティ推進部)を、翌年全支店に「お客さま相談室」を設置した。“しあわせ品質”をお届けできるように組織連携を図り、お客様からの評価の向上に努めている。当社のCS機能は、本社では経営戦略本部に置かれており、お客様の声が直接経営に反映されるよう組織設計をしている。 b 従業員との関わり 「マルチステークホルダー方針」に基づき、従業員の能力開発やスキル向上を通じて、持続的な成長と生産性向上に取り組む。具体的な取組みとして、従業員の処遇改善や階層別の集合研修、公的資格支援等を実施している。 当社では、従業員同士の親睦と福祉の増進及び会社と社員の意思の疎通を図り、会社の発展に寄与することを目的として、職員会を設置している。全社員から会社への要望事項を募り、職員会の支部代表者と社長が意見を交わす場を設けている。2023年度は社員からの要望が多かった項目である福利厚生に関して社内規程の改正へとつながった。今後も引き続き職員会を通じ社員の要望を把握し、その実現に向けて検討を進めていく。 c 株主・投資家との関わり 当社では、株主・投資家との建設的な対話に関する方針を含む「ディスクロージャー・ポリシー」を策定(2024年3月)した。持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、経営及び事業活動等に関する情報を、適時、適切かつ公平に開示するとともに、建設的な対話の実施に努める。 2023年度は、前年度に引き続き、オンラインツールを活用した国内外の株主・投資家との個別ミーティング・電話会議やスモールミーティング、決算説明会、建設現場見学会の開催や投資家カンファレンスへの参加など対話の手段の充実に努めた。また、IR専任部署を新設するなど建設的な対話を促進するための体制整備・取組みを進めるとともに、その実施状況等についてコーポレートサイト並びにコーポレートガバナンス報告書にて開示した。 2024年度に改定したESG・SDGs戦略のひとつに「機関投資家等との積極的な対話」を掲げ、業績動向、経営戦略、株主還元などのほか、環境・社会課題やガバナンスへの取組み等について積極的に意見交換を行っている。対話を通じて把握した株主・投資家の意見や要望等については、取締役会メンバーや関係部門にフィードバックし、企業価値向上に活かしている。今般の「中期経営計画(2024~2026年度)」策定に際しても、株主還元、資本政策、投資戦略などにおいて、対話によって得られた意見を一部参考に方針を検討した。 d パートナー企業・取引先との関わり 当社は、健全な事業活動を推進するために「調達方針」及び「調達方針ガイドライン」を策定している。調達活動におけるガバナンスやコンプライアンスの向上を目指し、パートナー企業、取引先とともにバリューチェーン全体の付加価値向上に取り組んでいる。 専門工事会社を中心とした施工協力業者で組織された「熊栄協力会」は当社の協力会社879社を中心に組織されている。「熊谷組と熊栄協力会会員相互が良きパートナーとして連携協力しながら、QCDSE全般にわたり活動し、良好な職場環境づくりを推進する」という方針のもと活動している。2022年度より活動目標として「SDGsの理解と推進」を掲げ、活動計画には協力会の各活動がSDGsの17のゴールのうち、どれに該当するかを表示した。また、現場の要である技能者の技能と経験に応じ適正な評価や処遇を受けられるように、「建設キャリアアップシステム」の導入を推進している。 当社及び協力会社の安全・品質の向上、業務・作業の効率化、低コスト化などを目的として、「業務改善・創意工夫提案制度」がある。業務の改善、創意工夫、アイデアの提案を当社社員、協力会社社員から広く募集し、2023年度は87件の応募があった。優秀な提案は社内表彰するとともに社内・協力会社共通のデータベースに登録し、各支店、作業所で採用され、安全、品質、環境、生産性の向上に役立っている。 e 地域社会との関わり 当社の社会貢献活動のプラットフォーム「熊谷組スマイルプロジェクト」は、マッチングギフトの仕組みを応用している。社会貢献活動に参加した社員数を集計し、年度ごとの累計人数に応じた社会貢献費を会社が拠出するものである。2023年度は全国132件の活動で1,105名の社員が参加し、2024年度の社会貢献費は1,234万円を拠出した。拠出金は、当社独自の社会貢献活動であるKUMAGAI STAR PROJECTの活動、自然災害発生時の義援金、社会課題に取り組む団体への支援などに充当している。 また、当社グループ及び熊栄協力会は、「令和6年能登半島地震」による被災地を支援するため、1,400万円を石川県に、600万円を輪島市に寄付した。 当社は、2024年度も以下の団体を支援している。・公益財団法人 日本対がん協会      ・認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ・NPO法人 子育てひろば全国連絡協議会 ・一般社団法人 日本障がい者サッカー連盟
人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標  ② 人的資本 当社は「(2)戦略 ② 人的資本」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いている。当該指標に関する目標及び実績は以下のとおりである。 事業における取組み・具体的行動指標3か年の目標(2024年度~2026年度)2023年度の実績新卒採用活動新卒採用者数各年度の検討119人従業員エンゲージメントの向上エンゲージメントレーティングレーティング「BB」
(注)2  -国家資格の取得支援一級土木施工管理技士保有率90%以上(各年度)
(注)2  -一級建築施工管理技士保有率2024年度→1%以上/年UP
(注)2  -一級建築士保有率2024年度→1%以上/年UP
(注)2  -ICTの標準化による現場管理の効率化新規現場導入率100%(各年度)
(注)3  -仕事とプライベートの両立等休日取得4週8休(作業所)(各年度)
(注)2  -業務の効率化・平準化への取組み時間外労働時間数30時間以下(各年度)19.7時間女性活躍推進行動計画新任管理職に占める女性の割合7%以上25.0%子の出生に伴う男性の休暇取得率70%以上75.6%現場公開による担い手確保現場・職場見学会の開催100件以上(各年度)
(注)2  -従業員の健康管理二次健康診断受診率100%(各年度)
(注)2  -
(注) 1 人的資本に関する「目標及び実績」は、当社グループ各社で会社規模や事業形態が異なるため、各社において実態に即した指標を設定している。そのため当該「指標及び目標」は単体の計数としている。2 2024年度に設定した指標のため、2023年度の実績は記載していない。3 2024年度に設定した指標の算出方法と2023年度の実績の算出方法が異なるため、2023年度の実績は記載していない。
事業等のリスク 3【事業等のリスク】
 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりである。ただし、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、現時点では重要性が高くないと判断したリスクもあり、予見し難いリスクも存在し得る。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。(1) 建設投資の動向 当社グループの建設事業は、官公庁及び民間企業が主な顧客であるが、官公庁は財政状況や施策等、民間企業は経済環境や消費動向等により中長期的に建設投資の動向が変動する。我が国の建設投資は2011年度以降、増加傾向で推移しているが、縮小に向かった場合は、状況により競合他社との受注競争が激化し、受注高が減少するほか工事採算が低下する可能性がある。 当社グループは、建設市場の質的・量的変化に柔軟に対応できる企業体質を確立すべく、長期構想“2030年以降を見据えた経営方針”を定めるとともに、本方針に基づき策定した中期経営計画における各種施策に取り組んでいる。なお、長期構想及び中期経営計画については、「第2 事業の状況」の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりである。
(2) 建設資材市況及び労務単価の変動 建設工事請負契約にあたり、建設資材及び労務単価等について適正価格での契約に努めているが、契約締結後に建設資材市況や労務単価が高騰する場合がある。当該コスト増加分について、公共工事においては契約条項により一定の工事代金の変更を請求できるが、民間工事においては発注者との協議となり、状況によりコスト増加に見合う工事代金の追加を獲得できない可能性がある。このため市況等の上昇局面では、予め単価上昇を織り込んで工事価格を見積もることや資材の調達を早期に行うなどの対応が必要となる。 (3) 建設技能労働者の不足 建設業界における技能労働者は、高齢化が進むとともに若年層の入職率・定着率が伸びず、減少傾向にある。中長期的に高齢者の大量離職が見込まれるなか、技術継承へ向けた将来の担い手の確保・育成が喫緊の課題となっている。今後、技能労働者の減少がさらに進んだ場合、他社との人財獲得競争が激化し労務費が高騰するとともに、人員を確保できないことに伴う施工能力の縮小により、受注高が減少する可能性がある。 当社グループは、専門工事会社を中心とした施工協力業者で組織された「熊栄協力会」と連携し、安定した施工体制を確立するとともに、技能労働者不足の解消及び優秀な人財の確保に向けた取組みを行っている。現在の建設業界の命題である「技能労働者給与水準の全産業労働者平均までの向上」を目指した労務単価の引上げを軸に、手当の支給を含む優良技能労務者認定制度の運用、能力や経験に応じた処遇を受けられる環境を整備するための建設キャリアアップシステムの導入などを進めているほか、施工現場における完全週休二日への移行といった処遇改善施策を推進している。 (4) 人財の確保 建設業界では、建設投資が増加基調となっている一方で、建設技術者の減少が課題となっており、当社グループにおいても、収益及び品質の向上のために優れた人財の確保と育成が急務であると認識している。その対応として、新卒者に加え施工管理経験がある人財の中途採用をジョブ・リターン制度の整備等により拡大するとともに、ダイバーシティ推進の取組みもあり、高齢者、女性及び外国人等を積極的に活用している。 また、建設工事の入札や施工管理においては、担当技術者に工種毎の施工経験や特定資格の保有を求められることがあり、適任者が不足した場合は受注機会を逸し、受注高の減少につながる可能性がある。すでに一部の工種についてその発注時期によっては担当者を確保出来ず、入札参加を断念するケースも発生している。このため将来的な案件を見据え、技術者に計画的に多様な施工経験を積ませているほか、分野別や階層別に社内研修を実施し、専門知識を修得させている。また、技術士や一級建築士等の公的資格について受験者を対象に社内講習や模試を実施するなど資格取得の支援、促進に努めている。 (5) 海外における事業展開 当社グループの海外事業は、現在アジア諸国において建設事業を中心に展開している。海外における事業は、進出国において政治、経済、社会情勢の著しい混乱が生じた場合や法規制が強化された場合等は、事業が遅延する又は遂行不能に陥る可能性がある。また、未成熟な法制度、社会制度、文化や商慣習の違い等により正当な工事代金の請求及び回収が困難となる場合や想定外のコストを負担するリスクが内在している。このため、当社グループは、各々の情勢等に精通した国・地域にのみ進出することとし、当社が請け負う建設工事については、原則として我が国ODA(政府開発援助)や日系企業による事業に限定している。 なお、海外事業においては、事業拠点の現地通貨や米ドル等による外貨建取引のほか、外貨建の資産、負債、収益、費用を一定の基準により円換算する。現在の当社グループの海外事業の規模では為替レートの変動による影響は小さいが、取引の収入と支出の通貨構成や入出金のタイミングを概ね一致させること、又は為替予約取引等を行うことにより為替リスクを軽減している。 (6) 建設事業における自然条件及び自然災害の影響 工事施工において、地質や地盤、天候等の自然条件に特殊性がある場合、事前にそれを把握できなかったことにより工法の変更や手戻りなどが生じ工事コストが増加する可能性がある。また、事業の特性として施工現場が地震や台風・豪雨等の自然災害に見舞われた場合、工事が中断するほか復旧に多大なコストと時間を要するなど著しい損害を被るおそれがある。 当社グループは、事前調査、工法検討等を徹底し、自然条件面における予期せぬ事象等により工事の採算が低下しないよう努めるとともに、自然災害に対しては、各種保険に加入するなど損失を極小化するよう対策を講じている。 (7) パンデミック 感染症が世界的に大流行した場合、工事中断や資機材の納入が滞ること等に伴う工程遅延や感染症対策に係るコストの発生などにより採算が低下することが見込まれ、また、民間企業を中心に設備投資が停滞することにより受注高が減少する可能性がある。 (8) 工事の施工不良 工事施工にあたっては、建設物の仕様や施工条件が多岐にわたり、また、想定を超えて外的要素から影響を受けることがある。このような状況のもと、施工不良の発生可能性を完全に排除することは困難であるため、是正費用に充てるべく一定金額を引当計上している。しかし、万が一、施工した建設物に重大な施工不良があった場合、引当額を上回る多大な修復費用や損害賠償責任が生じる可能性がある。また、当社グループの社会的信用が低下し、受注高の減少につながるおそれがある。 当社グループは、建設物の設計・施工にあたり、品質マネジメントシステムの適切な運用及び継続的な改善により、高品質な製品・サービスの提供に努めている。 (9) 建設事業における労働災害及び事故 建設事業は、作業内容や作業環境などの特性により、他の産業と比較して重篤度の高い労働災害が発生するおそれがあり、また、第三者に対し損害を与える事故が発生する可能性が高い。万が一、重大な労働災害もしくは事故が発生した場合、多大な補償費等の負担が生じるとともに、社会的信用が低下し、関係諸官庁等の工事入札において指名停止になるなど、受注高の減少につながる可能性がある。 当社グループは、労働災害及び事故への対策を最優先課題と位置付け、安全教育の実施、日常的な安全点検、施工部門と安全部門との連携強化、入念な施工計画の策定といった安全衛生マネジメントシステムの厳格な運用により労働災害及び事故の撲滅に努めている。 (10) 固定資産及び投資有価証券の減損 当社グループは、都市再生・再開発事業といった新事業創出への取組みの一環として不動産の取得を進めているが、経営環境の著しい悪化などにより保有資産の収益性が低下又は市場価格が下落した場合、固定資産の減損損失が発生するおそれがある。また、収益機会の獲得や関係強化を図るため顧客や提携先等の有価証券を保有しているが、投資先の業績が悪化又は市場価格が下落した場合も同様に減損損失が発生する可能性がある。 当社は、各種資産の評価方法と投融資活動に係るリスクを定量的に管理するための投融資基準を定め、財政的影響が大きい案件については、経営会議及び取締役会において経営指標の見通しや財務規律の維持の観点を踏まえて取得の検討を行っている。取得後は、採算性検証のためのモニタリングによって採算悪化が見込まれ、将来的な収益率等が目標とする基準値を上回る可能性が極めて低いと判断された場合、また有価証券については、保有が当社グループの事業遂行上有用ではないと判断された場合は売却等を検討するなど、損失の最小化に努めている。 (11) 顧客及び取引先の信用 建設事業において、工事着工後に発注者が信用不安や経営破綻などに陥った場合、売掛金や受取手形などの債権が回収不能となるおそれがある。また、施工協力業者等の取引先が同様な状況となった場合、工程が遅延し工事コストが増加する可能性がある。 当社グループは、顧客の信用については、会議体及び専門部署により、顧客の与信判定、契約内容の審査、債権保全方法の検討等を実施している。また、債権管理規程、工事契約締結に向けた与信限度額設定基準等の社内規程を整備し、与信管理の徹底に努めている。取引先の信用については、新規に取引を開始する場合、直近の財務諸表をもとに審査を実施している。また、取引高が一定の規模以上の施工協力業者に対しては、財務面の評価に加え、ヒアリング等による経営全般の評価を年1回実施している。 (12) コンプライアンス違反 建設事業の運営に際しては、建設業法、独占禁止法等、様々な法律により規制を受けている。これらの法的規制に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令等による刑事罰、行政処分、損害賠償責任等が課せられるほか、顧客、株主、取引先等の会社を取り巻くステークホルダーからの信用失墜につながる。 当社グループではこれらのリスクを払拭するため、「行動指針」「コンプライアンス行動ルール」をはじめとする各種規程を定め、内部機能を中心にコンプライアンス体制を構築するとともに、経営から独立した組織として「法遵守監査委員会」を設け、外部有識者による評価・勧告体制を執っている。また、このほかコンプライアンス研修等の教育を通じ、全役職員に対するコンプライアンス意識の向上、周知徹底を図っている。 (13) 環境問題 世界的な人口増加と産業活動の急拡大によって生じる資源の枯渇や地球温暖化等の環境問題は、世界共通の解決すべき社会課題として認識されている。社会資本の整備を担う建設業においては、工事施工時等に排出されるCO2をはじめ建設廃棄物や建設発生土などによる環境への負荷を社会的責務として積極的に削減する必要があり、そのためには継続的に一定の対策費用が発生する。また、工事施工にあたっては様々な環境関連法令等の規制を受けているが、土壌汚染や水質汚染等の環境事故が発生した場合は、復旧費用や損害賠償金、補償金等の負担が生じるほか、当社グループの社会的信用が低下し、受注高の減少につながるおそれがある。 当社では、環境マネジメントシステムの適切な運用及び継続的な改善により、環境負荷の低減及びより良い環境の創出を図っている。また、「エコファーストの約束」においてCO2排出量の削減や、工事現場における混合廃棄物排出量の削減、グリーン購入対象資機材の購入など低炭素社会の構築や循環型社会の形成を推進するとともに、環境基準遵守のもと、環境事故の防止に努めている。
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。① 財政状態及び経営成績の状況  当連結会計年度における我が国経済は、世界的な金融引締めの動きにより不透明感が残ったが、経済活動が正常化に向かい、雇用・所得環境も改善する中で、設備投資や個人消費にも持ち直しの動きがみられるなど、景気は緩やかに回復が進んだ。  建設業界においては、建設コストの上昇の影響を受け住宅投資は弱含んでおり、民間企業の建設投資にも伸び悩みがみられたものの、公共投資は関連予算の執行により堅調に推移し、総じて受注環境は底堅く推移した。しかし、資材費や労務費の上昇もあり、採算面では一部に厳しさが残った。  このような経営環境のもと、当社グループは2021年5月に策定した①建設請負事業の深化、②建設周辺事業の進化、③新たな事業領域の開拓、④経営基盤の強化を基本方針とする『熊谷組グループ 中期経営計画(2021~2023年度)~持続的成長への弛まぬ挑戦~』にグループ一丸となって取り組み、持続的成長への挑戦を続けてきた。なお、2021年11月に、株主還元の拡充並びに資本効率の向上を図るため中期経営計画期間(2021~2023年度)に総額100億円規模の自己株式を取得する方針を決定しており、当該方針に基づき、最終年度となる当連結会計年度も約20億円の自己株式の取得を実施した。これにより、当連結会計年度における総還元性向は91.6%となる見通しである。  この結果、当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。a 財政状態・資産 総資産は、前連結会計年度末に比べ905億円(24.0%)増加し、4,672億円となった。 流動資産は、前連結会計年度末に比べ711億円(23.9%)増加し、3,694億円となった。手持ちの大型工事における受取手形・完成工事未収入金等の増加に加え、コマーシャル・ペーパーの発行等により、現金預金が290億円増加している。 固定資産は、前連結会計年度末に比べ193億円(24.7%)増加し、977億円となった。保有株式の時価上昇や米国における不動産開発事業への投資等により、投資有価証券が144億円増加している。・負債 負債は、前連結会計年度末に比べ804億円(38.9%)増加し、2,872億円となった。 流動負債は、前連結会計年度末に比べ725億円(42.4%)増加し、2,434億円となった。支払手形・工事未払金等の仕入債務が171億円、コマーシャル・ペーパーが149億円増加している。 固定負債は、前連結会計年度末に比べ78億円(22.0%)増加し、437億円となった。長期借入金が81億円増加している。・純資産 純資産は、前連結会計年度末に比べ101億円(6.0%)増加し、1,800億円となった。その他有価証券評価差額金が89億円増加し、また、利益剰余金は、剰余金の配当により56億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益83億円の計上により26億円増加している。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ6.6ポイント低下し、38.5%となった。 b 経営成績・売上高(完成工事高) 売上高は、手持ち工事の順調な消化により、前連結会計年度に比べ396億円(9.8%)増加し、4,431億円となった。 なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。・売上総利益(完成工事総利益) 売上総利益は、売上高の増加並びに土木事業及び子会社の売上総利益率(完成工事総利益率)の改善により、前連結会計年度に比べ28億円(8.6%)増加し、360億円となった。・販売費及び一般管理費 販売費及び一般管理費は、処遇改善、人員の増加や新規システム導入に伴う費用の増加等により、前連結会計年度に比べ17億円(7.8%)増加し、234億円となった。・営業利益 営業利益は、売上総利益の増加により、前連結会計年度に比べ11億円(10.2%)増加し、126億円となった。・営業外損益 営業外収益は、受取利息の増加等により、前連結会計年度に比べ2千万円増加し、13億円となった。 営業外費用は、有利子負債の増加に伴う支払利息の増加等により、前連結会計年度に比べ3億円増加し、9億円となった。・経常利益 これにより、経常利益は、前連結会計年度に比べ8億円(6.6%)増加し、130億円となった。・特別損益 特別利益は、受取損害賠償金6千万円など合計7千万円を計上した。 特別損失は、損害賠償金3億円や子会社創立周年記念関連費用7千万円など合計5億円を計上した。・法人税等 法人税、住民税及び事業税48億円、将来減算一時差異の増加等により法人税等調整額6億円のマイナスを計上した。・親会社株主に帰属する当期純利益 以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ3億円(4.3%)増加し、83億円となった。 セグメントごとの経営成績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。a 土木事業受注高は、前連結会計年度比5.1%増の1,064億円であった。売上高は、同11.3%増の1,001億円、営業利益は、同150.5%増の44億円となった。 b 建築事業受注高は、前連結会計年度比8.8%増の2,691億円であった。売上高は、同8.8%増の2,277億円、営業利益は、同66.0%減の21億円となった。 c 子会社 売上高は、前連結会計年度比9.5%増の1,252億円、営業利益は、同76.3%増の59億円となった。 なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。 ② キャッシュ・フローの状況  営業活動によるキャッシュ・フローは、169億円のプラス(前連結会計年度は188億円のマイナス)となった。 投資活動によるキャッシュ・フローは、107億円のマイナス(前連結会計年度は84億円のマイナス)となった。 財務活動によるキャッシュ・フローは、223億円のプラス(前連結会計年度は4億円のプラス)となった。 為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ290億円(71.0%)増加し、700億円となった。③ 生産、受注及び販売の実績  当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の実績については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。   なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高期別区分前期繰越工事高(百万円)当期受注工事高(百万円)計(百万円)当期完成工事高(百万円)次期繰越工事高(百万円)第86期 (自 2022年4月1日至 2023年3月31日)土木工事183,772101,273285,04689,936(195,109)195,109建築工事301,684247,373549,058209,381(339,677)339,733計485,457348,647834,104299,317(534,786)534,842第87期 (自 2023年4月1日至 2024年3月31日)土木工事195,109106,425301,534100,128(201,406)201,270建築工事339,733269,163608,896227,799(381,097)381,142計534,842375,589910,431327,927(582,503)582,413
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき海外工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。 b 受注工事高の受注方法別比率 工事の受注方法は、特命と競争に大別される。期別区分特命(%)競争(%)計(%)第86期(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)土木工事18.281.8100建築工事28.471.6100第87期(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)土木工事18.481.6100建築工事12.787.3100
(注) 百分比は請負金額比である。 c 完成工事高期別区分官公庁(百万円)民間(百万円)合計(百万円)第86期(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)土木工事41,50248,43489,936建築工事19,010190,370209,381計60,512238,805299,317第87期(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)土木工事55,42644,702100,128建築工事28,159199,639227,799計83,586244,341327,927
(注) 1 完成工事のうち主なものは次のとおりである。第86期西日本高速道路株式会社新名神高速道路 原萩谷トンネル西工事独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構北陸新幹線、芦原温泉駅高架橋他株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス ・ 日下部洋子 ・ 株式会社サン・エトワール ・ 星野浩一 他(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画 新築工事医療法人徳洲会湘南鎌倉総合病院外傷・救命救急センター先端医療センター増築工事日本電産株式会社(現 ニデック株式会社)日本電産株式会社 向日町プロジェクトC棟建築工事(仮称)第87期環境省平成29年度中間貯蔵(大熊3工区)土壌貯蔵施設等工事北大阪急行電鉄株式会社北大阪急行線の延伸事業のうち土木工事三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-3街区)日鉄興和不動産株式会社、三菱地所レジデンス株式会社(仮称)羽沢横浜国大駅前A地区 開発計画学校法人 東京女子学園(仮称)東京女子学園中学校・高等学校建替え計画2 第86期及び第87期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。d 次期繰越工事高(2024年3月31日現在)区分官公庁(百万円)民間(百万円)合計(百万円)土木工事87,759113,511201,270建築工事55,925325,217381,142計143,684438,729582,413
(注) 次期繰越工事のうち主なものは次のとおりである。東日本高速道路株式会社東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)大泉南工事中日本高速道路株式会社東名高速道路(特定更新等)酒匂川橋他2橋床版取替工事三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-4街区)西新宿五丁目中央南地区市街地再開発組合西新宿五丁目中央南地区第一種市街地再開発事業施設建築物等新築工事アパホーム株式会社・アパマンション株式会社(仮称)アパホテル&リゾート〈大阪難波駅タワー〉新築工事
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容a 経営成績の分析 当社グループの売上高については、期首繰越工事高の増加や追加設計変更の獲得等により前連結会計年度実績、期首計画値をともに上回った。 利益については、売上高の増加や土木事業並びに子会社の利益率改善があった一方で、建築事業は建設コスト上昇等により利益率が低下し、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度実績を上回ったものの、期首計画値を下回る結果となった。 自己資本比率は、工事大型化の影響により、資金需要に対する有利子負債、仕入債務及び前受金等が増加したため、38.5%と前連結会計年度と比べ6.6ポイント低下した。ROEは、親会社株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度を上回ったものの、保有する上場株式の時価上昇により自己資本が増加したため、前連結会計年度と同水準の4.8%となった。 受注高は、建築事業の民間分野が好調で受注を伸ばしたことなどにより前連結会計年度実績、期首計画値をともに上回った。 b セグメントごとの経営成績の分析・土木事業 受注高は、民間分野における大型風力発電案件や海外における大型ODA案件の受注などにより、前連結会計年度比5.1%増の1,064億円となった。 売上高は、期首繰越工事高の増加や東京外環道など中断工事の再開、追加設計変更の獲得などにより、同11.3%増の1,001億円となった。営業利益は、売上高の増加に加え、追加設計変更獲得などにより利益率が改善したため、同150.5%増の44億円となった。・建築事業 受注高は、住宅分野における複数の大型再開発案件や店舗分野における大型商業施設案件の受注などにより、同8.8%増の2,691億円となった。 売上高は、期首繰越工事高及び受注高の増加により、同8.8%増の2,277億円となった。営業利益は、複数の大型工事において想定以上の物価上昇により採算が悪化した影響などにより、同66.0%減の21億円となった。・子会社 売上高は、ケーアンドイー株式会社における期首繰越工事高及び受注高の増加や華熊営造股份有限公司における大型工事の進捗などにより、同9.5%増の1,252億円となった。営業利益は、各社において利益率の改善が進んだことなどにより、同76.3%増の59億円となった。 c 中期経営計画の達成状況 『熊谷組グループ 中期経営計画(2021~2023年度)~持続的成長への弛まぬ挑戦~』で掲げた指標の計画値及び経営戦略に対する達成状況は次のとおりである。指標2023年度(計画値)2023年度(実績値)差異連結売上高   (百万円)470,000443,193△26,806連結経常利益  (百万円)33,00013,040△19,959ROE      (%)12.04.8△7.2配当性向     (%)30.067.637.6  事業戦略①:建設請負事業の深化■国内土木事業 「インフラ大更新分野」では、コッター床版工法による施工実績が12橋と着実に増加しており、現在「酒匂川橋床版取替工事」で2橋が施工中となる。大規模更新・修繕事業は事業箇所の追加が発表され、橋梁リニューアル工事では、設計コンサルタント、鋼橋の設計施工会社等との連携強化により関係性を深めると共に、設計人員を増員して体制を強化している。また、グループ各社と連携しコッター床版工法を核とした周辺技術のパッケージ化を計画している。2024年2月にはコッター式継手の販売数が累計10,000組を超え、今後もコッター床版共同事業体(当社、株式会社ガイアート、オリエンタル白石株式会社、ジオスター株式会社)による他社への継手販売を強化し収益の拡大を図る。 「防災・減災、国土強靭化分野」では、平成28年熊本地震後の防災対策工事への導入効果が高く評価された「無人化施工技術」を高めるため、継続して研究開発を進めているほか、AI、自動化技術やVR技術を取り入れ、Society5.0に対応した取り組みを進めており、安全性や生産性の向上に寄与した技術の実現を目指す。2022年3月にローカル5Gを技術研究所に導入し、その高速性と低遅延性を活かして建機と操作室間の映像伝送の高度化を進めている。また、元施工ダム数の優位性を活かすべく、「国土強靭化」「インフラ長寿命化(ダム再生)」案件受注のためのリニューアル工事に関する技術開発に注力している。■国内建築事業 「中大規模木造建築分野」では、2021年3月、「環境と健康をともにかなえる建築」をコンセプトとして、住友林業株式会社と立ち上げた中大規模木造建築ブランド「with TREE」で、中大規模建築の木造化・木質化を推進している。住友林業との協業案件として木造ハイブリッド事務所となる「KAGAプロジェクト新築工事」及び「H1O芝公園」の2案件が当連結会計年度で完成。「H1O芝公園」はウッドデザイン賞を受賞している。また、「愛媛県庁舎第二別館」や「八千代みどりが丘小学校」など両社の強みを活かした協業案件を受注した。2023年5月の非住宅木造フェアでは2022年度に引き続き住友林業と共同で、国立大学法人東京大学稲山教授と共同開発した「木質耐震垂れ壁工法」や住友林業と共同開発した「KS木質座屈拘束ブレース」(ウッドデザイン賞を受賞)を展示し、2023年度における中大規模木造建築の採用をアピールした。脱炭素社会の実現に向けた木材資材の活用や木造建築物の普及に対する社会的期待は年々高まっており協業で積み上げてきた知見や提案力及び木造建築に関する住友林業のブランド力を活かしさらなる受注拡大を目指す。 「市街地再開発分野」では、すでに着工している「いわき駅前並木通り地区」と「西新宿五丁目中央南地区」の2地区に加え、「三田駅前Cブロック地区」も特定業務代行者として選定され、解体工事に着手している。2022年度に建設系事業協力者として参画した「赤羽一丁目第一地区」については、再開発組合が設立され、参加組合員とともに事業を推進している。■海外建設事業 「アジア地域の都市インフラ整備分野」では、日本国政府が推進している「質の高いインフラシステム海外展開」の施策に沿って、当社の強みとする技術(推進工法、シールド工法、トンネル工法)を発揮できる「鉄道分野」「上下水道分野」を主なターゲットとして、東アジア、東南アジアを中心に受注活動を進め、2023年7月に約15年ぶりとなる大型土木工事ジャカルタ下水道整備事業を受注し、10月に着工した。 「台湾における圧倒的な地位の確立」では、台湾現地法人である華熊営造股份有限公司は、「TAIPEI 101」「陶朱隠園」などのランドマーク的な大型物件の施工によって高めたブランド力により、数多くの大型案件を受注し飛躍的に業績を伸ばしてきた。2023年6月には台北で新たなランドマークとなる「台北雙子星大楼(台北ツインタワーC1.D1)新築工事」を受注した。  事業戦略②:建設周辺事業の進化■再生可能エネルギー事業 「住友林業との協業を含む木質バイオマス発電事業」では、福島県飯舘村において木質バイオマス発電事業を進めており、2024年7月に運転を開始する予定。 「風力・太陽光発電事業」では、当社で最初の売電事業となる静岡県浜松市での太陽光発電事業、2021年2月に参入したベトナムの太陽光発電事業「CatHiep メガソーラー事業」がそれぞれ順調に稼働して当社の収益に貢献しているほか、今後も拡大が期待されるベトナムでの太陽光発電や風力発電等、再生可能エネルギー事業を積極的に推進していく。 ■不動産開発事業 「都市再生・まちづくり事業」では、飯田橋駅東口再開発事業について、東京都は2020年9月に「飯田橋駅周辺基盤再整備構想」を策定し、新宿区も2022年1月に都市計画を決定。2023年度は「飯田橋駅周辺基盤整備方針」が策定され再開発の機運が高まっている。事業協力者として参画している「下宮比町地区」では「下宮比町地区市街地再開発準備組合」が設立され「揚場町地区」では協議会設立を目指した準備活動を進めており権利者への個別説明を始めている。 「住友林業との協業を含む不動産開発事業」では、住友林業との協業にて、2020年1月に事業参画したインドネシア・ジャカルタの高層コンドミニアム及び商業複合施設開発事業に取り組んでいる。2022年2月に住友林業と同社100%子会社の米クレセント社が運用を開始した米国不動産私募ファンドに参画し、成長著しい米国の都市圏でLEED等の環境認証を取得するESG配慮型の賃貸集合住宅4件(総戸数約1,000戸、資産規模約700億円、運用期間5年)を開発している。また、米テキサス州ダラス近郊にて木造7階建てのESG配慮型オフィス開発に参画している。当社と住友林業、NTT都市開発株式会社は、現地大手不動産開発会社Kim Oanh Groupとの協業により、ベトナム・ビンズン省トゥアンアン市でのタウンシップ開発に参画が決定した。本プロジェクトは、約41haの敷地での低層分譲住宅約1,200戸、高層分譲住宅約5,500戸の大規模タウンシップ開発であり、総事業費は約1,400億円、2034年までに全区画完成を予定している。住友林業、当社、NTT都市開発の日本企業3社とKim Oanh Groupが共同で開発し、近隣の工業団地に勤める管理職層だけでなく、ホーチミン市への通勤者等の実需層の住宅需要を取り込んでいく。これら住友林業との協業を通じて、海外事業での中長期的な収益拡大を目指す。また、将来において再開発区域となることが見込まれる国内の優良な収益物件を購入したほか、台湾で不動産開発を担当する現地法人(華熊建設股份有限公司)が現地デベロッパーとの連携による老朽化住宅の建替えの提案活動等を行っている。■インフラ運営事業 「PPP・コンセッション事業」では、2021年10月に「福井市新学校給食センター整備運営事業」、「周南地区衛生施設組合新斎場整備運営事業」、2022年10月に「八王子駅南口集いの拠点整備・運営事業」、2024年2月に「新岡山学校給食センター(仮称)整備運営事業」をそれぞれ当社が所属する企業グループが落札した。引き続き、国内では当社が得意とする給食センターや庁舎、体育館などのPFI事業に参画することを目指していく。また、香港におけるインフラPPPであるMOM事業(有料道路の管理・運営・保守事業)については、2023年8月より香港で4件目となる香港西部海底トンネルのMOM事業を開始した。受託済みの案件(イースタン・ハーバー・クロッシング、テーツケントンネル、セントラルワンチャイバイパス)も併せた管理効率を考慮した受注活動を継続し、利益を確保していく。■技術商品販売事業 「バイオマス燃料開発・販売事業」では、清本鐵工株式会社とともに、高品質なバイオマス燃料「ブラックバークペレット」を共同開発した。廃棄物であるバーク材(木の皮)を原料として、林業の活性化、石炭火力発電の混焼材としてカーボンニュートラルへの貢献を目指す。2023年5月にブラックバークペレットの製造・販売事業会社「ローカルエナジーシステム株式会社」を設立した。現在愛媛県に生産設備を建設中であり、国産地域材を原料とする環境にやさしい地産地消のエネルギー循環システムの構築を目指している。  事業戦略③:新たな事業領域の開拓 2021年12月、「新事業創出プロジェクト」を立ち上げ、事業化に向け複数の案件を選定し、そのうち「藻類を核としたスマート一次産業」(藻類培養×アクアポニックス事業)に関する設備投資・実証実験を開始した。当社開発の独自株を用いた「微細藻類培養」と、陸上養殖・水耕栽培を掛け合わせた完全循環型システム「アクアポニックス」を組み合わせ、持続可能な環境保全型ハイブリッド農業の実現を目指している。佐賀市にアクアポニックスラボを新設し、実証実験を開始。本ラボは事業化に向けた実証実験等を行う研究施設となり、当社と佐賀市、国立大学法人佐賀大学、一般財団法人さが藻類バイオマス協議会、地元企業、自治会など、産学官連携による実用化や産業化を目指している。  経営基盤の強化■デジタル化 基幹システムの刷新により業務プロセスの統合化・効率化・自動化を進め、社内各部門及び取引先が精度の高いデータをタイムリーに共有できる仕組みを構築している。また、2021年度よりDX推進の専任部署として「DX推進部」を設置した。全社役職員がITリテラシーを向上できる教育カリキュラムの策定及び実施、ビジネス変革を主導・牽引するDX人財の社内確保、ベンダーとの協業による外部のDX人財の活用に取り組んでいる。2024年度からは新たなDX戦略を策定し、活動を進めている。なお、2022年5月に経済産業省が定めるDX認定制度に基づき、「DX認定事業者」に認定されている。 ■技術開発 豊かな社会を実現する建設技術の深化及び人財の育成、建設技術の高度化を実現するDXとロボット技術の推進、持続可能な社会の実現に貢献する環境配慮型技術の発展を研究・技術開発方針として、技術開発により、「持続可能な社会の実現」「カーボンニュートラルの実現」「社会とともに持続的に発展する企業」を目指していく。 d 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況」の「3 事業等のリスク」に記載のとおりである。 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報a キャッシュ・フローの状況の分析 営業活動によるキャッシュ・フローは、大型工事における未成工事受入金やJV構成員に対する債務や仮受消費税など預り金の増加等により、169億円のプラス(前連結会計年度は188億円のマイナス)となった。 投資活動によるキャッシュ・フローは、関係会社への貸付金の増加や設備投資等により、107億円のマイナス(前連結会計年度は84億円のマイナス)となった。 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いや自己株式の取得等があった一方、コマーシャル・ペーパーの発行やシンジケートローンを含む借入金の増加等により、223億円のプラス(前連結会計年度は4億円のプラス)となった。 為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ290億円(71.0%)増加し、700億円となった。 b 資本の財源及び資金の流動性・資本政策の基本方針 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保し、財務健全性を保つことを基本方針としている。当連結会計年度末において現金預金は700億円保有しており、自己資本比率も38.5%と一定水準を保っていることから、現状では財務健全性に大きな懸念はない。 短期運転資金は、自己資金、金融機関からの短期借入及びコマーシャル・ペーパーの発行を基本としており、設備投資に係る資金や長期運転資金は、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としている。当連結会計年度末における流動比率は151.8%、固定長期適合率は43.7%と高い安全性を保っている。・資金需要 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る外注費や資機材費等の工事費、人件費を中心とした販売費及び一般管理費の営業費用である。大型工事における支出先行及び人員数の増加により営業費用に対する資金需要は増加傾向にある。また、中期経営計画に掲げている基本方針に基づき、周辺事業における確固たる収益源創出のための400億円規模の投資のほか、90億円規模の設備投資を計画している。 なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は523億円となっている。 ・株主還元 株主還元の拡充並びに資本効率の向上を図るために2021年11月11日開催の取締役会において、前中期経営計画期間(2021~2023年度)に総額100億円規模の自己株式を取得する方針を決定した。当連結会計年度においては、約20億円の自己株式を取得し614,800株を消却した。前中期経営計画期間における累計では、約100億円の自己株式を取得し3,520,100株を消却した。 2024年5月に策定した「中期経営計画(2024~2026年度)」では、適正かつ安定的に利益還元していくことを基本方針とし、連結配当性向40%目途を財務目標に掲げている。また、事業環境の変化や各事業戦略・投資の進捗に応じて、自己株式の取得を含め機動的に追加還元を検討する方針である。 ・資金調達 当社グループは、資金調達の手段として金融機関からの借入及びコマーシャル・ペーパーの発行等を活用している。資金調達のより一層の安定化並びに効率化を図るため、シンジケートローン契約を締結しており、そのうち長期のターム・ローンの当連結会計年度末の契約総額は269億円、コミットメントラインの当連結会計年度末の契約総額は300億円(借入実行残高0円)である。また、コマーシャル・ペーパーを発行しており、当連結会計年度末の発行残高は149億円である。 安定的な資金調達手段を確保しており、突発的な資金需要の発生にも十分対処可能な状況である。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定  当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。  当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、偶発損失引当金、賞与引当金、株式給付引当金、退職給付費用、一定の期間にわたり収益を認識する方法(いわゆる旧工事進行基準)による収益認識、繰延税金資産の回収可能性等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。  連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。
経営上の重要な契約等 5【経営上の重要な契約等】
 該当事項なし。
研究開発活動 6【研究開発活動】
 当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。 当連結会計年度は、研究開発費として3,148百万円投入した。 当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。(1) 土木事業 ① コンクリート骨材AI入荷管理システムの開発  AI(Deep Learning)によって骨材の粒径や種別(岩種)を高精度に判別する「コンクリート骨材AI入荷管理システム」を開発した。このシステムでは従来のステレオカメラと3次元画像処理技術により骨材の粒径を判別する骨材粒径判別システムをさらに発展させ、AIによって骨材の粒径や種別(岩種)を高精度に判別するとともに入荷伝票を読み取り、これらを照合させてコンクリート骨材の入荷管理の判定を行い、誤投入・誤搬入などのヒューマンエラーを排除することができる。また、伝票の入荷量もOCRにより自動で読み取り、骨材毎の日々の入荷量の自動集計も行うことができるため、伝票処理の大幅な効率化が図られ、働き方改革にも寄与できる。さらに、事前の学習データに基づき骨材の粒度分布の推定も可能であり、骨材の品質変動もリアルタイムで把握できる。現場実証の結果、粗骨材のAIによる画像判定の正解率は、粗骨材で100%、伝票読取りOCR及びコンベア切替えについては全ての骨材で100%であった。このうち粗骨材G1(40-20mm)の搬入時では、伝票OCRにより宛先間違いの伝票を2枚、コンベアの切り待ちについてプラント操作側での確認不足を1回検出できた。このようにヒューマンエラーを荷卸し前に確認でき、誤投入・誤搬入を未然に防止することが可能となる。今後は、種々の現場条件や施工環境への対応など運用時のさらなる信頼性を図っていくとともに、他現場やプラントなどへの応用・展開などについても検討していく。 ② 機体に依存しない吹付けコンクリートの遠隔操作システムの開発  山岳トンネル工事では、機械化による作業の省力化と安全性が図られているものの、依然として切羽付近における事故の発生の可能性は高く、重大災害につながることが多い。当社では2015年より山岳トンネルの切羽作業に関して、効率化・安全性の向上を目的とし、施工サイクル一連の遠隔化・自動化を目指して技術開発に取り組んでいる。これまでに当社が培ってきた「無人化施工技術」を取り入れ、爆薬の遠隔装填や遠隔吹付け技術など、現場での継続した運用が可能となるよう技術開発を継続している。当連結会計年度は作業員が切羽から離れた安全でクリーンな環境下で吹付けコンクリートを施工することを目的に開発した「吹付けコンクリートの遠隔操作システム」をリニューアルし、汎用機械にも容易に実装可能な「機体に依存しない吹付けコンクリートの遠隔操作システム」を開発した。これまでは事前に遠隔操作システム専用PLC制御盤や比例電磁弁等を吹付け機に搭載した専用機を使用するため、高額な費用を要し汎用性が低く機体には映像や動力、センサー等の配線や配管を要しメンテナンスが必要であった。また200ms程度の映像遅延が吹付けオペレーターにストレスを与え、実用性に向けた課題であった。さらにON-TRAC式の操作室は坑内での機動性に欠けており、これらの課題を解決し新たに開発した技術を取り入れた。無線通信やバッテリー駆動を主体としたシステム構成で、汎用機械に容易に搭載できることから、稼働現場に適用しやすく、普及率を高めるとともに、より効率的なシステム改良を継続し、安全・衛生環境に加え、生産性向上を目指す。 ③ クレーン吊り荷直下の安全システムの開発  クレーン作業では、吊り荷の荷崩れ、ワイヤーロープや玉掛用具の不具合により人命に関わる重大災害につながる可能性が大きい。そこで、AIとGNSS(全球測位衛星システム)の技術を組み合わせてリアルタイムに吊り荷直下の周辺で作業を行う人に対し、リアルタイムに吊り荷直下の監視・吊り荷位置の可視化を同時に行えるシステムを開発した。  この安全システムでは、クレーンのブーム先端に取り付けたGNSSで吊り荷位置を世界座標に変換する。また、GNSSと座標系のアプリケーションを利用してカメラ画角内を世界座標に変換する。加えてカメラ画角内の人はAIを人物認証することで、平面座標上での人の移動を把握できるようにした。このことより、PC画面上でカーナビゲーションシステムのように人と吊り荷の位置関係をリアルタイムに鳥瞰図としてマッピングできる。  鳥瞰図内で吊り荷直下の危険領域に人が入った場合には、システムの警報装置が動作して注意喚起を行う。また、クレーンの吊り荷真下の床面をリアルタイムにLED投光器で自動追尾して照射することで危険領域を可視化した。実証実験では監視員を配置した場合と同等の監視効果を得ることができた。今後はクレーン吊り荷直下の安全システムを構成する要素である監視カメラの高性能化、AI画像判別のための学習量増加によるカメラ映像内の人検知の高精度化、さらには使用機器(電動雲台及び制御盤等)の小型化を行い、多くの工種の建設現場での採用を目指す。またAIによる認証を人だけでなく車両・重機等の物体でも認証出来る技術へと拡張すれば、人との接近・接触を監視するシステムに応用もできる。また、GNSSで座標管理をしているためクレーンの吊り荷の荷卸し場所もGNSSを利用して指定できる。クレーンのガイダンス運転や自動運転の可能性も検討しており、実証実験を継続し、作業の効率化と安全への取組みを加速する。 ④ BIM/CIMを身近なものにする自社内クラウドを活用したシステム「CIM-CRAFT®」を開発  BIM/CIMは2023年度から国土交通省が発注する工事では原則適用され、その他の機関が発注する工事や民間工事でも適用が進められており、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図る取組みである。「CIM-CRAFT®」は自社内クラウドシステムに構築したWebアプリケーションを使用して、工事の完成モデルや進捗に合わせてモデル、属性情報、帳票類等の登録、参照ができる。現場職員が日々の施工管理に用いる帳票用データをExcel®等の表計算ソフトウェアに入力し、Web上の仮想空間内に構造物を構築することができるシステムであり、3次元モデルを作成する専門知識は必要とせずにデジタルツインを実現できる。また、モデリング、属性情報の入力操作が容易であり誰でも簡単に利用でき、視覚的に工事の進捗状況を伝えることができるため、施工時や検査時における業務の効率化が図れる。専用ソフトウェアが不要で円滑に導入が可能となり、導入費用・保守費用の軽減、インターネット環境があればいつでも接続でき、効率的な情報共有・連携を実現できる。今後、BIM/CIMの取組みの中核としていくことからトンネル工事やシールド工事等の様々な工事に適用することができるよう開発を進め、生産性の向上を図るためのアプリケーション改良、社内システムとの連携も進めていく。 ⑤ 高精度水中測位システム「AquaMarionette(アクアマリオネット)」の開発  河川・海洋・港湾・ダムでの施工は、安全性確保・効率化のため、高水圧・視界不良の水中作業を避けた施工を実施するのが一般的であるが、近年では老朽化インフラの更新や災害による被災施設の復旧など、水中での精密な施工が必要なケースが増加している。水中での無人化施工は、視認性が確保できない水中において、施工機械の絶対位置・姿勢の計測が不可欠であり、常時動揺している水上浮体から水中の移動体の絶対座標・姿勢をリアルタイムに計測・解析するシステムを開発した。屋外水槽を用いた基礎試験により5cm以内の精度を実証し、水中無人化施工への適用が可能であることを確認した。また、水中移動体の絶対座標及び姿勢をリアルタイムに計測でき、絶対座標の精度も良好であることを確認できた。今後は、小型水中バックホウの遠隔操作に関するハードウェア・ソフトウェアを充実させ、水中測位システムを連動させることにより、目視が困難な水中での建設機械の操作が潜水士無しで施工できる、水中バックホウの無人化施工を目指して開発を進めていく。それにより、河川・海洋・港湾・ダムでの水象条件によらずに利用可能な高精度の遠隔操作・自動化水中施工システムの実現が可能となる。 ⑥ MRを活用したコンクリート締固め管理システムを開発  コンクリートの品質は打込み時の締固め作業に大きく左右され、締固め不足や締固め忘れはジャンカや密度不足につながり、品質劣化の原因となる。ただし、締固め作業の管理は、現場監督者や現場作業者の経験によるところが大きく、コンクリートの品質に問題があった場合、客観的な締固め作業の記録を残していないため、原因を特定することができないのが現状である。このような背景により、MR技術を用いてコンクリート締固め作業を可視化し、締固め作業者に開始から終了までの判定を周知させ、データを保存する締固め管理システムを開発した。締固め作業者は、ヘッドマウントディスプレイ(ホロレンズ)を装着し作業を行う。ディスプレイの画面には、実際の打込み箇所に締固め作業用に区分けされたメッシュ(50cm×50cm程度)が反映され、ホロレンズのヘッドトラッキング機能により、締固め開始前から作業中、終了時と作業工程毎にメッシュ内の色が変わることにより、締固め作業の終了を自動的に周知する。また、工事関係者がモバイル端末やPC上でホロレンズと同じ画像をリアルタイムに確認でき、締固め作業の記録(位置や時間)をメッシュ毎に残すことにより、トレサビリティとして活用できる。締固め作業は同時に2人まで対応でき、下層との許容打重ね時間をあらかじめ設定しておくことにより、メッシュ外枠の色が変わり打込み時間を周知する機能も追加し、実際の工事において運用を開始している。
(2) 建築事業 ① 新熊谷式柱RC梁S構法 ―建物の高層化に対応できる新たな設計法を構築―  柱が鉄筋コンクリート(RC)造、梁が鉄骨(S)造からなる建築構法である従来の「柱RC梁S構法」について、高層建物のより合理的な設計が可能となる手法を構築し、設計施工指針を改訂した。当社では2012年に「新熊谷式柱RC梁S構法:Super-High-Brid60」を開発し、日本ERI株式会社の構造性能評価の取得と設計施工指針の適用範囲拡大を行っている。今般、建物の高層化ニーズに応えるために、より合理的な設計手法を確立し、「新熊谷式柱RC梁S構法(2023改訂)」として、2023年3月に構造性能評価(日本ERI株式会社)を再取得した。大規模物流施設は、通常の建物と比較して積載荷重が大きく、大スパンで高い階高が必要となるため本構法の適用メリットは大きい。負担する軸力が大きく、長い柱には圧縮力に強いRC造を用い、梁には軽量で地震に対して粘り強い性質を発揮するS造を採用することにより、経済的で合理的な構造躯体骨組が実現された。今般、高層の宿泊施設等に本構法を適用し、いくつかの設計指針の改訂を行った。最新の学術的知見を反映させるとともに、建物の「塔状比(とうじょうひ)」
(注)が大きくなる高層建物に特有の地震時の変動軸力に対しても、新しい指針を導入することで断面の合理的設計が可能となった。また、S梁の柱への埋込み長さ等についても見直し、構造的な安全性を保ちつつ施工性が大幅に改善された。今後もより合理的な設計、施工を目指し、物流施設、商業施設、オフィス、生産施設等の建物に加え、高層の宿泊施設、病院等様々な建物への適用を積極的に行っていく。  (注)建物の高さ方向と幅方向の長さの比率 ② 木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODⅡ®」 建築基準法改正に対応した梁の90分耐火大臣認定取得  当社が重点分野として取り組む中大規模木造建築において、木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODⅡ®」梁の90分耐火大臣認定を取得した。「環境配慮型λ-WOODⅡ®」は、当社が独自に開発した木質耐火部材で、施工手間の軽減、工期短縮や環境配慮性などの特長があり、商標登録も行っている。2023年4月の建築基準法改正に伴い、建築物の耐火基準として新たに90分耐火構造が導入され、建築物の5階以上9階以下の主要構造部に要求される耐火性能が120分から90分に緩和された。従来の120分耐火構造と比較して、被覆材厚及び被覆枚数を減らすことが可能となるため、施工手間が軽減され、中大規模建築物の木造化推進が期待される。当社で開発済の断熱耐火部材「断熱耐火λ-WOOD®」は、柱・梁・床・壁の全ての主要構造部において1・2・3時間の耐火大臣認定を取得している。今回の「環境配慮型λ-WOODⅡ®」についても、2022度に認定を取得した柱・梁1・2時間に加えて、柱・梁の3時間、床・壁の1・2時間の耐火大臣認定取得を予定しており、これにより、全ての耐火建築物に木造が適用可能となる。今後も、中大規模木造建築の競争力強化を目指し、木造関連技術のさらなる技術開発を進めていく。 ③ 自律走行機能を有した床面ひび割れ撮影装置を開発  床面のひび割れ検出の省人化、省力化の実現を目的とした「自律走行機能を有した床面ひび割れ撮影装置」を開発した。建造物の床では床面にひび割れが発生することがある。従来は目視等による検査を行ってきたが、検出・計測・記録の手作業による手間や中腰姿勢の目視検査などの肉体的負担がかかり、特に大規模な建造物での負担が大きい。そのため、現場で行う準備作業と検査手順の双方の簡略化が実現できる、ロボットやAI等を活用した床面検査装置の開発を行ってきた。本装置は、施工図から作成した環境地図情報と本装置のセンサーから得た情報を照合して自己位置の推定を行う。さらに柱壁等の配置情報を専用ソフトウェアに入力することで、デスクワークで環境地図が作成できる。また、ひび割れ検出は、本装置に搭載された1,230万画素のカメラ2台により広範囲が撮影され、加えて位置情報の補正も可能である。なお、本装置では、床面撮影とひび割れ検出はそれぞれ独立して行うため、任意の手段でひび割れ検出が処理できる。検査面積が1,500㎡の場合では、現場オペレーターを2名配置とし、本装置を複数台同時運用することで、半日程度で作業を完了することができる。今後は検査実績を積みながら検証と改良を行い、運用方法の確立と省人・省力化に寄与できる体制を整えていく。 ④ 大量培養可能な独自微細藻類株を発見、数トン規模での屋外大量培養に成功  当社は、脱炭素社会の実現に向けて、資源循環・持続可能性の観点から、光合成により増殖しCO2を固定化することのできる微細藻類に着目し技術開発に取り組んできた。既に商業化している藻類株の応用研究ではなく、自然界から新たに独自株を採取(単離培養)する方針で研究を進めた結果、環境変化に強く、事業化に必要となる大規模生産も可能な新しい藻類株を発見した。この当社独自株は、既存の微細藻類を超える高いバイオマス生産性を有していることが数トン規模での屋外大量培養実験で実証された。一般に藻類の光合成による生成物は、医薬・健康、食、エネルギー・科学といった市場規模トップの産業分野において原料としての利用が可能なため、大規模市場に展開できるポテンシャルがあると考えられている。当社の独自株は機能性評価において、食に関するグリーンバイオ分野と、医薬・健康に関するレッドバイオ分野への展開が期待できる有用物質を含有することが明らかになった。現在実用化に向けた実証実験に鋭意取り組んでいる。当社は業界初の「エコ・ファースト企業」として、CO2削減による脱炭素社会への移行や、建設混合廃棄物削減による循環型社会の形成など、持続可能な社会の実現に向けた取組みを推進している。今後は、CO2を固定した藻類を活用した有用物質生産や資源循環型ビジネスへの展開を進め、地球温暖化、食糧問題解決や地方雇用創成の一助となるよう、社会実装に向けて邁進していく。 ⑤ 「シリーズ 建築の音環境入門 15周年記念号」を刊行  当社は国立大学法人信州大学名誉教授山下恭弘監修のもと、泰成株式会社、フジモリ産業株式会社、野原産業株式会社、万協株式会社、有限会社音研と共同で、床衝撃音研究会として「シリーズ 建築の音環境入門 15周年記念号」を刊行した。同研究会では、2008年よりデベロッパーや設計事務所、建設会社等の技術者向けに建築の音環境に関する手引書である「シリーズ 建築の音環境入門」を刊行しており、2017年には100号記念号として「実務者のための建築音響設計法」を刊行した。この刊行から5年が経過し、読者から最新の知見を加えた改訂版を作成してほしいとの要望があり、このたび「シリーズ 建築の音環境入門 15周年記念号 実務者のための建築音響設計法(改訂)」として刊行した。本号は「第1章 建築音響の基礎」「第2章 室内静謐性能・空気音遮断性能」「第3章 床衝撃音遮断性能」「第4章 実務的な建築音響設計法」「第5章 騒音に係る環境基準」「第6章 航空機音(参考)」の6章で構成されており、第5章及び第6章は今回新たな章を設けて追加した。また第4章、第6章に対応したマイクロソフト®の表計算ソフトウェアExcel®による計算シートを用意し、同研究会を組織する各社のウェブサイトにて無償提供している。今後も共同住宅の音環境に関する重要なツールとして位置付け、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提供していく予定である。さらに、読者からの質問や評価・意見を踏まえ、より読みやすく有用な手引書として製作していく方針である。 (3) 子会社  株式会社ガイアート ① フォームドアスファルトによる中温化再生合材の開発  脱炭素社会の実現に向け、フォームドアスファルトによりアスファルト混合温度を低減することで使用燃料を減らす中温化化合物の実用化に続き、再生合材における実用化に向け、フォームドアスファルトに添加剤を加えた再生密粒合材について、室内試験及び試験施工を実施し、20℃温度低減効果の確認を行い、2024年3月に再生アスファルト混合物の認定を取得した。今後、さらに再生改質アスファルトについて検証し実用化を目指していく。 ② 全天候型常温合材(フォレストパッチ)の開発  常温アスファルト補修材は、常温施工が可能でポットホール等の補修材として使用される混合物であり、雨天時や水溜まりなど水が介在する現場において、その強度が発現するタイプ(水添加で固まる全天候型常温合材)が既に他社より多く発売されている。同社においても、ロジン誘導体、消石灰及び改質剤によるフォレストパッチが他社製品と同等以上の耐久性を得られたことにより、製品化を進め、2023年度までに累計250袋を販売した。なお、現在の製造拠点は岡山県のみであるが、関東圏への拡大に向けて準備をしている。 ③ 木質系アスファルト舗装の開発  通常廃棄焼却される杉の間伐材をアスファルト舗装に再利用する技術について、住友林業と共同で検討を続けている。白糸ハイランドウェイ内での試験施工により冬季における耐久性は確認されており、さらなる安定的製造・施工に向け配合の再検討を行った。茨城県内及び栃木県内の工場構内での試験施工により、夏季における耐久性が確認されており、今後、施工方法等の検討を行い、製品実用化を目指していく。
設備投資等の概要 1【設備投資等の概要】
 当連結会計年度は、既存施設の保守、設備の取得及び更新等を行い、その総額は2,252百万円であった。 なお、設備投資等の金額は、事業セグメントに配分していない。
主要な設備の状況 2【主要な設備の状況】
(1)提出会社2024年3月31日現在 会社名事業所名(所在地)セグメントの名称帳簿価額(百万円) 建物・構築物機械、運搬具及び工具器具備品土地リース資産合計従業員数(人) 面積:㎡金額東京本社(東京都新宿区)土木事業建築事業1,85784853,635(1,287)5,07267,785637首都圏支店(東京都新宿区)土木事業建築事業125---27602関西支店(大阪市西区)土木事業建築事業6418---82317 (2)国内子会社2024年3月31日現在 会社名事業所名(所在地)セグメントの名称帳簿価額(百万円) 建物・構築物機械、運搬具及び工具器具備品土地リース資産合計従業員数(人) 面積:㎡金額㈱ガイアート本社及び支店(東京都新宿区)子会社3,049711195,136(95,481)4,9092818,951775 (3)在外子会社2024年3月31日現在 会社名事業所名(所在地)セグメントの名称帳簿価額(百万円) 建物・構築物機械、運搬具及び工具器具備品土地リース資産合計従業員数(人) 面積:㎡金額華熊営造(股)本社(台湾台北市)子会社21-4214-35366
(注) 1 帳簿価額には建設仮勘定を含まない。2 上記主要な設備に係る土地及び建物の一部を連結会社以外から賃借している。年間賃借料は766百万円であり、土地の面積については( )内に外書きで示している。
設備の新設、除却等の計画 3【設備の新設、除却等の計画】
 継続的に既存施設の保守、工事用機械の更新等の投資を予定しているが、特記すべき設備の新設及び除却等の計画はない。
研究開発費、研究開発活動3,148,000,000
設備投資額、設備投資等の概要2,252,000,000

Employees

平均年齢(年)、提出会社の状況、従業員の状況44
平均勤続年数(年)、提出会社の状況、従業員の状況19
平均年間給与、提出会社の状況、従業員の状況8,481,654
管理職に占める女性労働者の割合、提出会社の指標0
全労働者、労働者の男女の賃金の差異、提出会社の指標1
非正規雇用労働者、労働者の男女の賃金の差異、提出会社の指標1

Investment

株式の保有状況 (5)【株式の保有状況】
① 投資株式の区分の基準及び考え方 当社は、保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の目的である投資株式の区分について、専ら株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的として保有する株式を純投資目的である投資株式とし、持続的な企業価値向上のための取引・協業関係の強化や収益機会の獲得を目的として保有する株式を純投資目的以外の目的である投資株式としている。 ② 保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式a 保有方針及び保有の合理性を検証する方法並びに個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容 当社は、投資先企業との各種取引に基づく獲得利益等が当社の資本コストに見合っているか、また、投資先企業の株式を保有することが当社の事業遂行上有用か否かといった点について総合的な観点から検証を行っている。毎年、取締役会にて個別銘柄毎に検証を行い、保有の意義を確認している。b 銘柄数及び貸借対照表計上額 銘柄数(銘柄)貸借対照表計上額の合計額(百万円)非上場株式663,317非上場株式以外の株式117,535 (当事業年度において株式数が増加した銘柄) 銘柄数(銘柄)株式数の増加に係る取得価額の合計額(百万円)株式数の増加の理由非上場株式15出資により地域活性化へ貢献するため非上場株式以外の株式111収益機会の獲得等の効果をより高めるため (当事業年度において株式数が減少した銘柄) 銘柄数(銘柄)株式数の減少に係る譲渡価額の合計額(百万円)非上場株式10非上場株式以外の株式-- c 特定投資株式及びみなし保有株式の銘柄ごとの株式数、貸借対照表計上額等に関する情報   特定投資株式銘柄当事業年度前事業年度保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由当社の株式の保有の有無株式数(株)株式数(株)貸借対照表計上額(百万円)貸借対照表計上額(百万円)東海旅客鉄道㈱125,200125,200(保有目的)鉄道分野における工事を受注しており、同社との良好な関係の維持・強化を図り、今後の収益機会の獲得等につなげるため無2,3321,979京浜急行電鉄㈱1,568,1311,559,035(保有目的)土木(鉄道・開発工事等)及び建築(集合住宅・ビジネスホテル等)で工事を受注しており、同社との良好な関係の維持・強化を図り、今後の収益機会の獲得等につなげるため(株式数が増加した理由)取引関係の強化及び収益機会の獲得等への効果をより高めるため無2,1841,962阪急阪神ホールディングス㈱200,194200,194(保有目的)鉄道分野における工事を受注しており、同社との良好な関係の維持・強化を図り、今後の収益機会の獲得等につなげるため無880785西日本旅客鉄道㈱100,000100,000(保有目的)鉄道分野における工事を受注しており、同社との良好な関係の維持・強化を図り、今後の収益機会の獲得等につなげるため無627545オリエンタル白石㈱1,100,0001,100,000(保有目的)インフラ更新事業において協働で施工を行っており、またコッター床版事業においては共同で技術開発や継手販売を行っている。今後も同社との良好な関係の維持・強化を図るため有442358ジオスター㈱1,193,0001,193,000(保有目的)同社からセグメント製品を調達し、セグメント継手やコッター床版工法等で共同技術開発を行っている。今後も同社との良好な関係の維持・強化を図るため無411353名古屋鉄道㈱100,107100,107(保有目的)鉄道分野における工事を受注しており、同社との良好な関係の維持・強化を図り、今後の収益機会の獲得等につなげるため無216204㈱平和堂100,000100,000(保有目的)商業施設を中心に工事を受注しており、同社との良好な関係の維持・強化を図り、今後の収益機会の獲得等につなげるため無203203ヨネックス㈱80,00080,000(保有目的)工場分野における工事を受注しており、同社との良好な関係の維持・強化を図り、今後の収益機会の獲得等につなげるため無89114 銘柄当事業年度前事業年度保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由当社の株式の保有の有無株式数(株)株式数(株)貸借対照表計上額(百万円)貸借対照表計上額(百万円)カーリットホールディングス㈱70,00070,000(保有目的)工場分野における工事を受注しており、同社との良好な関係の維持・強化を図り、今後の収益機会の獲得等につなげるため無7748日本管財㈱27,20027,200(保有目的)PPP/PFI、コンセッション事業やインフラ・メンテナンス事業等において同社が有用な事業パートナーとなり得ること等を勘案し、良好な関係の維持・強化のため有6973
(注) 定量的な保有効果は秘密保持の観点から記載していない。なお、2023年9月27日開催の取締役会にて保有の合理性を検証している。   みなし保有株式   該当事項なし。 ③ 保有目的が純投資目的である投資株式   該当事項なし。
株式数が増加した銘柄数、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社1
株式数が増加した銘柄数、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社1
銘柄数、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社66
貸借対照表計上額、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社3,317,000,000
銘柄数、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社11
貸借対照表計上額、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社7,535,000,000
株式数の増加に係る取得価額の合計額、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社5,000,000
株式数の増加に係る取得価額の合計額、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社11,000,000
株式数、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社27,200
貸借対照表計上額、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社69,000,000
株式数が増加した理由、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社出資により地域活性化へ貢献するため
株式数が増加した理由、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社収益機会の獲得等の効果をより高めるため
銘柄、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社日本管財㈱
保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社(保有目的)PPP/PFI、コンセッション事業やインフラ・メンテナンス事業等において同社が有用な事業パートナーとなり得ること等を勘案し、良好な関係の維持・強化のため
当該株式の発行者による提出会社の株式の保有の有無、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社