財務諸表

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提出書類、表紙有価証券報告書
提出日、表紙2024-06-26
英訳名、表紙ENEOS Holdings, Inc.
代表者の役職氏名、表紙代表取締役 社長執行役員  宮田 知秀
本店の所在の場所、表紙東京都千代田区大手町一丁目1番2号
電話番号、本店の所在の場所、表紙03(6257)7075
様式、DEI第三号様式
会計基準、DEIIFRS
連結決算の有無、DEItrue
当会計期間の種類、DEIFY

corp

沿革 2【沿革】
〔前史〕2008年12月新日本石油株式会社及び新日鉱ホールディングス株式会社(以下「両社」という。)が経営統合について基本覚書を締結2009年10月両社が株式移転により当社を設立することなどを内容とする経営統合契約を締結2010年1月両社の臨時株主総会において、JXホールディングス株式会社設立にかかる株式移転計画を承認 〔提出会社設立以降〕2010年4月JXホールディングス株式会社設立により、新日本石油株式会社及び新日鉱ホールディングス株式会社がJXホールディングス株式会社の完全子会社となる。JXホールディングス株式会社普通株式を東京証券取引所、大阪証券取引所及び名古屋証券取引所に上場2010年7月新日本石油株式会社が株式会社ジャパンエナジー及び新日本石油精製株式会社を合併し、JX日鉱日石エネルギー株式会社に商号変更 新日本石油開発株式会社がジャパンエナジー石油開発株式会社を合併し、JX日鉱日石開発株式会社に商号変更 新日鉱ホールディングス株式会社が日鉱金属株式会社を合併し、JX日鉱日石金属株式会社に商号変更2016年1月JX日鉱日石エネルギー株式会社がJXエネルギー株式会社に商号変更JX日鉱日石開発株式会社がJX石油開発株式会社に商号変更JX日鉱日石金属株式会社がJX金属株式会社に商号変更2017年4月JXホールディングス株式会社が株式交換により東燃ゼネラル石油株式会社を完全子会社としたうえで、JXエネルギー株式会社が東燃ゼネラル石油株式会社を吸収合併し、その後、JXエネルギー株式会社が東燃ゼネラル石油株式会社から承継した権利義務の一部を吸収分割によりJXホールディングス株式会社が承継JXホールディングス株式会社がJXTGホールディングス株式会社に商号変更JXエネルギー株式会社がJXTGエネルギー株式会社に商号変更2020年6月JXTGホールディングス株式会社がENEOSホールディングス株式会社に商号変更JXTGエネルギー株式会社がENEOS株式会社に商号変更2024年4月ENEOS株式会社の電気・都市ガス事業を吸収分割により当社の子会社であるENEOS Power株式会社が承継ENEOS株式会社の機能材事業を吸収分割により株式会社ENEOSマテリアルが承継ENEOS株式会社から当社への現物配当により、株式会社ENEOSマテリアル及びENEOSリニューアブル・エナジー株式会社(ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社から商号変更)が当社の子会社となる。 なお、新日本石油グループ、新日鉱グループ及び東燃ゼネラルグループの沿革は以下のとおりです。 ①新日本石油グループ1888年5月内藤久寛、山口権三郎等が有限責任日本石油会社を創立(1894年1月、日本石油株式会社に商号変更)1921年10月日本石油株式会社が宝田石油株式会社を合併1931年2月三菱石油株式会社設立1933年6月興亜石油株式会社設立1941年6月日本石油株式会社が小倉石油株式会社を合併1951年10月日本石油精製株式会社設立(1999年7月、日石三菱精製株式会社に商号変更)1991年6月日石アジア石油開発株式会社設立(1997年11月、日本石油開発株式会社に、2002年6月、新日本石油開発株式会社に商号変更)1999年4月日本石油株式会社が三菱石油株式会社を合併し、日石三菱株式会社に商号変更2002年4月日石三菱精製株式会社が、興亜石油株式会社及び東北石油株式会社を合併し、新日本石油精製株式会社に商号変更2002年6月日石三菱株式会社が新日本石油株式会社に商号変更2008年10月新日本石油精製株式会社が、会社分割の方法により、九州石油株式会社の大分製油所における事業を承継し、その後、新日本石油株式会社が九州石油株式会社を合併 ②新日鉱グループ1905年12月久原房之助、赤沢銅山(後の日立鉱山)を買収、操業開始1912年9月久原鉱業株式会社設立(1928年12月、日本産業株式会社に商号変更)1929年4月日本産業株式会社の鉱山・製錬部門を分離・独立させ、日本鉱業株式会社を設立1965年8月共同石油株式会社設立1992年5月日鉱金属株式会社設立1992年11月日本鉱業株式会社が金属資源開発部門、金属事業部門及び金属加工事業部門を日鉱金属株式会社に譲渡1992年12月日本鉱業株式会社が共同石油株式会社を合併し、株式会社日鉱共石に商号変更1993年12月株式会社日鉱共石が株式会社ジャパンエナジーに商号変更2002年9月株式会社ジャパンエナジーと日鉱金属株式会社が株式移転により新日鉱ホールディングス株式会社を設立し、同社の完全子会社となる。 ③東燃ゼネラルグループ1893年5月米国ソコニー(スタンダード・オイル・カンパニー・オブ・ニューヨーク)が日本支店開設 米国ヴァキューム・オイルが日本支店開設1932年8月ソコニーとヴァキューム・オイルが合併し、ソコニー・ヴァキューム日本支店となる。1934年2月ソコニー・ヴァキューム・コーポレーションとスタンダード・オイル・カンパニーがスタンダード・ヴァキューム・オイル・カンパニー(略称スタンヴァック)を設立したため、スタンヴァック日本支社となる。1939年7月東亜燃料工業株式会社設立(1989年7月、東燃株式会社に商号変更)1947年7月ゼネラル物産株式会社設立(1967年1月、ゼネラル石油株式会社に商号変更)1961年12月スタンヴァックの再編成により、エッソ・スタンダード石油株式会社及びモービル石油株式会社を設立(1982年4月、エッソ・スタンダード石油株式会社はエッソ石油株式会社に商号変更)2000年2月エッソ石油株式会社及びモービル石油株式会社が有限会社に組織変更2000年7月ゼネラル石油株式会社が東燃株式会社を合併し、東燃ゼネラル石油株式会社に商号変更2002年6月エッソ石油有限会社がモービル石油有限会社を合併し、エクソンモービル有限会社に商号変更2012年5月エクソンモービル有限会社がEMGマーケティング合同会社に組織変更及び商号変更2017年1月東燃ゼネラル石油株式会社がEMGマーケティング合同会社を合併
事業の内容 3【事業の内容】
当社を持株会社とする企業集団(当社、子会社581社、持分法適用会社等166社)が営む主要な事業の内容と主要な関係会社の当該事業における位置づけは、次のとおりです。主要な会社の詳細は、「4 関係会社の状況」に記載しています。 なお、当社は有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準は連結ベースの数値に基づき判断することとなります。
関係会社の状況 4【関係会社の状況】
(1)子会社 2024年3月31日現在会社の名称住所資本金(億円)主要な事業の内容議決権の所有割合(%)関係内容役員の兼任営業上の取引・資金援助等ENEOS株式会社(注1,4)東京都千代田区300.0石油製品及び石油化学製品の製造・販売100.0有経営管理債務保証業務委託鹿島石油株式会社(注1)東京都千代田区200.0石油製品及び石油化学製品の製造72.2(72.2)--ENEOS和歌山石油精製株式会社和歌山県海南市44.2石油製品の製造・販売99.9(99.9)--株式会社ENEOS NUC川崎市川崎区20.0石油化学製品の製造・販売100.0(100.0)--鹿島アロマティックス株式会社東京都千代田区1.0石油製品及び石油化学製品の製造80.0(80.0)--ENEOSテクノマテリアル株式会社東京都港区0.3合成樹脂加工製品の製造100.0(100.0)--ENEOS喜入基地株式会社鹿児島県鹿児島市60.0石油類の貯蔵及び受払100.0(100.0)--ENEOSオーシャン株式会社横浜市西区40.0原油・石油製品の海上輸送81.1(81.1)--日本グローバルタンカー株式会社東京都千代田区0.5原油の海上輸送100.0(100.0)--ENEOS USA Inc.Illinois, U.S.A.百万米ドル3.0石油製品の製造・販売100.0(100.0)--ENEOS Oil & Energy AsiaPte. Ltd.Singapore百万米ドル0.1石油製品の製造・販売100.0(100.0)--株式会社ENEOSマテリアル東京都港区10.0合成ゴム、合成樹脂その他の化学工業製品の製造・加工・販売100.0(100.0)--BST ENEOS Elastomer Co., Ltd.(注1)Bangkok, Thailand百万タイバーツ5,220合成ゴム、合成樹脂その他の化学工業製品の製造・加工・販売51.00(51.00)--ENEOS MOL Synthetic Rubber Ltd.Budapest, Hungary千ユーロ18合成ゴム、合成樹脂その他の化学工業製品の製造・加工・販売51.00(51.00)--株式会社ENEOSフロンティア東京都中央区1.0石油製品の販売100.0(100.0)--株式会社ENEOSウイング名古屋市中区1.0石油製品の販売100.0(100.0)--株式会社ENEOSジェネレーションズ横浜市西区0.3石油製品の販売100.0(100.0)--株式会社ENEOSリテールサービス東京都中央区1.0石油製品の販売100.0(100.0)--株式会社ENEOSサンエナジー東京都港区1.0石油製品の販売100.0(100.0)--株式会社ENEOSジェイクエスト東京都中央区0.2石油製品の販売100.0(100.0)--ENEOSグローブ株式会社東京都千代田区1.0LPガス製品の販売50.0(50.0)--株式会社ジャパンガスエナジー東京都千代田区35.0LPガス製品の販売51.0(51.0)--ENEOS Netherlands B.V.Amsterdam,Netherlands百万米ドル8.0LNG開発会社への出資及び関係会社への資金貸付等100.0(100.0)--ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社(注1,5)東京都港区287.4発電プラント(再生可能エネルギー)に関する事業及び売電95.0(95.0)有-ENEOSトレーディング株式会社東京都中央区1.1自動車関連用品の販売、リース業100.0(100.0)-業務委託JX石油開発株式会社(注1)東京都千代田区376.2石油・天然ガス開発事業の統括100.0有経営管理日本ベトナム石油株式会社(注1)東京都千代田区100.0石油・天然ガスの探鉱・開発・生産・販売100.0(100.0)有-JXマレーシア石油開発株式会社(注1)東京都千代田区131.0石油・天然ガスの探鉱・開発・生産・販売78.7(78.7)有債務保証 会社の名称住所資本金(億円)主要な事業の内容議決権の所有割合(%)関係内容役員の兼任営業上の取引・資金援助等日石ベラウ石油開発株式会社(注1)東京都千代田区115.1石油・天然ガスの探鉱・開発・生産・販売51.0(51.0)--Merlin Petroleum Company(注1)California, U.S.A.百万米ドル865.5石油・天然ガスの探鉱・開発・生産・販売79.6(79.6)-債務保証JX金属株式会社(注1)東京都港区750.0非鉄金属製品及び機能材料、薄膜材料の製造・販売並びに非鉄金属リサイクル100.0有経営管理債務保証JX金属商事株式会社東京都新宿区3.9非鉄金属製品等の販売100.0(100.0)--JX METALS PHILIPPINES, INC.Laguna,Philippines百万米ドル4.0銅箔の製造・販売100.0(100.0)--日鉱金属(蘇州)有限公司中国江蘇省百万人民元592.8精密圧延品の製造・販売100.0(100.0)--JX Metals USA, Inc.Arizona, U.S.A.百万米ドル5.0薄膜材料の製造・販売100.0(100.0)--台湾日鉱金属股份有限公司台湾桃園市百万台湾ドル63.5機能材料、薄膜材料の製造・販売、非鉄金属リサイクル原料の集荷100.0(100.0)--JX金属環境株式会社茨城県日立市2.0非鉄金属リサイクル、産業廃棄物処理100.0(100.0)--東邦チタニウム株式会社(注1,2)横浜市西区119.6チタンの製造・販売50.4(50.4)--株式会社NIPPO(注1)東京都中央区153.3道路・舗装・土木工事、石油関連設備の企画・設計・建設100.0(100.0)--大日本土木株式会社岐阜県岐阜市20.0建築・土木工事の請負85.0(85.0)--ENEOS不動産株式会社横浜市中区5.0不動産の販売・賃貸・管理100.0-業務委託ENEOSファイナンス株式会社東京都千代田区4.0財務関係業務の受託100.0-業務委託資金貸付ENEOS総研株式会社東京都千代田区0.3調査、研究及びコンサルティング業務等100.0-業務委託その他538社 (注)1.特定子会社です。なお、上表のその他538社に含まれる特定子会社は、ENEOS Vietnam Company Limited、ENEOS Australia Pty Ltd.、Petra Nova Parish Holdings, LLC、Nippon Papua New Guinea LNG LLC、Nippon Oil Exploration (Niugini) Pty. Ltd.、Nippon Oil Exploration (PNG) Pty. Ltd.、JX Nippon Oil & Gas Exploration (Offshore Malaysia) Sdn. Bhd.、JX Nippon Oil & Gas Exploration (PAPUA LNG) Pty Ltd、Nippon LP Resources UK Ltd.です。2.有価証券報告書提出会社です。3.議決権の所有割合の( )内は、間接所有割合で内数です。4.ENEOS株式会社は、売上高(子会社間の内部売上高を除く)の連結売上高に占める割合が10パーセントを超えています。ENEOS株式会社の主要な損益情報(日本基準) 等(1)売上高     9,499,301百万円(2)経常利益     178,947百万円(3)当期純利益    109,645百万円(4)純資産額    1,025,631百万円(5)総資産額    4,550,042百万円5.ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社は、2024年4月1日にENEOSリニューアブル・エナジー株式会社に商号変更しました。 (2)持分法適用会社等                                  2024年3月31日現在会社の名称住所資本金(億円)主要な事業の内容議決権の所有割合(%)関係内容役員の兼任営業上の取引・資金援助等大阪国際石油精製株式会社千葉県市原市1.0石油製品及び石油化学製品の製造・販売51.0(51.0)--昭和日タン株式会社東京都千代田区4.9石油製品の海上輸送24.9(24.9)--日本石油輸送株式会社(注1)東京都品川区16.6石油製品の陸上輸送29.3--川崎天然ガス発電株式会社川崎市川崎区37.5発電及び電力の供給51.0(51.0)--アブダビ石油株式会社東京都港区127.6石油の探鉱・開発・生産・販売32.2(32.2)有債務保証合同石油開発株式会社東京都千代田区20.1石油の探鉱・開発・生産・販売50.0(50.0)--Minera Los PelambresSantiago, Chile百万米ドル373.8銅鉱の採掘25.0(25.0)--ジェコ株式会社東京都千代田区0.1銅鉱山への投資20.0(20.0)--JECO 2 LTDLondon, U.K.百万米ドル242.5銅鉱山への投資40.0(40.0)--パンパシフィック・カッパー株式会社東京都港区50.0非鉄金属製品の製造・販売47.8(47.8)-債務保証SCM Minera Lumina CopperChileSantiago, Chile百万米ドル6,820.3銅・モリブデン鉱石の生産・販売49.0(49.0)-債務保証タツタ電線株式会社(注1)大阪府東大阪市66.8電線・ケーブル、電子材料の製造・販売37.0(37.0)--株式会社丸運(注1)東京都中央区35.6陸上運送38.2(38.2)--その他153社 (注)1.有価証券報告書提出会社です。2.議決権の所有割合の( )内は、間接所有割合で内数です。3.持分法適用会社等には、共同支配事業及び共同支配企業を含みます。
従業員の状況 5【従業員の状況】
(1)連結会社の状況 2024年3月31日現在セグメント従業員数(人)当社888(6)エネルギー24,925(12,593)石油・天然ガス開発1,057
(2)金属9,282(114)その他7,531(457)合計43,683(13,172)(注)1.従業員数は就業人員数(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)です。2.従業員数の( )内は、臨時従業員数です。(外数、年間平均雇用人数)臨時従業員は、主にパートタイマー、アルバイト等の従業員であり、派遣社員は含みません。3.当社の従業員数は、当社とENEOS株式会社の合同組織に所属する従業員です。エネルギー事業の従業員数は、当該合同組織に所属する従業員数を含みません。 (2)提出会社の状況 2024年3月31日現在従業員数(人)平均年齢平均勤続年数平均年間給与(税込)(円)888(6)44歳1ヵ月18年7ヵ月9,478,427(注)1.従業員数は就業人員数(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)です。2.従業員数の( )内は、臨時従業員数です。(外数、年間平均雇用人数)臨時従業員は、主にパートタイマー、アルバイト等の従業員であり、派遣社員は含みません。3.当社従業員のうち、JX金属株式会社等からの出向者の平均勤続年数については、出向元での勤続年数を通算しています。 (3)労働組合の状況特記すべき事項はありません。 (4)多様性に関する指標当連結会計年度の当社及び主要な事業会社の多様性に関する指標は、以下のとおりです。 当社当事業年度管理職に占める女性労働者の割合(%)(注1)男性労働者の育児休業取得率(%)(注2,3)労働者の男女の賃金の差異(%)(注1,3)全労働者正規雇用労働者パート・有期労働者14.6---- 主要な事業会社当事業年度名称管理職に占める女性労働者の割合(%)(注1)男性労働者の育児休業取得率  (%)(注2)労働者の男女の賃金の差異(%)(注1)全労働者正規雇用労働者パート・有期労働者ENEOS株式会社4.4(注3)95.8(注3,4)75.1(注3,4)75.0(注3,4)36.7JX石油開発株式会社4.770.073.075.212.1JX金属株式会社3.625.269.970.953.2(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号。以下、女性活躍推進法)の規定に基づき算出したものです。2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号。以下、育児介護休業法)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。3.当社における「男性労働者の育児休業取得率」及び「労働者の男女の賃金の差異」は、出向元のENEOS株式会社で算出しています。4.ENEOS株式会社から他社への出向中の社員を含みます。5.上記の会社を除く「女性活躍推進法」及び「育児介護休業法」に基づき、開示の義務を有する会社の多様性に関する指標については、「第7 提出会社の参考情報 2 その他の参考情報」に記載しています。
経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
文中の将来に関する事項は、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針当社は、事業活動の基礎となる「ENEOSグループ理念」を次のとおり定めています。 また、当社グループを取り巻く事業環境はかつてない転換期を迎えています。このような環境の下、「ENEOSグループ理念」の実現に向けて「『今日のあたり前』を支え、『明日のあたり前』をリードする。」を新たな決意として掲げました。ENEOSグループは、困難な課題に挑戦し、「明日のあたり前」を創りつづけるリーディングカンパニーとして、ステークホルダーの皆様からの一層の信頼に応えていきます。 (2)ENEOSグループ長期ビジョン足下の事業環境は、エネルギーセキュリティの揺らぎ、カーボンニュートラルに向けた社会的コンセンサスの形成、デジタル・トランスフォーメーションの更なる進展等、変化のスピードは加速しており、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、エネルギートランジションに挑戦することが強く求められています。このような課題認識のもと、当社グループは、次のとおり「ENEOSグループ長期ビジョン」を2023年5月に公表しています。 今後の事業環境を展望すると、社会がカーボンニュートラルへ進むことが確実と考えられる一方、カーボンニュートラルエネルギーの主役や必要な技術ブレイクスルーの時期は依然として不透明であり、また、このような状況であってもS+3E(注1)を満たしつつ、カーボンニュートラル社会へスムースに転換する必要があります。こうした状況の中で、当社グループは、日本のエネルギートランジションをリードし、カーボンニュートラル社会においても国内の一次エネルギーの2割を供給(SAF(注2)・水素・合成燃料で最大シェア)するメインプレイヤーでありたいと考えています。(注)1.安全性(Safety)、安定供給(Energy security)、経済性(Economic efficiency)、環境(Environment)2.Sustainable Aviation Fuel :持続可能な航空燃料 現段階では、カーボンニュートラル社会の主役となるエネルギーは明確ではありませんが、当社グループは、カーボンニュートラル社会の主力となる次世代エネルギーへの強みを発現すべく、着々と布石を打ってきました。また、デジタル社会の中心素材となる製品群や高度なリサイクル技術に加え、シェアリングエコノミーの進展を支えるインフラ/ビジネスネットワークも保有しています。当社グループが有する様々なシナリオに対応する高いレジリエンス、2030年以降の大きな収益ポテンシャル(成長機会)を活かし、すべてのステークホルダーの期待に応えていきます。2040年度に向けて、当社グループは、化石燃料中心のポートフォリオを脱炭素分野へシフトしながら、エネルギートランジションを進化させていきます。ROIC/事業領域別収益規模は、次のとおりです。 (3)目標とする経営指標当社は、2023年5月に2023年度からの3ヵ年の第3次中期経営計画(2023-2025年度)を策定しています。本中計期間を長期ビジョンの実現に向けた「周到な準備と展開」に注力する期間と位置付け、「確かな収益の礎の確立」、「エネルギートランジション実現への取組加速」及び「経営基盤の強化」を基本方針として、諸施策を着実に実行しています。 <基本方針> <第3次中期経営計画の進捗>①確かな収益の礎の確立第3次中期経営計画の基本方針である「確かな収益の礎の確立」を成し遂げるべく、製油所稼働率の改善に向けた取組を推進しました。具体的には、要因別にトラブルを分析した上で、機器保全戦略の見直しや施工業者との知見共有、マネジメント体制強化等の施策を講じました。結果として、当連結会計年度における製油所の計画外停止の割合(UCL)は、7%となりました。併せて、収益改善も強力に推し進めるべく、組織体制の最適化や高度な採算管理・業務効率化といった聖域なきビジネスプロセス改革(BPR)にも取り組みました。当連結会計年度は、専任組織であるビジネスプロセス改革部のもと、部門を横断した60以上のワーキンググループにおいて取り組んだ結果、約270億円(2か年累計で約470億円)の収益改善を実現しました。 ②エネルギートランジション実現に向けた取組カーボンニュートラル社会においても当社グループが国内一次エネルギー供給のメインプレイヤーであり続けるべく、当連結会計年度においてもエネルギートランジション実現に向けた取組を推進しました。具体的には、再生可能エネルギーの分野において、国内外計11か所の風力・太陽光発電所の運転を開始し、また、秋田県八峰町及び能代市沖における洋上風力発電事業者に当社グループが代表を務めるプロジェクト会社が選定されました。 ③経営基盤の強化幅広い事業領域を持つ当社グループにあって、急速に変化する事業環境に対応するためには、各事業の成果をさらに見える化することで資本効率を追求するとともに、スピード感を持ってそれぞれの事業特性に応じた成長戦略を実行する必要があります。このため、2024年4月、従来はENEOS株式会社(以下、ENEOS)傘下にあった機能材事業、電気・都市ガス事業及び再生可能エネルギー事業を当社の直下に配置し、主要な事業会社を6社とする分社化型のグループ運営体制に移行しました。同時に、ENEOSにおいても事業毎の運営・採算と経営の責任をより明確にすべく当社と同社との実質的事業持株会社体制を解消しました。 さらには、主要な事業会社に横串を通し、会社間の連携強化や資源配分の最適化等を行うことでグループガバナンスをよりよいものとすべく、グループCxOを設置しました。当社の強いリーダーシップのもと、主要な事業会社間の連携強化、資源配分の最適化、ポートフォリオ経営の推進によって、各事業の成長を推進します。 ④財務目標の実績及び見通し第3次中期経営計画から、ROICを財務目標に加えています。このROICは、事業リスクを考慮したうえで株主資本コストを設定し、そこから当社の戦略・強み等を考慮した付加価値を想定して、事業別に設定しています。第3次中期経営計画最終年度となる2025年度において、インキュベーション(現時点では実証段階にある等の事業として評価が相応しくない水素・合成燃料等の事業)を除き、事業全体で7%以上とすることを目標としました。現時点の主な経営指標の見通しは以下のとおりです。 ⑤株主還元株主の利益還元は、引き続き経営上の重要課題であると認識しており、中期的な連結業績推移及び見通しを反映した利益還元の実施を基本に、安定的な配当の継続に努める方針です。第3次中期経営計画期間中は、3か年平均で、在庫影響除き当期利益の50%以上を「配当と自社株買い」で還元するとともに、安定的な配当継続に配慮し、22円/株の配当を下限とする考えです。資本効率の追求やポートフォリオの入れ替え等により財務体質が良化したことを踏まえ、この方針のもと本年2月公表分とあわせて総額2,500億円を上限とする自己株式を取得することを2024年5月14日に決定しました。これにより、2023年度2024年度平均での総還元性向は85%になる見込みです。 ⑥企業価値向上に向けた取組昨年度からROEは大幅に良化しているものの、継続的なエクイティスプレッドの創出については未だ課題が残されており、結果としてPBRが1倍を下回る状況が継続しているものと分析しています。まずは、「稼ぐ力」の強化と「最適な資本構成」の実行により、継続的なエクイティスプレッドの創出を進めていくこと、そして 、エネルギートランジションに向けた取組を確実に進捗させていくとともに、市場との対話を進めていくことで、資本コストの低減・期待成長率の向上を進めていくことが、重要であると考えています。 (4)対処すべき課題<「あるべきENEOSグループ」の実現に向けた取組>当社グループにおいて、2年連続で経営トップが「ENEOSグループ理念」に反する不適切な行為に及んだことは痛恨の極みであります。当社は、この事実を厳粛に受け止め、一層強化した再発防止策に徹底して取り組むとともに、エネルギートランジションを牽引していくことのできる「あるべきENEOSグループ」の実現に向けて、次の取組に全力を注ぐこととしました。 ①従業員が安心し、誇りを持って働ける環境の再整備長期ビジョンを実現するためにはそれを牽引する人材の確保・育成が極めて重要であると考え、従来、従業員の能力開発、リスキリング等の人的資本の強化やタレントマネジメントの充実を推進し、さらには、エンゲージメントの向上に努めてきました。しかしながら、今般、当社の重要なステークホルダーである従業員を失望させてしまったことを受け、「従業員が安心し、誇りを持って働ける環境の再整備」に徹底的に取り組みます。具体的には、「ENEOSの強み」として残すべきものと、変えていくべきもの等を精査し、それらに向かう施策を検討・実行します。また、従業員との信頼関係を維持・向上すべく、定期的なエンゲージメント調査等を実施し、結果とその対応状況の見える化も行います。 ②継続的なガバナンス改革長期ビジョンの実現に必要なスキルを備えた社外取締役が当社の経営を監督・指導する体制としておりますが、一層その透明性・客観性を高めるべく、「継続的なガバナンス改革」に取り組んでいます。具体的には、取締役会における社内論理での議事進行を徹底的に排除し、また、議題選定にも外部の目線を一層取り入れるべく、社外取締役の比率を50%超とするとともに、取締役会の議長を社外取締役にします。併せて、「あるべきENEOSグループ」へと牽引するリーダーである当社経営トップを選定・育成すべく、「次世代のENEOSグループを担う人材像」を改めて定義した上で、後継者計画(サクセッションプラン)を再構築します。また、取締役会が同計画のブラッシュアップとモニタリングを継続することにより、変化する時代の中でも常に社会から必要とされ、信頼される会社であることを維持します。 <第3次中期経営計画の迅速かつ着実な実行>①「確かな収益の礎の確立」に向けて具体的に取り組む事項当社は、以上のとおり、「あるべきENEOSグループ」を確立するとともに、長期ビジョンの実現に取り組みますが、「周到な準備と展開」に注力する第3次中期経営計画期間において「確かな収益の礎の確立」に向けて具体的に取り組む事項は次のとおりです。加えて、各事業における技術の開発、有力なパートナーとの連携、国からの支援制度の活用等、バランスシートに計上されない無形資産の形成にも注力し、これらの施策全体により収益最大化を図ります。 ②JX金属株式会社の上場準備当社とJX金属株式会社(以下、JX金属)の更なる企業価値向上を目的として、JX金属の上場に向けた準備を進めます。この施策を通じて、当社は、JX金属の高い成長性を株式市場に対して適正に訴求し、ポートフォリオ転換のための投資や株主への機敏かつ確実な還元を実行します。JX金属は、事業特性に応じた迅速な意思決定と成長分野における各種戦略の実行を実現します。また、独立経営体制を確立すべく将来的には、持分法適用関連会社への移行を目指します。 <次期の連結業績予想について(2024年5月公表)>製油所トラブルの抑制や石油製品の輸出数量増加のほか、2023年度に出荷を開始した既存ガス田拡張プロジェクトの年間貢献等による数量影響良化、半導体材料及び情報通信材料での販売回復等を織り込む一方で、白油・輸出マージンのプラスタイムラグの解消や輸出市況の悪化、金属事業における出資鉱山の減産や銅事業子会社株式の一部譲渡による利益剥落等を織り込んでいます。前提条件に基づく次期の業績予想は下記のとおりです。●前提条件(2024年4月以降)為替:145円/ドル、原油(ドバイスポット):80ドル/バーレル銅価:380セント/ポンド売上高:14兆6,000億円 営業利益:4,000億円 親会社の所有者に帰属する当期利益:2,100億円在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益相当額は、営業利益と同額の4,000億円と見込んでいます。なお、従来はENEOS傘下にあった機能材事業、電気・都市ガス事業及び再生可能エネルギー事業を当社の直下に配置し、2024年4月に分社化しました。これに伴い、2024年度より報告セグメントを変更します。(変更前)エネルギー、石油・天然ガス開発、金属(変更後)石油製品ほか、機能材、電気、再生可能エネルギー、石油・天然ガス開発、金属
サステナビリティに関する考え方及び取組 2【サステナビリティに関する考え方及び取組】
文中の将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。 (1)ガバナンス・ESG経営推進体制企業が持続的に成長するためには、事業活動を通じて社会ニーズに応え続けるとともに、社会課題の解決に貢献することで社会から信頼され、価値を認められる存在でなければなりません。この認識のもと、当社グループは「ESG経営に関する基本方針」を定め、当社経営会議において将来の経営に大きな影響を及ぼし得るリスクや事業機会を分析し、特定したリスク・重点課題への対応状況を適切に管理する体制を取っています。 [リスク・重点課題の特定及び対応状況確認プロセス]ア.包括的な協議(原則年1回、第4四半期)(次頁、図①)経営会議では、議論の実効性及び意思決定の迅速性を高めるため、下記の事項を包括的に協議しています。(ア)全社的なリスクマネジメントに基づいて特定する重点対応リスク事象(イ)ESGに関するリスク分析に基づいて特定するESG重点課題(ウ)内部統制システムに基づいて特定する内部統制上のリスク事象 イ.対応方針決定及び状況確認(原則年1回、第1四半期)(次頁、図②)当社所管部署主導のもと、関係部署及び主要な事業会社(注)が組織横断的に連携し、特定したリスク・重点課題への対応方針を策定・実行しています。経営会議では、前年度の対応状況確認とともに、当該年度の対応方針確定・決定を行っています。(注)主要な事業会社とは、ENEOS株式会社、JX石油開発株式会社及びJX金属株式会社の総称です。 ウ.事業機会の議論(適宜)(次頁、図③)経営会議では、中期経営計画や年度ごとの事業計画及びそれらに基づく予算の審議を行っています。その都度、事業機会について議論しています。 エ.取締役会への報告(適宜)(次頁、図④)取締役会は、経営及び中期経営計画・予算等の事業戦略を決議するとともに、経営会議で決定したリスク・重点課題とそれらへの対応状況の報告(原則年2回)を受けることで、監視・監督しています。2023年度に取締役会に報告されたESG関連事項は、下記のとおりです。(ア)2022年度ESG活動状況実績及び2024年度ESG重点課題の特定(イ)個別課題への対応カーボンニュートラル基本計画の策定についてカーボンニュートラル戦略に関する状況報告について オ.グループ会社との共有(適宜)(次頁、図⑤)特定したリスク・重点課題をグループ各社と適宜共有し、グループ各社が自律的に自社の事業戦略に反映することで対応しています。 (2)リスク管理・ESG重点課題の検証と特定当社グループは、各種ガイドライン、ESG評価機関の評価項目や評価ウエイト等を踏まえ、毎年ESG重点課題を特定しています。特定手順に沿って、2024年度は10個のESG重点課題を特定しました。また、ESG重点課題ごとに責任部署・KPIを設定しており、ESG重点課題におけるKPIの進捗状況、取組結果を経営会議及び取締役会に報告することとしています。 特定した2024年度ESG重点課題区分ESG重点課題環境脱炭素社会形成への貢献社会安全確保・健康増進ガバナンスコンプライアンスの推進社会国際的な人権原則の遵守社会人材の育成・確保ガバナンスコーポレートガバナンスの適切な構築・運営環境生物多様性リスクの適切な把握・管理社会ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進環境循環型社会への貢献社会ステークホルダーとのコミュニケーション(注)上から評価点の高い順に記載しています。 (3)気候変動対応(TCFD)ア.シナリオ分析当社グループは、世界エネルギー需要の長期的見通しについてはIEAのWEO(World Energy Outlook 2022)を参照し、物理的なリスク評価(気候や海面変化への対応等)についてはIPCCのRCPを参照してシナリオ分析を実施しています。長期ビジョンの見直しにあたり、低炭素社会は IEA WEOのSTEPS(注1)、カーボンニュートラル社会はAPS(注2)及びNZE(注3)を参考に検討し、その中間シナリオを当社グループのベースケースとしました。その結果、長期ビジョンで描く社会シナリオの方向性は変わらないものの、その変化のスピードは公表時の想定より加速すると考えています。当社グループのシナリオでは、2040年社会における国内燃料油需要はおよそ半減する(2019年比)一方、脱炭素・循環型資源由来のエネルギー市場が大きく成長していく中で環境価値取引も一般化することを想定しています。また、EV・シェアリング等のモビリティ関連、生活を快適にするライフサポート関連の高付加価値サービスや、リサイクル資源、デジタル機器等に必要な高機能材料、先端材料等の需要が拡大していくと見込んでいます。当社グループは、1.5℃を含む複数のシナリオを検証しており、化石燃料中心のポートフォリオから脱炭素分野へシフトしていく過程において、燃料油の需要動向等にも注視しながら、エネルギー安定供給とカーボンニュートラル社会の実現を両立していく方針です。様々なシナリオに対応する高いレジリエンスを有しており、社会全体がよりカーボンニュートラル実現に向けて進展し、日本全体で1.5℃シナリオに向かっていく環境により近づけば、当社の取組もさらに加速させることで日本のエネルギートランジションをリードし、脱炭素社会の形成に大きく貢献します。(注)1.Stated Policies シナリオ(現在公表されている各国の政策を反映したシナリオ)2.Announced Pledges シナリオ(各国の意欲的な目標が達成されると仮定したシナリオ)3.Net Zero Emissions by 2050 シナリオ(2050年に世界でネットゼロを達成するシナリオ) イ.リスクと機会当社グループは、全社的リスクマネジメント(ERM)を導入しています。このプロセスから気候変動対応は経営上の重要なリスクと捉え、かつ機会とも認識しており、次頁の項目を特定しています。財務影響については、移行リスクは当社ベースシナリオ、物理リスクはストレスケースとしてIPCC  RCP8.5シナリオ(注4)に基づき試算していますが、多くの潜在的リスク・不確実な要素・仮定を含んでおり、実際には、重要な要素の変動により大きく異なる可能性があります。なお、リスク・機会を含むTCFD推奨の開示項目については、毎年発行される「ESGデータブック」に詳細を記述しています。2024年11月に発行する予定ですので、そちらをご参照ください。 (注)4.IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の評価シナリオで、世界の平均気温が2100年までに1986年~2005年と比べ約4℃相当上昇するシナリオ ●リスク・機会と時間軸ごとの財務影響 項目名財務影響短期(2025年)中期(2030年)長期(2040年)評価方法移行リスク・カーボンニュートラル 達成のために要するコストの増加なし300億円/年1,200億円/年2030年の目標削減量400万トン、2040年の目標削減量1,900万トン全量を炭素クレジット購入した場合の営業利益減少額炭素クレジット価格(50ドル/tCO2※ )×数量×為替※内部炭素価格・技術革新によるEVの普及加速による石油需要減・環境意識の高まりによる石油需要減影響は限定的約500億円/年減少約1,000億円/年減少2019年比2030年に国内石油需要が約2割減、2040年に約半減した場合の営業利益減少額(第3次中期経営計画の2025年度の利益目標をベースに算出)・石油上流資産の座礁化リスクは限定的保有する石油上流資産の埋蔵量を、現行生産量で割り戻した可採年数から推定物理リスク・異常気象(大型台風等)と海面水位の上昇による極端な風水害の発生、過酷度の増加1~2億円/年IPCC RCP8.5シナリオを参照し、国内に保有する製油所・製錬所等31箇所の設備・資産を対象に、WRI Aqueduct(注5)等を用い被害総額(営業利益減少額)を試算・温暖化に伴う海面上昇リスクは限定的Aqueductが予測する2040年時点の日本近海における海面上昇量(約0.2メートル)から推定機 会・再生可能エネルギー、水素、カーボンニュートラル燃料に対する需要増加周到な準備と展開フェーズ〜500億円/年〜2,000億円/年脱炭素・循環型社会の進展に伴い、再生可能エネルギー、水素、カーボンニュートラル燃料に対する需要の増加が見込まれ、推定される市場規模と当社シェア、営業利益率について一定の仮定をおき試算した当期利益・EV充電や環境に配慮したモビリティサービスの拡大周到な準備と展開フェーズ〜500億円/年〜1,000億円/年脱炭素社会に向けて普及が見込まれるEV充電の需要増加や、環境に配慮したモビリティサービス等のビジネス機会拡大が見込まれ、推定される市場規模と当社シェア、営業利益率について一定の仮定をおき試算した当期利益・環境負荷の削減効果を持った製品の需要増加・循環型資源由来(リサイクルを含む)の素材の需要増加1,000億円〜1,500億円/年〜2,000億円/年GHG排出削減貢献につながる製品の需要拡大や、サーキュラーエコノミーに対応した循環型資源由来の素材の需要増加が見込まれ、推定される市場規模と当社シェア、営業利益率について一定の仮定をおき試算した当期利益(注)5.世界資源研究所(World Resources Institute)が開発した水リスク評価ツール ウ.指標と目標 ~カーボンニュートラル基本計画~カーボンニュートラル社会の実現に向けて、当社グループはカーボンニュートラル基本計画(2023年5月公表)を策定しています。本計画では、当社の温室効果ガス排出削減を製造・事業の効率化やCCS、森林吸収等によって進めるとともに、社会の温室効果ガス排出削減に貢献するため、水素・カーボンニュートラル燃料・再生可能エネルギー等による「エネルギートランジション」の推進とリサイクルやシェアリング等による「サーキュラーエコノミー」の推進を掲げ、具体的な目標やロードマップを定めています。 当社グループのカーボンニュートラル基本計画の詳細は、以下のとおりです。 エ.2023年度の主な取組(ア)CO2の見える化製油所での削減推進のために排出量の適時把握が重要となる事から、CO2見える化システムを導入し、全社の排出量一元管理と製品ごとの排出量(CFP:カーボンフットプリント)算定ができる体制を構築しました。法定報告の効率化、月次予実管理による計画の実行管理を行うとともに、一部製品のCFPデータの顧客への提供を開始しています。製油所で実際に取得されたデータを用いたCFP算定は、国内石油業界初となります。今後、低炭素製品の環境価値訴求によるビジネス機会創出を目指します。さらに、GHG排出削減に資する事業を推進すべく、インターナルカーボンプライス50$/t-CO2を導入し、感応度分析を行っています。(イ)CCS国内CCSの事業化に向け、エネルギーセグメントに属する子会社であるENEOS株式会社(以下、ENEOS)、石油・天然ガス開発セグメントに属する子会社であるJX石油開発株式会社(以下、JX石油開発)及び電源開発株式会社の3社で検討を進めており、2023年8月に独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による令和5年度「先進的CCS事業の実施に係る調査」に採択されました。本事業ではCO2分離回収・輸送・貯留に関する設計作業及び貯留層評価等を行っており、貯留については2023年2月に設立した合弁会社である「西日本カーボン貯留調査株式会社」が主体となり検討を行うことで、2030年度までに実装可能なCCSバリューチェーンの構築を目指しています。また、2023年4月にJX石油開発が、海洋掘削事業を営む日本で唯一の企業でありCO2を地下に圧入・貯留するための掘削技術を有する日本海洋掘削株式会社を連結子会社とすることで、ENEOSグループとしてCCSバリューチェーン構築に向けた体制強化を進めています。海外CCSにおいては、2023年12月にENEOS、JX石油開発及びオーストラリアの石油・ガス大手であるSantos社と日豪間のCCSバリューチェーン構築に向けた共同検討に関する覚書を締結しました。さらに、2024年3月にENEOS、JX石油開発、三菱商事株式会社及びマレーシア国営石油会社であるペトロナスの関係会社であるPETRONAS CCS Solutions Sdn Bhdと、東京湾を排出源とするCO2の分離・回収・集積から船舶輸送、そしてマレーシアでのCO2貯留までの海外CCSバリューチェーン構築に向けた共同検討に関する覚書を締結しました。これまでの石油・天然ガス開発の知見を活かし、CCSの取組が進む地域の企業との連携を強化しCCSバリューチェーンを構築していくことにより、日本のカーボンニュートラル計画達成に貢献していきます。 (ウ)自然吸収森林プロジェクトについて、国内においては愛媛県久万高原町及び新潟農林公社に続き、2023年11月から日本生命相互保険会社と共同で北海道森町とJ-クレジット創出に向け協業を進めています。森林由来のJ-クレジットによる収益を森林整備にかかわる事業に使用いただき、森林の持つCO2吸収能力のさらなる活性化を目指します。この取組を進めることにより、引き続き健全な森林の育成を通じて木材生産はもとより、森林のもつ多面的な機能の維持・増進に積極的に取り組んでいきます。また、海外においては2023年7月に住友林業株式会社グループが組成する米国の森林ファンドEastwood Climate Smart Forestry Fund Iへ出資を行いました。本ファンドは、日本企業10社が各社の米国子会社等を通じて出資参画しています。カーボンクレジットのマーケットや制度が先行している米国でカーボンクレジットの創出を行います。ファンドの仕組みを活用し、適切に管理する森林を大幅に拡大しグローバルな気候変動対策、生物多様性に貢献します。国内外問わず、森林の循環利用による脱炭素・循環型社会の形成に貢献していきます。さらに、産官学連携による大規模ブルーカーボン創出の検討を2023年12月より開始しました。海洋生態系に取り込まれた炭素「ブルーカーボン」は、CO2の吸収源対策の新しい選択肢として期待されています。大気中のCO2は、海草・海藻藻場等のブルーカーボン生態系の光合成により取り込まれ、海底に堆積したり海洋中深層に分解されながらも長期間留まることによって、ブルーカーボンとして大気から隔離されます。このメカニズムを広域で適用し人が積極的に関与することで、大規模ブルーカーボン創出を目指します。 当社グループにおける、2022年度のGHG排出量(Scope1,2)は2,793万トン、2023年度は2,490万トン(注6)でした。(注)6.速報値です。確定値については、2024年11月公表予定の「ESGデータブック」をご参照ください。 (4)人的資本と多様性当社グループは、「グループ人材育成基本方針」に則り、中長期的な企業価値向上の実現を担う人材と、創造と革新の精神を持ちグローバルに挑戦し続ける人材を育成することで、確かな収益の礎の確立とエネルギートランジションを実現します。 ア.人材の確保・育成当社グループでは経営のニーズに即した多様な人材の獲得に努めています。特にENEOSでは、積極的に経験者採用を進めており、大卒採用者の4割が経験者採用者となっています。 2021年度から2022年度にかけては、各社で人事制度を改定しました。具体的には、ENEOS(管理職)とJX石油開発では、役割等級制度を導入し、経営戦略に基づいて設定されたポストに年齢問わず最適な人材を抜擢する等、ダイナミックな人材シフトと登用が可能になりました。また、ENEOS(一般職)とJX金属株式会社(以下、JX金属)では、コース別人事制度を導入し、コース毎に求められる役割やキャリアを明示することで、各人材像に適した評価や育成を丁寧かつスピーディーに実行できるようになりました。 その上で、ENEOSでは、ベンチャー企業派遣型研修、M&A研修等による能力開発、リスキリング等を通じて、事業ポートフォリオの転換を実現する人材を育成していくほか、2022年度より導入したオンライン学習支援制度(ENEOS Learning Platform)の利用者数の向上を図ることにより、全社的に社員の自律的なキャリア形成を支援していきます。また、JX石油開発においては、プロジェクトマネジメント研修、JX金属においては、グローバル研修やデジタル研修等を通じて、事業計画の実現に資する人材を育成していきます。なお、デジタル人材の育成に関しては、「(10)情報セキュリティ及びDX推進に関する事項」の「②DXの取組」をご参照ください。 イ.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)当社グループでは、多様な人材一人ひとりが最大限に力を発揮できるよう、DE&Iの推進を重要な経営戦略の一つと位置付けており、各社で様々な施策を展開しています。その施策の一つとして、女性活躍推進法及び次世代育成支援対策推進法に基づいた行動計画を策定しており、ENEOSにおいては「大卒採用者の女性比率」や「女性役職者数」等の目標を掲げています。また、自律的な働き方の選択と、それに伴う生産性の更なる向上を狙いとして、テレワークを始めとした柔軟な働き方を支援する制度を整備する等、働き方改革も継続して推進しています。 第3次中期経営計画における「経営基盤強化」のためのグループ人材戦略は、以下のとおりです。 ウ.指標及び目標当社グループ各社は、上記の戦略の実現に向け、各事業会社の特性に応じ定量目標を設定しており、ENEOSでは、以下の目標を掲げています。 2022年度実績2023年度実績2025年度目標大卒採用者の女性比率事務系 52%事務系 57%事務系 50%以上 技術系 16%技術系 17%技術系 20%以上女性役職者数51名58名100名以上経験者採用役職者数56名71名80名以上男性育児休業取得率(注)83.9%81.1%90%以上ENEOS Learning Platform延べ利用人数589名800名1,500名以上(注)ENEOS基準の計算方法により、算出した数値です。 (5)安全確保・健康増進ア.安全確保当社グループは、エネルギー・素材の安定供給を担う企業グループとして、安全操業を確保することが事業の存立及び社会的信頼の基盤、競争力の源泉であると考えています。このような認識のもと、ENEOSグループ理念において「安全」を最優先のテーマの1つと位置付けるとともに、ENEOSグループ行動基準にグループの基本方針を定めました。これを踏まえ、グループ各社は、それぞれの事業特性に合わせて安全に関する方針を定め、労働安全に関するリスクの評価を行い、実効性を備えた安全活動を重層的に推進しています。具体的には、協力会社従業員の方々を含めた安全諸活動及び安全教育の充実を図るとともに、あらゆる事故・トラブル・自然災害に対する予防策及び緊急時対策を講じています。ENEOSでは、移動中の安全確保を図るため、2022年度からAI歩行診断プログラムを導入し、取組を継続しています。専用の機械を用いて個人の歩行速度・歩幅・重心移動等を計測し、歩き方の安全度合いを判定するプログラムであり、計測結果をもとに、安全な歩き方につながる体操等の改善策を提案する機能も備えています。また、グループ各社は、労働組合とも組合員の安全衛生を図るために会社が必要な施設の整備に努めることを確認しています。(労働協約付帯協定第90条) (ア)指標と目標当社グループは、労働者の安全を最優先かつ徹底する意志を表明しています。「重大な労働災害(死亡労働災害)件数ゼロ」及び「TRIR(注1)1.0以下の達成」をグループの重点目標として定め、協力会社の方々を含めた安全諸活動の徹底及び安全教育の充実を図っています。(注)1.総災害度数率、100万時間当たり負傷者数(不休労災+休業・死亡労災者数)。 当社グループの定量目標及び実績は以下の通りです。 2022年度実績・目標2023年度実績・目標2024年度目標重大な労働災害(死亡労働災害)件数0件(0件)0件(0件)0件TRIR(総災害度数率) 1.00(1.0以下)0.94(1.0以下)1.0以下LTIR(休業災害度数率)(注2)――従業員:0協力会社員:0.3以下(注)2.100万時間当たりの休業・死亡労災者数。3.2022年度及び2023年度における下段かっこ書きは目標値です。4.2023年度における実績値は速報値です。確定値については、2024年11月発行予定の ESGデータブックをご参照ください。イ.健康増進当社グループは、従業員及びその家族の健康を大切にすることが、従業員の活力向上、生産性改善及び組織活性化につながり、ひいては成長戦略実現の原動力や競争力の源泉になると考えています。このような考え方のもと、健康に関する基本原則をグループ行動基準に定めるとともに、従業員の自律的な健康管理及び健康増進に寄与すべく「健康経営」を推進しています。 (ア)健康経営の全体像当社グループは、「ENEOSグループ理念」において、「安全・環境・健康」を“大切にしたい価値観”の一つとして掲げています。「ENEOSグループ長期ビジョン」実現のためにも、企業活動の根幹である従業員一人ひとりの心身の健康を維持・増進することが大切です。健全な労働環境の整備及び適切な働き方の実現に向けた取組、また、従業員の健康管理をサポートしつつ自律的な健康管理意識を醸成する取組が、個人の健康は勿論、職場全体の活力や生産性の向上につながり、ひいては「健康経営」の実現に至ると考え活動しています。 (イ)健康経営のサポート体制従業員の健康推進をサポートする事務局を人事部内に設置し、健康保険組合や関係会社・各事業所と連携しながら様々な取組を行っています。また、本社健康管理センターにおいて心療内科医師を配置する等、産業医体制の充実化も図っています。 (ウ)指標と目標当社グループでは、国内外を問わず、定期健康診断の受診率100%実施に加えて、生活習慣病予防に向けたサポートや感染症予防に取り組んでいます。海外赴任者・出張者に対しては、疫病・感染症予防接種や医療サポート制度等の整備に努めています。また、健康増進法の趣旨に則り、受動喫煙リスクの徹底的な排除にも取り組んでいます。 当社グループにおける健康関連指標の目標及び実績は以下のとおりです。健康関連指標2022年度実績2023年度実績2024年度目標喫煙率22.0%24.1%23.1%以下適正体重維持者の比率(BMI25未満)70.9%69.7%70%以上定期健康診断受診率100.0%100.0%100.0%(注)ENEOSホールディングス、ENEOS、JX石油開発、JX金属が集計対象です。 (6)国際的な人権原則の遵守当社グループは、グローバルに事業を展開する企業グループとして、従業員を含むすべてのステークホルダーの人権を尊重することが、持続的な社会の発展に貢献していくうえで根本的かつ必須の重要テーマであると考えています。当社グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、国際労働機関(ILO)の中核的労働基準(「結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認」「あらゆる形態の強制労働の禁止」「児童労働の実効的な廃止」「雇用及び職業における差別の排除」)、「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」等の国際規範を支持しています。また、従業員に限らず、サプライヤー、お客様、お取引先、地域社会等のさまざまなステークホルダーの方々の人権を尊重し、事業活動を進めています。 ア.人権ポリシー当社グループは、人権尊重の基本原則をグループ行動基準に定めるとともに、これを補完する人権ポリシーを制定しています。当社グループの事業活動に関連するすべてのビジネスパートナーに対して理解・協力を要請し、これらの周知徹底と遵守に努めています。 イ.人権デュー・ディリジェンス当社グループは、人権デュー・ディリジェンス(以下、人権DD)、サプライチェーンにおけるCSR調達アンケート、そして人権への負の影響が疑われた場合の対応フローという3つの仕組みを通じて、網羅的に人権リスクの把握に努めています。2019年度から隔年で国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)に沿った人権DDを実施しています。事業活動における人権侵害リスク範囲の特定と評価、改善策立案、教育の仕組み構築を内容とするものです。人権DDのサイクルは以下のとおりです。 ①人権リスク調査の対象となるステークホルダー・人権リスクのスコーピングステークホルダー:従業員、お客様、製油所・サービスステーション(SS)の周辺住民、         サプライヤー等人権リスク:以下表「人権DDにおいて確認する人権課題」参照 ステークホルダー人権DDにおいて確認する人権課題従業員ハラスメント労働時間管理差別健康安全ワークライフバランス結社の自由(団結権・団体交渉権)公正かつ良好な労働基準サプライヤーサプライヤーによる人権侵害事象の発生顧客・取引先品質不良(コンタミネーション含む)不適切な商品情報の提供不適切な商品化学物質管理情報セキュリティ(プライバシー)地域社会環境(地球の環境破壊、健康被害、事故被害含む) ② 人権リスクの評価・検証①でスコーピングした各人権リスクに対し、業務を通じた人権侵害を行っていないか、各部で自己評価評価後、外部専門家に確認を依頼し、対応を優先すべき人権リスクを特定 ③ 今後の対応策検討自己評価の結果及び外部専門家の意見を踏まえ、対応を優先すべき人権リスクに対する対応策を検討 ④ 対応策の導入検討を踏まえ対応策を導入 ⑤ 開示対応について報告 ウ.指標と目標当社グループでは、「人権DD・人権研修の実施」を取組目標としています。2023年度は第3回人権DDを実施し、主要な事業バリューチェーン上における重大な人権侵害事例が生じていないことを確認しています。より詳細な報告は、2024年11月発行予定のESGデータブックをご参照ください。また、人権研修については、グループ各社で、人権意識の向上と職場における人権侵害の発生防止を目的として、役員・従業員を対象に人権啓発研修やeラーニングを継続しています。(7)生物多様性リスクの適切な把握・管理当社グループは、操業・生産拠点の周辺環境に影響を与えかねない事業特性を持つことから、生物多様性の保全を重要なテーマと考えており、これをENEOSグループ行動基準に定めています。操業・生産拠点の新設等にあたっては、あらかじめ環境影響調査を行い、植生や鳥類・動物・海洋生物等の生態系を確認する等、事業活動のあらゆる分野で生物多様性に配慮した取組を推進しています。また、生産拠点の多いENEOSでは、「エネルギーグループ(注1)生物多様性ガイドライン」を定めています。 (注)1.ENEOS及びそのグループ会社。 ア.国内での主な取組当社グループは製造拠点において、地域の生物多様性保全活動に参加するほか、周辺の広大な緑地を豊かな生態系ネットワークの1つとして保全する活動に取り組んでいます。その他の事業所においても、周辺環境に合わせた環境保全活動を実施しています。 (ア)緑地管理の事例ENEOS根岸製油所は、東京湾に面し、周囲を三渓園、根岸森林公園等の緑地に囲まれ、海と山の自然が交差する地域に位置しています。そこで、里山管理の手法を用いて、地域生態系ネットワークの拠点の一つとすべく環境整備に取り組んでいます。同製油所は、良好な生態系ネットワーク形成等の活動が評価され、2020年2月に「いきもの共生事業所認証(ABINC認証(注2))」を取得し、2023年10月には環境省の「自然共生サイト」に認定されています。(注)2.一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)が開発した、いきもの共生事業所推進ガイドラインの考え方に沿って計画・管理され、かつ土地利用通信簿で基準点以上を満たし、当審査過程において認証された事業所。 (イ)藻場創出の事例ENEOS堺製油所は大阪湾奥部に位置しています。大阪湾奥部は、陸域から流入する窒素・燐等の栄養塩が滞留しやすく、赤潮発生が見られる等、いきものの棲みにくい水質と言われています。同製油所では、護岸部に藻類が着生するためのブロックを設置し、藻場創出に取り組んでいます。藻場創出により、栄養塩の吸収と酸素の供給による水質改善、海生生物の産卵・成育場所の増加、藻類の光合成を通じたブルーカーボンの蓄積等、多面的な効果を期待できます。 イ.国外での主な取組(ア)バラスト水(海水)対策日本から産油国へ向かうタンカーは、空船時の運航安定性を維持するため、「重し」としてバラスト水を積んでいます。そのため、日本の海域に生息する微生物やプランクトンがバラスト水とともに遠く産油国の海域に運ばれ、生態系バランスを崩す原因となっていました。当社グループでは、2004年から外洋でバラスト水を入れ替える方法や新造船にはバラスト水処理装置(注3)を搭載する方法を採用し、産油国の湾内海域の生態系バランスに配慮しています。2022年度に、当社グループが所有するタンカー15隻全船にバラスト水処理装置の搭載を完了しました。(注)3.バラスト水中の水生生物を一定基準以下にして排水する装置。 ウ.指標と目標「生物多様性リスクの適切な把握・管理」は2024年度ESG重点課題として、「主要な事業セクターにおける自然資本への依存度及び影響度の把握」を取組目標としています。自然資本への依存度及び影響度の把握には、一般公開されている自然との接点分析ツール(ENCORE)を用います。 (8)循環型社会形成の貢献当社グループは、「循環型社会形成への貢献」に向けて、自社及び社会全体の廃棄物低減や資源循環に努めます。グループ内で資源の有効活用や廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再資源化(リサイクル)を推進するとともに、リサイクル事業を拡大していきます。 ア.廃棄物の削減製油所等から排出される汚泥や集塵ダストのセメント原料化、製錬所で発生する中和滓(注1)の繰り返し使用等を推進しています。また、一部の潤滑油製品の開発評価にあたっては、LCA手法(注2)を用いています。それらのほか、当社グループは、生産の効率化による原材料の使用量削減、リサイクル原料の使用量拡大を進めています。(注)1.製錬工程での中和反応によって生じる生成物。2.製品製造について、原料等の調達から製造、輸送、使用、廃棄までのライフステージ全体の環境影響を定量的に評価する手法。 イ.サーキュラーエコノミーの推進当社グループは、従来型資源に依存しない循環型社会の実現に向けて、サーキュラーエコノミー(注3)を推進します。世の情勢が、リニアエコノミー(注4)からサーキュラーエコノミーへ、すなわち、大量生産・大量消費型の経済から資源循環型の経済へと移行しつつあります。3Rから一歩進み、製品設計段階からの配慮、メンテナンスによる製品寿命の延長、リースやシェアリングによる利用効率の向上等も重視されています。社会に供給されている製品は、資源の調達から製造、販売、使用、廃棄に至るライフサイクルの各段階でCO2が発生します。製造したものを廃棄せず、シェアリングやリサイクルにより循環させることで、CO2の発生を抑制できます。当社グループは、素材・サービス分野において原料の非化石資源化やシェアリングビジネスに取り組むことで、サーキュラーエコノミーを推進し、ひいてはカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。(注)3.バリューチェーン上のあらゆる段階における資源の効率的な利用により資源循環を目指す経済の仕組み。4.消費された資源をリサイクル・再利用することなく廃棄してしまい、直線的(Linear)にモノが流れる経済の仕組み。 ウ.指標と目標当社グループは、「ゼロエミッション(最終処分率1%未満)の維持」を目標に掲げ、廃棄物の適正管理・再資源化に取り組んでおり、2022年度の実績は0.8%、2023年度の実績は0.85%(注5)でした。(注)5.速報値です。確定値については、2024年11月発行予定のESGデータブックをご参照ください。 また、廃棄物の削減に加えて、カーボンニュートラル基本計画の中で、サーキュラーエコノミーの推進として、ケミカル素材の非化石資源比率・潤滑油のリサイクル量・銅精錬のリサイクル比率のロードマップを示しています。具体的な取組としては、2023年8月に公表した世界初のバイオパラキシレン製造による「バイオマス to ペットボトル」の取組や2022年に環境省の公募事業に採択された廃潤滑油のリサイクルに向けた取組等を通じて、サーキュラーエコノミーの推進に向けて取り組んでいきます。 (9)ステークホルダーとのコミュニケーション当社グループは、株主・投資家、お客様、お取引先、従業員等、多様なステークホルダーの皆様との関わりの中で事業活動を営んでいます。ステークホルダーとの対話を積極的に進め、期待や要請に応える活動を推進していきます。また、当社グループでは、ESGに関する具体的なテーマに関し、外部専門家・ステークホルダーの意見を聴取し対応しています。2023年7月には投資家向けにカーボンニュートラル基本計画の説明会を実施したほか、機関投資家の気候変動アクション・イニシアティブ「Climate Action 100+」とも定期的なエンゲージメントを実施しています。引き続き、外部専門家・ステークホルダーとのエンゲージメントを進め、社会課題の解決に貢献していきます。 ステークホルダー活動内容主なコミュニケーション手段主なコミュニケーション窓口株主・投資家当社では、ディスクロージャーポリシーを定め、株主・投資家の皆様に対し、迅速、適正かつ公平な情報開示に努めています。株主総会、決算説明会、個人投資家向け説明会、ESG説明統合レポート、ESGデータブック、株主通信、ウェブサイトでの情報開示当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)当社IR部門窓口(電話、メール、ミーティング等)お客様当社グループは、お客様のご要望やご期待に応え、信頼とご満足いただける商品・サービスを開発・提供しています。営業活動を通じたコミュニケーション安全・安心で価値ある商品・サービスの提供ウェブサイトによる情報提供電話やウェブサイトでのお問い合わせ窓口当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)グループ各社販売部門窓口(電話、メール、ミーティング等)ENEOSお客様センター(フリーダイヤル)お取引先当社グループでは、お取引先に対して購買情報を開示し、積極的にビジネスチャンスを提供するとともに、公正な取引機会の確保に努めています。購買業務を通じたコミュニケーションウェブサイトの活用CSR調達アンケートの実施(2年で1サイクル)当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)グループ各社調達部門窓口(電話、メール、ミーティング等)サプライヤー向け人権相談窓口NPO・NGO当社グループは、NPO・NGOとの協力関係を構築し、環境保全や社会貢献活動に積極的に取り組んでいます。生物多様性保全活動による協働次世代人材育成支援活動での協働人権デュー・ディリジェンスにおける第三者の立場からの検証(隔年)当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)地域社会・国際社会当社グループは、操業地及び国際社会からのニーズや期待に応え、積極的にコミュニケーションを図ることで、責任ある企業活動を行うことを目指します。地域住民向け説明会、行事参加・協賛ボランティア活動産油、産ガス、産銅国等を対象にしたさまざまな支援制度を開設国際イニシアティブへの参画当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)操業地域の事業所窓口(電話、メール、ミーティング等)従業員当社グループでは、従業員を経営における重要なステークホルダーとして位置付け、一人ひとりが安心して働き、能力を最大限発揮できるように、各種制度を整備しています。労働組合と経営層との定期的な対話グループ報、イントラネットによる情報発信意識調査の定期的実施階層別研修等の実施会社への意見・提言・要望の募集(年1回)各種施策に対するアンケートの実施(随時)内部通報制度(ホットライン)※請負先従業員も対象上司との定期的な面談労働組合を通じて ア.指標と目標当社は、「投資家との効果的なエンゲージメントの実施(のべ250件)」を取組目標としています。2022年度の実績は157件、2023年度の実績は412件でした。 (10)情報セキュリティ及びDX推進に関する事項①情報セキュリティ当社グループは、高い情報セキュリティレベルを確保することが重要な経営課題であると認識し、必要な対策に取り組んでおり、「情報セキュリティポリシー」を定め、ビジネスパートナーや委託先を含めて情報の適切な取扱い・管理・保護・維持に努めています。なお、情報セキュリティポリシーについては、当社Webサイトをご参照ください。( https://www.hd.eneos.co.jp/security/ )また、当社グループは、「ENEOSグループ情報セキュリティ基本規程」に則り、会社の資産である会社情報の不正な使用・開示及び漏えいを防止するとともに、会社情報の正確性・信頼性を保ち、改ざんや誤処理を防止し、許可された利用者が必要な時に確実にその会社情報を利用できるようにしています。個人情報保護については「個人情報保護要領」を制定し、個人情報保護法の遵守と、個人情報を適切に取り扱うためのルールを定め、権利保護を図っています。加えて、研修の実施や「個人情報保護要領ガイドブック」の掲示等により、従業員への法令及び社内ルールの浸透を図っています。IT及びITに保持される会社情報については、「サイバーセキュリティ」として、担当部署を設けて、機密性・完全性・可用性を維持するための必要な施策を行っています。 当社グループの「サイバーセキュリティ」に関する考え方及び取組は、以下のとおりです。 ア.サイバーセキュリティにおけるガバナンス当社グループは、年々巧妙化するサイバー攻撃から会社の重要な情報やシステムを守るため、当社社長を議長とする「ENEOSグループサイバーセキュリティ会議」を設置しています。同会議においてサイバーセキュリティ対策状況を確認するとともに、経営主導でサイバーセキュリティ対策方針を決定・推進しています。その後各事業会社にてサイバーセキュリティ対策方針を具体的な施策へ落とし込み実行しています。 イ.サイバーセキュリティにおけるリスク管理当社グループは、生産・販売・会計等のプロセスに関する電子データを、さまざまな情報システムやネットワークを通じて利用しています。これらの情報システムには安全対策が施されているものの、地震等の自然災害やサイバー攻撃を含む事象等により、情報システムに予期せぬ障害が発生し、業務が停止する可能性があります。その場合、当社グループの生産・販売活動に支障を来たすとともに、取引先の事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 DXの進展や働き方の多様化等により守るべき情報資産は増加傾向にある中で、情報システムや電子データの安全性を担保していくためには継続的なサイバーセキュリティ対策の強化が必要です。 このような状況を踏まえ、当社グループでは次のサイバーセキュリティ強化方針を掲げ、必要な施策を講じています。・クラウドやWebサイトを含む攻撃対象領域(アタックサーフェス)の資産管理強化・大規模セキュリティ事故時の対応力強化・サプライチェーンセキュリティを含む継続的なセキュリティ対策の実施 各セキュリティ強化方針に係る具体的な取組事例は以下のとおりです。 (ア)クラウドやWebサイトを含む攻撃対象領域(アタックサーフェス)の資産管理強化近年、DX進展に伴うクラウドサービス利用や、在宅勤務環境の整備によるリモートアクセスの増加等、インターネットに接続される情報資産が増加傾向にあります。これらは利便性を高める一方で、インターネットからの直接の攻撃を受けやすいという側面もあります。当社グループにおいてはWebサイト・ドメイン利用状況等の管理強化、クラウド利用審査に代表されるルール・統制面の整備や高度なセキュリティ機能を備えたリモートアクセス環境等技術面の整備を通じて、アタックサーフェスを保護する取組を行っています。 (イ)大規模セキュリティ事故時の対応力強化どのような対策を行ってもセキュリティ事故をゼロにすることは困難であり、万一の事故発生による影響を最小限に留めるために有事の対応力強化は重要です。当社グループにおいては社内外の事例を踏まえたセキュリティ事故シナリオを作成し、事故対応担当組織・担当者の対応訓練を行っています。訓練後には事故対応における改善点を洗い出し、ルールや手順書の見直し等継続的改善に努めています。また一般社員においても不審メール受信時の通報訓練等を行っており、意識の啓発を図ることで事故リスクを低減するよう取り組んでいます。 (ウ)サプライチェーンセキュリティを含む継続的なセキュリティ対策の実施ここ数年、日本国内においても取引先のセキュリティ事故に伴う工場稼働停止や、委託先からの情報漏洩といったサプライチェーン上のリスクが顕在化しています。これらのリスクに備え、当社グループにおいては主要な取引先のサイバーセキュリティ対策状況を確認するとともに、定期的なセキュリティ学習の場を設ける等、サプライチェーン全体の対策レベルを継続的に向上しています。 ②DXの取組当社グループは「確かな収益の礎の確立」と「エネルギートランジションの実現」に必要な経営基盤を強化すべく、「ENEOSデジタル戦略」を策定しました。デジタル戦略では、基盤事業、成長事業及びカーボンニュートラルの各領域におけるデジタル技術の活用方針を定めた「DX重点テーマ」と、デジタル人材育成、データ活用、ITガバナンス、共創機会という4つの「DX推進の原動力」の強化方針を定めています。 特にデジタル人材の育成を重点要素と設定し、第3次中期経営計画(2023~2025年度)における高度デジタル人材の育成目標数として、全従業員の約20%に相当する2,000人の育成を掲げています(注1)。この目標の達成に向け、ENEOSでは新たに4段階のレベル認定と3つの人材類型を導入し、人材類型ごとに「研修」と「実践」を組み合わせて、DXの中核を担う人材の育成を進めています。さらに、経営層の主導のもとDX推進体制を整えており、ENEOSではCDOを委員長とし管掌役員で構成するDX推進委員会(注2)の中に新たに設置した「デジタル人材開発会議」で、レベル認定や配置等の議論を行いデジタル人材の育成を加速させています。 (注)1.高度デジタル人材の育成実績については、2024年9月発行予定の統合レポートをご参照ください。2.全社DX方針や課題を討議し、各組織のDX推進に活用していく審議機関。
戦略 ア.人材の確保・育成当社グループでは経営のニーズに即した多様な人材の獲得に努めています。特にENEOSでは、積極的に経験者採用を進めており、大卒採用者の4割が経験者採用者となっています。 2021年度から2022年度にかけては、各社で人事制度を改定しました。具体的には、ENEOS(管理職)とJX石油開発では、役割等級制度を導入し、経営戦略に基づいて設定されたポストに年齢問わず最適な人材を抜擢する等、ダイナミックな人材シフトと登用が可能になりました。また、ENEOS(一般職)とJX金属株式会社(以下、JX金属)では、コース別人事制度を導入し、コース毎に求められる役割やキャリアを明示することで、各人材像に適した評価や育成を丁寧かつスピーディーに実行できるようになりました。 その上で、ENEOSでは、ベンチャー企業派遣型研修、M&A研修等による能力開発、リスキリング等を通じて、事業ポートフォリオの転換を実現する人材を育成していくほか、2022年度より導入したオンライン学習支援制度(ENEOS Learning Platform)の利用者数の向上を図ることにより、全社的に社員の自律的なキャリア形成を支援していきます。また、JX石油開発においては、プロジェクトマネジメント研修、JX金属においては、グローバル研修やデジタル研修等を通じて、事業計画の実現に資する人材を育成していきます。なお、デジタル人材の育成に関しては、「(10)情報セキュリティ及びDX推進に関する事項」の「②DXの取組」をご参照ください。 イ.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)当社グループでは、多様な人材一人ひとりが最大限に力を発揮できるよう、DE&Iの推進を重要な経営戦略の一つと位置付けており、各社で様々な施策を展開しています。その施策の一つとして、女性活躍推進法及び次世代育成支援対策推進法に基づいた行動計画を策定しており、ENEOSにおいては「大卒採用者の女性比率」や「女性役職者数」等の目標を掲げています。また、自律的な働き方の選択と、それに伴う生産性の更なる向上を狙いとして、テレワークを始めとした柔軟な働き方を支援する制度を整備する等、働き方改革も継続して推進しています。 第3次中期経営計画における「経営基盤強化」のためのグループ人材戦略は、以下のとおりです。
指標及び目標 ウ.指標及び目標当社グループ各社は、上記の戦略の実現に向け、各事業会社の特性に応じ定量目標を設定しており、ENEOSでは、以下の目標を掲げています。 2022年度実績2023年度実績2025年度目標大卒採用者の女性比率事務系 52%事務系 57%事務系 50%以上 技術系 16%技術系 17%技術系 20%以上女性役職者数51名58名100名以上経験者採用役職者数56名71名80名以上男性育児休業取得率(注)83.9%81.1%90%以上ENEOS Learning Platform延べ利用人数589名800名1,500名以上(注)ENEOS基準の計算方法により、算出した数値です。 (5)安全確保・健康増進ア.安全確保当社グループは、エネルギー・素材の安定供給を担う企業グループとして、安全操業を確保することが事業の存立及び社会的信頼の基盤、競争力の源泉であると考えています。このような認識のもと、ENEOSグループ理念において「安全」を最優先のテーマの1つと位置付けるとともに、ENEOSグループ行動基準にグループの基本方針を定めました。これを踏まえ、グループ各社は、それぞれの事業特性に合わせて安全に関する方針を定め、労働安全に関するリスクの評価を行い、実効性を備えた安全活動を重層的に推進しています。具体的には、協力会社従業員の方々を含めた安全諸活動及び安全教育の充実を図るとともに、あらゆる事故・トラブル・自然災害に対する予防策及び緊急時対策を講じています。ENEOSでは、移動中の安全確保を図るため、2022年度からAI歩行診断プログラムを導入し、取組を継続しています。専用の機械を用いて個人の歩行速度・歩幅・重心移動等を計測し、歩き方の安全度合いを判定するプログラムであり、計測結果をもとに、安全な歩き方につながる体操等の改善策を提案する機能も備えています。また、グループ各社は、労働組合とも組合員の安全衛生を図るために会社が必要な施設の整備に努めることを確認しています。(労働協約付帯協定第90条) (ア)指標と目標当社グループは、労働者の安全を最優先かつ徹底する意志を表明しています。「重大な労働災害(死亡労働災害)件数ゼロ」及び「TRIR(注1)1.0以下の達成」をグループの重点目標として定め、協力会社の方々を含めた安全諸活動の徹底及び安全教育の充実を図っています。(注)1.総災害度数率、100万時間当たり負傷者数(不休労災+休業・死亡労災者数)。 当社グループの定量目標及び実績は以下の通りです。 2022年度実績・目標2023年度実績・目標2024年度目標重大な労働災害(死亡労働災害)件数0件(0件)0件(0件)0件TRIR(総災害度数率) 1.00(1.0以下)0.94(1.0以下)1.0以下LTIR(休業災害度数率)(注2)――従業員:0協力会社員:0.3以下(注)2.100万時間当たりの休業・死亡労災者数。3.2022年度及び2023年度における下段かっこ書きは目標値です。4.2023年度における実績値は速報値です。確定値については、2024年11月発行予定の ESGデータブックをご参照ください。イ.健康増進当社グループは、従業員及びその家族の健康を大切にすることが、従業員の活力向上、生産性改善及び組織活性化につながり、ひいては成長戦略実現の原動力や競争力の源泉になると考えています。このような考え方のもと、健康に関する基本原則をグループ行動基準に定めるとともに、従業員の自律的な健康管理及び健康増進に寄与すべく「健康経営」を推進しています。 (ア)健康経営の全体像当社グループは、「ENEOSグループ理念」において、「安全・環境・健康」を“大切にしたい価値観”の一つとして掲げています。「ENEOSグループ長期ビジョン」実現のためにも、企業活動の根幹である従業員一人ひとりの心身の健康を維持・増進することが大切です。健全な労働環境の整備及び適切な働き方の実現に向けた取組、また、従業員の健康管理をサポートしつつ自律的な健康管理意識を醸成する取組が、個人の健康は勿論、職場全体の活力や生産性の向上につながり、ひいては「健康経営」の実現に至ると考え活動しています。 (イ)健康経営のサポート体制従業員の健康推進をサポートする事務局を人事部内に設置し、健康保険組合や関係会社・各事業所と連携しながら様々な取組を行っています。また、本社健康管理センターにおいて心療内科医師を配置する等、産業医体制の充実化も図っています。 (ウ)指標と目標当社グループでは、国内外を問わず、定期健康診断の受診率100%実施に加えて、生活習慣病予防に向けたサポートや感染症予防に取り組んでいます。海外赴任者・出張者に対しては、疫病・感染症予防接種や医療サポート制度等の整備に努めています。また、健康増進法の趣旨に則り、受動喫煙リスクの徹底的な排除にも取り組んでいます。 当社グループにおける健康関連指標の目標及び実績は以下のとおりです。健康関連指標2022年度実績2023年度実績2024年度目標喫煙率22.0%24.1%23.1%以下適正体重維持者の比率(BMI25未満)70.9%69.7%70%以上定期健康診断受診率100.0%100.0%100.0%(注)ENEOSホールディングス、ENEOS、JX石油開発、JX金属が集計対象です。 (6)国際的な人権原則の遵守当社グループは、グローバルに事業を展開する企業グループとして、従業員を含むすべてのステークホルダーの人権を尊重することが、持続的な社会の発展に貢献していくうえで根本的かつ必須の重要テーマであると考えています。当社グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、国際労働機関(ILO)の中核的労働基準(「結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認」「あらゆる形態の強制労働の禁止」「児童労働の実効的な廃止」「雇用及び職業における差別の排除」)、「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」等の国際規範を支持しています。また、従業員に限らず、サプライヤー、お客様、お取引先、地域社会等のさまざまなステークホルダーの方々の人権を尊重し、事業活動を進めています。 ア.人権ポリシー当社グループは、人権尊重の基本原則をグループ行動基準に定めるとともに、これを補完する人権ポリシーを制定しています。当社グループの事業活動に関連するすべてのビジネスパートナーに対して理解・協力を要請し、これらの周知徹底と遵守に努めています。 イ.人権デュー・ディリジェンス当社グループは、人権デュー・ディリジェンス(以下、人権DD)、サプライチェーンにおけるCSR調達アンケート、そして人権への負の影響が疑われた場合の対応フローという3つの仕組みを通じて、網羅的に人権リスクの把握に努めています。2019年度から隔年で国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)に沿った人権DDを実施しています。事業活動における人権侵害リスク範囲の特定と評価、改善策立案、教育の仕組み構築を内容とするものです。人権DDのサイクルは以下のとおりです。 ①人権リスク調査の対象となるステークホルダー・人権リスクのスコーピングステークホルダー:従業員、お客様、製油所・サービスステーション(SS)の周辺住民、         サプライヤー等人権リスク:以下表「人権DDにおいて確認する人権課題」参照 ステークホルダー人権DDにおいて確認する人権課題従業員ハラスメント労働時間管理差別健康安全ワークライフバランス結社の自由(団結権・団体交渉権)公正かつ良好な労働基準サプライヤーサプライヤーによる人権侵害事象の発生顧客・取引先品質不良(コンタミネーション含む)不適切な商品情報の提供不適切な商品化学物質管理情報セキュリティ(プライバシー)地域社会環境(地球の環境破壊、健康被害、事故被害含む) ② 人権リスクの評価・検証①でスコーピングした各人権リスクに対し、業務を通じた人権侵害を行っていないか、各部で自己評価評価後、外部専門家に確認を依頼し、対応を優先すべき人権リスクを特定 ③ 今後の対応策検討自己評価の結果及び外部専門家の意見を踏まえ、対応を優先すべき人権リスクに対する対応策を検討 ④ 対応策の導入検討を踏まえ対応策を導入 ⑤ 開示対応について報告 ウ.指標と目標当社グループでは、「人権DD・人権研修の実施」を取組目標としています。2023年度は第3回人権DDを実施し、主要な事業バリューチェーン上における重大な人権侵害事例が生じていないことを確認しています。より詳細な報告は、2024年11月発行予定のESGデータブックをご参照ください。また、人権研修については、グループ各社で、人権意識の向上と職場における人権侵害の発生防止を目的として、役員・従業員を対象に人権啓発研修やeラーニングを継続しています。(7)生物多様性リスクの適切な把握・管理当社グループは、操業・生産拠点の周辺環境に影響を与えかねない事業特性を持つことから、生物多様性の保全を重要なテーマと考えており、これをENEOSグループ行動基準に定めています。操業・生産拠点の新設等にあたっては、あらかじめ環境影響調査を行い、植生や鳥類・動物・海洋生物等の生態系を確認する等、事業活動のあらゆる分野で生物多様性に配慮した取組を推進しています。また、生産拠点の多いENEOSでは、「エネルギーグループ(注1)生物多様性ガイドライン」を定めています。 (注)1.ENEOS及びそのグループ会社。 ア.国内での主な取組当社グループは製造拠点において、地域の生物多様性保全活動に参加するほか、周辺の広大な緑地を豊かな生態系ネットワークの1つとして保全する活動に取り組んでいます。その他の事業所においても、周辺環境に合わせた環境保全活動を実施しています。 (ア)緑地管理の事例ENEOS根岸製油所は、東京湾に面し、周囲を三渓園、根岸森林公園等の緑地に囲まれ、海と山の自然が交差する地域に位置しています。そこで、里山管理の手法を用いて、地域生態系ネットワークの拠点の一つとすべく環境整備に取り組んでいます。同製油所は、良好な生態系ネットワーク形成等の活動が評価され、2020年2月に「いきもの共生事業所認証(ABINC認証(注2))」を取得し、2023年10月には環境省の「自然共生サイト」に認定されています。(注)2.一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)が開発した、いきもの共生事業所推進ガイドラインの考え方に沿って計画・管理され、かつ土地利用通信簿で基準点以上を満たし、当審査過程において認証された事業所。 (イ)藻場創出の事例ENEOS堺製油所は大阪湾奥部に位置しています。大阪湾奥部は、陸域から流入する窒素・燐等の栄養塩が滞留しやすく、赤潮発生が見られる等、いきものの棲みにくい水質と言われています。同製油所では、護岸部に藻類が着生するためのブロックを設置し、藻場創出に取り組んでいます。藻場創出により、栄養塩の吸収と酸素の供給による水質改善、海生生物の産卵・成育場所の増加、藻類の光合成を通じたブルーカーボンの蓄積等、多面的な効果を期待できます。 イ.国外での主な取組(ア)バラスト水(海水)対策日本から産油国へ向かうタンカーは、空船時の運航安定性を維持するため、「重し」としてバラスト水を積んでいます。そのため、日本の海域に生息する微生物やプランクトンがバラスト水とともに遠く産油国の海域に運ばれ、生態系バランスを崩す原因となっていました。当社グループでは、2004年から外洋でバラスト水を入れ替える方法や新造船にはバラスト水処理装置(注3)を搭載する方法を採用し、産油国の湾内海域の生態系バランスに配慮しています。2022年度に、当社グループが所有するタンカー15隻全船にバラスト水処理装置の搭載を完了しました。(注)3.バラスト水中の水生生物を一定基準以下にして排水する装置。 ウ.指標と目標「生物多様性リスクの適切な把握・管理」は2024年度ESG重点課題として、「主要な事業セクターにおける自然資本への依存度及び影響度の把握」を取組目標としています。自然資本への依存度及び影響度の把握には、一般公開されている自然との接点分析ツール(ENCORE)を用います。 (8)循環型社会形成の貢献当社グループは、「循環型社会形成への貢献」に向けて、自社及び社会全体の廃棄物低減や資源循環に努めます。グループ内で資源の有効活用や廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再資源化(リサイクル)を推進するとともに、リサイクル事業を拡大していきます。 ア.廃棄物の削減製油所等から排出される汚泥や集塵ダストのセメント原料化、製錬所で発生する中和滓(注1)の繰り返し使用等を推進しています。また、一部の潤滑油製品の開発評価にあたっては、LCA手法(注2)を用いています。それらのほか、当社グループは、生産の効率化による原材料の使用量削減、リサイクル原料の使用量拡大を進めています。(注)1.製錬工程での中和反応によって生じる生成物。2.製品製造について、原料等の調達から製造、輸送、使用、廃棄までのライフステージ全体の環境影響を定量的に評価する手法。 イ.サーキュラーエコノミーの推進当社グループは、従来型資源に依存しない循環型社会の実現に向けて、サーキュラーエコノミー(注3)を推進します。世の情勢が、リニアエコノミー(注4)からサーキュラーエコノミーへ、すなわち、大量生産・大量消費型の経済から資源循環型の経済へと移行しつつあります。3Rから一歩進み、製品設計段階からの配慮、メンテナンスによる製品寿命の延長、リースやシェアリングによる利用効率の向上等も重視されています。社会に供給されている製品は、資源の調達から製造、販売、使用、廃棄に至るライフサイクルの各段階でCO2が発生します。製造したものを廃棄せず、シェアリングやリサイクルにより循環させることで、CO2の発生を抑制できます。当社グループは、素材・サービス分野において原料の非化石資源化やシェアリングビジネスに取り組むことで、サーキュラーエコノミーを推進し、ひいてはカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。(注)3.バリューチェーン上のあらゆる段階における資源の効率的な利用により資源循環を目指す経済の仕組み。4.消費された資源をリサイクル・再利用することなく廃棄してしまい、直線的(Linear)にモノが流れる経済の仕組み。 ウ.指標と目標当社グループは、「ゼロエミッション(最終処分率1%未満)の維持」を目標に掲げ、廃棄物の適正管理・再資源化に取り組んでおり、2022年度の実績は0.8%、2023年度の実績は0.85%(注5)でした。(注)5.速報値です。確定値については、2024年11月発行予定のESGデータブックをご参照ください。 また、廃棄物の削減に加えて、カーボンニュートラル基本計画の中で、サーキュラーエコノミーの推進として、ケミカル素材の非化石資源比率・潤滑油のリサイクル量・銅精錬のリサイクル比率のロードマップを示しています。具体的な取組としては、2023年8月に公表した世界初のバイオパラキシレン製造による「バイオマス to ペットボトル」の取組や2022年に環境省の公募事業に採択された廃潤滑油のリサイクルに向けた取組等を通じて、サーキュラーエコノミーの推進に向けて取り組んでいきます。 (9)ステークホルダーとのコミュニケーション当社グループは、株主・投資家、お客様、お取引先、従業員等、多様なステークホルダーの皆様との関わりの中で事業活動を営んでいます。ステークホルダーとの対話を積極的に進め、期待や要請に応える活動を推進していきます。また、当社グループでは、ESGに関する具体的なテーマに関し、外部専門家・ステークホルダーの意見を聴取し対応しています。2023年7月には投資家向けにカーボンニュートラル基本計画の説明会を実施したほか、機関投資家の気候変動アクション・イニシアティブ「Climate Action 100+」とも定期的なエンゲージメントを実施しています。引き続き、外部専門家・ステークホルダーとのエンゲージメントを進め、社会課題の解決に貢献していきます。 ステークホルダー活動内容主なコミュニケーション手段主なコミュニケーション窓口株主・投資家当社では、ディスクロージャーポリシーを定め、株主・投資家の皆様に対し、迅速、適正かつ公平な情報開示に努めています。株主総会、決算説明会、個人投資家向け説明会、ESG説明統合レポート、ESGデータブック、株主通信、ウェブサイトでの情報開示当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)当社IR部門窓口(電話、メール、ミーティング等)お客様当社グループは、お客様のご要望やご期待に応え、信頼とご満足いただける商品・サービスを開発・提供しています。営業活動を通じたコミュニケーション安全・安心で価値ある商品・サービスの提供ウェブサイトによる情報提供電話やウェブサイトでのお問い合わせ窓口当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)グループ各社販売部門窓口(電話、メール、ミーティング等)ENEOSお客様センター(フリーダイヤル)お取引先当社グループでは、お取引先に対して購買情報を開示し、積極的にビジネスチャンスを提供するとともに、公正な取引機会の確保に努めています。購買業務を通じたコミュニケーションウェブサイトの活用CSR調達アンケートの実施(2年で1サイクル)当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)グループ各社調達部門窓口(電話、メール、ミーティング等)サプライヤー向け人権相談窓口NPO・NGO当社グループは、NPO・NGOとの協力関係を構築し、環境保全や社会貢献活動に積極的に取り組んでいます。生物多様性保全活動による協働次世代人材育成支援活動での協働人権デュー・ディリジェンスにおける第三者の立場からの検証(隔年)当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)地域社会・国際社会当社グループは、操業地及び国際社会からのニーズや期待に応え、積極的にコミュニケーションを図ることで、責任ある企業活動を行うことを目指します。地域住民向け説明会、行事参加・協賛ボランティア活動産油、産ガス、産銅国等を対象にしたさまざまな支援制度を開設国際イニシアティブへの参画当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)操業地域の事業所窓口(電話、メール、ミーティング等)従業員当社グループでは、従業員を経営における重要なステークホルダーとして位置付け、一人ひとりが安心して働き、能力を最大限発揮できるように、各種制度を整備しています。労働組合と経営層との定期的な対話グループ報、イントラネットによる情報発信意識調査の定期的実施階層別研修等の実施会社への意見・提言・要望の募集(年1回)各種施策に対するアンケートの実施(随時)内部通報制度(ホットライン)※請負先従業員も対象上司との定期的な面談労働組合を通じて ア.指標と目標当社は、「投資家との効果的なエンゲージメントの実施(のべ250件)」を取組目標としています。2022年度の実績は157件、2023年度の実績は412件でした。 (10)情報セキュリティ及びDX推進に関する事項①情報セキュリティ当社グループは、高い情報セキュリティレベルを確保することが重要な経営課題であると認識し、必要な対策に取り組んでおり、「情報セキュリティポリシー」を定め、ビジネスパートナーや委託先を含めて情報の適切な取扱い・管理・保護・維持に努めています。なお、情報セキュリティポリシーについては、当社Webサイトをご参照ください。( https://www.hd.eneos.co.jp/security/ )また、当社グループは、「ENEOSグループ情報セキュリティ基本規程」に則り、会社の資産である会社情報の不正な使用・開示及び漏えいを防止するとともに、会社情報の正確性・信頼性を保ち、改ざんや誤処理を防止し、許可された利用者が必要な時に確実にその会社情報を利用できるようにしています。個人情報保護については「個人情報保護要領」を制定し、個人情報保護法の遵守と、個人情報を適切に取り扱うためのルールを定め、権利保護を図っています。加えて、研修の実施や「個人情報保護要領ガイドブック」の掲示等により、従業員への法令及び社内ルールの浸透を図っています。IT及びITに保持される会社情報については、「サイバーセキュリティ」として、担当部署を設けて、機密性・完全性・可用性を維持するための必要な施策を行っています。 当社グループの「サイバーセキュリティ」に関する考え方及び取組は、以下のとおりです。 ア.サイバーセキュリティにおけるガバナンス当社グループは、年々巧妙化するサイバー攻撃から会社の重要な情報やシステムを守るため、当社社長を議長とする「ENEOSグループサイバーセキュリティ会議」を設置しています。同会議においてサイバーセキュリティ対策状況を確認するとともに、経営主導でサイバーセキュリティ対策方針を決定・推進しています。その後各事業会社にてサイバーセキュリティ対策方針を具体的な施策へ落とし込み実行しています。 イ.サイバーセキュリティにおけるリスク管理当社グループは、生産・販売・会計等のプロセスに関する電子データを、さまざまな情報システムやネットワークを通じて利用しています。これらの情報システムには安全対策が施されているものの、地震等の自然災害やサイバー攻撃を含む事象等により、情報システムに予期せぬ障害が発生し、業務が停止する可能性があります。その場合、当社グループの生産・販売活動に支障を来たすとともに、取引先の事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 DXの進展や働き方の多様化等により守るべき情報資産は増加傾向にある中で、情報システムや電子データの安全性を担保していくためには継続的なサイバーセキュリティ対策の強化が必要です。 このような状況を踏まえ、当社グループでは次のサイバーセキュリティ強化方針を掲げ、必要な施策を講じています。・クラウドやWebサイトを含む攻撃対象領域(アタックサーフェス)の資産管理強化・大規模セキュリティ事故時の対応力強化・サプライチェーンセキュリティを含む継続的なセキュリティ対策の実施 各セキュリティ強化方針に係る具体的な取組事例は以下のとおりです。 (ア)クラウドやWebサイトを含む攻撃対象領域(アタックサーフェス)の資産管理強化近年、DX進展に伴うクラウドサービス利用や、在宅勤務環境の整備によるリモートアクセスの増加等、インターネットに接続される情報資産が増加傾向にあります。これらは利便性を高める一方で、インターネットからの直接の攻撃を受けやすいという側面もあります。当社グループにおいてはWebサイト・ドメイン利用状況等の管理強化、クラウド利用審査に代表されるルール・統制面の整備や高度なセキュリティ機能を備えたリモートアクセス環境等技術面の整備を通じて、アタックサーフェスを保護する取組を行っています。 (イ)大規模セキュリティ事故時の対応力強化どのような対策を行ってもセキュリティ事故をゼロにすることは困難であり、万一の事故発生による影響を最小限に留めるために有事の対応力強化は重要です。当社グループにおいては社内外の事例を踏まえたセキュリティ事故シナリオを作成し、事故対応担当組織・担当者の対応訓練を行っています。訓練後には事故対応における改善点を洗い出し、ルールや手順書の見直し等継続的改善に努めています。また一般社員においても不審メール受信時の通報訓練等を行っており、意識の啓発を図ることで事故リスクを低減するよう取り組んでいます。 (ウ)サプライチェーンセキュリティを含む継続的なセキュリティ対策の実施ここ数年、日本国内においても取引先のセキュリティ事故に伴う工場稼働停止や、委託先からの情報漏洩といったサプライチェーン上のリスクが顕在化しています。これらのリスクに備え、当社グループにおいては主要な取引先のサイバーセキュリティ対策状況を確認するとともに、定期的なセキュリティ学習の場を設ける等、サプライチェーン全体の対策レベルを継続的に向上しています。 ②DXの取組当社グループは「確かな収益の礎の確立」と「エネルギートランジションの実現」に必要な経営基盤を強化すべく、「ENEOSデジタル戦略」を策定しました。デジタル戦略では、基盤事業、成長事業及びカーボンニュートラルの各領域におけるデジタル技術の活用方針を定めた「DX重点テーマ」と、デジタル人材育成、データ活用、ITガバナンス、共創機会という4つの「DX推進の原動力」の強化方針を定めています。 特にデジタル人材の育成を重点要素と設定し、第3次中期経営計画(2023~2025年度)における高度デジタル人材の育成目標数として、全従業員の約20%に相当する2,000人の育成を掲げています(注1)。この目標の達成に向け、ENEOSでは新たに4段階のレベル認定と3つの人材類型を導入し、人材類型ごとに「研修」と「実践」を組み合わせて、DXの中核を担う人材の育成を進めています。さらに、経営層の主導のもとDX推進体制を整えており、ENEOSではCDOを委員長とし管掌役員で構成するDX推進委員会(注2)の中に新たに設置した「デジタル人材開発会議」で、レベル認定や配置等の議論を行いデジタル人材の育成を加速させています。 (注)1.高度デジタル人材の育成実績については、2024年9月発行予定の統合レポートをご参照ください。2.全社DX方針や課題を討議し、各組織のDX推進に活用していく審議機関。
人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略 ア.人材の確保・育成当社グループでは経営のニーズに即した多様な人材の獲得に努めています。特にENEOSでは、積極的に経験者採用を進めており、大卒採用者の4割が経験者採用者となっています。 2021年度から2022年度にかけては、各社で人事制度を改定しました。具体的には、ENEOS(管理職)とJX石油開発では、役割等級制度を導入し、経営戦略に基づいて設定されたポストに年齢問わず最適な人材を抜擢する等、ダイナミックな人材シフトと登用が可能になりました。また、ENEOS(一般職)とJX金属株式会社(以下、JX金属)では、コース別人事制度を導入し、コース毎に求められる役割やキャリアを明示することで、各人材像に適した評価や育成を丁寧かつスピーディーに実行できるようになりました。 その上で、ENEOSでは、ベンチャー企業派遣型研修、M&A研修等による能力開発、リスキリング等を通じて、事業ポートフォリオの転換を実現する人材を育成していくほか、2022年度より導入したオンライン学習支援制度(ENEOS Learning Platform)の利用者数の向上を図ることにより、全社的に社員の自律的なキャリア形成を支援していきます。また、JX石油開発においては、プロジェクトマネジメント研修、JX金属においては、グローバル研修やデジタル研修等を通じて、事業計画の実現に資する人材を育成していきます。なお、デジタル人材の育成に関しては、「(10)情報セキュリティ及びDX推進に関する事項」の「②DXの取組」をご参照ください。 イ.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)当社グループでは、多様な人材一人ひとりが最大限に力を発揮できるよう、DE&Iの推進を重要な経営戦略の一つと位置付けており、各社で様々な施策を展開しています。その施策の一つとして、女性活躍推進法及び次世代育成支援対策推進法に基づいた行動計画を策定しており、ENEOSにおいては「大卒採用者の女性比率」や「女性役職者数」等の目標を掲げています。また、自律的な働き方の選択と、それに伴う生産性の更なる向上を狙いとして、テレワークを始めとした柔軟な働き方を支援する制度を整備する等、働き方改革も継続して推進しています。 第3次中期経営計画における「経営基盤強化」のためのグループ人材戦略は、以下のとおりです。
人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標 ウ.指標及び目標当社グループ各社は、上記の戦略の実現に向け、各事業会社の特性に応じ定量目標を設定しており、ENEOSでは、以下の目標を掲げています。 2022年度実績2023年度実績2025年度目標大卒採用者の女性比率事務系 52%事務系 57%事務系 50%以上 技術系 16%技術系 17%技術系 20%以上女性役職者数51名58名100名以上経験者採用役職者数56名71名80名以上男性育児休業取得率(注)83.9%81.1%90%以上ENEOS Learning Platform延べ利用人数589名800名1,500名以上(注)ENEOS基準の計算方法により、算出した数値です。 (5)安全確保・健康増進ア.安全確保当社グループは、エネルギー・素材の安定供給を担う企業グループとして、安全操業を確保することが事業の存立及び社会的信頼の基盤、競争力の源泉であると考えています。このような認識のもと、ENEOSグループ理念において「安全」を最優先のテーマの1つと位置付けるとともに、ENEOSグループ行動基準にグループの基本方針を定めました。これを踏まえ、グループ各社は、それぞれの事業特性に合わせて安全に関する方針を定め、労働安全に関するリスクの評価を行い、実効性を備えた安全活動を重層的に推進しています。具体的には、協力会社従業員の方々を含めた安全諸活動及び安全教育の充実を図るとともに、あらゆる事故・トラブル・自然災害に対する予防策及び緊急時対策を講じています。ENEOSでは、移動中の安全確保を図るため、2022年度からAI歩行診断プログラムを導入し、取組を継続しています。専用の機械を用いて個人の歩行速度・歩幅・重心移動等を計測し、歩き方の安全度合いを判定するプログラムであり、計測結果をもとに、安全な歩き方につながる体操等の改善策を提案する機能も備えています。また、グループ各社は、労働組合とも組合員の安全衛生を図るために会社が必要な施設の整備に努めることを確認しています。(労働協約付帯協定第90条) (ア)指標と目標当社グループは、労働者の安全を最優先かつ徹底する意志を表明しています。「重大な労働災害(死亡労働災害)件数ゼロ」及び「TRIR(注1)1.0以下の達成」をグループの重点目標として定め、協力会社の方々を含めた安全諸活動の徹底及び安全教育の充実を図っています。(注)1.総災害度数率、100万時間当たり負傷者数(不休労災+休業・死亡労災者数)。 当社グループの定量目標及び実績は以下の通りです。 2022年度実績・目標2023年度実績・目標2024年度目標重大な労働災害(死亡労働災害)件数0件(0件)0件(0件)0件TRIR(総災害度数率) 1.00(1.0以下)0.94(1.0以下)1.0以下LTIR(休業災害度数率)(注2)――従業員:0協力会社員:0.3以下(注)2.100万時間当たりの休業・死亡労災者数。3.2022年度及び2023年度における下段かっこ書きは目標値です。4.2023年度における実績値は速報値です。確定値については、2024年11月発行予定の ESGデータブックをご参照ください。イ.健康増進当社グループは、従業員及びその家族の健康を大切にすることが、従業員の活力向上、生産性改善及び組織活性化につながり、ひいては成長戦略実現の原動力や競争力の源泉になると考えています。このような考え方のもと、健康に関する基本原則をグループ行動基準に定めるとともに、従業員の自律的な健康管理及び健康増進に寄与すべく「健康経営」を推進しています。 (ア)健康経営の全体像当社グループは、「ENEOSグループ理念」において、「安全・環境・健康」を“大切にしたい価値観”の一つとして掲げています。「ENEOSグループ長期ビジョン」実現のためにも、企業活動の根幹である従業員一人ひとりの心身の健康を維持・増進することが大切です。健全な労働環境の整備及び適切な働き方の実現に向けた取組、また、従業員の健康管理をサポートしつつ自律的な健康管理意識を醸成する取組が、個人の健康は勿論、職場全体の活力や生産性の向上につながり、ひいては「健康経営」の実現に至ると考え活動しています。 (イ)健康経営のサポート体制従業員の健康推進をサポートする事務局を人事部内に設置し、健康保険組合や関係会社・各事業所と連携しながら様々な取組を行っています。また、本社健康管理センターにおいて心療内科医師を配置する等、産業医体制の充実化も図っています。 (ウ)指標と目標当社グループでは、国内外を問わず、定期健康診断の受診率100%実施に加えて、生活習慣病予防に向けたサポートや感染症予防に取り組んでいます。海外赴任者・出張者に対しては、疫病・感染症予防接種や医療サポート制度等の整備に努めています。また、健康増進法の趣旨に則り、受動喫煙リスクの徹底的な排除にも取り組んでいます。 当社グループにおける健康関連指標の目標及び実績は以下のとおりです。健康関連指標2022年度実績2023年度実績2024年度目標喫煙率22.0%24.1%23.1%以下適正体重維持者の比率(BMI25未満)70.9%69.7%70%以上定期健康診断受診率100.0%100.0%100.0%(注)ENEOSホールディングス、ENEOS、JX石油開発、JX金属が集計対象です。 (6)国際的な人権原則の遵守当社グループは、グローバルに事業を展開する企業グループとして、従業員を含むすべてのステークホルダーの人権を尊重することが、持続的な社会の発展に貢献していくうえで根本的かつ必須の重要テーマであると考えています。当社グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、国際労働機関(ILO)の中核的労働基準(「結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認」「あらゆる形態の強制労働の禁止」「児童労働の実効的な廃止」「雇用及び職業における差別の排除」)、「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」等の国際規範を支持しています。また、従業員に限らず、サプライヤー、お客様、お取引先、地域社会等のさまざまなステークホルダーの方々の人権を尊重し、事業活動を進めています。 ア.人権ポリシー当社グループは、人権尊重の基本原則をグループ行動基準に定めるとともに、これを補完する人権ポリシーを制定しています。当社グループの事業活動に関連するすべてのビジネスパートナーに対して理解・協力を要請し、これらの周知徹底と遵守に努めています。 イ.人権デュー・ディリジェンス当社グループは、人権デュー・ディリジェンス(以下、人権DD)、サプライチェーンにおけるCSR調達アンケート、そして人権への負の影響が疑われた場合の対応フローという3つの仕組みを通じて、網羅的に人権リスクの把握に努めています。2019年度から隔年で国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)に沿った人権DDを実施しています。事業活動における人権侵害リスク範囲の特定と評価、改善策立案、教育の仕組み構築を内容とするものです。人権DDのサイクルは以下のとおりです。 ①人権リスク調査の対象となるステークホルダー・人権リスクのスコーピングステークホルダー:従業員、お客様、製油所・サービスステーション(SS)の周辺住民、         サプライヤー等人権リスク:以下表「人権DDにおいて確認する人権課題」参照 ステークホルダー人権DDにおいて確認する人権課題従業員ハラスメント労働時間管理差別健康安全ワークライフバランス結社の自由(団結権・団体交渉権)公正かつ良好な労働基準サプライヤーサプライヤーによる人権侵害事象の発生顧客・取引先品質不良(コンタミネーション含む)不適切な商品情報の提供不適切な商品化学物質管理情報セキュリティ(プライバシー)地域社会環境(地球の環境破壊、健康被害、事故被害含む) ② 人権リスクの評価・検証①でスコーピングした各人権リスクに対し、業務を通じた人権侵害を行っていないか、各部で自己評価評価後、外部専門家に確認を依頼し、対応を優先すべき人権リスクを特定 ③ 今後の対応策検討自己評価の結果及び外部専門家の意見を踏まえ、対応を優先すべき人権リスクに対する対応策を検討 ④ 対応策の導入検討を踏まえ対応策を導入 ⑤ 開示対応について報告 ウ.指標と目標当社グループでは、「人権DD・人権研修の実施」を取組目標としています。2023年度は第3回人権DDを実施し、主要な事業バリューチェーン上における重大な人権侵害事例が生じていないことを確認しています。より詳細な報告は、2024年11月発行予定のESGデータブックをご参照ください。また、人権研修については、グループ各社で、人権意識の向上と職場における人権侵害の発生防止を目的として、役員・従業員を対象に人権啓発研修やeラーニングを継続しています。(7)生物多様性リスクの適切な把握・管理当社グループは、操業・生産拠点の周辺環境に影響を与えかねない事業特性を持つことから、生物多様性の保全を重要なテーマと考えており、これをENEOSグループ行動基準に定めています。操業・生産拠点の新設等にあたっては、あらかじめ環境影響調査を行い、植生や鳥類・動物・海洋生物等の生態系を確認する等、事業活動のあらゆる分野で生物多様性に配慮した取組を推進しています。また、生産拠点の多いENEOSでは、「エネルギーグループ(注1)生物多様性ガイドライン」を定めています。 (注)1.ENEOS及びそのグループ会社。 ア.国内での主な取組当社グループは製造拠点において、地域の生物多様性保全活動に参加するほか、周辺の広大な緑地を豊かな生態系ネットワークの1つとして保全する活動に取り組んでいます。その他の事業所においても、周辺環境に合わせた環境保全活動を実施しています。 (ア)緑地管理の事例ENEOS根岸製油所は、東京湾に面し、周囲を三渓園、根岸森林公園等の緑地に囲まれ、海と山の自然が交差する地域に位置しています。そこで、里山管理の手法を用いて、地域生態系ネットワークの拠点の一つとすべく環境整備に取り組んでいます。同製油所は、良好な生態系ネットワーク形成等の活動が評価され、2020年2月に「いきもの共生事業所認証(ABINC認証(注2))」を取得し、2023年10月には環境省の「自然共生サイト」に認定されています。(注)2.一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)が開発した、いきもの共生事業所推進ガイドラインの考え方に沿って計画・管理され、かつ土地利用通信簿で基準点以上を満たし、当審査過程において認証された事業所。 (イ)藻場創出の事例ENEOS堺製油所は大阪湾奥部に位置しています。大阪湾奥部は、陸域から流入する窒素・燐等の栄養塩が滞留しやすく、赤潮発生が見られる等、いきものの棲みにくい水質と言われています。同製油所では、護岸部に藻類が着生するためのブロックを設置し、藻場創出に取り組んでいます。藻場創出により、栄養塩の吸収と酸素の供給による水質改善、海生生物の産卵・成育場所の増加、藻類の光合成を通じたブルーカーボンの蓄積等、多面的な効果を期待できます。 イ.国外での主な取組(ア)バラスト水(海水)対策日本から産油国へ向かうタンカーは、空船時の運航安定性を維持するため、「重し」としてバラスト水を積んでいます。そのため、日本の海域に生息する微生物やプランクトンがバラスト水とともに遠く産油国の海域に運ばれ、生態系バランスを崩す原因となっていました。当社グループでは、2004年から外洋でバラスト水を入れ替える方法や新造船にはバラスト水処理装置(注3)を搭載する方法を採用し、産油国の湾内海域の生態系バランスに配慮しています。2022年度に、当社グループが所有するタンカー15隻全船にバラスト水処理装置の搭載を完了しました。(注)3.バラスト水中の水生生物を一定基準以下にして排水する装置。 ウ.指標と目標「生物多様性リスクの適切な把握・管理」は2024年度ESG重点課題として、「主要な事業セクターにおける自然資本への依存度及び影響度の把握」を取組目標としています。自然資本への依存度及び影響度の把握には、一般公開されている自然との接点分析ツール(ENCORE)を用います。 (8)循環型社会形成の貢献当社グループは、「循環型社会形成への貢献」に向けて、自社及び社会全体の廃棄物低減や資源循環に努めます。グループ内で資源の有効活用や廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再資源化(リサイクル)を推進するとともに、リサイクル事業を拡大していきます。 ア.廃棄物の削減製油所等から排出される汚泥や集塵ダストのセメント原料化、製錬所で発生する中和滓(注1)の繰り返し使用等を推進しています。また、一部の潤滑油製品の開発評価にあたっては、LCA手法(注2)を用いています。それらのほか、当社グループは、生産の効率化による原材料の使用量削減、リサイクル原料の使用量拡大を進めています。(注)1.製錬工程での中和反応によって生じる生成物。2.製品製造について、原料等の調達から製造、輸送、使用、廃棄までのライフステージ全体の環境影響を定量的に評価する手法。 イ.サーキュラーエコノミーの推進当社グループは、従来型資源に依存しない循環型社会の実現に向けて、サーキュラーエコノミー(注3)を推進します。世の情勢が、リニアエコノミー(注4)からサーキュラーエコノミーへ、すなわち、大量生産・大量消費型の経済から資源循環型の経済へと移行しつつあります。3Rから一歩進み、製品設計段階からの配慮、メンテナンスによる製品寿命の延長、リースやシェアリングによる利用効率の向上等も重視されています。社会に供給されている製品は、資源の調達から製造、販売、使用、廃棄に至るライフサイクルの各段階でCO2が発生します。製造したものを廃棄せず、シェアリングやリサイクルにより循環させることで、CO2の発生を抑制できます。当社グループは、素材・サービス分野において原料の非化石資源化やシェアリングビジネスに取り組むことで、サーキュラーエコノミーを推進し、ひいてはカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。(注)3.バリューチェーン上のあらゆる段階における資源の効率的な利用により資源循環を目指す経済の仕組み。4.消費された資源をリサイクル・再利用することなく廃棄してしまい、直線的(Linear)にモノが流れる経済の仕組み。 ウ.指標と目標当社グループは、「ゼロエミッション(最終処分率1%未満)の維持」を目標に掲げ、廃棄物の適正管理・再資源化に取り組んでおり、2022年度の実績は0.8%、2023年度の実績は0.85%(注5)でした。(注)5.速報値です。確定値については、2024年11月発行予定のESGデータブックをご参照ください。 また、廃棄物の削減に加えて、カーボンニュートラル基本計画の中で、サーキュラーエコノミーの推進として、ケミカル素材の非化石資源比率・潤滑油のリサイクル量・銅精錬のリサイクル比率のロードマップを示しています。具体的な取組としては、2023年8月に公表した世界初のバイオパラキシレン製造による「バイオマス to ペットボトル」の取組や2022年に環境省の公募事業に採択された廃潤滑油のリサイクルに向けた取組等を通じて、サーキュラーエコノミーの推進に向けて取り組んでいきます。 (9)ステークホルダーとのコミュニケーション当社グループは、株主・投資家、お客様、お取引先、従業員等、多様なステークホルダーの皆様との関わりの中で事業活動を営んでいます。ステークホルダーとの対話を積極的に進め、期待や要請に応える活動を推進していきます。また、当社グループでは、ESGに関する具体的なテーマに関し、外部専門家・ステークホルダーの意見を聴取し対応しています。2023年7月には投資家向けにカーボンニュートラル基本計画の説明会を実施したほか、機関投資家の気候変動アクション・イニシアティブ「Climate Action 100+」とも定期的なエンゲージメントを実施しています。引き続き、外部専門家・ステークホルダーとのエンゲージメントを進め、社会課題の解決に貢献していきます。 ステークホルダー活動内容主なコミュニケーション手段主なコミュニケーション窓口株主・投資家当社では、ディスクロージャーポリシーを定め、株主・投資家の皆様に対し、迅速、適正かつ公平な情報開示に努めています。株主総会、決算説明会、個人投資家向け説明会、ESG説明統合レポート、ESGデータブック、株主通信、ウェブサイトでの情報開示当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)当社IR部門窓口(電話、メール、ミーティング等)お客様当社グループは、お客様のご要望やご期待に応え、信頼とご満足いただける商品・サービスを開発・提供しています。営業活動を通じたコミュニケーション安全・安心で価値ある商品・サービスの提供ウェブサイトによる情報提供電話やウェブサイトでのお問い合わせ窓口当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)グループ各社販売部門窓口(電話、メール、ミーティング等)ENEOSお客様センター(フリーダイヤル)お取引先当社グループでは、お取引先に対して購買情報を開示し、積極的にビジネスチャンスを提供するとともに、公正な取引機会の確保に努めています。購買業務を通じたコミュニケーションウェブサイトの活用CSR調達アンケートの実施(2年で1サイクル)当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)グループ各社調達部門窓口(電話、メール、ミーティング等)サプライヤー向け人権相談窓口NPO・NGO当社グループは、NPO・NGOとの協力関係を構築し、環境保全や社会貢献活動に積極的に取り組んでいます。生物多様性保全活動による協働次世代人材育成支援活動での協働人権デュー・ディリジェンスにおける第三者の立場からの検証(隔年)当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)地域社会・国際社会当社グループは、操業地及び国際社会からのニーズや期待に応え、積極的にコミュニケーションを図ることで、責任ある企業活動を行うことを目指します。地域住民向け説明会、行事参加・協賛ボランティア活動産油、産ガス、産銅国等を対象にしたさまざまな支援制度を開設国際イニシアティブへの参画当社ウェブサイトお問い合わせ窓口(https://www.hd.eneos.co.jp/contact/)操業地域の事業所窓口(電話、メール、ミーティング等)従業員当社グループでは、従業員を経営における重要なステークホルダーとして位置付け、一人ひとりが安心して働き、能力を最大限発揮できるように、各種制度を整備しています。労働組合と経営層との定期的な対話グループ報、イントラネットによる情報発信意識調査の定期的実施階層別研修等の実施会社への意見・提言・要望の募集(年1回)各種施策に対するアンケートの実施(随時)内部通報制度(ホットライン)※請負先従業員も対象上司との定期的な面談労働組合を通じて ア.指標と目標当社は、「投資家との効果的なエンゲージメントの実施(のべ250件)」を取組目標としています。2022年度の実績は157件、2023年度の実績は412件でした。 (10)情報セキュリティ及びDX推進に関する事項①情報セキュリティ当社グループは、高い情報セキュリティレベルを確保することが重要な経営課題であると認識し、必要な対策に取り組んでおり、「情報セキュリティポリシー」を定め、ビジネスパートナーや委託先を含めて情報の適切な取扱い・管理・保護・維持に努めています。なお、情報セキュリティポリシーについては、当社Webサイトをご参照ください。( https://www.hd.eneos.co.jp/security/ )また、当社グループは、「ENEOSグループ情報セキュリティ基本規程」に則り、会社の資産である会社情報の不正な使用・開示及び漏えいを防止するとともに、会社情報の正確性・信頼性を保ち、改ざんや誤処理を防止し、許可された利用者が必要な時に確実にその会社情報を利用できるようにしています。個人情報保護については「個人情報保護要領」を制定し、個人情報保護法の遵守と、個人情報を適切に取り扱うためのルールを定め、権利保護を図っています。加えて、研修の実施や「個人情報保護要領ガイドブック」の掲示等により、従業員への法令及び社内ルールの浸透を図っています。IT及びITに保持される会社情報については、「サイバーセキュリティ」として、担当部署を設けて、機密性・完全性・可用性を維持するための必要な施策を行っています。 当社グループの「サイバーセキュリティ」に関する考え方及び取組は、以下のとおりです。 ア.サイバーセキュリティにおけるガバナンス当社グループは、年々巧妙化するサイバー攻撃から会社の重要な情報やシステムを守るため、当社社長を議長とする「ENEOSグループサイバーセキュリティ会議」を設置しています。同会議においてサイバーセキュリティ対策状況を確認するとともに、経営主導でサイバーセキュリティ対策方針を決定・推進しています。その後各事業会社にてサイバーセキュリティ対策方針を具体的な施策へ落とし込み実行しています。 イ.サイバーセキュリティにおけるリスク管理当社グループは、生産・販売・会計等のプロセスに関する電子データを、さまざまな情報システムやネットワークを通じて利用しています。これらの情報システムには安全対策が施されているものの、地震等の自然災害やサイバー攻撃を含む事象等により、情報システムに予期せぬ障害が発生し、業務が停止する可能性があります。その場合、当社グループの生産・販売活動に支障を来たすとともに、取引先の事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 DXの進展や働き方の多様化等により守るべき情報資産は増加傾向にある中で、情報システムや電子データの安全性を担保していくためには継続的なサイバーセキュリティ対策の強化が必要です。 このような状況を踏まえ、当社グループでは次のサイバーセキュリティ強化方針を掲げ、必要な施策を講じています。・クラウドやWebサイトを含む攻撃対象領域(アタックサーフェス)の資産管理強化・大規模セキュリティ事故時の対応力強化・サプライチェーンセキュリティを含む継続的なセキュリティ対策の実施 各セキュリティ強化方針に係る具体的な取組事例は以下のとおりです。 (ア)クラウドやWebサイトを含む攻撃対象領域(アタックサーフェス)の資産管理強化近年、DX進展に伴うクラウドサービス利用や、在宅勤務環境の整備によるリモートアクセスの増加等、インターネットに接続される情報資産が増加傾向にあります。これらは利便性を高める一方で、インターネットからの直接の攻撃を受けやすいという側面もあります。当社グループにおいてはWebサイト・ドメイン利用状況等の管理強化、クラウド利用審査に代表されるルール・統制面の整備や高度なセキュリティ機能を備えたリモートアクセス環境等技術面の整備を通じて、アタックサーフェスを保護する取組を行っています。 (イ)大規模セキュリティ事故時の対応力強化どのような対策を行ってもセキュリティ事故をゼロにすることは困難であり、万一の事故発生による影響を最小限に留めるために有事の対応力強化は重要です。当社グループにおいては社内外の事例を踏まえたセキュリティ事故シナリオを作成し、事故対応担当組織・担当者の対応訓練を行っています。訓練後には事故対応における改善点を洗い出し、ルールや手順書の見直し等継続的改善に努めています。また一般社員においても不審メール受信時の通報訓練等を行っており、意識の啓発を図ることで事故リスクを低減するよう取り組んでいます。 (ウ)サプライチェーンセキュリティを含む継続的なセキュリティ対策の実施ここ数年、日本国内においても取引先のセキュリティ事故に伴う工場稼働停止や、委託先からの情報漏洩といったサプライチェーン上のリスクが顕在化しています。これらのリスクに備え、当社グループにおいては主要な取引先のサイバーセキュリティ対策状況を確認するとともに、定期的なセキュリティ学習の場を設ける等、サプライチェーン全体の対策レベルを継続的に向上しています。 ②DXの取組当社グループは「確かな収益の礎の確立」と「エネルギートランジションの実現」に必要な経営基盤を強化すべく、「ENEOSデジタル戦略」を策定しました。デジタル戦略では、基盤事業、成長事業及びカーボンニュートラルの各領域におけるデジタル技術の活用方針を定めた「DX重点テーマ」と、デジタル人材育成、データ活用、ITガバナンス、共創機会という4つの「DX推進の原動力」の強化方針を定めています。 特にデジタル人材の育成を重点要素と設定し、第3次中期経営計画(2023~2025年度)における高度デジタル人材の育成目標数として、全従業員の約20%に相当する2,000人の育成を掲げています(注1)。この目標の達成に向け、ENEOSでは新たに4段階のレベル認定と3つの人材類型を導入し、人材類型ごとに「研修」と「実践」を組み合わせて、DXの中核を担う人材の育成を進めています。さらに、経営層の主導のもとDX推進体制を整えており、ENEOSではCDOを委員長とし管掌役員で構成するDX推進委員会(注2)の中に新たに設置した「デジタル人材開発会議」で、レベル認定や配置等の議論を行いデジタル人材の育成を加速させています。 (注)1.高度デジタル人材の育成実績については、2024年9月発行予定の統合レポートをご参照ください。2.全社DX方針や課題を討議し、各組織のDX推進に活用していく審議機関。
事業等のリスク 3【事業等のリスク】
当社グループでは、グループ経営に関するリスク事象に的確な対応を図るため「全社的リスクマネジメント(Enterprise Risk Management: ERM)体制」を整備・運用しています。具体的には、毎年度グループ経営に甚大な影響を与えうるリスク事象を抽出した上で「重点対応リスク事象」を選定し、対応策の実行を進め、その取組状況を経営会議及び取締役会に報告するプロセスを導入しています。なお、2024年度の「重点対応リスク事象」には、「製油所トラブルの増加、稼働率低迷」「地政学リスク悪化」「自然災害により損失が発生するリスク」を選定し、今後、所管部署を中心に、当該事象に対する対応方針の決定と取組状況の確認等を実施していきます。なお、リスクに対するガバナンス体制は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)ガバナンス」をご参照ください。当社グループの事業において、重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。 (1)市場リスク・商品価格変動リスク当社グループは、石油製品・石油化学製品・電力・金属製品等の販売及びそれらの原料となる原油・銅鉱石等の鉱物の購入を行っていますが、これらの販売価格及び購入価格は商品市場価格の変動によって影響を受けることから、商品価格変動リスクに晒されています。 (エネルギーセグメント)国内の石油製品のマージンは、主に原油価格と国内の石油製品市場価格との関係に左右され、当社グループがコントロールし得ない要因によって決定されます。原油価格に影響を及ぼす要因としては、円の対米ドル為替相場、産油地域の政治情勢、OPECによる生産調整、シェールオイルの生産動向、全世界的な原油需要等があります。また、石油製品価格に影響を及ぼす要因としては、石油製品の国内需要、海外石油製品市況、国内の石油精製能力及び稼働率、国内のサービスステーション総数等があります。当社グループは、石油製品販売価格を石油製品の需給状況や市況動向を適切に反映して決定していますが、原油価格や石油製品市況の動向次第では、マージンが大きく変動します。また、石油化学製品のマージンも、原油価格やナフサ等の原料油価格と石油化学製品価格との関係に左右され、当社グループがコントロールし得ない要因によって決定されます。石油化学製品価格については、生産設備の新増設による供給能力拡大と衣料・自動車・家電等の需要動向に影響されます。需給が緩和した場合は、原油・原料油価格の上昇を製品価格に転嫁することが困難になります。電力については、当社グループが販売する電力量が当社グループによる発電量を上回る場合、不足分を市場から調達しますが、調達価格が急騰した場合、収益が悪化する可能性があります。従って、原油価格、石油製品価格、石油化学製品価格の変動や電力市場の取引価格の高騰等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (石油・天然ガス開発セグメント)石油・天然ガス開発事業においては、原油及び天然ガス価格の上昇時には売上高が増加し、原油及び天然ガス価格の下落時には、売上高が減少します。従って、原油及び天然ガス価格の変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (金属セグメント)銅事業は、主として海外銅鉱山開発事業及び海外銅鉱山への投資事業、銅製錬事業、機能材料・薄膜材料事業から成り、銅精鉱価格、製錬マージン、販売プレミアム及びその他金属市況等の影響を受けます。銅製錬事業は、海外鉱山から銅精鉱を購入し、電気銅を生産販売する買鉱製錬業(カスタムスメルター)であり、そのマージンは、主に製錬マージンと販売プレミアムからなります。海外銅鉱山開発事業及び海外銅鉱山への投資事業については、開発鉱山及び投資先鉱山が販売する銅精鉱等の価格が電気銅の国際価格に基づき決定されるため、国際価格が下落した場合には、売上高が減少します。製錬マージンは銅精鉱鉱山との交渉により決定されますが、銅鉱石品位の低下、資源メジャーによる寡占化の動きなどにより製錬マージンが低下する可能性があります。また、販売プレミアムは電気銅の国際価格に付加されるものであり、輸送経費、製品品質等の様々な要因を考慮して顧客との交渉により決定されるため、減少する可能性があります。機能材料・薄膜材料事業の原材料は、金属市況等の変動により調達価格が変動します。これら原材料の調達価格が上昇し、製品価格に転嫁できない場合や、市況が期首棚卸資産の帳簿価額を大きく下回る場合、損益が悪化します。従って、銅精鉱価格、製錬マージン、販売プレミアム及びその他金属市況等の変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ・為替リスク当社グループは、外貨建ての営業取引による収入及び支出が発生しており、また多額の外貨建て資産及び負債を有しています。そのため、外国為替相場の変動は、資産、負債、収入及び支出の円貨換算額に影響を及ぼす可能性があります。また、外国為替相場の変動は、海外の子会社、持分法適用会社、共同支配事業及び共同支配企業の財務諸表を円貨換算する場合にも影響を及ぼす可能性があります。 なお、当社グループでは、デリバティブ金融商品を利用したヘッジを行い、市場リスクを低減する対策を講じています。その具体的な取組については、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記20.金融商品 (2)財務リスク管理 ③市場リスク」をご参照ください。 また、上記の市場リスクのうち、当社グループの経営成績に影響を及ぼす主要なリスクである外国為替相場、原油価格及び銅価格の市況変動による営業利益への影響額については、感応度を算定しています。次期の連結業績予想(2024年5月公表)へ与える市況変動の感応度は、下表のとおりです。なお、本感応度は一定の前提をおいて算定したもので、諸条件の変化によって影響額も変動します。 (2)環境規制に関するリスク当社グループの事業は、広範な環境規制の適用を受けており、これらの規制により、環境浄化のための費用を賦課され、環境汚染が生じた場合には、罰金・賠償金の支払いを求められ、又は操業の継続が困難となる可能性があります。また、今後、規制が強化される可能性があります。これらの環境規制及び基準に関する義務や負担は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (3)気候変動に関するリスク当項目は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)気候変動対応(TCFD)」の中で記載しています。 (4)操業に関するリスク当社グループの事業は、火災、爆発、事故、輸出入制限、自然災害、鉱山の崩落や天候等の自然現象、労働争議、原料や製品の輸送制限等の様々な操業上のリスクを伴っており、これらの事故・災害等が発生した場合には、多大な損失を蒙る可能性があります。当社グループは、可能かつ妥当な範囲において、事故、災害等に関する保険を付していますが、それによってもすべての損害を填補し得ない可能性があります。 (5)需要変動に関するリスク当社グループの製品・サービスの需要は、それらを提供している国又は地域の経済状況、社会情勢の影響を強く受けています。国内石油製品需要については、「脱炭素社会」の実現に向けた動きが加速することを受けて、低燃費車の普及、ガス・電気等へのエネルギー転換が進展し、今後も減少することが予想されます。石油化学製品の販売はアジア諸国での需要に大きく依存しており、これらの地域における需要の変動が当社グループの製品需要に大きな影響を与えます。電子材料部品・チタンなどの製品については、需要家が限定されており、特定の需要家の経営環境が当社グループの製品需要に大きな影響を与えます。建設事業についても、公共事業又は民間設備投資(居住用不動産の建設を含む)の動向が、当社グループの建設事業需要に影響を及ぼします。これら当社グループの需要の変動については、正確な予測に努め必要な対策を行っていますが、予測を超えた急激な変動がある時は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (6)競合に関するリスク当社グループは、様々な市場で激しい競争に晒されています。特に国内石油精製販売事業においては、企業間で激しい競争が行われていますが、国内需要の減少傾向が、この状況をさらに加速する可能性があります。また、機能材料・薄膜材料事業は、技術革新及び顧客ニーズの急速な変化を伴う事業環境下にあり、競合他社との競争に絶えず晒されています。このような競争環境の激化が、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (7)原料供給源に関するカントリーリスク当社グループは、原料の多くを海外から調達しており、特に、原油は中東の、銅精鉱は南アメリカ、東南アジア及びオーストラリアの、それぞれに限られた供給源に大きく依存しています。こうした国・地域における政治不安、社会混乱、労働争議、経済情勢の悪化、法令・政策の変更等のカントリーリスクが発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (8)資源開発に関するリスク当社グループが行っている油田・天然ガス田における探鉱及び開発活動は、現在、商業化に向けて、様々な段階にあります。探鉱及び開発の成功は、探鉱・開発地域の選定、設備の建設コスト、政府による許認可や税制、資金調達等、種々の要因に左右されます。個々のプロジェクトが商業化に至らず、投資費用が回収できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、探鉱・開発事業においては、高度な専門技術と幅広い経験を有する人材を確保する必要がありますが、当社グループが優秀な人材を十分に確保できない場合は、収益機会の逸失及び競争力低下につながる可能性があります。 (9)石油・天然ガスの埋蔵量確保に関するリスク国際的な資源獲得競争により、当社グループが石油・天然ガスの埋蔵量を確保するための競争条件は一段と厳しくなっています。当社グループの将来における石油・天然ガスの生産量は、探鉱、開発、権益取得等により、商業ベースの生産が可能な埋蔵量をどのように確保できるかにより左右されます。当社グループが石油・天然ガス埋蔵量を補填できない場合には、将来的に生産量が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、石油・天然ガス埋蔵量の見積りは、地質学的、技術的、経済的情報に基づいた主観的判断や決定を伴うため、正確に測定することが困難であり、進歩する回収技術の適用や生産活動を通じた新たな情報に基づいて大幅な修正が必要となる可能性があります。実際の埋蔵量が見積りを下回った場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (10)石油・天然ガス開発機材に関するリスク石油・天然ガスの探鉱及び生産をするため、当社グループは、第三者から掘削機等の機材及びサービスの提供を受けています。原油価格が高騰している時期等は、これらの機材及びサービスが不足し、機材及びサービス提供の価格も上昇することになります。当社グループが、適切なタイミングかつ経済的に妥当な条件で、必要な機材やサービスの提供を受けることができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。 (11)第三者との提携、事業投資に関するリスク当社グループは、様々な事業分野において、合弁事業その他の第三者との提携及び他企業等への戦略的な投資を行っています。これらの提携や投資は、当社グループの事業において重要な役割を果たしており、種々の要因により、重要な合弁事業が経営不振に陥り、又は提携関係や投資における成果を上げることができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (12)事業の再構築に関するリスク当社グループは、コスト削減、事業の集中と効率性の強化を図ることとしており、事業の再構築に伴う相当程度の損失が発生する可能性があります。当社グループがその事業の再構築を適切に行うことができず、又は、再構築によっても、想定した事業運営上の改善を実現することができなかった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (13)設備投資及び投融資と減損に関するリスク当社グループにおいては、事業の維持・成長又は新たな事業機会の獲得のために、継続的な設備投資及び投融資を必要としていますが、キャッシュ・フローの不足等の要因によりこれらの計画を実行することが困難となる可能性があります。また、外部環境の変化等により、実際の投資額が予定額を大幅に上回り、あるいは計画どおりの収益が得られない可能性もあります。それにより、当社グループが所有している有形固定資産、のれん及び無形資産について投資額の回収が見込めなくなった場合には、これを反映させるように帳簿価額を減額し、その減少額を減損損失として計上することとなるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。 (14)繰延税金資産に関するリスク当社グループの繰延税金資産は、将来減算一時差異、未使用の繰越税額控除及び繰越欠損金を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で金額を計上しています。課税所得発生の時期及び金額は、合理的な見積りに基づき決定していますが、課税所得が生じる時期及び金額は、将来の不確実な経済状況の変動によって影響を受ける可能性があり、実際に生じた時期及び金額が見積りと異なった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。 (15)棚卸資産の収益性の低下による簿価切下げと棚卸資産評価に関するリスク当社グループは、多額の棚卸資産を所有しており、原油、石油製品、レアメタルの価格下落等により、棚卸資産の期末における正味売却価額が帳簿価額よりも低下したときには、収益性が低下しているとみて、期末帳簿価額を正味売却価額まで切り下げて売上原価等に計上することとなるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、当社グループは、原油、石油製品等棚卸資産の評価を総平均法で行っており、原油価格の上昇局面では、期初の相対的に安価な棚卸資産の影響により売上原価が押し下げられて増益要因となりますが、原油価格の下落局面では、期初の相対的に高価な棚卸資産の影響により売上原価が押し上げられて減益要因となるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (16)有利子負債に関するリスク当社グループは、多額の有利子負債により事業活動等に制約を受ける可能性があり、また、負債の元利金支払いのために、追加借入又は資産の売却等による資金調達を必要とする可能性がありますが、こうした資金調達を行うことができるか否かは、金融市場の状況、当社の株価、資産の売却先の有無等、様々な要因に依存しています。さらに、国内外の金利が上昇した場合には、金利負担が増加することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (17)確定給付制度に関するリスク当社グループは確定給付制度を含む退職給付制度を有しています。これらの各制度に係る確定給付制度債務の現在価値及び関連する勤務費用等は、数理計算上の仮定に基づいて算定されます。数理計算上の仮定には、割引率等、様々な変数についての見積り及び判断が求められます。これらの変数を含む数理計算上の仮定の適切性について、将来の不確実な経済状況の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、制度資産に関しては、主に資本性金融商品の価格や社債利率の変動リスクに晒されており、これらの資産の利回り低下も当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記18.退職後給付 (2)確定給付制度」をご参照ください。 (18)信用に関するリスク当社グループは、保有する売掛金などの金融債権が、債務者(取引先)の信用悪化や経営破綻などにより債務不履行になることにより、金融資産が回収不能になるリスク、すなわち信用リスクに晒されています。当該リスクに対応するために、与信管理規程等に基づき取引先ごとに与信限度額を設けた上で、取引先の財務状況等について定期的にモニタリングし、債権の期日及び残高を取引先ごとに適切に管理することにより、回収懸念の早期把握を図っています。さらに、必要に応じて担保設定・ファクタリング等を利用することによって保全措置を図っていますが、信用リスクが完全に回避される保証はありません。取引先の信用状態の悪化を受けて、保有する金融資産が回収不能になった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (19)知的財産に関するリスク当社グループは、事業遂行のため、特許権等の知的財産権を保有していますが、状況によってはその確保が困難となり、又は有効性が否認される可能性があります。また、当社グループの企業秘密が第三者により開示又は悪用される可能性もあります。さらに、急速な技術の発展により、当社グループの事業に必要な技術について知的財産権による保護が不十分となる可能性があります。また、当社グループの技術に関して第三者から知的財産権の侵害クレームを受けた場合は、多額のロイヤリティー支払い又は当該技術の使用差止めの可能性もあります。以上のように、当社グループがその事業を行うために必要な知的財産権を確保し、又はそれを十分に活用することができない場合等には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (20)内部統制システムに関するリスク当社グループは、かねてからコンプライアンス、リスク管理等の充実に努めており、財務報告に係る内部統制を含め、内部統制システムの充実強化を図っていますが、当社グループが構築した内部統制システムが有効に機能せず、コンプライアンス違反、巨額な損失リスクの顕在化、ディスクロージャーの信頼性の毀損等の事態が生じた場合には、ステークホルダーの信頼を一挙に失うことにもなりかねず、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (21)情報システムに関するリスク当項目は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組(10)情報セキュリティ及びDX推進に関する事項」の中で記載しています。 (22)個人情報の管理に関するリスク当社グループは、石油販売等の事業に関連して顧客の個人情報を保有しており、それらに保護対策等を実施して適切に管理していますが、こうした対策に今後多額の費用を必要とする可能性があります。また、今後、仮に顧客の個人情報が流出し又は悪用された場合、上記事業に影響が及ぶ可能性があります。
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要<当社グループを取り巻く環境>当連結会計年度においては、各国の金融引き締め政策に伴う景気減速懸念や中国の景気回復遅れ等を受け、世界経済の回復ペースは鈍化しました。一方、わが国経済については、物価上昇による家計や企業への影響や世界経済の下振れ懸念はあるものの、新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う行動制限の解除を受け、経済社会活動の正常化が進み、緩やかな回復が継続しました。当連結会計年度における原油価格(ドバイ原油)は、期初は1バーレル当たり84ドルから始まり、期末には86ドル、期平均では前年同期比11ドル安の82ドルとなりました。期中はOPECプラスの協調減産に関する合意を巡り上下したものの、世界的な情勢不安や堅調な米国景気等を要因に、期末にかけて上昇しました。銅の国際価格(LME〔ロンドン金属取引所〕価格)は、期初は1ポンド当たり407セントから始まり、期末には396セント、期平均では前年同期比9セント安の379セントとなりました。世界的な景気減速懸念により軟調に推移しましたが、3月の中国製錬会社の減産合意報道を受け供給不足感が高まり、期末に向けて上昇しました。円の対米ドル相場は、日米の金利差拡大を背景に円安が進行し、3月には151円台の水準に、期平均では前年同期比10円円安の145円となりました。 <連結業績の概要>こうした状況のもと、当連結会計年度における売上高は、原油価格の下落に伴う石油製品販売価格の下落や金属価格の下落等により、前年同期比7.7%減の13兆8,567億円となりました。また、営業利益は、前年同期比1,836億円増益の4,649億円となりました。在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益相当額は、前年同期比1,467億円増益の3,932億円となりました。金融収益と金融費用の純額168億円を差し引いた結果、税引前利益は、前年同期比1,907億円増益の4,481億円となり、法人所得税費用1,026億円を差し引いた当期利益は、前年同期比1,425億円増益の3,455億円となりました。なお、当期利益の内訳は、親会社の所有者に帰属する当期利益が2,881億円、非支配持分に帰属する当期利益が574億円となりました。 (注)上図内の原油価格、銅価、為替レートは期平均値です。 セグメント別の概況は、次のとおりです。 [エネルギーセグメント]国内の石油製品需要は、構造的な需要減少により新型コロナウイルス感染症のまん延前を下回る水準で推移しています。他方、アジアの石油化学製品需要は、中国を中心に堅調に伸長した結果、前連結会計年度を上回る水準で推移しました。 <基盤事業>国内需要の減少が続く中にあっても、国民生活に不可欠な石油製品の安定供給の使命を果たし、サプライチェーンの最適化・効率化・強靭化によりキャッシュ・フローを創出すべく、次の諸施策に取り組みました。 (石油精製販売事業)●SSネットワークの強化国内最大のSSネットワークを一層強固な事業基盤とすべく、お客様の利便性や満足度を高めるために様々なサービスを展開しました。具体的には、前連結会計年度に展開した「ENEOS SSアプリ(2024年4月1日に「ENEOS公式アプリ」に改称)」にて利用可能なクーポン種類の拡大やWebカーメンテナンス予約システム「エネアポ予約」への連携を開始しました。また、SSにおいて「Vポイント」・「楽天ポイント」・「dポイント」の3つのポイントが利用可能なマルチポイントサービスの付与対象カードを拡大しました。 ●製油所の信頼性向上に向けた取組製油所の信頼性向上のため、検査プログラムの強化・前倒し、保全計画の改善、工事品質の向上、運転トラブルの削減の4本柱を軸として活動しています。検査プログラムの強化・前倒しについては、検査範囲を拡大し、潜在リスクの網羅的な洗い出しを行って、操業影響の大きい箇所から順次検査を実施しています。保全計画の改善については、これまでのトラブルから得られた知見及び操業に与える影響を踏まえて優先順位を改めて評価し、点検・補修の強化を行っています。工事品質の向上については、施工事業者との意見交換やお互いの知見を共有し、具体的な施工内容に応じて社外のスペシャリストの知見も取り入れ、施工品質に起因するトラブルの撲滅に取り組んでいます。運転トラブルの削減については、ベテランの勘所の手順化、若手運転員の体感型教育等を通じ、非定常操作の確実性向上に取り組んでいます。さらに今年度からは、上記4本柱を確実に達成するための仕組み作り(エンジニア・運転員の教育や増員、運転・保全・技術の連携を強化する組織)にも力を入れています。 ●デジタル技術の積極導入株式会社Preferred Networksとともに、熟練運転員のノウハウが求められる石油精製・石油化学プラントのオペレーションを自動化するAIシステムを開発し、国内初となるAI技術による石油化学プラントの連続自動運転を実施しています。また、同社との合弁会社である株式会社Preferred Computational Chemistry(以下、PFCC)より、共同開発した新物質開発・材料探索を高速化する汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」のクラウドサービスについて米国の企業・団体向けにもサービス提供を開始しています。同サービスは2023年12月1日時点で、国内外70以上の企業・研究団体に導入され、触媒、電池材料、半導体、合金、潤滑油、セラミック材料、化学材料等、幅広い開発に用いられています。Matlantis™のさらなる展開にも取り組んでおり、HPCシステムズ株式会社、PFCCと三社共同で革新的な計算速度で化学反応経路を自動探索する「GRRM20 with Matlantis」を開発、サービス提供を開始しました。また、株式会社イクシスと、ロボティクスを活用したプラント・次世代型エネルギー設備への保守点検サービス事業について協業検討を進めています。 (石油化学事業)将来的な競争力・収益力の強化を図るべく、付加価値の高い誘導品事業の拡大に取り組みました。その一環として、超高圧・高圧電線の絶縁用途に使用されるポリエチレンの生産能力増強(約3万トン、投資額約120億円)を進め、新設装置が2024年2月に完工しました。また、バイオ原料を使用したエチレン誘導品の製造・販売を目指し、株式会社日本触媒及び三菱商事株式会社(以下、三菱商事)と共同で、バイオ原料に関わる市場調査、バイオ誘導品の製造・販売の実現性を評価し、バイオ誘導品のサプライチェーン構築検討を行っているのに加え、サントリーホールディングス株式会社(以下、サントリーホールディングス)及び三菱商事と、バイオ原料を使用したバイオパラキシレンからサステナブルPET樹脂までのサプライチェーン構築に取り組んでいます。この他、サントリー食品インターナショナル株式会社及び協栄産業株式会社と協働し、ENEOSのサービスステーションを活用した使用済みペットボトル回収、並びにリサイクルチェーン構築の実証を実施中です。 (潤滑油事業)潤滑油事業においては、EVのさらなる普及を見据え、EVの駆動システムの特性に合わせたEV専用油の開発及び国内外での顧客獲得に取り組みました。また、カーボンニュートラル社会の実現に貢献するため、植物由来の原料を使用した潤滑油・グリース商品「ENEOS GXシリーズ」及びデーターセンターにおいて冷却効率の高い液浸冷却を行うサーバー用液浸冷却液「ENEOS IXシリーズ」の販売を開始しています。 <成長事業>「脱炭素・循環型社会」「デジタル革命」及び「ライフスタイルの変化」は、これまで以上のスピード感で進展することを見据え、成長事業の育成・強化に向けた諸施策に取り組みました。 (素材事業)機能材事業においては、株式会社ENEOSマテリアル(以下、ENS)が有する販売ネットワークを活用した石油樹脂等の拡販等ENEOSとENSの機能材事業の統合シナジー最大化へ継続的に取り組むとともに、電気自動車(EV)にも使用される高機能タイヤ用エラストマーSSBR(溶液重合スチレン・ブタジエンゴム)やEVへの搭載を主とする二次電池の材料を成長事業と位置づけ、競争力の強化に取り組みました。 (バイオ燃料・SAF)航空業界における脱炭素化の進展を見据え、持続可能な航空燃料(SAF)の量産体制の確立に向け、TotalEnergies社(以下、トタルエナジーズ)と、和歌山製造所におけるSAF製造に関する事業化調査を実施中です(年間SAF製造能力約30万トン(40万kl))。主な原料である廃食油については、株式会社野村事務所、株式会社吉川油脂と連携し、現状輸出又は廃棄され国内未活用となっている廃食油を日本各地から安定的に調達する仕組みを構築中です。2023年9月には、サントリーホールディングスとも、国内未活用の廃食油調達における協業を発表しました。さらに、三菱商事と、SAFを含む次世代燃料の社会実装に向けた共同検討を実施することに合意しました。ENEOSが有する製造技術及び販売網と三菱商事が有する国内外の原料調達及びマーケティングに関する知見を活用し、次世代燃料のサプライチェーン構築の早期実現に貢献します。また、AMPOL Australia Petroleum社と、同社のリットン製油所(豪クイーンズランド州)におけるバイオ燃料製造を検討するための覚書を締結しました。加えて、両社と豪クイーンズランド州政府は、同州政府が公式に本検討への支援を検討する覚書を締結しました。 (次世代型エネルギー供給・地域サービス事業)●エネルギーサービス・再生可能エネルギー事業2023年4月にENEOSが国内に有する太陽光・陸上風力・洋上風力の各発電事業及び関連する事業をジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社(2024年4月1日付でENEOSリニューアブル・エナジー株式会社に商号変更)に移管しました。これにより効率的な発電所の開発・運営を推進することで、ENEOSグループの再生可能エネルギー事業の成長をさらに加速させていきます。2023年度の具体的な取組としては、国内で合計約5万kWの太陽光発電所及び陸上風力発電所に着工したことに加え、2024年3月には公募入札にて八峰能代洋上風力発電事業(発電設備出力37.5万kW)を落札しました。また、海外では豪クイーンズランド州でEdenvale Solar Park(総発電容量約20.4万kW)が運転を開始しました。2022年度よりトタルエナジーズとともに取り組んでいる法人向け太陽光発電自家消費支援事業においても、2027年までに2GWの発電容量を開発することを目指し、日本を含むアジア各国で引き続き営業活動を行っています。これらの取組の結果、ENEOSグループ全体の2024年3月末時点の再生可能エネルギー発電容量(建設中含む)は124.1万kWとなりました。 ・水素事業本格的な水素の大量消費社会を見据えて、CO2フリー水素サプライチェーンの構築に取り組んでいます。国内外の広範囲なアライアンスを活用するとともに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施する「グリーンイノベーション基金事業」(GI基金事業)等の支援も受け、実証事業や独自技術の開発等に取り組みました。具体的には、豪州、マレーシア、中東、米国にて、上流サプライチェーン構築に向けた協議を進めるとともに、国内のコンビナートエリアで大規模なCO2フリー水素の活用に関する共同検討を大阪ガス株式会社及びJFEスチール株式会社と開始しました。水素キャリアとして期待されるメチルシクロヘキサン(MCH)を安価に製造する独自技術「Direct MCH®」について、豪クイーンズランド州に建設した工業的に使用される電極面積を有する電解槽(150kW級、水素30Nm3/h相当)実証プラントにて、再生可能エネルギーを用いたMCH製造を行いました。その豪州産MCHを日本に輸入して水素を取り出し、燃料電池小型バスへ充填・走行させることにも成功しています。また、「裾野市CO2フリー水素ステーションを活用したパイプライン水素供給システムの開発」が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業に採択され、Woven Cityの近隣にENEOSが建設中の水素ステーションを活用した実証事業に向けた計画策定に着手しました。北海道では、国内最大規模となる国産グリーン水素サプライチェーン構築に向けて、出光興産株式会社及び北海道電力株式会社との共同検討に関する契約を締結しました。水素ステーションは、新たに1か所で営業を開始したほか、一部ステーションでの営業を終了した結果、運営中の水素ステーションは合計38か所(2024年3月末時点)となりました。 ・合成燃料再生可能エネルギー由来のCO2フリー水素とCO2を原料とする合成燃料の技術開発について、GI基金事業の支援を受け、早期技術確立を目指して各反応工程の性能向上と、プロセス全体の高効率化に取り組んでいます。中央技術研究所敷地内に1バーレル規模の小規模プラント建設を進め、2024年度から実証運転を開始する計画です。また、合成燃料を実際の車両に充填、走行デモンストレーションを行い、従来のガソリンと変わらない自動車走行を確認しました。 ・VPP事業2023年8月に根岸製油所、2024年3月に室蘭事業所にそれぞれ大型蓄電池を設置し、運用を開始しました。室蘭事業所の蓄電池は出力50MWと国内最大級の系統用蓄電池であり、この調整力を需給調整市場及び卸電力市場へ提供することで電力の安定供給並びに再生可能エネルギーの拡大に貢献していきます。また、2023年5月に埼玉県さいたま市浦和美園地区において家庭用蓄電池の遠隔制御を行う技術実証を開始しました。本実証で得た知見を活かし、分散型エネルギーリソースを活用したVPP事業の実現へ向けて準備を進めていきます。 ・地域コミュニティとの連携次世代型エネルギーの推進と地域づくりを実現すべく、静岡県及び静岡市と締結した基本合意書に基づき、清水製油所跡地(清水油槽所内遊休地)を中心とした次世代型エネルギー供給プラットフォームの構築を進めています。エネルギーマネジメントシステムを活用し、地産の再生可能エネルギーの有効活用を図るとともに、災害時(停電時)には自立的にエネルギー供給を行うことにより、地域防災・減災にも貢献していきます。 ●モビリティサービス・ライフサポート・モビリティサービス事業個人向けカーリース「ENEOS新車のサブスク」と「ENEOSカーリース法人プラン」を展開しています。SS店頭でのカーリース取扱いは全国約1,700か所となっており、個人向けについてはWebでのお申込みも可能になりました。2023年度からはEVを車種ラインナップに加えており、今後もお客様の多様なニーズに応えます。また、EVの普及を見据え、SS及び商業施設へENEOS Charge Plus急速充電器及び普通充電器の設置を拡大しており、日本電気株式会社から運営権を承継した普通充電器約6,100基と併せ、充電ネットワークの拡充を図っています。加えて2023年度は、個人EVユーザー向けに、充電器検索から決済まで完結できる「ENEOS Charge Plus EV充電アプリ」を、法人EVユーザー向けに、業務車両の充電を一括管理できる「法人充電会員カード」をリリースする等、さらなる利便性の向上を図っています。さらに、北米のスタートアップ企業であるAmple社とEVの蓄電池交換サービス提供に向けて、2023年3月に京都市において一部パートナー企業と共に実証試験を開始しました。また、東京都世田谷区に出資先のスタートアップ企業であるOpenStreet株式会社と株式会社Luupの電動モビリティ、また株式会社Gachaco(以下、Gachaco)の電動二輪車用共通仕様バッテリーのシェアリングサービスを一堂に集めて提供する「ENEOSマルチモビリティステーション」を開設し、モビリティ事業の推進を図っています。 ・ライフサポート事業SSを物流拠点として活用する「配送効率化事業」の推進に向けて、三菱商事との合弁会社であるLife Hub Network 株式会社を設立しました。全国各地のSSを荷物の一時保管かつ最終配送拠点とすることで、配送先までの走行距離を短縮し、ドライバーの負荷軽減及び配送の効率化を目指します。また、SSが地域の生活拠点として進化していくことを目指し、次世代SSの実証店となる「ENEOSプラットフォームひたち野うしくSS」を2024年3月末に開所しました。 (環境対応型事業)バッテリーのユース・リユース・リサイクルが循環する仕組み「BaaS(Battery as a Service)プラットフォーム」の構築を目指し、2022年4月、電動モビリティの普及を目的に国内大手二輪メーカー4社と共同で設立したGachacoが補助金交付事業として東京都内、及び大阪市内を中心にバッテリー交換機の設置を促進するとともにサービス展開を開始しました。2024年3月末時点において、東京都内で41か所のバッテリー交換機の設置が完了すると共に個人向けサービスも一部開始しました。また、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、廃プラスチックを利用したアスファルト舗装技術を開発し、実証試験を開始したほか、使用済タイヤからタイヤ素原料を製造するケミカルリサイクル技術を確立すべく、GI基金事業の支援のもと、株式会社ブリヂストンと共同プロジェクトを進めています。加えて、古紙を原料とした国産バイオエタノールの事業化に向けて、TOPPANホールディングス株式会社と共同で実証事業を開始します。このほか、三菱ケミカル株式会社と共同でプラスチック油化事業を開始することを決定し、鹿島製油所に隣接する同社茨城事業所に商業ベースで国内最大規模の処理能力を備えたケミカルリサイクル設備を建設中です。 (エネルギーセグメントの業績)エネルギーセグメントの売上高は、前年同期比8.1%減の11兆6,871億円となりました。営業利益は前年同期比2,020億円増益の2,530億円となりました。在庫影響を除いた営業利益相当額は、白油・輸出マージンに含まれるタイムラグがプラスに反転したことに加え、実質の白油マージン、化学品等のマージンが良化したことにより、前年同期比1,651億円増益の1,813億円となりました。 [石油・天然ガス開発セグメント]石油・天然ガス開発セグメントにおいては、基盤事業である石油・天然ガスの開発・生産事業を軸としつつ、CCS/CCUS(*1、2)を中心とした環境対応型事業を成長事業と位置付けてもう一つの軸とする「二軸経営」を展開しています。* 1 CCS:二酸化炭素回収・貯留* 2 CCUS: 二酸化炭素回収・有効利用・貯留 <基盤事業>●環境にも配慮したエネルギーの安定供給石油・天然ガス開発事業においては、安定供給と環境負荷の低減の両立に取り組んでおり、当連結会計年度においても着実に推進しました。インドネシアにおいては、タングーLNGプロジェクトの液化設備の増設が完了し、生産能力を大きく向上させました。マレーシアにおいては、国営エネルギー会社であるPETRONAS社と、高濃度CO2ガス田の開発とCCS事業を組み合わせた「BIGSTプロジェクト」に関する生産分与契約を新たに締結しました。米国においては、火力発電所の燃焼排ガスからCO2を分離・回収し、回収したCO2を油田へ圧入して原油増産に繋げるためのCO2回収プラントの運転を2023年9月に再開し、順調に運転を継続しています。 <環境対応型事業>●環境対応型事業の推進環境対応型事業としては、国内外においてCCS/CCUSを中心に推進しており、当連結会計年度においては、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構と令和5年度(2023年度)「先進的CCS事業の実施に係る調査」の受託に関する契約の締結、豪州における石油・ガス大手のSantos社との日豪間のCCSバリューチェーン構築に向けた共同検討に関する覚書の交換等を行いました。また、2024年4月、今後必要となる最先端の技術・知見を集約し、効率的な研究開発を行うe-テクノロジー・イノベーションセンターを設立しました。さらに、脱炭素社会に向けた様々な実証や他社、大学等との協業を推進する中条共創の森オープンイノベーションラボの新事務所建設も進め、2024年6月に完成しました。 (石油・天然ガス開発セグメントの業績)石油・天然ガス開発セグメントの売上高は、前年同期比1.9%増の2,049億円となりました。営業利益は、既存ガス田拡張プロジェクトの出荷開始による数量増及び日本海洋掘削株式会社の子会社化・利益取込みによる良化があったものの、資源価格下落影響がこれらを上回ったことにより、前年同期比225億円減益の915億円となりました。 [金属セグメント]薄膜材料事業及び機能材料事業を主力とするフォーカス事業については、半導体市場における生成AI向け高性能半導体用途の需要増加はあるものの、各種民生用電子デバイスの需要減退やスマートフォン需要の回復の遅れに伴うサプライチェーンにおける在庫調整の継続、中国の景気減速等の要因により販売量は前年を下回り、減益となりました。ベース事業については、SCM Minera Lumina Copper Chile(以下、MLCC)の株式譲渡による利益の剝落や、パンパシフィック・カッパー株式会社(以下、PPC)の株式の一部譲渡に伴う資産の公正価値評価損失を計上したものの、円安による為替評価益や、前年度のMLCC株式譲渡決定に伴う資産の公正価値評価損失の反転により、前年同期に対し増益となりました。 <フォーカス事業>(半導体材料事業)●薄膜材料事業半導体需要の拡大を見据え、半導体用スパッタリングターゲットの機動的な供給体制を構築すべく、国内外で新工場の建設を進め、生産能力の増強に取り組みました。茨城県日立市においては、2023年10月に日立北工場が竣工し、米国アリゾナ州メサにおいても新工場の建設を進め、2024年5月末時点で新工場建屋の大部分の建設が完了しました。両工場とも生産設備の搬入を進めており、いずれも2024年度の操業開始を目指しています。 ●タンタル・ニオブ事業半導体用スパッタリングターゲットを中心に世界的に需要増が見込まれる高純度タンタル粉末の安定供給のための施策として、タイ拠点における生産能力増強を進めています。本設備投資ではタンタル粉末製品の製造設備を増設するとともに、分析棟を増設し品質管理体制の強化を図っています。さらには、開発・試作に関する設備を新設し、顧客のニーズに迅速に応える体制を強化します。本設備は現在建設中であり、2025年を目途に順次稼働開始の予定となっています。 (情報通信材料事業)●機能材料事業将来のIoT・AI社会の進展により、高速通信の普及、各種先端デバイスの小型化、高機能化等に加えて、CASE化が進むモビリティ分野の伸長等にけん引され、JX金属株式会社(以下、JX金属)が取り扱う製品の需要は拡大すると予測されます。こうした情報通信及びモビリティ分野製品における高機能化に貢献すべく、導電性や耐熱性等の機能に優れ、薄箔化も可能という特性を有する高機能銅合金製品を新たに開発し、顧客へのプロモーションを開始しています。その一環として、高機能銅合金製品にかかわる原料供給網を強化する目的で、JX金属が33.4%の株式を有していた株式会社大阪合金工業所の株式を52.6%まで追加取得し、子会社化しました。重要な原料調達における一層のサプライチェーンの強化を図り、JX金属の先端素材の安定供給及び将来の新製品開発に活かします。また、2023年12月、めっき・プレス加工の外注を請け負っている子会社であるJX金属プレシジョンテクノロジー株式会社(以下、JXPT)の株式85%を株式会社マーキュリアインベストメントが無限責任組合を務めるマーキュリア日本産業成長支援2号投資事業有限責任組合(以下、MIC社)に譲渡しました。株式譲渡により、JX金属が強みを持つ先端素材分野に経営資源を更に集中させることが可能となります。また、MIC社は政府系金融機関を源流とする、産業競争力強化を目的とした上場投資会社です。同社を中心とする新たな経営体制のもとで、新領域への事業拡大、生産性の向上施策等を通じJXPTはさらなる成長が期待されます。 ●チタン事業(東邦チタニウム株式会社)東邦チタニウム株式会社では、通液性・導電性といった金属多孔質体の特長と、チタンの長所である高耐食性や強度を併せ持つ新素材であるチタン多孔質体WEBTiの開発を進めております。近年は、次世代のエネルギー「水素」を製造する水電解のうち、特に再生可能エネルギーとの相性が最も良いとされるPEM型水電解方式に用いられる材料として注目を集めています。2050年カーボンニュートラルの実現に向けた水素関連技術として、各国が水電解方式に関する多くのプロジェクトを進めています。既存のエネルギーを水素で置き換えるには多大な水電解能力が必要であるため、そこに利用されるWEBTiも需要の拡大が期待されます。 ●タツタ電線株式会社へのTOB開始を決定JX金属は、2022年12月開催の取締役会において、完全子会社化を目的として、タツタ電線株式会社の普通株式を金融商品取引法に基づく公開買付けにより取得することを決議しました。また、同社が設置した特別委員会において本公開買付けに賛同の意見を表明するとともに、同社の取締役会が本公開買付けへの賛同及び応募を推奨する旨の決議をしています。その後、日本における競争法に基づく必要な手続きは完了したものの、中国における競争法に基づく必要な手続きについては完了していませんでしたが、2024年6月11日に中国競争当局よりクリアランスを取得しました。これを含む本公開買付実施の前提条件がいずれも満たされたため、本公開買付を同年6月21日より開始することを決定しています。 ●ひたちなか新工場の建設工事開始急速に進展する社会のデジタル化に不可欠な最先端素材の安定供給のニーズに応えるべく、茨城県ひたちなか市に取得した大規模用地(約24万㎡)において、新工場建設に向けた造成工事を進めています。当新工場は、半導体用スパッタリングターゲットといった既存の世界トップシェア製品をはじめとして、社会のデジタル化進展に欠かせない先端素材の製造・開発を担うJX金属グループの中核拠点となる予定です。また、新工場建設により、日立事業所と磯原工場と合わせて3つの主要拠点が茨城県内に所在することから、建設工事の推進と並行して、管理間接部門の集約も含めて茨城県全域における最適な組織運営体制の検討を進めています。 <ベース事業>(基礎材料事業)●資源事業2023年7月にチリのカセロネス銅鉱山の運営会社であるMLCCの株式51%をカナダのLundin Mining社へ譲渡しました。これにより高い鉱山運営能力を持つパートナーが得られ、生産性向上やコスト競争力強化のみならず、Lundinグループが近隣に持つ探鉱プロジェクトとの一体開発により山命延長等の長期的事業運営が可能となります。今後は先端素材事業を中心とした注力分野へ経営資源を更に集中していくとともに、資源事業における長期的な収益基盤の強化を図ります。 ●金属・リサイクル事業2024年3月にJX金属が67.8%を有していたPPC株式の20%を丸紅株式会社(以下、丸紅)に譲渡しました。今回の取引を通して丸紅とのパートナーシップをより強固なものとし、丸紅のネットワークを活用した販売先の拡充、原料調達におけるレジリエンス強化等、様々なシナジーが期待でき、ベース事業のさらなる競争力強化を図ることができます。また、株式譲渡によりPPCが連結子会社から持分法適用会社となることにより、連結売上高営業利益率が大きく上昇し、さらには連結有利子負債が大幅に減少することで、金属セグメントの収益性・財務体質の大きな改善が見込まれます。 <研究開発>今後、半導体の微細化や多層化がさらに進んでいく中で、スパッタリング法に加えて、CVD・ALD(*3、4)による薄膜形成のニーズも高まることが見込まれます。次世代半導体向けCVD・ALD材料の開発テーマ探索から量産化までを一貫して担い、早期事業化を推進することを目的に、JX金属は2024年2月に「技術本部技術戦略部」内に「CVD・ALD材料事業推進室」を設置しました。また、インジウムリンやカドミウムジンクテルルをはじめとする結晶材料の分野は、データセンターやモバイル通信量の増加、さらには、センシング技術の高度化等により、今後飛躍的な成長が見込まれています。フォーカス事業における次世代の収益の柱とするべく、事業規模拡大に向けた取組の一環として、JX金属は2024年4月に既存の「技術本部 技術戦略部 結晶材料事業推進室」と「薄膜材料事業部 営業部」の一部を統合し、「技術本部 結晶材料事業推進部」として格上げすることとしました。今後、市場変化・開発競争がますます激しくなり、技術開発のスピードが一段と加速する中、これまで推進室と営業部が個々で担っていた機能を新組織の中に統合し、結晶材料事業全体の戦略立案機能を一元化することで、迅速かつ着実な事業規模拡大を進めます。* 3 CVD(Chemical Vapor Deposition):化学気相成長法(化学反応を活用して薄膜を形成する方法)* 4 ALD(Atomic Layer Deposition):原子層積層法(原子層レベルで膜厚を制御して薄膜を形成する方法) (金属セグメントの業績)金属セグメントの売上高は、MLCCの株式譲渡に伴う連結範囲からの除外、エレクトロニクス関連市場サプライチェーンの在庫調整に起因する減販等を主因に、前年同期比7.6%減の15,131億円となりました。営業利益は、減収による影響はあるものの、円安による為替評価益や前年度のMLCC株式譲渡決定に伴う資産の公正価値評価損失の反転等により、前年同期比124億円増の811億円となりました。 [その他]その他の事業における売上高は前年同期比4.0%減の4,920億円、営業利益は前年同期比47億円増益の512億円となりました。 ●株式会社NIPPO株式会社NIPPO(以下、NIPPO)は、舗装、土木及び建築の各工事並びにアスファルト合材の製造・販売を主要な事業内容としています。当連結会計年度は、公共投資は底堅く、民間設備投資は企業の高い設備投資意欲に支えられ増加傾向にあったものの、原材料価格の上昇や労働需給ひっ迫の影響を受け、厳しい経営環境にありました。このような事業環境下、NIPPOが有する技術の優位性を活かした受注活動、原材料価格の上昇に対応したアスファルト合材の適正価格での販売、生産性の向上及びコスト削減の推進により、競争力の強化に努めました。また、カーボンニュートラル社会の実現に向け、全事業所へのCO2フリー電力の導入、CO2排出削減に効果がある中温化合材の販売拡大等、CO2の削減に向けた取組を推進します。 上記各セグメント別の売上高には、セグメント間の内部売上高405億円(前年同期は460億円)が含まれています。 (2)生産、受注及び販売の実績ア.生産実績当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)エネルギー6,830,81484.0石油・天然ガス開発181,90490.1金属1,228,39696.7その他91,63696.3合計8,332,75085.9(注)1.上記の金額は、各セグメントに属する製造会社の製品生産金額の総計(セグメント間の内部振替前)を記載しています。 イ.受注実績当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。 ウ.販売実績当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)エネルギー11,682,78891.9石油・天然ガス開発204,863102.1金属1,512,10592.5その他456,90696.4合計13,856,66292.3(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しています。 (3)財政状態及びキャッシュ・フローの概況①流動性と資金の源泉当社は、効率的で安定的な資金の確保と、事業活動のための流動性の維持を、財務活動の取組として重視しています。効率的な調達に向けて、コマーシャル・ペーパーや社債等の直接金融と、金融機関からの借入等の間接金融を、機動的に選択しています。当社は、安定的な資金の確保に向けて、直接金融市場への継続的なアクセスを図るとともに、間接金融についても原油備蓄資金のための制度融資等も活用しており、政府系金融機関及び市中金融機関と幅広く関係を維持しています。また、トランジション・リンク・ローンといったサステナブル・ファイナンスによる資金調達を実施する等、調達ソースの多様化を図って十分な流動性を確保しています。また、金融市場の環境変化にも対応できる流動性を維持するために、現金及び現金同等物を確保する他、取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しています。当該契約の極度額は当連結会計年度末では4,550億円であり、また同契約に係る借入残高はありません。連結における資金管理では、当社を中心に集中して資金調達を行い、国内外の金融子会社を通じてグループ各社に資金を配分するというグループファイナンス制度を設けています。その運営においてキャッシュマネジメントシステムを活用しており、流動性資金の一元管理及び効率化を実現しています。当社は、資金調達とグローバルなビジネスを円滑に行うため、格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)、ムーディーズ・ジャパン(ムーディーズ)の3社から格付けを取得しています。3社の2024年6月時点の当社に対する格付け(長期/短期)は、R&IがA+(見通し安定的)/a-1、JCRがAA-(見通し安定的)/J-1+、ムーディーズがBaa2(見通し安定的)/(短期は取得無し)となっています。 ②連結財政状態計算書ア.資産 当連結会計年度末における資産合計は、手元資金の増加等により、前連結会計年度末比1,820億円増加の10兆1,365億円となりました。イ.負債 当連結会計年度末における負債合計は、資産売却や税金の還付等による有利子負債の減少により、前連結会計年度末比2,342億円減少の6兆4,327億円となりました。有利子負債残高は、前連結会計年度末比2,894億円減少の2兆8,200億円となり、また、手元資金を控除したネット有利子負債は、前連結会計年度末比7,601億円減少の2兆円となりました。なお、有利子負債にはリース負債を含めていません。ウ.資本 当連結会計年度末における資本合計は、配当金の支払いによる減少等があったものの、当期利益の計上等により、前連結会計年度末比4,162億円増加の3兆7,038億円となりました。 なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比3.1ポイント上昇し31.8%、1株当たり親会社の所有者帰属持分は前連結会計年度末比131.15円増加の1,079.82円、ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)は前連結会計年度末比0.30ポイント改善し、0.54倍(ハイブリッド債資本性調整前)となりました。 ③連結キャッシュ・フロー当社は、第3次中期経営計画において、「確かな収益の礎の確立」を基本方針の柱の一つとして掲げ、基盤事業から安定的なキャッシュ・フローを創出していきます。また、そのキャッシュを、現在の財務体質を堅持しながら、再生可能エネルギー事業の育成やSAF・水素等への取組に再配分することで、もう一つの柱である「エネルギートランジションの実現に向けた取組」を加速させていきます。なお、当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況と主な要因は以下のとおりです。ア.営業活動によるキャッシュ・フロー営業活動の結果、資金は1兆103億円増加しました(前期は1,102億円の減少)。これは、税引前利益や減価償却費等の資金増加要因によるものです。イ.投資活動によるキャッシュ・フロー投資活動の結果、資金は2,410億円減少しました(前期は1,159億円の減少)。これは、主として製油所における石油精製設備の維持・更新のための投資や再生可能エネルギー事業への投資によるものです。ウ.財務活動によるキャッシュ・フロー財務活動の結果、資金は3,310億円減少しました(前期は133億円の減少)。これは、ハイブリッド社債の発行等の資金増加要因があったものの、借入金の返済や配当金の支払及び自己株式の取得といった株主還元施策等の資金減少要因が上回ったことによるものです。 この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は7,759億円となり、期首に比べ4,644億円増加しました。 (4)重要性のある会計方針及び見積り当社の連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しています。当社は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、同規則第93条の規定を適用しています。重要性のある会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記3、4」をご参照ください。
経営上の重要な契約等 5【経営上の重要な契約等】
(1)「基本協定書」(契約当事者:日石三菱株式会社及びコスモ石油株式会社、締結日:1999年10月12日)企業の枠組みを超えて抜本的なコスト削減策を講じるため、仕入、精製、物流及び潤滑油(生産・配送)の各部門において業務提携を行うことについて約したものです。 (2)「合弁契約書」(契約当事者:JX金属株式会社(以下「JX金属」という。)、三井金属鉱業株式会社(以下「三井金属鉱業」という。)及びパンパシフィック・カッパー株式会社(以下「PPC」という。)、締結日:2020年2月12日)JX金属と三井金属鉱業との合弁会社であるPPC(JX金属の出資比率67.8%)を中心とした銅製錬事業(原料調達、委託製錬、製品販売等)に関する業務提携を約したものです。 (3)「Membership Interest Purchase Agreement(持分買取契約)」(契約当事者:JX Nippon Oil Exploration (CCS) Limited及びPetra Nova Holdings LLC、締結日:2022年9月14日)JX Nippon Oil Exploration (CCS) Limitedが、Petra Nova Holdings LLCから同社が保有するPetra Nova Parish Holdings LLCの持分(50%)の全てを買い取ることについて約したものです。 (4)「Purchase Agreement(株式譲渡契約)」(契約当事者:JX金属及びLundin Mining Corporation、締結日:2023年3月28日)JX金属が、同社の完全子会社であるSCM Minera Lumina Copper Chileの株式の51%を、Lundin Mining Corporationへ譲渡することについて約したものです。 (5)「合弁契約書」(契約当事者:JX金属、三井金属鉱業、丸紅株式会社(以下「丸紅」という。)及びPPC、締結日:2023年12月22日、以下「本契約」という。)JX金属及び丸紅が2023年12月22日付で締結した株式譲渡契約に基づきJX金属による丸紅へのPPC株式の譲渡が実行されることを発効条件として、JX金属、三井金属鉱業、丸紅及びPPCの四社間で、PPCを中心とした銅製錬事業(原料調達、委託製錬、製品販売等)に関する業務提携を約したものです。JX金属、三井金属鉱業及びPPCが2020年2月12日付で締結した合弁契約書は、本契約の発効により失効しました。なお、JX金属及び丸紅間の株式譲渡により、JX金属のPPCに対する出資比率は、67.8%から47.8%になりました。
研究開発活動 6【研究開発活動】
当社グループは、グループ理念に定めた『エネルギー・資源・素材における創造と革新』を目指し、エネルギー関連と金属関連を中心に研究開発活動を進めています。当連結会計年度における研究開発活動の概要は以下のとおりです。 (1)エネルギー (研究開発費 15,460百万円)エネルギー・素材関連の研究開発活動は、ENEOS株式会社(以下、ENEOS)の中央技術研究所と各事業カンパニーの研究開発部が連携をしながら進めています。「エネルギー・素材の安定供給」と「カーボンニュートラル社会の実現」との両立に向け、エネルギートランジションを実現すべく、新規事業の創出、拡大に向けて重点領域を設定して、研究開発を推進しています。また、社外との連携にも力を入れており、大学・研究機関や企業・スタートアップとも連携を図り、オープンイノベーションを促進しています。①脱炭素エネルギー分野カーボンニュートラル社会の実現に向け、海外の安価で潤沢な再生可能エネルギー(再エネ)を大量貯蔵・輸送に適した物質に変換し、エネルギー供給の安定性を高め、国内に使いやすい形で提供するための技術開発を進めています。CO2フリー水素分野では、再エネから得られた電力で直接トルエンを電解水素化することで、貯蔵・輸送に適したメチルシクロヘキサン(MCH)を低コストで製造する技術(Direct MCH®)の商業化に向けた開発を進めています。豪クイーンズランド州に建設した、工業化サイズの電極面積を有する中型電解槽実証プラント(150kW級)にて再エネを用いてMCHを製造、日本へ輸送し、取り出した水素を燃料電池小型バスへ充填、走行させることに成功しました。さらに2025年度をめどに大型電解槽プラント(MW級)の建設を行う予定です。これらは、「直接MCH電解合成(Direct MCH®)技術開発」として、経済産業省及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の進めるGI基金事業に採択されています。また、CO2フリー水素と工場等や将来的には大気から回収したCO2を原料に液体燃料を製造する「合成燃料」の開発についても、カーボンニュートラル社会の実現に向けて重要な取組と位置付け、技術開発を進めています。中央技術研究所敷地内に1BD規模の小規模プラント建設を進めており、2024年度から実証運転を開始する計画です。また、試験製造した合成燃料を実際の自動車に充填、走行デモンストレーションを行い、従来のガソリンと変わらない走行性を確認しました。こちらもGI基金事業「CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」に採択されており、各反応工程の性能向上とプロセス全体の高効率化を通じて早期の技術確立を目指します。さらに大気中のCO2を回収するClimeworks社製のDirect Air Capture(DAC)装置をアジア太平洋で初めて中央技術研究所内に導入し、DAC技術の実証試験を開始しています。バイオ燃料分野では、TOPPANホールディングス株式会社と古紙を原料とした国産バイオエタノールの事業化に向け共同開発契約を締結、実証事業を開始します。再エネの有効活用に向けては、VPP(仮想発電所)事業における蓄電池の運用計画の最適化を行うシステムや、発電量や電力価格、水素需要に応じて水電解装置による水素製造を制御する水素EMS(エネルギーマネジメントシステム)の開発に取り組んでいます。自社開発したアルゴリズムによって、大型蓄電池(根岸製油所内)、水素ステーション(横浜旭、福島)内の水素製造装置等の運用最適化を行い、実設備での運用を通じて、技術・ノウハウの蓄積を進めています。また、東京都東村山市における電気自動車を活用したEMS実証や、静岡県裾野市におけるパイプラインによる水素供給効率化に向けた水素EMSの機能拡張等、地産地消エネルギー活用に向けた技術開発も推進中です。さらに循環型社会の実現に向け、廃プラスチックを利用したアスファルト舗装技術を開発し、実証試験を開始しました。また、株式会社ブリヂストンと使用済タイヤの精密熱分解によるケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた共同プロジェクトを進めています。本プロジェクトは「使用済タイヤ(廃ゴム)からの化学品製造技術の開発」としてGI基金事業に採択されており、検討を継続しています。社外連携については、早稲田大学との包括的かつ分野横断的なオープンイノベーションを通して、カーボンニュートラル社会の実現に資する技術を探索しています。早稲田キャンパス研究開発センターエリアに設置した「ENEOSラボ」を共同研究の拠点として、電池材料関連の「CO2削減に向けた革新技術の研究」に取り組んでいます。②燃料油・化学品製造技術分野製油所、製造所の安全・安定操業、競争力強化、及び液体燃料におけるCO2削減を目指した研究を行っています。中でもデジタル化技術の開発・活用においてはAI技術による石油化学プラントの連続自動運転が実用段階に入っており、川崎製油所のブタジエン抽出装置で手動操作を超える経済的・高効率な運転を達成、並行して常圧蒸留装置等の主要プラントや他製油所への同AIシステム展開を目指し、開発を進めています。また、エンジンの熱効率向上が期待される革新燃焼技術(超希薄燃焼:スーパーリーンバーン)に適した燃料組成の検討を行い、製油所から得られる留分の利用によるCO2削減の可能性を示すとともに、触媒・反応技術を活用し、自社原料の更なる有効活用(ケミカルシフト)に向けた石油化学誘導品の開発や、医薬品製造を想定した有機系触媒の開発等も進めています。 ③機能材分野機能材分野では、重点領域である「エラストマー」、「高機能モノマー」、「高機能ポリマー」において、自社の強みである分子設計技術、配合技術、性能評価・分析技術を最大限に磨き、社会ニーズに応えるとともに、新たな価値の創造、社会的課題へのソリューションの提供に取り組んでいます。エラストマー分野では、株式会社ENEOSマテリアル(以下、ENS)において摩耗粉塵の削減に寄与し、かつ低燃費で、安全に止まる高グリップ性能を有する高機能タイヤ用エラストマーSSBR(溶液重合スチレン・ブタジエンゴム)や、電気自動車(EV)への搭載を主とし、EVの性能向上に貢献する二次電池の材料等の開発を行っています。高機能ポリマー分野では、次世代高速通信で使われる高周波帯に対応する低誘電LCP(液晶ポリマー)や、半導体封止材等への適用が期待されるENEOSの独自エポキシ樹脂を使用した高耐熱熱硬化レジン等の開発を行っています。現在はENSが保有するエラストマー技術とENEOSが保有する技術との融合による新たな素材開発を進めています。また、産学連携として東京工業大学と共同研究講座を設置して、素材開発を加速・深化させるオープンイノベーションの拠点としています。④潤滑油分野潤滑油分野では、地球環境に配慮した高性能潤滑油、グリースの製品開発を行っています。世界的な潮流である脱炭素化への貢献のため、植物由来の基材を活用した製品の開発に取り組んでおり、大型トラックやバス等のディーゼルエンジン用として「GXディーゼル OW―30」、工作機械の油圧システム向けとして「GXハイランドSE32」、各種機械や軸受向けグリースとして「GXグリースМP2」を新たに発売しました。また、電動モビリティ向けに冷却性能や電気絶縁性能と潤滑性を高次元で両立した製品の開発に注力するとともに、今後大幅な増加が予測されるデータセンターの省エネルギー化に貢献する液浸冷却液「ENEOS IXシリーズ」を発売し、更なる冷却性向上に向けた検討を進めています。このほかにも省燃費型駆動系油、安全・環境配慮型工業用潤滑油、自動車・産業用高性能グリース、新冷媒対応・省エネルギー型冷凍機油といった製品の開発を、新規材料やシミュレーションを含めた新規解析評価技術を取り入れながら推進するとともに、高品質の製品を安定かつ効率的に製造するための製造技術の開発を行っています。⑤デジタル技術分野デジタル技術を活用して自社業務の効率化や新たな価値を生み出すことを目指した研究を行っています。具体的には、プラントデータを活用した運転効率化、画像解析による安全・安定操業支援に加え、革新的な素材・触媒探索技術の研究を推進しています。一例として、株式会社Preferred Networks(以下、PFN社)と戦略的な協業体制を構築し、AI技術を活用した革新的事業創出に取り組んでいます。MI(マテリアルズ・インフォマティクス)分野ではPFN社との合弁会社として株式会社Preferred Computational Chemistry(以下、PFCC社)を設立し、共同開発した新物質開発・材料探索を高速化する汎用原子レベルシミュレータ「Мatlantis™」をクラウドサービスとして提供する事業を国内だけでなく米国の企業・団体向けにも展開しています。同サービスは2023年12月1日時点で70以上の企業・研究団体に導入され、触媒、電池材料、半導体、合金、潤滑油、セラミック材料、化学材料等、幅広い開発に用いられています。さらに、HPCシステムズ株式会社の手掛ける化学反応経路の自動探索ソフトウェア「GRRМ」をМatlantis™によって高速化する「GRRМ20 with Мatlantis」を同社、PFCC社と共同で開発、サービス提供を開始しました。また、ロボティクスを活用したプラント・次世代型エネルギー設備への保守点検サービス事業について、株式会社イクシスに出資し、協業検討を行っています。デジタル技術を活用した新たなビジネス創出につなげることも目指し、国内外のスタートアップ企業等との連携も活発化させています。 (2)石油・天然ガス開発該当事項はありません。 (3)金属 (研究開発費 15,939百万円)金属事業(JX金属株式会社)では、長年培ってきたコア技術の進化・活用に加え、グループ企業内での技術コラボレーション、大学等研究機関との共同研究、外部企業とのパートナーシップ構築等、様々な形の共創を推進し、研究開発を行っています。データ社会の進展に寄与する次世代の先端素材の開発や、脱炭素や資源循環といった地球規模のESG課題解決に向けた製品・技術開発、車載用リチウムイオン電池(LiB)のリサイクル技術開発等に積極的に取り組んでいます。①新規事業開発CVD・ALD材料、結晶材料、プリンテッドエレクトロニクス材料、LiBリサイクル及び電池材料の開発等について、事業部、関係会社等を跨ぎ全社横断で早期事業化に向けた取組を強化しています。CVD・ALD材料は、原子レベルで厚み制御が必要とされる薄膜形成に利用されるため、更なる微細化や多層化が進む次世代半導体チップの製造においてニーズが高まることが見込まれています。「CVD・ALD材料事業推進室」を設置し、次世代半導体向けCVD・ALD材料の開発テーマ探索から量産化までを一貫して担い早期事業化を推進しています。結晶材料は、データ通信の大幅な増加やセンシング技術の高度化により、今後更なる成長が期待される特に有望な事業領域です。インジウムリン基板をはじめとする化合物半導体関連製品の生産能力拡大、防衛・メディカル等新規用途の探索・周辺事業への進出、新規製品の開発を実施しています。その一環として、2024年4月より、技術本部技術戦略部結晶材料事業推進室と、薄膜材料事業部営業部の化合物半導体担当グループを統合し、技術本部結晶材料事業推進部とすることで、より効果的で迅速な開発・マーケティングを行う体制を構築し事業部化を推進します。LiBリサイクルは、寿命を迎えた車載用LiBから有価金属を車載用電池材料の状態で抽出する「クローズドループ・リサイクル」の実現を目指しています。今後数年のうちに電気自動車(EV)の廃棄が本格化することが見込まれており、リサイクルの環境負荷定量評価、無害化、回収技術高度化といったサプライチェーン全体での資源循環システム構築に取り組んでいます。②半導体材料薄膜材料分野では、高純度化技術及び材料組成・結晶組織の制御技術をベースに、半導体・電子部品用途向け製品に関する開発を進めています。半導体用ターゲット、磁気記録膜用ターゲット等の各種スパッタリング用ターゲットや、その他電子材料における新規製品開発及び関連プロセスの技術開発に継続的に取り組んでいます。また、今後市場が広がっていくと見込まれる半導体後工程向け製品として、超高純度硫酸銅の開発にも取り組んでいます。③情報通信材料機能材料分野では、コネクタ等の用途に、精密な組成制御、独自の圧延加工プロセス及びユーザーニーズに適合した評価技術を用いて、強度・導電性・加工性・耐久性に優れた高機能銅合金の開発を進めています。次世代材料として、コルソン系及びチタン系新規銅合金の開発等、更なる高機能製品化に取り組んでいます。また、プリント配線板材及び シールド材用途等では、屈曲性、エッチング性、密着性等の高い機能を付加した銅箔等の開発・バージョンアップを進めています。④基礎材料資源分野では、選鉱工程に適用する自動化技術や鉱石からのレアメタル回収技術の開発を進めています。また、環境負荷低減に向けて、鉱山で使用する重機等のCO2排出量削減に資する技術等の調査を進めています。金属・リサイクル分野では、銅製錬におけるリサイクル原料処理拡大に向け、リサイクル原料から回収する貴金属及びレアメタル等の金属種拡大のための技術開発や、銅製錬工程からの有価金属回収工程の効率化を推進しています。他製錬所との差別化として、2040年にリサイクル原料処理量を50%とするハイブリッド製錬を実現することを目指し、技術開発を進めています。⑤重点取組事項データ解析技術・自働化技術とシミュレーション技術を担う部門を統合し「製造DX推進部」を設置しました。当社グループがこれまで各事業で培ってきた技術リソースを一元的に集約し、各事業の強靭化・効率化及びそれに伴うキャッシュフロー改善を推進しています。 これらに、その他の事業における研究開発費703百万円を加えた当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は、32,102百万円です。
設備投資等の概要 1【設備投資等の概要】
当社グループにおける当連結会計年度の設備投資の総額は3,710億円であり、セグメント別の内訳は次のとおりです。なお、当社では使用権資産を設備投資とは別に管理しているため、設備投資額に使用権資産の増加額は含めていません。使用権資産の増加額を含めた資本的支出の総額は「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記7.セグメント情報」を、使用権資産の増加額は「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記12.リース」をご参照ください。 当連結会計年度  (百万円)エネルギー228,833石油・天然ガス開発48,002金属84,270その他11,516計372,621全社・調整△1,578合計371,043 エネルギーセグメントでは、製油所・製造所の設備工事、SSの新設・改造及び再生可能エネルギー事業の設備投資等を行いました。石油・天然ガス開発セグメントでは、油田・ガス田の探鉱及び開発投資を行いました。金属セグメントでは、事業所・製錬所・工場の設備工事等を行いました。その他の事業では、アスファルト合材工場の製造設備の更新を中心に投資を行いました。 当連結会計年度において、事業活動に影響を与えるような重要な設備の除却・売却はありません。
主要な設備の状況 2【主要な設備の状況】
当社グループにおける主要な設備は、次のとおりです。(1)提出会社該当事項はありません。 (2)国内子会社 2024年3月31日現在会社名事業所名(所在地)セグメントの名称設備の内容帳簿価額(百万円)(注1)従業員数(人)建物、構築物及び油槽機械装置及び運搬具土地(面積千㎡)その他合計ENEOS株式会社市川油槽所(千葉県市川市)ほかエネルギー貯油設備15,2104,77441,4761,72463,184-(1,999)[189]東京支店(東京都千代田区)ほか〃給油及び事務所設備等85,84117,532198,949888303,210-(1,247)[2,695]仙台製油所(仙台市宮城野区)〃石油精製設備15,87613,2956,7611,81137,743392(1,329)根岸製油所(横浜市磯子区)〃〃14,9049,699154,6772,028181,308619(2,253)水島製油所(岡山県倉敷市)〃〃34,34633,80770,8021,464140,4191,119(3,271)麻里布製油所(山口県玖珂郡 和木町)〃〃7,2936,6831,5941,14216,712363(666)大分製油所(大分県大分市)〃〃14,27413,00919,4042,83949,526392(1,008)川崎製油所(川崎市川崎区)〃〃39,01329,755214,7466,722290,2361,331(2,601)堺製油所(堺市西区)〃〃8,25211,09731,59985151,799414(771)和歌山製造所(和歌山県有田市)〃〃--25,4998325,582336(2,374)[34] 会社名事業所名(所在地)セグメントの名称設備の内容帳簿価額(百万円)(注1)従業員数(人)建物、構築物及び油槽機械装置及び運搬具土地(面積千㎡)その他合計ENEOS株式会社横浜製造所(横浜市神奈川区)エネルギー石油製品製造設備4,5271,9933993717,29079(380)株式会社ENEOSマテリアル四日市(三重県四日市市)、千葉(千葉県市原市)及び鹿島(茨城県神栖市)工場〃エラストマーの製造設備等2,9899,8319,99394123,7541,156(629)鹿島石油株式会社鹿島製油所(茨城県神栖市)〃石油精製設備18,79510,98247,90895278,637481(2,695)鹿島アロマティックス株式会社鹿島事業所(注2)(茨城県神栖市)〃石油化学製品製造設備3071,842-6292,778-(-)ENEOS喜入基地株式会社喜入基地(鹿児島県鹿児島市)〃貯油設備8,5731,6735,39963716,282120(1,933)JX金属株式会社日立事業所(茨城県日立市)金属環境リサイクル事業、機能材料事業及び薄膜材料事業設備等16,4383,8054,55360625,402395(6,284)[151]磯原工場(茨城県北茨城市)〃薄膜材料事業設備8,06713,1184,2241,35026,7591,151(310)倉見工場(神奈川県高座郡 寒川町)〃機能材料事業設備15,91613,5415,25981935,535618(208)JX金属製錬株式会社佐賀関製錬所(大分県大分市)〃銅製錬設備18,28919,6453,6683,48845,090521(2,067)[1,102] (3)在外子会社 2024年3月31日現在会社名事業所名(所在地)セグメントの名称設備の内容帳簿価額(百万円)(注1)従業員数(人)建物、構築物及び油槽機械装置及び運搬具土地(面積千㎡)その他合計BST ENEOS Elastomer Co., Ltd.本社 ・工場(タイ国ラヨン県)エネルギー溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)製造設備77111,406-35512,532279 ENEOS MOL Synthetic Rubber Ltd.本社・工場(ハンガリー ブダベスト市)〃〃8,32310,8863723,65023,231204(120)Hakuryu 5, Inc.本社(パナマ共和国)石油・天然ガス開発リグ・掘削設備-1,659-301,689-Japan Drilling (Netherlands)B.V.本社(オランダ王国)〃〃-8,713-6529,365151 (注)1.帳簿価額のうち「その他」は、その他の有形固定資産及び一部の無形資産の合計です。金額には使用権資産及び消費税は含めていません。また、連結会社以外から賃借している土地の面積は、[ ]で外書しています。2.土地は鹿島石油株式会社からの賃借であり、当該土地については「鹿島製油所」に含めて記載しています。また、同社は鹿島石油株式会社へ操業を委託している会社のため、従業員はいません。
設備の新設、除却等の計画 3【設備の新設、除却等の計画】
当社グループの主要な設備計画は以下のとおりです。(1)新設・改修会社名事業所名セグメントの名称設備の内容投資予定金額資金調達方法着手及び完了予定完成後の増加能力総額(百万円)既支払額(百万円)着手完了ENEOS株式会社東京支店他エネルギー給油設備等26,800-自己資金、社債及び借入金2024年4月2025年3月(注)JX金属株式会社倉見工場、磯原工場、ひたちなか新工場他金属機能材料事業及び薄膜材料事業設備等29,700-〃2024年4月2025年3月(注)(注)販売・生産品目が多種多様にわたっている等の理由により算定が困難なため、記載していません。 (2)除却・売却重要な設備の除却・売却の予定はありません。
研究開発費、研究開発活動32,102,000,000
設備投資額、設備投資等の概要371,043,000,000

Employees

平均年齢(年)、提出会社の状況、従業員の状況44
平均勤続年数(年)、提出会社の状況、従業員の状況18
平均年間給与、提出会社の状況、従業員の状況9,478,427
管理職に占める女性労働者の割合、提出会社の指標0

Investment

株式の保有状況 (5)【株式の保有状況】
① 投資株式の区分の基準及び考え方当社は、保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の目的である投資株式の区分について、専ら株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的とする場合を純投資目的、それ以外の場合を純投資目的以外の目的として扱っています。 ② 提出会社における株式の保有状況ア.保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式(ア)保有方針及び保有の合理性を検証する方法並びに個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容a.保有方針当社は、「ENEOSグループのコーポレートガバナンスに関する基本方針」において、原則として上場会社の株式を保有しないこととしています。ただし、次の株式については、例外的に政策保有株式として保有することとしています。(1)ENEOSグループの重要な事業の一翼を担う会社の株式(2)株式を保有することがENEOSグループの事業の維持・拡大のために必要と判断した会社の株式なお、当社は、上記方針に基づき、当該方針を定めた当時(2015年11月)に保有していた全銘柄数の73%について売却しています。 b.保有の合理性を検証する方法当社は、政策保有株式の保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを具体的に精査し、保有の適否を定期的に検証しています。 c.個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容当社は、2023年11月8日開催の取締役会において、政策保有株式について、個別銘柄ごとに保有目的が適切か、保有に伴う便益(取引上の利益額、配当金等のほか、数値化困難な便益を含む。)やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、総合的に保有の適否を検証しています。 (イ)銘柄数及び貸借対照表計上額 銘柄数(銘柄)貸借対照表計上額の合計額(百万円)非上場株式13171非上場株式以外の株式2046,581 (当事業年度において株式数が増加した銘柄)該当事項はありません。 (当事業年度において株式数が減少した銘柄) 銘柄数(銘柄)株式数の減少に係る売却価額の合計額(百万円)非上場株式--非上場株式以外の株式520,573 (ウ)特定投資株式及びみなし保有株式の銘柄ごとの株式数、貸借対照表計上額等に関する情報特定投資株式銘柄当事業年度前事業年度保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由当社の株式の保有の有無株式数(株)株式数(株)貸借対照表計上額(百万円)貸借対照表計上額(百万円)株式会社日本触媒2,129,1072,129,107エネルギー事業における化学品の販売先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有12,48511,242本田技研工業株式会社3,000,0001,000,000エネルギー事業における潤滑油の販売先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。なお、保有株式数の増加は、株式分割によるものです。無5,6733,510株式会社ミツウロコグループホールディングス3,814,0404,564,040エネルギー事業における石油製品の特約店であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有5,4815,901三洋化成工業株式会社1,061,2791,061,279機能材事業においてENB事業の合弁事業を営む提携先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有4,5214,532三愛オブリ株式会社1,967,0371,967,037エネルギー事業における石油製品の特約店であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有4,1072,697王子ホールディングス株式会社6,374,0596,374,059エネルギー事業における石油製品の販売先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有4,0663,340ANAホールディングス株式会社661,814661,814エネルギー事業における石油製品の販売先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有2,1241,903富士興産株式会社1,005,9001,005,900エネルギー事業における石油製品の販売先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。無1,9181,197美昌石油工業株式会社173,972173,972エネルギー事業における海外の潤滑油製造委託先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。無1,5291,182株式会社Misumi779,500779,500エネルギー事業における石油製品の特約店であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有1,3451,331カメイ株式会社347,300347,300エネルギー事業における石油製品の特約店であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有742511富士石油株式会社1,350,0001,350,000エネルギー事業における石油製品の原料の仕入先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。無640358東海旅客鉄道株式会社159,00031,800エネルギー事業における石油製品の販売先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。なお、保有株式数の増加は、株式分割によるものです。無592503 銘柄当事業年度前事業年度保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由当社の株式の保有の有無株式数(株)株式数(株)貸借対照表計上額(百万円)貸借対照表計上額(百万円)ユシロ化学工業株式会社200,000200,000エネルギー事業における原料油、ソルベント等の販売先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有445171ナラサキ産業株式会社99,20099,200エネルギー事業における石油製品の特約店であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有298184サンリン株式会社400,000500,000エネルギー事業における石油製品の特約店であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有280342株式会社サンオータス234,000234,000エネルギー事業における石油製品の特約店であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有168179東海汽船株式会社50,00050,000エネルギー事業における石油製品の販売先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。無125121日本精蝋株式会社224,000224,000エネルギー事業における潤滑油原料の仕入先、かつ付加価値の高いワックスの取引先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。無3928三谷産業株式会社7,2607,260エネルギー事業における石油製品の特約店であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有32SK Innovation Co., Ltd.-944,663(前事業年度)エネルギー事業における化学品及び潤滑油の合弁事業を営む海外の提携先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。なお、保有株式数の増加は、現物配当によるものです。無-17,463株式会社日新-60,400(前事業年度)エネルギー事業における物流委託先であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。有-128シナネンホールディングス株式会社-3,600(前事業年度)エネルギー事業における特約店であり、同事業の維持・拡大のため保有しています。無-12(注)1.定量的な保有効果(取引上の利益額等)については営業秘密との判断により記載しませんが、上記方針に基づいた保有効果があると判断しています。2.「-」は、当該銘柄を保有していないことを示しています。 みなし保有株式該当事項はありません。 イ.保有目的が純投資目的である投資株式該当事項はありません。 ウ.当事業年度中に保有目的を純投資目的から純投資目的以外の目的に変更したもの該当事項はありません。 エ.当事業年度中に保有目的を純投資目的以外の目的から純投資目的に変更したもの該当事項はありません。③ 株式会社NIPPOにおける株式の保有状況ア.保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式(ア)保有方針及び保有の合理性を検証する方法並びに個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容a.保有方針株式会社NIPPO(以下、NIPPO)は、株式を新規に政策保有する場合、もしくは既に政策保有している場合については、経営委員会において保有目的の適否、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合うか等を含め、NIPPOグループの事業戦略、取引関係などを勘案し、中長期的な企業価値への影響を確認した上で保有の判断を行っています。継続保有に適さないとの判断に至った場合は、経営委員会決議を経て、速やかに売却等、処分を進めることとしています。 b.保有の合理性を検証する方法及び個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容個別銘柄ごとに以下の方法により経営委員会において定期的に保有合理性を検証しています。(1)定性評価取引関係や事業戦略を勘案し評価しています。(2)定量評価取引高に対する利益額及び配当額を含めた株式保有による収益が資本コストを上回るかにより評価しています。 c.個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容NIPPOは、2023年9月21日開催の経営委員会において、2023年3月31日を基準として、保有に伴う便益(取引高に対する利益額・配当額)及びリスクが資本コスト等を考慮した社内判定基準を満たしているかを検証し、いずれも保有効果があることを確認しました。 (イ)銘柄数及び貸借対照表計上額 銘柄数(銘柄)貸借対照表計上額の合計額(百万円)非上場株式40567非上場株式以外の株式1579,820 (当事業年度において株式数が増加した銘柄)該当事項はありません。 (当事業年度において株式数が減少した銘柄) 銘柄数(銘柄)株式数の減少に係る売却価額の合計額(百万円)非上場株式--非上場株式以外の株式1345 (ウ)特定投資株式及びみなし保有株式の銘柄ごとの株式数、貸借対照表計上額等に関する情報特定投資株式銘柄当事業年度前事業年度保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由当社の株式の保有の有無株式数(株)株式数(株)貸借対照表計上額(百万円)貸借対照表計上額(百万円)トヨタ自動車株式会社15,102,38015,102,380主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・中長期的な協力関係の維持を目的として保有しています。無57,26828,392レイズネクスト株式会社3,882,4323,882,432主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・関係維持を目的として保有しています。有8,4285,648本田技研工業株式会社2,448,600816,200主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・中長期的な協力関係の維持を目的として保有しています。なお、保有株式数の増加は、株式分割によるものです。無4,6302,864東京ガス株式会社1,191,3601,191,360主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・中長期的な協力関係の維持を目的として保有しています。無4,1822,973株式会社豊田自動織機133,400133,400主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・関係維持を目的として保有しています。無2,087980大日本印刷株式会社149,000224,000主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・関係維持を目的として保有しています。無695829日産自動車株式会社1,082,0001,082,000主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・中長期的な協力関係の維持を目的として保有しています。無658542ニチレキ株式会社200,000200,000主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・関係維持を目的として保有しています。無494297株式会社小松製作所63,00063,000主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・関係維持を目的として保有しています。無278206戸田建設株式会社250,000250,000主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・関係維持を目的として保有しています。無255172福山通運株式会社70,00070,000主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・関係維持を目的として保有しています。無253251エア・ウォーター株式会社100,000100,000主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・関係維持を目的として保有しています。無239166 銘柄当事業年度前事業年度保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由当社の株式の保有の有無株式数(株)株式数(株)貸借対照表計上額(百万円)貸借対照表計上額(百万円)株式会社日新62,60062,600主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・関係維持を目的として保有しています。有181132株式会社住友倉庫55,00055,000主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・関係維持を目的として保有しています。無141119株式会社名村造船所16,00016,000主に建設事業における受注先であり、企業間取引の強化・関係維持を目的として保有しています。無315(注)定量的な保有効果については営業秘密との判断により個別の記載が困難であるため、保有の合理性について検証した方法を記載しています。 みなし保有株式該当事項はありません。 イ.保有目的が純投資目的である投資株式該当事項はありません。 ウ.当事業年度中に保有目的を純投資目的から純投資目的以外の目的に変更したもの該当事項はありません。 エ.当事業年度中に保有目的を純投資目的以外の目的から純投資目的に変更したもの該当事項はありません。
株式数が減少した銘柄数、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社5
銘柄数、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社13
貸借対照表計上額、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社171,000,000
銘柄数、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社20
貸借対照表計上額、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社46,581,000,000
株式数の減少に係る売却価額の合計額、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社20,573,000,000
株式数、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社7,260
貸借対照表計上額、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社3,000,000
銘柄、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社カメイ株式会社