財務諸表

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提出書類、表紙有価証券報告書
提出日、表紙2024-06-21
英訳名、表紙OMRON Corporation
代表者の役職氏名、表紙代表取締役社長 CEO 辻 永 順 太
本店の所在の場所、表紙京都市下京区塩小路通堀川東入南不動堂町801番地
電話番号、本店の所在の場所、表紙京都(075)344-7070
様式、DEI第三号様式
会計基準、DEIUS GAAP
連結決算の有無、DEItrue
当会計期間の種類、DEIFY

corp

沿革 2【沿革】
1933年5月立石一真が大阪市都島区東野田に立石電機製作所を創業。レントゲン写真撮影用タイマの製造を開始(創業年月日1933年5月10日)。<1933年 立石電機創業(創業者)> <1960年 世界初 無接点近接スイッチ> <1964年 世界初 電子式自動感応式信号機> 1936年7月大阪市西淀川区野里町に工場を新設、移転。1945年6月京都市右京区花園土堂町に工場を移転。1948年5月資本金200万円の株式会社に改組。商号を「立石電機株式会社」に変更(設立年月日1948年5月19日)。1955年1月販売部門・研究部門を各々分離独立、立石電機販売㈱・㈱立石電機研究所を設立。プロデューサ・システム(分権制による独立専門工場方式)を創案し、その第一号として㈱西京電機製作所を設立(計9社の生産子会社を順次設立)。1959年1月商標を「OMRON」と制定。 2月㈱立石電機研究所を吸収合併。1960年10月京都府長岡町(現長岡京市)に中央研究所を竣工。1962年4月京都証券取引所および大阪証券取引所市場第二部に上場。1964年10月㈱立石電機草津製作所他の生産子会社を㈱西京電機立石製作所に吸収合併。1965年4月立石電機販売㈱および㈱西京電機立石製作所を吸収合併。 8月大阪証券取引所市場第一部に指定替え上場。 1966年9月東京証券取引所市場第一部および名古屋証券取引所市場第一部(2009年11月9日上場廃止)に上場。<1967年 世界初 無人駅システム> <1973年 オムロンの血圧計1号機> 1967年3月世界初 無人駅システムが阪急北千里駅で稼動。1972年2月オムロン太陽㈱を設立。1976年10月大阪証券取引所の特定銘柄に指定。1985年3月オムロン京都太陽㈱を設立。1986年4月京都府綾部市に綾部工場を竣工。アメリカに北米地域統轄会社(OMRON MANAGEMENT CENTER OF AMERICA,INC.)を設立。1988年4月東京支社(東京都港区)を東京本社に昇格(二本社制に移行)。 9月オランダに欧州地域統轄会社(OMRON EUROPE B.V.)を設立。 10月シンガポールにアジア・パシフィック地域統轄会社(OMRON ASIA PACIFIC PTE.LTD.)を設立。1990年1月社名を「オムロン株式会社」に変更。1991年4月本社を京都市下京区に移転。1993年4月中国で初めての独資生産会社オムロン(大連)有限公司が稼動開始。1994年5月中国に地域統轄会社(OMRON(CHINA)CO.,LTD.)を設立。1999年4月事業部制を廃止し、カンパニー制を導入。2000年8月本店および本社事務所を複合機能拠点である「オムロン京都センタービル」(京都市下京区)に移転。2002年4月中華圏の地域統轄会社(OMRON(CHINA)CO.,LTD.)を中国事業拡大の拠点としての中国本社に変更。 6月中国に電子部品の生産会社オムロン電子部件(深圳)有限公司が稼動開始。 2003年4月リレー事業部門とオムロン熊本㈱を経営統合しオムロンリレーアンドデバイス㈱を設立。 5月グローバルR&D協創戦略の中核拠点として京都府相楽郡(現木津川市)に「京阪奈イノベーションセンタ」を開設。 7月ヘルスケア事業を分社しオムロンヘルスケア㈱を設立。 8月1単元の株式の数を1,000株から100株に変更。 2004年9月北京北大方正集団公司と社会システム事業分野で提携。 10月BITRON INDUSTRIE S.P.A. (現OMRON AUTOMOTIVE ELECTRONICS ITALY S.R.L.)を子会社化。共同新設分割によりATM(現金自動預払機)等の情報機器事業を日立オムロンターミナルソリューションズ㈱へ承継。アミューズメント機器事業の子会社オムロンアミューズメント㈱を設立。 2005年6月医療機関向け生体計測技術を保有するコーリンメディカルテクノロジー㈱を子会社化。 12月中国に車載電装部品の生産会社オムロン(広州)汽車電子有限公司が稼動開始。 2006年6月セーフティ技術を保有するSCIENTIFIC TECHNOLOGIES INC.(現OMRON ROBOTICS AND SAFETY TECHNOLOGIES, INC.)を子会社化。中国に制御機器システムのグローバル中核拠点オムロン(上海)有限公司が稼動開始。 8月中小型液晶用バックライト技術を保有するパイオニア精密㈱(現オムロンプレシジョンテクノロジー㈱)を子会社化。  <2007年 世界初リアルカラー3次元視覚センサー> 2007年3月CMOS型半導体技術を保有する野洲セミコンダクター㈱の半導体事業用資産を譲受。 5月レーザー微細加工技術を保有するレーザーフロントテクノロジー㈱を子会社化。 6月中国に研究拠点「オムロン上海R&D協創センタ」を開設。 7月本社に隣接する展示施設および研修施設「オムロン京都センタービル啓真館」を開設。2008年7月オムロンセミコンダクターズ㈱を吸収合併。 2009年9月事業セグメントEMC(エレクトロニック&メカニカルコンポーネンツビジネスカンパニー)(現DMB(デバイス&モジュールソリューションズビジネス))を新設。 2010年4月スイッチ事業を分社し、オムロンスイッチアンドデバイス㈱を設立。 5月車載電装部品事業を分社し、オムロンオートモーティブエレクトロニクス㈱を設立。 11月社会システム事業の子会社オムロンソーシアルソリューションズ㈱を設立。 2011年1月港区虎ノ門と品川区大崎にある事業拠点を品川フロントビル(港区港南)へ移転統合し、東京事業所として順次業務を開始。 6月家庭向け省エネ支援サービス事業分野で西日本電信電話㈱と合弁会社を設立。 10月京都府向日市にオムロンヘルスケア㈱の研究開発拠点および本社を開設。 2012年1月インド地域本社(OMRON MANAGEMENT CENTER OF INDIA)を設立。中国のパワーラッチングリレーメーカーである「上海貝斯特電器制造有限公司」を子会社化。 4月ブラジル地域本社(Omron Management Center of Latin America)を設立。 7月健康支援サービス事業分野で㈱エヌ・ティ・ティ・ドコモと合弁会社を設立。    <2013年 卓球ロボット「フォルフェウス(FORPHEUS)> 2013年3月中国の電子部品工場「上海オムロン制御電器有限公司」新工場開所式を開催。 10月ベトナム地域本社(OMRON VIETNAM CO., LTD.)を設立。2014年4月オムロンオートモーティブエレクトロニクス㈱がオムロン飯田㈱を吸収合併。 7月コーポレートベンチャーキャピタルを担う投資子会社オムロンベンチャーズ㈱を設立。 10月ブラジルのネブライザー生産・販売会社であるNS Industria de Aparelhos Medicos LTDA.の他2社を傘下に持つ、MMRSV Participantcoes S.A.を子会社化。2015年9月米国のモーション制御機器メーカー「Delta Tau Data Systems Inc.」およびその傘下8社を子会社化。 10月米国の産業用ロボットメーカー「Adept Technology Inc.」(現OMRON ROBOTICS AND SAFETY TECHNOLOGIES, INC.)およびその傘下5社を子会社化。 2016年12月医療機器、医療システム事業を行うオムロンコーリン㈱の全株式をフクダ電子㈱に譲渡。 2017年1月韓国地域本社(Omron Management Center of Korea)を設立。<2018年 世界初 ウェアラブル血圧計> 3月AliveCor,Inc.とヘルスケア分野で資本・業務提携を実施。 7月産業用カメラのトップメーカー「センテック㈱」(現オムロンセンテック㈱)およびその傘下7社を子会社化。 10月米国の産業用コードリーダーメーカー「Microscan Systems Inc.」(現Omron Microscan Systems, Inc.)およびその傘下3社を子会社化。 2018年2月近未来をデザインする研究会社「オムロン サイニックエックス㈱」を設立。<2018年 世界初 予防保全機能搭載          スカラロボット> <2019年 世界初 心電計付き血圧計> 4月国内オムロングループにおける人事・総務・理財機能を集約した新会社「オムロンエキスパートリンク㈱」を設立。 8月レーザー加工装置の製造、販売、アフターサービス事業を行う「オムロンレーザーフロント㈱」の全株式を「TOWA㈱」へ譲渡。2019年2月産業用電子機器の開発・製造受託サービスを手掛ける「オムロン直方㈱」の株式80%を「研華股份有限公司(アドバンテック社)」に譲渡。 3月健康管理サービスの分野でiAPPS Pte.Ltd.と合弁会社を設立。 10月車載電装部品を手掛ける、「オムロンオートモーティブエレクトロニクス㈱」の全株式を、ニデック㈱に譲渡。 2020年2月AliveCor,Inc.を持分法適用会社化。 2021年3月持分法適用会社であった日立オムロンターミナルソリューションズ㈱の全株式を㈱日立製作所に譲渡。 10月圧力センサーやフローセンサーなどの開発・製造を行う、MEMS事業を分社し、ミツミ電機㈱に譲渡。2022年2月㈱JMDCと資本・業務提携を実施。 4月東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所の市場第一部からプライム市場に移行。   6月定款を一部変更し、「企業理念の実践」について記載。 2023年4月エンジニア領域の人財サービス事業(派遣・請負・紹介)を行う、「オムロンエキスパートエンジニアリング㈱」を設立。 飲料業界向け総合検査機メーカー「キリンテクノシステム㈱」に出資。「オムロンキリンテクノシステム㈱」として子会社化。    10月医療統計データサービス事業を行う「㈱JMDC」を子会社化。
事業の内容 3【事業の内容】
 当社グループは、当社および子会社156社(国内66社、海外90社)、関連会社9社(国内5社、海外4社)により構成(2024年3月31日現在)されており、電気機械器具、電子応用機械器具、精密機械器具、医療用機械器具、およびその他の一般機械器具の製造・販売およびこれらに付帯する業務を中心とした事業を営んでいますが、その製品の範囲は産業用制御機器コンポーネントの全分野およびシステム機器、さらには生活・公共関連の機器・システムへと広範囲に及んでいます。  オペレーティング・セグメントごとの主要な事業内容、および主な関係会社は次のとおりです。 当社は従来オペレーティング・セグメントを4区分としておりましたが、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)「SF2030」における中期経営計画(SF 1st Stage)の変更 ②JMDC社連結子会社化とデータソリューション事業本部の新設」に記載のとおり、第3四半期連結会計期間よりデータソリューション事業(以下、DSB)を加えた5区分をオペレーティング・セグメントとしております。 (1)インダストリアルオートメーションビジネス(IAB、制御機器事業)制御機器事業は、「オートメーションで人、産業、地球の豊かな未来を創造する」をビジョンに、オムロンがこれまでに培ってきた“センシング&コントロール + Think”のコア技術を基盤に、世界中の製造業のモノづくりを先進のオートメーションで革新し、産業の発展に貢献してきました。独自の価値創造コンセプト“i-Automation!”(*)を掲げ、業界随一の幅広い制御機器を軸に、製造業を中心に急激に変化する社会課題を革新的ソリューションで解決し、産業の高度化とともに働く人々の幸せの実現に貢献する社会価値の創出を目指します。(*)当社は、モノづくり現場の課題解決を通じて社会価値を創出する価値創造コンセプト“i-Automation!”を提唱し、モノづくり革新を牽引しながら地球環境との共存と人々の働きがいを実現するサステナビリティに向けたオートメーションの提供を推進しています。“i-Automation!”は、人をより創造的な役割に誘い、現場生産性の最大化とエネルギー効率を両立する「人を超える自働化」、人の可能性を最大に引き出し、人と機械が共に成長・進化する「人と機械の高度協調」、そして製造現場や設備をデジタル空間で再現し、モノづくり現場のDXを加速させ、業務プロセスの革新に貢献する「デジタルエンジニアリング革新」の3つのコンセプトの具現化を目指しています。
(2)ヘルスケアビジネス(HCB、ヘルスケア事業)ヘルスケア事業は、「地球上の一人ひとりの健康ですこやかな生活への貢献」をミッションに、誰でも簡単・正確に測定できる使いやすさと、医療現場からも信頼される精度にこだわり、商品やサービスを開発しています。商品では、血圧計や体温計、喘息治療薬を吸入するための機器であるネブライザなど、各国の医療機器認証を取得したデバイスの販売を世界130ヵ国以上で展開しています。サービスでは、医師が遠隔で患者をモニタリングし処方・治療支援を行う遠隔診療サービスの提供を主要国から進めています。 (3)ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス(SSB、社会システム事業)社会システム事業は、「世界中の人々が安心・安全・快適に生活し続ける豊かな社会を創造する」をミッションとしています。太陽光発電用パワーコンディショナー、蓄電システム、自動改札機や券売機などの駅務システム、交通管制システム、決済システム、UPSなどのデータ・電源保護といった、多岐にわたる端末・システム、さらにソフトウェア開発、保守メンテナンスによるトータルソリューションを提供し、社会インフラを支えています。 (4)デバイス&モジュールソリューションズビジネス(DMB、電子部品事業)電子部品事業は、「我々のデバイスとモジュールで、顧客の価値を創造し、地球上の人と社会に貢献する」をミッションとしています。EV・モビリティやエネルギーインフラ、家電製品、産業機器など、幅広い業界の顧客に対して、電気を繋ぐ・切るためのコア部品となる、リレー、スイッチ、コネクターや、さまざまな製品の目や耳になるセンサなどのデバイスやモジュールを、全世界で提供するオムロンの基盤事業です。(5)データソリューションビジネス(DSB、データソリューション事業)データソリューション事業は、オムロングループの価値創造を、モノづくりからデータを活用したソリューションへと進化させます。オムロンがSF2030で掲げる3つの社会的課題「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会の実現」「健康寿命の延伸」を解決するためには、データの活用が重要です。2023年10月にグループ会社となった株式会社JMDC(以下、JMDC社)との協業により、ヘルスケアドメインに留まらず、他事業のデバイスやコンポーネントから得られる膨大な現場データに、JMDC社のデータマネジメント力とソリューション開発力を組み合わせることで、社会的課題の解決につながる成長事業を創造します。
関係会社の状況 4【関係会社の状況】
会社名住所資本金(百万円)主要な事業内容セグメント名
(注)1議決権に対する所有割合関係内容役員の兼任貸付金営業上の取引等直接(%)間接(%)計(%)(連結子会社) オムロンスイッチアンドデバイス㈱
(注)2鳥取県倉吉市300電子機器部品の製造DMB100.0 100.0 有当社製品の製造オムロンアミューズメント㈱愛知県一宮市300電子機器部品の製造・販売DMB100.0 100.0 当社製品の製造・販売オムロンフィールドエンジニアリング㈱東京都目黒区360電気機器の保守サービスSSB 100.0100.0 当社製品のメンテナンスオムロンリレーアンドデバイス㈱
(注)2熊本県山鹿市300電子機器部品の製造DMB100.0 100.0 当社製品の製造オムロン阿蘇㈱熊本県阿蘇市200制御機器の製造SSB 100.0100.0 -オムロンヘルスケア㈱京都府向日市5,021健康医療機器・サービスの製造・開発・販売等HCB100.0 100.0 -オムロンソーシアルソリューションズ㈱
(注)4東京都港区5,000鉄道・道路交通向けシステムの製造・販売等SSB100.0 100.0 -オムロン関西制御機器㈱大阪市北区310制御機器の販売IAB100.0 100.0 当社製品の販売SKソリューション㈱福岡市博多区50制御機器の販売IAB100.0 100.0 当社製品の販売㈱エフ・エー・テクノ東京都台東区490制御機器の販売IAB100.0 100.0 当社製品の販売㈱JMDC(注)2、3東京都港区25,099医療統計データサービスDSB54.3 54.3 同社サービスの購入エヌエスパートナーズ㈱東京都港区10診療報酬ファクタリング及びコンサルティングDSB 100.0100.0 -OMRON MANAGEMENTCENTER OF AMERICA,INC.アメリカイリノイ6,891千US.$北米地域の関係会社の統轄管理本社他100.0 100.0 -OMRON ELECTRONICSLLCアメリカイリノイ9,015千US.$制御機器の販売IAB 100.0100.0 当社製品の販売OMRON ELETRONICA DO BRASIL LTDA.
(注)2ブラジルサンパウロ561,330千BRL.R$制御機器の販売およびブラジル関係会社の統括管理本社他100.0 100.0 有当社製品の販売OMRON ELECTRONICCOMPONENTS LLCアメリカイリノイ3,987千US.$電子機器部品事業の営業統轄管理および販売DMB 100.0100.0 当社製品の販売OMRON ROBOTICS AND SAFETY TECHNOLOGIES, INC.
(注)2アメリカカリフォルニア183,626千US.$産業用ロボットおよびモバイルロボットの開発、製造、販売、保守サービスIAB 100.0100.0 当社製品の製造・販売・開発・保守OMRON HEALTHCARE,INC.アメリカイリノイ200千US.$健康医療機器の販売HCB 100.0100.0 - 会社名住所資本金(百万円)主要な事業内容セグメント名
(注)1議決権に対する所有割合関係内容役員の兼任貸付金営業上の取引等直接(%)間接(%)計(%)(連結子会社) OMRON EUROPE B.V.オランダホッフドルフ16,883千EUR欧州地域関係会社の統轄管理および欧州地域制御機器事業の統轄管理本社他100.0 100.0 当社製品の販売OMRON HEALTHCAREEUROPE B.V.オランダホッフドルフ1,000千EUR健康医療機器の販売、欧州健康機器事業の統轄管理HCB 100.0100.0 -OMRON ELECTRONICCOMPONENTSEUROPE B.V.オランダホッフドルフ1,000千EUR電子機器部品事業の営業統轄管理・販売DMB 100.0100.0 当社製品の販売OMRON ELECTRONICS IBERIA SA.スペインマドリード750千EUR制御機器の販売IAB 100.0100.0 当社製品の販売OMRON ELECTRONICS S.P.Aイタリアミラノ5,000千EUR制御機器の販売IAB 100.0100.0 当社製品の販売OMRON ASIAPACIFIC PTE.LTD.シンガポール23,465千US.$東南アジア地域関係会社の統轄管理および制御機器の販売本社他100.0 100.0 当社製品の販売OMRON ELECTRONICS KOREA CO., LTD. 韓国ソウル950百万KRW制御機器の販売IAB100.0 100.0 当社製品の販売OMRON ELECTRONICS CO., LTD.タイバンコク100百万THB制御機器の販売IAB 100.0100.0 当社製品の販売OMRON (CHINA)CO.,LTD.
(注)2中国北京1,469百万RMB.¥中国地域事業の統轄管理本社他100.0 100.0 -OMRON MEDICAL (BEIJING)CO.,LTD.中国北京10百万RMB.¥健康機器の販売HCB 60.060.0 -OMRON DALIANCO., LTD.中国大連157,237千RMB.¥健康医療機器の製造HCB 100.0100.0 -OMRON (SHANGHAI)CO., LTD.(注)2中国上海550,289千RMB.¥制御機器の製造・販売・開発IAB 100.0100.0 当社製品の製造・販売・開発OMRONINDUSTRIALAUTOMATION(CHINA) CO., LTD.中国上海56,067千RMB.¥貿易会社IAB 100.0100.0 当社製品の販売OMRON ELECTRONIC COMPONENTS TRADING(SHANGHAI)LTD.中国上海28,968RMB.¥電子機器部品の販売DMB 100.0100.0 当社製品の販売SHANGHAI OMRON CONTROL COMPONENTS CO. ,LTD.中国上海390,367千RMB.¥電子機器部品の製造DMB 100.0100.0 当社製品の製造OMRON ELECTRONICCOMPONENTS(SHENZHEN) LTD.(注)2中国深圳276,560千RMB.¥電子機器部品の製造DMB 100.0100.0 当社製品の製造OMRON HEALTHCARE (CHINA) CO., LTD.中国大連51,374千RMB.¥健康医療機器の貿易会社HCB 100.0100.0 -OMRON HONG KONG LIMITED.中国香港13,314千US.$電子機器部品の販売DMB100.0 100.0 当社製品の販売その他120社 会社名住所資本金(百万円)主要な事業内容セグメント名
(注)1議決権に対する所有割合関係内容役員の兼任貸付金営業上の取引等直接(%)間接(%)計(%)(持分法適用関連会社) AliveCor,Inc.アメリカカリフォルニア224百万US.$心疾患の診断と治療の支援サービスおよび商品の提供HCB35.9 35.9 -その他8社 (注)1 IABはインダストリアルオートメーションビジネス、HCBはヘルスケアビジネス、SSBはソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス、DMBはデバイス&モジュールソリューションズビジネス、DSBはデータソリューションビジネス、本社他は技術・知財本部等の本社機能の略称であり、主たる事業内容に基づくセグメントを記載しています。2 特定子会社です。3 有価証券報告書を提出しています。4 オムロンソーシアルソリューションズ株式会社の売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く)は、連結売上高に占める割合が10%を超えています。 主要な損益情報等①売上高 109,595百万円 ②法人税等、持分法投資損益控除前当期純利益 8,677百万円③当期純利益 6,616百万円 ④純資産額 58,747百万円 ⑤総資産額 92,468百万円5 上記関係会社中に、重要な債務超過の状況にある会社はありません。
従業員の状況 5【従業員の状況】
(1) 連結会社の状況 2024年3月31日現在セグメントの名称従業員数(人)インダストリアルオートメーションビジネス10,008ヘルスケアビジネス4,467ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス2,846デバイス&モジュールソリューションズビジネス6,920データソリューションビジネス1,823本社他2,386合計28,450 (注)従業員数は就業人員数(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの    出向者を含む)です。
(2) 提出会社の状況 2024年3月31日現在従業員数(人)平均年齢(歳)平均勤続年数(年)平均年間給与(千円)4,53845.016.18,739 (注)1 従業員数は就業人員数(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む)です。    2 平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。 2024年3月31日現在セグメントの名称従業員数(人)インダストリアルオートメーションビジネス2,496ヘルスケアビジネス-ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス-デバイス&モジュールソリューションズビジネス949データソリューションビジネス33本社他1,060合計4,538 (注)従業員数は就業人員数(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む)です。 (3) 労働組合の状況2024年3月31日現在  名称 オムロングループ労働組合連合会(全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会)結成年月 1978年4月 組合員数(人)7,311なお、会社と労働組合との間には、特記すべき事項はありません。(4)従業員の多様性に関する指標提出会社当事業年度管理職に占める女性労働者の割合(%) (注1)男性労働者の育児休業取得率(%) (注2)労働者の男女の賃金の差異(%) (注4)全労働者正規雇用労働者パート・有期労働者11.861.272.270.858.0 連結子会社当事業年度名称管理職に占める女性労働者の割合(%)(注1)男性労働者の育児休業取得率(%)(注2)労働者の男女の賃金の差異(%)(注4)全労働者正規雇用労働者パート・有期労働者オムロン ヘルスケア株式会社6.677.869.969.353.8オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社9.568.472.669.791.4オムロン フィールドエンジニアリング株式会社5.8100.070.276.548.3オムロン フィールドエンジニアリング西日本株式会社0.077.851.391.6*(注3)オムロン ソフトウェア株式会社5.277.881.379.5*(注3)オムロン阿蘇株式会社0.060.057.960.0*(注3)オムロン リレーアンドデバイス株式会社12.536.459.466.251.4オムロン スイッチアンドデバイス株式会社22.250.060.378.249.8オムロン アミューズメント株式会社0.0100.051.060.053.8株式会社エフ・エー・テクノ0.0*(注3)64.762.077.4オムロン キリンテクノシステム株式会社7.766.781.778.6127.2オムロン エキスパートリンク株式会社25.050.070.071.588.4オムロン エキスパートエンジニアリング株式会社-66.767.783.964.9株式会社JMDC17.450.065.968.3*(注3)株式会社キャンサースキャン16.783.369.569.698.9NSリヤンド株式会社20.0*(注3)71.987.066.7株式会社ドクターネット19.0100.068.376.475.1株式会社HERO innovation0.0100.062.465.761.4(注)1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。提出会社及び常時雇用する労働者が101人以上の連結子会社を記載しております。なお、「-」は、労働者人数を原籍会社にてカウントしております。 2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業の取得割合を算出したものです。提出会社及び常時雇用する労働者が101人以上の連結子会社を記載しております。 3 「*」は、対象となる従業員が無いことを示しています。 4 男女賃金差異については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づく情報公表の求めは常時雇用する労働者301人以上ですが、法の求めを超えて101人以上の連結子会社を対象として記載しております。賃金制度・体系において性別による差異はなく、主に賃金の高い高位職層における女性比率が低いことによるものです。女性管理職比率の向上に関する取組み等については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) 人的資本に関する取組み」に記載しております。
経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
 ここでは、(1)経営方針、(2)長期ビジョン「Shaping The Future 2030」(2022~2030年度)、(3)「SF2030」における中期経営計画(SF 1st Stage)の変更、(4)構造改革プログラム「NEXT2025」で構成しています。  なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。また、文中における「営業利益」は、「売上高」から「売上原価」、「販売費及び一般管理費」および「試験研究開発費」 を控除したものを表示しています。 (1) 経営方針①当社グループの企業理念 当社グループでは、1959年に創業者・立石一真が、社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」を制定しました。その後、社憲の精神を企業理念へと進化させ、時代に合わせて改定しながら受け継ぎ、事業発展の原動力また求心力として数々のイノベーションを生み出し、社会の発展と人々の生活の向上に貢献してきました。この企業理念を社員一人ひとりが実践することで、事業を通じた社会的課題の解決を目指しています。このためには、世界中の社員の誰もが企業理念の考え方を理解し、行動することが重要であり、現在、グローバルレベルで企業理念の実践を強化しています。 なお、今後も企業理念を実践し、社会の発展と企業価値の向上に努めていく当社の経営の根幹は普遍であることを明確にするために、第85期定時株主総会(2022年6月23日開催)にて同企業理念を定款に記載する旨の議案を上程し、株主様の賛成を得て定款の一部を変更しました。 ②当社グループの存在意義 当社グループの存在意義は、企業理念の実践そのものです。即ち、「事業を通じて社会価値を創出し、社会の発展に貢献し続けること」に他なりません。社会価値を創出し、正しく利益を得る、再投資するというサイクルを回すことで社会的課題の解決を拡大再生産できる仕組みを構築することが重要と考えています。 ③企業理念に基づく経営のスタンス 当社グループでは、すべてのステークホルダーに対して、事業を通じて企業理念を実践していくための経営の姿勢や考え方を示すものとして、「経営のスタンス」を宣言しています。それらを「長期ビジョン」「オムロングループ マネジメントポリシー」「ステークホルダーエンゲージメント」の各方針に体系化し、実践しています。  また、この「経営のスタンス」は、企業の永続的な成長を目指すものであるため、当社グループの「サステナビリティ方針」としても同内容を掲げています。(サステナビリティ目標値については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 長期ビジョン「Shaping The Future 2030」(2022~2030年度)③「SF2030」サステナビリティ重要課題に記載しています。) (参考)企業理念浸透への取組み  当社グループでは、企業理念を現場に浸透・共鳴させるために様々な活動を行っています。 <企業理念の実践を支える主な取組み> ・企業理念ダイアログ 経営トップ自らがグローバル各拠点を訪問し、企業理念について世界各地の経営幹部や現場社員と対話を行います。そこでは、日常業務における企業理念の大切さや、経営トップ自らが事業責任者として企業理念を実践した当時の経験など実例を交えた講話が行われます。その後、参加者が互いの理念実践事例を共有・共鳴し合い、そこでの気づきを踏まえ、今後の企業理念実践アクションプランについて議論が交わされます。このように企業理念ダイアログは、各地の経営幹部や現場社員にとって企業理念の実践に向けた行動を加速する機会となっています。 ・エンゲージメントサーベイ「VOICE」 グローバル全社員の生の声をエンゲージメントサーベイ「VOICE」により集計し、当社グループで働く従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を経営陣と社員が一緒に実現する、エンゲージメントマネジメントに取り組んでいます。 VOICEは2016年から2年に一度実施し、グローバル全従業員に約70問の質問を送り、回答及びフリーコメントを収集しています。前回(2022年9月~10月実施)の調査における回答率は91%、3万8千件のフリーコメントが寄せられました。これらの回答を詳細に分析し、会社の魅力度を測るとともに、経営陣が調査結果から導かれた組織課題についての議論を行い、目標を明確に定めたのちにアクションを推進しています。 ・The OMRON Global Award (TOGA) 社員による業務を通じた企業理念実践の物語をグローバル全社員で共有するプログラムです。TOGAは、社員自らが社会的課題の解決に向けた目標を立てることで、企業理念実践にチャレンジし続ける風土の醸成を狙いとしています。日々の仕事や職場における企業理念実践の取組みを全社員で共有し、称えあうことで、企業理念実践への共感、共鳴の輪を拡大しています。  TOGAについての詳細はウェブサイトをご覧ください。 https://www.omron.com/jp/ja/about/corporate/vision/initiative/#top
(2) 長期ビジョン「Shaping The Future 2030」(2022~2030年度) 当社グループでは、2022年度から2030年度までの長期ビジョン「Shaping The Future 2030」、(略称:「SF2030」)を掲げています。社会が変革期を迎える中、存在意義を発揮し、より多くの社会的課題の解決を通じて社会の発展に貢献し続けるため、自らの変革と新たな価値創造のストーリーを定めたものです。 ①「SF2030」ビジョンステートメント 「SF2030」には、「オムロングループ全社員が企業理念を実践し、センシング&コントロール+Think技術で、持続可能な社会をステークホルダーとともにつくっていく」という思いを込めています。 ②オムロンが創出する社会価値 社会価値の創出に向けて、オムロンは、社会に与えるインパクトが大きく、オムロンの強みであるオートメーションと顧客資産や事業資産を活かす観点から、3つの社会的課題「カーボンニュートラルの実現への貢献」、「デジタル化社会の実現への貢献」、「健康寿命の延伸への貢献」を設定しました。 カーボンニュートラルの実現を通じて地球温暖化問題へ取り組み、安心・安全・便利な暮らしと自然環境の両立を実現するエネルギーシステム作りに貢献します。 デジタル化社会の実現においては、年齢や貧富の差に関わらず、必要な情報を必要な人が得ることができる状態を作ることが求められています。オムロンは、誰もがその恩恵にあずかることができるデジタル化社会の実現を通じて格差社会から生まれる問題の解決に取り組み、人々があらゆる制約から解放され、楽しく創造的でかつ、持続可能な社会を実現するものづくりやインフラ作りに貢献します。 また、高齢化が進む社会において、健康寿命を延ばすことは、個人はもちろん、家族が幸せな生活を送るためにとても重要なことです。加えて、医療費の抑制といった観点からも重要です。オムロンは健康寿命の延伸のためにあらゆる人が健康で豊かな自立した人生を送るためのヘルスケアシステムを構築することで高齢化社会における問題の解決に真正面から取り組んでいきます。    <オムロンが捉える社会的課題と創出する社会価値>  これらの3つの社会的課題の解決による社会インパクトを最大化するために、「SF2030」より、グループのドメインを見直し、改めて4つのドメインを設定するとともに同領域での社会価値を定めました。インダストリアルオートメーションでは、「持続可能な社会を支えるモノづくりの高度化」への貢献を目指します。ヘルスケアソリューションでは、「循環器疾患の“ゼロイベント”」への貢献を目指します。ソーシャルソリューションでは、「再生可能エネルギーの普及・効率的利用とデジタル社会のインフラ持続性」への貢献を目指します。デバイス&モジュールソリューションでは、「新エネルギーと高速通信の普及」への貢献を目指します。    <4つのドメインが創出する社会価値>インダストリアルオートメーション インダストリアルオートメーションでは「持続可能な社会を支えるモノづくりの高度化」へ貢献します。これまでオムロンは、i-Automation!で、お客様との共創を通じてアプリケーションを創出し、様々な業界のモノづくりの技術革新や人手不足の解消、生産性の向上を実現させてきました。これからは、i-Automation!をさらに進化させ、生産性とエネルギー効率の最大化による地球環境との共存や、人の可能性を最大発揮できる製造現場の構築や業務プロセスの改善やエンジニアリング領域の業務効率向上を通じて作業者の働きがいも両立させるサステナブルな未来を支える製造現場を構築していきます。 ヘルスケアソリューション ヘルスケアソリューションでは、「循環器疾患の“ゼロイベント”」へ貢献します。これまでオムロンは、医療品質の家庭用デバイスをグローバルに普及させ、家庭で計測した血圧データを用いた診断・治療プロセスをつくり、脳・心血管イベント発症の予防に貢献してきました。これからは、イベント発症を未然に防ぐ、新しい予防医療の仕組みを構築することで、誰もが自然と健康に暮らすことのできる社会、質の高い医療を誰もがどこでも受けられる社会の実現を目指していきます。その社会に向けて、日常生活下でバイタルデータが測定できるデバイスの創出、医師の診断・治療の意思決定を支援するアルゴリズムを用いた遠隔診療サービスの導入や、新しい予防医療サービスの開発を実現します。 ソーシャルソリューション ソーシャルソリューションでは、「再生可能エネルギーの普及・効率的利用とデジタル社会のインフラ持続性」への貢献を目指します。オムロンはこれまで、太陽光発電や蓄電池の普及に貢献してきました。これからは、進化したエネルギー制御技術で発電の不安定さを解消し、再生可能エネルギーのさらなる普及に貢献します。また、社会インフラ領域においては、様々な機器、施設の運用現場を熟知し、日本全国を網羅するサービス網を通じ、運用・保守を支えてきました。これからは、現場システムの効率的な運用を支援するマネジメント&サービスで、運用・保守プロセスを革新していきます。 デバイス&モジュールソリューション デバイス&モジュールソリューションでは、「新エネルギーと高速通信の普及」に貢献します。オムロンはこれまで、電気を繋ぐ・切る技術で、高い性能と品質を持つリレーやスイッチを顧客の製品に組み込み、グローバルに広く提供してきました。これからは、環境負荷の低いエネルギーの導入によりあらゆる機器が直流化します。この変化を踏まえて、オムロンは、放電を安全に制御する技術や故障タイミングを事前に検知する技術で、火災や感電を防ぎ、機器の安全性を高めるデバイスを創出します。また、高速通信の普及では、耐ノイズ性能を高める技術と、これまで培った微細加工技術を用いた量産化により、「途切れない接続」を可能とする高周波対応デバイスを創出します。③「SF2030」におけるサステナビリティ重要課題 当社グループは「SF2030」のもと、事業の成長とサステナビリティ課題への取組みを一体化して進化させ、推進しています。社会価値と経済価値を生み出すのは、「事業を通じた社会的課題の解決」そのものです。その実現のためには、ソーシャルニーズ創造による新規事業やそれを支える多様な人財づくりが欠かせません。これらは「オムロンの持続的成長」にも繋がります。また、脱炭素・環境負荷低減やバリューチェーンにおける人権の尊重は、「社会の持続的発展」を促すための企業の社会的責任として必須となっています。「SF2030」では、これらの5つのサステナビリティ重要課題に取り組むことで、社会価値と経済価値の両方を創出し、企業価値の最大化を目指します。 (注) 1 Scope1・2:自社領域から直接的・間接的に排出される温室効果ガス 2 Scope3 カテゴリー11:Scope3は自社のバリューチェーンからの温室効果ガスの排出。そのうち、カテゴリー11は製造・販売 した製品・サービス等の使用に伴う排出。 ※「SF2030オムロンの進化の方向性」など、「SF2030」の詳細は、弊社ウェブサイトに掲載しています。 特設サイト:https://www.omron.com/jp/ja/sf2030/ ※サステナビリティ重要課題特定プロセスの詳細は、ウェブサイトをご覧ください。https://sustainability.omron.com/jp/omron_csr/sustainability_management/ (3)「SF2030」における中期経営計画(SF 1st Stage)の変更 当社グループでは、2022年度から2024年度を中期経営計画(以下SF 1st Stage)とし、「SF2030」ビジョン達成に向け、社会的課題を捉えた価値創造と持続的成長への転換を加速する“トランスフォーメーション加速期”と位置付け、社会構造の変化に伴う成長機会を掴み、これまで培った競争力を発揮することにより力強い成長を実現することを目指しました。しかしながら、2023年度は、中国経済の成長鈍化やサプライチェーンの混乱など、事業環境が想定以上に悪化したことに加え、当社グループの成長を牽引する事業やエリアが一部に偏っていたことで、この急激な変化に対応できず、業績が大幅に悪化しました。 このような状況を受け、当社グループは、当初2024年度までとしていた中期経営計画(SF 1st Stage)を取り下げ、2024年4月1日~2025年9月30日までを「構造改革期間」とし、構造改革プログラム「NEXT2025」を実行することとしました。 なお、次期中期経営計画(SF 2nd Stage)は2026年度~2030年度を予定しています。 <中期経営計画の変更>①SF 1st Stage方針と進捗 SF 1st Stageでは「トランスフォーメーションの加速による価値創造への挑戦」を掲げ、この実現に向けて、3つのグループ戦略を設定しました。1つ目は、事業のトランスフォーメーションです。具体的には、4コア事業(制御機器事業・ヘルスケア事業・社会システム事業・電子部品事業)の進化、顧客資産型サービス事業の拡大、社会的課題起点での新規事業の創出に取り組みました。4コア事業の進化については、それぞれが成長領域を見直し注力事業を設定し、新たな価値創造の実現による売上成長の牽引を目指しました。2つ目は、企業運営・組織能力のトランスフォーメーションです。事業環境の変化に適応しながら価値創造し続けるために、ダイバーシティ&インクルージョンの加速、DXによるデータドリブンの企業運営、サプライチェーンのレジリエンス向上に取り組みました。そして、3つ目は、サステナビリティへの取組み強化です。特に、脱炭素・環境負荷低減に向けた温室効果ガス排出量の削減、バリューチェーンにおける人権尊重の徹底に取り組みました。 以上の戦略のもと、SF1st Stageでは、財務目標と事業戦略とサステナビリティを融合させた非財務目標を設定しました。  SF 1st Stageの初年度の2022年度においては、上海ロックダウンやグローバルでのインフレ拡大、部材の逼迫などの影響を大きく受ける中でも高水準の受注残に対応すべく供給力強化を加速させたことや、全社で価格適正化等の付加価値率改善に継続するなどしたことで、売上高、営業利益ともに過去最高業績を更新し、ROIC(投下資本利益率)とROE(株主資本利益率)は、ともに10%を超える水準となりましたが、2023年度は、上述のとおり大幅な業績悪化となり、財務目標とした各指標も2022年度比で大幅に悪化しました。  一方で、非財務目標の取組みにおいては、温室効果ガスの排出量について当初目標を達成、人権の取組み状況も計画通りに達成するなど、概ね順調に推移しています。これらの取組みが評価され、2023年度もDJSI-Worldに継続して選定されています。   <SF1st Stage 財務目標と進捗>   <SF1st Stageの非財務目標と進捗> (注) 1.非財務目標に記載されている数値は、2022年度に設定したSF 1st Stageの当初設定目標 2.「カーボンニュートラルの実現」、「デジタル化社会の実現」、「健康寿命の延伸」に繋がる注力事業の売上高 3.GHG:温室効果ガス 4.リージョン:米州、欧州、アジア、中華圏、韓国、日本 5.2023年4月3日出資完了したオムロンキリンテクノシステムズ株式会社を含む4月20日時点の当社及び連結子会社集計値 6.2022年度のGHG排出量は、上海ロックダウン等の一時的な影響を含めた数値 7.2024年4月20日時点の当社及び連結子会社集計値 8.非財務目標の⑧から⑩は、社員投票で決定した目標 9.*はJMDC社を含む ②JMDC社連結子会社化とデータソリューション事業本部の新設JMDC社との資本業務提携 当社は、健診やレセプト等の医療データと血圧値等の日常生活下でのバイタル・活動データの突合による予防ソリューションの創出を目的に、株式会社JMDC(以下、JMDC社)と2022年2月22日に資本業務提携契約を締結しました。 業務提携以降、当社のJMDC社事業へ理解と相互の信頼関係の構築は順調に進み、2023年4月には、オムロンヘルスケア株式会社が提供するスマートフォン健康管理アプリ「OMRON connect」とJMDC社が保険者向けに提供しているPHRサービス「PepUp」間のデータ連携を開始しました。また、2023年6月には、当社やJMDC社を含めた代表幹事企業8社(これらに加え会員企業・団体は140団体)により、社員の健康を通じた日本企業の競争力向上と企業健保の持続可能性を目的とした「健康経営アライアンス」(注)を設立する等、両社の協業は加速しました。(注)2024年4月30日時点では、代表幹事企業9社、これらを含めた会員企業・団体392社が「健康経営アライアンス」に参加しています。  「健康経営アライアンス」の詳細は下記ウェブサイトをご覧ください。    https://kenkokeiei-alliance.com/ JMDC社連結子会社化とデータソリューション事業本部の新設 以上のような状況の下、ヘルスケア領域における更なる協業の加速とJMDC社が保有するデータマネジメント力とソリューション開発力による他領域でのデータソリューション事業の創出を目的に、2023年10月16日に、JMDC社株式を公開買付により追加取得を行い、同社を連結子会社としました。 また、オムロンの強いハードウェアから得られる膨大で質の高い現場データにJMDC社のデータマネジメント力、ソリューション開発力を組み合わせ、オムロンのビジネスモデルを進化させ成長事業を創造することを目的に、2023年12月21日に、社長CEO直轄組織としてデータソリューション事業本部を新設いたしました。            <データソリューション事業本部のターゲットドメイン>  データソリューション事業本部では、これまでJMDC社と協業で検討してきたヘルスケアドメインにおける拡張に留まらず、インダストリアルオートメーションやソーシャルソリューションなど、他のドメインのデータソリューションの事業機会を特定し、専任組織を設置して事業開発と市場実装を推進します。そして、データソリューションによる社会的課題の解決に貢献してまいります。今後注力する各ドメインにおける主な事業は以下の通りです。 ・ヘルスケアドメイン:コーポレートヘルス事業 JMDC社のデータアナリティクスを活用し、企業の生産性向上、健保の財政を改善する事業の創出に取り組みます。また、データを活用し、高血圧リスク予備軍の抽出と重症化予防に寄与するソリューションの開発、女性の健康に寄与するソリューションの開発、従業員のプレゼンティズムを改善し組織の生産性を上げるソリューションの開発を推進いたします。これらをコーポレートヘルス事業の足掛かりとして、関連する事業開発につなげてまいります。 ・ソーシャルソリューションドメイン:スマートM&S事業 データ分析・活用を軸に、AI技術、遠隔技術、その他の先端テクノロジー等の活用を通じ、流通小売りやエネルギー、社会システムの価値と効率を高める新たなソリューションを創出します。社会システム事業と連携し、社会的課題の解決につながるビジネスモデルを開発します。 ・インダストリアルオートメーションドメイン:FAデータソリューション事業 オムロンの主要事業である制御機器事業のi-BELTと連携したFAデータソリューションプロジェクトをはじめ、今後、第4、第5の新たな事業創出につながる事業テーマを設定してまいります。 (4) 構造改革プログラム「NEXT2025」 2024年4月1日~2025年9月末までを実行期間とした構造改革プログラム「NEXT2025」においては、収益を伴った持続的な売上成長を確かなものとし、持続的な企業価値向上を実現すべく「制御機器事業の早急な立て直し」と「収益・成長基盤の再構築」の2つの経営課題に取り組み、次の5つの経営施策を実行します。 ①制御機器事業リバイバルプランの実行 価値を提供するエリア、顧客に加え、提供価値そのものを顧客起点で再設定します。そして、そのポートフォリオの実現に向け、本社リソースも含めたリソースアロケーションを実施します。この取り組みを通じて、制御機器事業のROS最大化と、SF2030で目指す成長を実現する成長基盤を確立します。 ②ポートフォリオの最適化 各事業を取り巻く環境変化に対する耐性の強化と、収益を伴った持続的な成長を実現する事業・製品・エリアの各ポートフォリオの最適化を図ります。同時に、データソリューション事業本部が主導するJMDC社のケイパビリティを活用した制御機器・ヘルスケア・社会システム事業領域でのデータソリューションビジネスの創造を加速します。 ③人員数・能力の最適化 変化の激しい事業環境に対しても耐性のある人員・人件費構造の構築に取り組みます。加えて、顧客価値の拡大を実現し、収益を伴った成長を実現しうる人財ポートフォリオの再構築を通じて、「SF2030」で描くオムロングループ全体の能力の転換を図ります。 具体的には、国内約1,000名、海外約1,000名の合計約2,000名を削減することで、総人件費の適正化に取り組みます。本施策は、現地の労働法、規則、規制に従って実施します。 当施策の詳細につきましては、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記事項 Ⅱ主な科目の内訳及び内容の説明 Z重要な後発事象」をご参照ください。 ④固定費生産性の向上 グループ全体で固定費生産性の最大化を追求します。具体的には、売上高に対する販管費の比率について中期的に30%未満(JMDC社連結の影響を除き28%未満。2023年度の実績は32.0%)を実現する固定費規律の導入と運用の徹底に取り組みます。 ⑤顧客起点マネジメントシステムの導入・運用  経営・事業・本社のマネジメントを顧客起点での思考・行動に変革する施策の導入と運用を行います。具体的には財務観点に加えて、顧客観点での事業統制とマネジメントの思考・行動を変革させる人事施策の導入・運用の徹底を目指します。
サステナビリティに関する考え方及び取組 2【サステナビリティに関する考え方及び取組】
 当社グループは、創業以来、事業を通じて社会価値を創出し、社会の発展に貢献することで成長を実現してきました。その発展の原動力になってきたのが、社憲、「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」であり、その精神には企業の公器性と、先駆けてイノベーションを創出し、よりよい社会を実現する想いが込められています。当社グループにおけるサステナビリティとは、企業理念を実践することです。 ここでは、(1)オムロンのサステナビリティの考え方及び取組み、
(2)気候変動への対応、(3)人的資本に関する取組み、(4)人権尊重に関する取組みについて、それぞれ「①ガバナンス」「②戦略」「③リスク管理」「④指標と目標」の項目で記載します。 (1)オムロンのサステナビリティの考え方及び取組み①ガバナンス 当社グループでは、サステナビリティの取組みをグローバルで実行すべく、全社マネジメント構造を確立しています。重要課題の取組み状況は定期的に執行会議へ報告し、進捗状況や課題に対する議論を行っています。具体的には、サステナビリティ推進体制として、執行部門に「サステナビリティ推進委員会」を設置し、サステナビリティ課題への取組みを実行しています。特に、環境や人権の課題に対しての全社の取組みを強化しており、「サステナビリティ推進委員会」の傘下に、「環境ステアリングコミッティ」と「人権ステアリングコミッティ」を設置し、重要課題の事業実装に向けた議論や意思決定、年度計画の進捗モニタリングを行っています。2023年度には、取締役会によるサステナビリティ取組みに関する監視・監督を強化するため、環境、人権担当の取締役を任命し、環境・人権のステアリングコミッティにオブザーバーとして出席することとしました。また、各エリアにおいては、リージョンサステナビリティコミッティを設置し、エリア固有の課題にフォーカスした取組みを強化しています。さらに、業務執行として責任を持つサステナビリティ推進担当の執行役員を設置し、当社グループ全体のサステナビリティにおけるガバナンスの強化を図っています。2024年度からは、さらなるサステナビリティの事業実装強化のため、これまで取締役会傘下にあった「サステナビリティ推進室」を発展的に解消し、グローバルコーポレートコミュニケーション&エンゲージメント本部の傘下に執行部門として「サステナビリティ統括部」を設置しています。 このようなサステナビリティに関する取り組みは、定期的に取締役会に報告し、当社グループ全体でのさらなるガバナンスの強化を図っています。 なお、2017年度から役員報酬の中長期業績連動報酬(株式報酬)の評価に、DJSIの調査に基づくサステナビリティ評価を組み入れています。さらに、オムロンの成長に寄与するKPIとして「温室効果ガス排出量の削減」「社員に対するエンゲージメントサーベイにおけるSustainable Engagement Index (SEI)のスコア」を、2020年度の役員報酬制度の改訂において新たに追加しました。第三者機関のサステナビリティ評価を採用することで公正性・透明性を高め、サステナビリティ方針・目標・KPI・進捗状況をウェブサイトなどで開示することで、ステークホルダーとの対話を強化し、取組みの進化に活かしています。 役員報酬制度の詳細については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等①役員報酬等の内容」をご覧ください。 <全社サステナビリティマネジメント構造> <環境・人権ステアリングコミッティの概要> メンバー議題開催頻度環境ステアリングコミッティ環境担当取締役、サステナビリティ担当執行役員、ビジネスカンパニー企画長、他・環境評価制度・CFP取組み進捗・環境関連法規制・次年度計画 など原則四半期開催(10月、12月、3月)人権ステアリングコミッティ人権担当取締役、サステナビリティ担当執行役員、本社機能部門長、他・人権デューディリジェンス進捗・人権救済メカニズム運用拡大・RBA*加盟・次年度計画 など原則四半期開催(7月、10月、2月) *Responsible Business Allianceの略 ②戦略当社グループの存在意義は「事業を通じて社会価値を創出し、社会の発展に貢献し続けること」です。これ を実現していくために、オムロンが注力すべきサステナビリティ重要課題を特定し、中長期戦略の中に組み込んで具体的な取組みと目標を設定して事業を通じて実行しています。「SF2030」では、事業とサステナビリティを統合し、社会価値と経済価値の両方を創出することで企業価値の最大化を目指します。詳細は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しています。 なお、自社領域、サプライチェーン領域におけるサステナビリティマネジメントの一環として、2024年1月に、企業の社会的責任を推進する企業同盟であるResponsible Business Alliance(以下、RBA)に加盟しました。今後、RBA加盟企業としてバリューチェーンにおける社会的責任を追求する取組みを進化させることで、強固なグローバルサプライチェーンを構築し、社会の持続的な発展とオムロンの持続的な成長を目指してまいります。 ③リスク管理 「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しています。 ④指標及び目標・サステナビリティに関する指標及び目標は、以下に記載しています。 2030年度の目標        :「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」 2023年度の実績・2024年度の目標:「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」 ・サステナビリティ課題への取組みに対する社外からの評価 当社がこれまで継続してきた、事業を通じたサステナビリティ課題の解決への取組みが高く評価され、DJSIワールドを始め世界標準の様々なインデックスへの組み入れや表彰を受けています。 <第三者評価の推移> 2018年度2019年度2020年度2021年度2022年度2023年度Dow JonesSustainability IndicesDJSI-WorldDJSI-WorldDJSI-WorldDJSI-WorldDJSI-WorldDJSI-WorldS&P GlobalSustainability Award--Gold ClassSilver ClassTop 5%メンバー選定CDP(気候変動)BA-A-A-AA-EcoVadisSILVERGOLDPLATINUMGOLDPLATINUMPLATINUM ※社外からの評価の詳細については下記をご参照ください。 https://sustainability.omron.com/jp/evaluation/
(2)気候変動への対応 世界各地で異常気象による大規模な自然災害が多発する中、気候変動は当社が取り組むべき最重要課題であると捉え、「SF2030」のもと、社会的課題である「カーボンニュートラル社会の実現」にチャレンジします。 2019年2月に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明以降、株主・投資家などのステークホルダーと当社グループの気候変動の取組みについてのエンゲージメントを強化するため、TCFDのフレームワークに基づいた情報開示を進めています。 TCFDフレームワークに基づく当社グループのシナリオ分析プロセス 環境省などから公開されたシナリオ分析実施の基本ステップに沿った4つのステップを経て、気候変動に伴う「移行リスク」「物理リスク」などによる当社グループの事業戦略に及ぼす影響について分析しています。 <シナリオ分析のステップ> TCFD提言が推奨する4つの開示項目に沿った情報開示 TCFD提言は、すべての企業に対し、「①ガバナンス」「②戦略」「③リスク管理」「④指標と目標」の4つの項目に基づいて開示することを推奨しています。当社グループは、TCFD提言の4つの開示項目に沿って、当社の気候関連への取組みを開示します。 ①ガバナンス・オムロン環境方針 当社グループは気候変動対策の目標達成に向けた重要な指針としての「オムロン環境方針」を、2022年3月1日に改定しました。この方針のもと、脱炭素・環境負荷低減などのバリューチェーン全体での環境課題解決に取り組み、ステークホルダーの期待に応えることで企業価値の向上につなげていきます。※オムロン環境方針は下記をご参照ください。https://sustainability.omron.com/jp/environ/management/vision/ ・取締役会の役割・監視体制 当社グループでは、「オムロン コーポレート・ガバナンス ポリシー」において、TCFD等の枠組みに基づく気候変動リスクへの取組みを含むサステナビリティ方針・重要課題および目標について、取締役会が決定・開示することを明確に定めています。 TCFD提言に沿って「SF2030」および中期経営計画と連動させ各事業のシナリオ分析を行い、特定した気候変動に関するリスクや事業機会、目標や具体的な取組み施策については、執行会議およびサステナビリティ推進委員会で協議・決定・進捗管理・モニタリングを定期的に実施し、必要に応じて是正策を検討します。取締役会は、執行会議で協議・決定された内容の報告を定期的に受け、論議・監督を行っています。 ②戦略・短期・中期・長期の気候関連リスク・機会および対応 「SF2030」では、サステナビリティ重要課題「脱炭素・環境負荷低減の実現」を設定し、気候変動を「機会」と「リスク」の二側面で捉え、企業としての社会的責任の実践と更なる競争優位性の構築を図っています。 そして、気候変動による生態系および人間社会に対する深刻な影響の拡大を抑止するため、当社グループは「脱炭素に向けた製品・サービスの提供」、「モノとサービスを組み合わせたビジネスモデルの進化」、「パートナーとの共創」、「エネルギー効率の改善」、「再生可能エネルギーの使用拡大」などによりバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量削減に取り組んでいきます。 その中で、当社グループは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などが発表する「世界の平均気温が4℃以上上昇する」4℃シナリオと、「世界の平均気温がパリ協定で合意した2℃未満の上昇に抑えられる(一部1.5℃以内)」1.5℃/2℃シナリオの2つのシナリオで、リスクと機会を分析し、気候変動問題解決にはオムロンの対応が必要であると再確認しました。具体的には、各事業において以下に取り組んでいます。 制御機器事業 i-Automation!を進化させ、地球環境との共存と、働く人々の働きがいも両立させるサステナブルな未来を支える製造現場を構築し、生産性とエネルギー効率を高めるオートメーションの実現を目指します。社会システム事業 これまで太陽光発電や蓄電池の普及に貢献してきましたが、今後は、進化したエネルギー制御技術で発電の不安定さを解消し、再生可能エネルギーのさらなる普及に貢献します。 電子部品事業  製品の環境性能向上、およびカーボンフットプリント削減への関心の高まりによる電子部品事業の製品における省エネ・省資源の開発・および提供も加速します。  その他にも社会と様々な接点を持つ当社グループは、社会の多くの場面でカーボンニュートラル社会の実現に貢献しています。 2022年度には、当社グループは国内製造業で初めてEP100*に加盟し、制御機器事業とヘルスケア事業のすべての生産拠点において1ギガワット時(GWh)当たりの売上高比率である「エネルギー生産性」を2040年までに2016年比で倍増させることをコミットしました。現在、血圧計や体温計の国内生産拠点である松阪事業所では、制御機器事業とヘルスケア事業が連携し、エネルギー消費量を減らしながら生産量を高める取組みによって、エネルギー生産性の向上を推進しています。自社のノウハウを世の中に提供していくことで、製造業および社会の脱炭素化に貢献していきます。*イギリスに本部を置く国際環境NPO法人「The Climate Group」が主催し、事業活動におけるエネルギー生産性を倍増させること(省エネ効率を50%改善等)を目標に掲げる企業が参加する国際企業イニシアチブ。EP100は“100% Energy Productivity” の略称で、事業のエネルギー効率(Energy Productivity)を倍増させることを意味する。 ・事業を通じてカーボンニュートラルに貢献する全社売上高目標と進捗 当期(2023年度)のカーボンニュートラルに貢献する全社売上高(Green Revenue)は1,024億円となりました。また、当期の業績の悪化を踏まえ、2024年度の目標値を1,160億円(SF 1st Stageの当初目標1,300億円)に変更しています。  当社グループが認識する気候関連リスク及び、製品・サービス市場ごとの機会は以下の通りです。 <当社グループの気候変動のリスク・機会の概要と対応> (注)リスクとして記載の物理リスクは、日本、中国を中心とする主要生産15拠点を対象として、ハザードマップ、AQUEDUCTを活用した分析を実施しました。100年に一度の災害が発生した際には、2拠点がリスクに晒されることが明らかになりましたが、再現期間を加味した年間影響額は1.5/2℃・4℃どちらのシナリオでも極めて小さいことから影響度は「小」としております。 <TCFDシナリオの前提> <事業及び財務への影響度(大・中・小)の定義>       ※・リスクへの影響度として営業利益に対してプラスもしくはマイナスの影響を定義しております。    ・影響度は、特定したリスク・機会へ対応した場合を記載しております。 ③リスク管理・リスクを評価・識別・管理するプロセス 当社グループは、各事業のシナリオ分析を実施し、気候変動影響による「移行リスク」「物理リスク」を網羅的に抽出しています。そして、抽出した気候変動に伴うリスクについて、採用シナリオごとに「顕在時期」「事業および財務への影響額」を可視化し、事業および財務への影響度を評価しています。評価を基に当社グループにとって重要な気候変動に伴うリスクを特定し、事業リスクの一環として全社リスクマネジメントに統合しています。なお、対応策の立案にあたっての重要事項は、取締役会へ報告しています。 2023年度は、制御機器事業、ヘルスケア事業、電子部品事業および社会システム事業のシナリオ分析の結果について変更が無いことを確認しました。加えて、構造改革プログラム「NEXT2025」により各事業のシナリオ分析結果に変更が無いことも確認しています。なお2023年12月に新設された、データソリューション事業につきましてはシナリオ分析の対象事業として検討を進めると同時に、次期中期経営計画(SF 2nd Stage)と連動させたシナリオ分析を計画してまいります。 ・全社リスクマネジメントへの統合状況 当社グループは、グループ共通のフレームワークで統合リスクマネジメントの取組みを行っています。気候変動リスクについても当社グループにおける重要リスクと識別・評価し、シナリオ分析によるリスクと整合させ、バリューチェーン全体での取組みのモニタリングを行っています。 ④指標と目標・気候変動のリスク・機会に関する指標 当社グループは、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3(注1)の温室効果ガス排出量、および事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギーに関する指標を定めています。・温室効果ガス排出量に関する目標及び実績(Scope1・2・3) 当社グループは、環境分野において、持続可能な社会をつくることが企業理念にある「よりよい社会をつくる」ことと捉え、2018年7月に、2050年にScope1・2について温室効果ガス排出量ゼロを目指す「オムロン カーボンゼロ」を設定しました。 2022年3月には、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取組みを進化させ、Scope1・2については、削減シナリオを2℃シナリオからより積極的な1.5℃シナリオに変更しました 。また、Scope3カテゴリー11について、2030年に18%削減(2016年度比)する目標を設定しました。これらの目標はSBTイニシアチブ(注2)の認定を受けています。 また、目標達成に向けて、エネルギー効率の改善を継続して進めるとともに、自社のエネルギーソリューション事業が提供する再エネ由来のJ-クレジット(注3)や自己託送(注4)などを活用することで、2024年度にScope2について当社グループの国内拠点のカーボンゼロ(注5)の実現を目指してまいります。 <温室効果ガス排出量に関する目標及び実績(Scope 1・2・3)> (注)1 Scope1・2:自社領域から直接的・間接的に排出される温室効果ガス     Scope3カテゴリー11:Scope3は自社のバリューチェーンからの温室効果ガスの排出。そのうち、カテゴリー11は製造・販売した製品・サービス等の使用に伴う排出。   2 SBTイニシアチブ(Science Based Targets イニシアチブ):科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減の中長期目標設定を推奨している国際的イニシアチブ   3 J-クレジット:環境価値 (CO2を排出しない効果)を国が認証する制度   4 自己託送:自家発電設備を保有する事業者が当該設備を用いて発電した電力を、一般送配電事業者の送電網を介して遠隔地にある自社工場や事業所などに送電・供給し、電力を使用することが可能となる電力供給制度   5 生産13拠点、非生産(本社・研究開発・販売)63拠点における自社の電力使用により排出される温室効果ガス排出量(Scope2)が対象   6 温室効果ガス排出量(Scope1・2)の2023年度の実績は、オムロンコーポレートサイトに掲載し、第三者機関による限定的保証業務により第三者保証を受ける予定です。当該限定的保証業務は、いずれも国際監査・保証基準審議会の国際保証業務基準(ISAE)3000「過去財務情報の監査又はレビュー以外の保証業務」に準拠した業務です。   7 2023年度の温室効果ガス排出量削減は、計画を上回る省エネ・創エネの取組みに加え、マレーシアの脱炭素対策、国内カーボンゼロの拡大(Jクレジット活用)、生産減等の影響により、目標を大幅に上回る削減量となりました。   8 2030年目標値については、「SBTi基準」(SBTi criteria)に基づき2027年までに目標を見直す予定。   9 Scope3 カテゴリー11の算定式における使用シナリオおよび温室効果ガス排出係数の見直しを行いました。 (参考)環境評価制度の導入 当社グループは、環境評価制度を通じて、環境面の非財務インパクトと財務インパクトのコネクティビティを強化します。この制度は、EUタクソノミーに基づく環境影響とライフサイクルからなる環境評価軸に基づき、製品の設計・開発段階からネガティブな環境インパクトを最小限に抑える取組みを行います。また、ライフサイクル全体で環境影響を評価するライフサイクルアセスメント(LCA)を通じて、製品のポジティブな環境インパクトを特定し、環境課題の解決と事業の持続的成長に貢献します。 (3)人的資本に関する取組み①ガバナンス 当社グループでは、グローバル人財戦略の進捗を2023年度の取締役会運営方針の重点テーマの一つに設定してモニタリングしています。 取締役会でのグローバル人財戦略の進捗についての議論の詳細については、以下の「2023年度取締役会実効性評価結果」をご参照ください。https://www.omron.com/jp/ja/assets/img/sustainability/governance/corporate_governance/chart/20240605_governance_effectiveness_j.pdf  2023年度から人財戦略は今後の経営の要という認識のもと、主に「企業理念の浸透・共鳴の輪の拡大」、「リーダー育成と登用」、「全社員にとっての魅力的な会社づくり・企業文化の醸成」のさらなる実行を狙いとし、CHRO(最高人事責任者)を設置しました。CHROリードのもと、人的資本の取組みをさらに推進していきます。 ②戦略「SF2030」人財戦略ビジョン 「SF2030」の目標である、事業を通じた社会価値創出の原動力は、社員一人ひとりです。会社と社員が「選び・選ばれ」、「ともに成長する」新たな関係を構築していくことを前提に、企業理念の実践を通じて、社会的課題の解決を志す、スペシャリティを備えた多様な人財が集い、一人ひとりが主体性を持って能力を発揮する集団であり続けられる人財戦略をグローバルに実行していきます。 人的創造性の向上 人的資本を有効に活用して企業価値の向上につなげているかを定量的に測る指標として「人的創造性」を設定し、その向上に取り組んでいます。人的創造性とは、売上から変動費を差し引いた付加価値額を人件費で割ったものです。付加価値とは、当社グループが顧客や市場に向けて創り届けた価値の大きさ、人件費とは、価値創造の担い手である人財の価値の総和の大きさを指します。企業が適正な付加価値を得て、それを使って新たな価値の拡大再生産を行うことは、企業と社員の持続的成長の実現に不可欠です。私たちが成し遂げたいことは価値創造であり、分子の付加価値を伸ばすために分母である人財への投資をしっかりと行い、社員一人ひとりのポテンシャルを最大限発揮させることで、それ以上の付加価値を生み出していきます。 <人的創造性の考え方> 「構造改革期間」における取組み 2024年4月1日~2025年9月30日までの「構造改革期間」は、SF 1st Stageの戦略および目標値は取り下げ、変化の激しい事業環境に対しても耐性があり、かつ、「SF2030」で描く姿を実現する人財ポートフォリオの再構築を通じて、人財の能力転換を図ります。 主な取組み・人財ポートフォリオの再構築 今後の持続的な売上高・利益の成長を実現していくために、まず、国内約1,000名、海外約1,000名の合計約2,000名を削減し、グローバルで最適な人員・人件費構造を構築します。そのうえで、これから必要となる能力を持つ人財の獲得と既存人財に対する能力開発の強化を進めます。 ・人財の能力転換 当社グループでは、個人と組織が共に成長し続けることを目指して、経営戦略と連動した人財の能力転換に取り組んでいきます。 例えば、実践を通じた生成AI技術の習得のために、2023年度にスタートした生成AI活用プロジェクト「AIZAQ(アイザック)」を2024年度も継続します。本プロジェクトでは、データソリューションビジネスの推進やデジタルトランスフォーメーションによる生産性改善の強化のために、全社横断で入社1~2年目の若手から部長クラスの社員まで、役職や年齢に関係なく生成AI技術を学んでいます。本技術の活用に意欲のある社員と技術サポートのできる社員が連携し、業務の生産性改善テーマの活用検証を通じて、事業活動に直結する人財開発を行っています。その結果、本プロジェクトを通じて全社への展開を検討するテーマが出ています。商品開発に向けた膨大な顧客データ分析など一定の成果を上げており、今後も新しい改善テーマの活用検証を進めていきます。 ③リスク管理 「第2 事業の状況 3 事業等のリスク⑨人財・労務」に記載しております。 ④指標と目標 人的創造性の向上の実現とダイバーシティ&インクルージョンに取り組みました。2023年度の目標と進捗は以下の通りです。 <人的創造性の向上とダイバーシティ&インクルージョンを加速する8つの取組みと進捗> (注)1.2024年4月20日時点の当社及び連結子会社集計値です。 2.TOGAとは、The OMRON Global Awardsの略称です。(詳細は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (参考)企業理念浸透への取組み」をご参照ください。) ・女性活躍における課題への取組み 当社グループでは、「次世代リーダーの育成による女性活躍の推進」を経営の重点戦略に位置付けて取り組んでいます。その結果、2024年4月現在、オムロングループ(国内)における女性役員は、6名(内訳:社外取締役1名、執行役員常務1名、執行役員2名、関係会社取締役社長1名、関係会社取締役1名)です。 グローバルでは、2022年度に16.6%であった女性管理職比率は2023年度には19.1%
(注)となり、着実に上昇していますが、各国・地域における取締役、監査役、執行役員およびグループの経営・事業を牽引する最重要ポジションに登用されている女性の現職者や後継候補者はグループ全体で不足しています。この課題を解決するため、2023年度から、グローバルの女性管理職を対象として、「ウィメン リーダーズ サークル(Women Leaders Circle)」をスタートしました。グループ最重要ポジションの後継者になるポテンシャルがある人財を発掘して育成し、女性リーダーの母集団を形成していくことを狙いとしています。また、女性同士が、エリア・事業部門を超えたネットワークを形成し、グローバルの女性経営者との対話を通してキャリアイメージを明確にしていくことで、チャレンジする意欲も醸成していきます。今後も継続して取り組み、各エリアや事業部門の要職に就く女性リーダーやその後継者となる人財をグローバルで充足させていきます。 また、女性管理職比率の向上に特に注力している国内では、入社3年後からの女性社員をターゲットとして、「オムロン ウィメン リーダーシップ(OMRON Women Leadership)」を2022年度からスタートしています。早期から選抜・育成することにより、女性管理職候補の母集団を持続的に形成・拡大していくことを狙いに、ライフイベントを考慮したキャリアビジョンの具体化や、マネジメントスキルの向上に取り組んでいます。この取組みを継続し、国内の女性管理職比率の向上を目指します。 女性のさらなる活躍を推進していくため、経営の重点戦略の1つとして、女性リーダーの拡充に向けて取組みを今後も強化していきます。
(注) 2024年4月20日時点の当社及び連結子会社集計値です。     <女性管理職の推移(グローバル/グループ国内) (注)各年度における集計値は翌年度4月20日時点の数値を記載 (参考)オムロンの健康経営 社会的課題を解決するには、何よりも働く社員一人ひとりの健康が経営の基盤になると考え、経営トップが健康経営宣言を行い、以下の3つの活動方針に沿って、健康経営を推進してきました。全社を挙げて構造改革プログラム「NEXT2025」に注力し、顧客価値の拡大を実現し、収益を伴った持続的な成長を目指すなか、その原動力となる社員の一人ひとりが健康で、かつ活力に満ち溢れ、ポテンシャルや専門性を発揮し続ける職場をつくっていくことがますます重要になっています。社員一人ひとりの健康の維持・増進と創造性・専門性の発揮を両立させ、個人と企業の持続的成長につなげていきます。①「イノベーションを起こす人と組織をつくる」ということ。前向きなチャレンジを促進する環境を整えて、仕事にやりがいや楽しさを感じられるようにします。②「心身が健康で、社員が自分の人生を楽しんでいる状態をつくる」ということ。社員に健康に配慮した生活を心がけてもらい、仕事だけでなく趣味なども積極的に楽しめるようにします。③「オムロンを卒業しても社会で活躍し続ける社員でいっぱいにする」ということ。健康を維持・向上できれば、将来にわたって活躍できるようになり、社会に貢献しながら充実した人生を送ることができます。 ※健康経営の取組み詳細については下記をご参照ください。https://sustainability.omron.com/jp/social/wellness-management/(4)人権尊重に関する取組み①ガバナンス・人権方針 「SF2030」のサステナビリティ重要課題のひとつである「バリューチェーンにおける人権の尊重」を実現するため、2022年3月1日にオムロン人権方針を制定しました。国際社会と協調した経営や行動に努め、バリューチェーン全体で人権侵害リスクの低減に取り組んでいます。 ・人権推進体制 当社グループは、経営と現場が一体となってグローバルで人権尊重責任を遂行する体制の構築に取り組んでいます。具体的な執行体制としては、社長CEOから権限委譲されたサステナビリティ推進担当役員の責任のもと、グローバルコーポレートコミュニケーション&エンゲージメント本部が中心となって取組みを推進し、自社領域はグローバル人財総務本部長、サプライチェーン領域はグローバル購買・品質・物流本部長、事業戦略領域は各ビジネスカンパニー長、AIを含むテクノロジーの倫理的な活用については技術・知財本部長、救済メカニズムについてはグローバルリスクマネジメント・法務本部長がそれぞれ責任を持って対応しています。人権尊重へのコミットメントを果たす上で重要な事項については取締役会に報告し、取締役会が監視・監督します。2023年度からは、人権担当取締役を任命し、またサステナビリティ推進委員会の傘下に人権担当取締役や各執行部門長が参画する人権ステアリングコミッティを立ち上げ、各責任部門の活動進捗のモニタリングや国際的なイニシアチブ加盟に向けた議論などを行っています。 ・人権尊重の取組みの全体像 「オムロン人権方針」をグローバル社員に周知・浸透させるとともに、UNGPに沿って、人権への負の影響を特定・防止・軽減・是正する人権デューディリジェンスの実行と人権救済メカニズムの構築をすることで、グローバルにおける人権ガバナンスを構築しています。またステークホルダーとのエンゲージメントを通じて、各取組みの実効性を高めています。 <人権尊重の取組みの全体像> ②戦略・「SF2030」のサステナビリティ重要課題「バリューチェーンにおける人権の尊重」に沿ってSF2030目標と2024年度までの目標を設定し、取組みを進めています。 2030年目標UNGPに沿って自社のみならずバリューチェーンで働く人々の人権の尊重に対して影響力を発揮し、人権侵害を許さない、発生させない風土と仕組みが形成されている状態を目指します。2024年度までの目標・UNGPに沿った人権デューディリジェンスの実施バリューチェーン全体を俯瞰した人権影響評価を実施することにより、「優先的に取り組む人権課題」を特定し、人権デューディリジェンスのサイクルを回せる状態を作り込んでいきます。・各国・地域に適した人権救済メカニズムの構築オムロンが人権に対して悪影響を引き起こしたり、または助長を確認した場合、正当な手続きを通じた救済を実行できるよう、各国・地域に適した人権救済メカニズムを構築していきます。 具体的な取組みを進めるにあたっては、4つの領域(自社領域、サプライチェーン領域、製品・サービス領域、バリューチェーン全体)における、19の人権課題を抽出しました。これらの人権課題のうち、「リスクの重要度」と「事業への関連性」の2軸からマッピング・優先順位付けを行い、優先的に取り組む7つの課題を中心に対応を進めています。これらの課題の特定にあたって実施した人権影響評価については③リスク管理にて記載しています。 優先的に取り組む課題(顕著な人権課題)自社領域・労働環境・労働安全衛生サプライチェーン領域・労働基準・強制、奴隷、債務労働・児童労働製品・サービス領域・テクノロジーの倫理的な活用バリューチェーン全体・苦情処理メカニズムと救済へのアクセス  自社領域・サプライチェーン領域においては、RBAの求める基準を軸に取組みを進めています。  ・自社領域 全従業員に対してオムロン人権方針と国際基準に基づく人権課題に関する研修を実施するほか、RBAのSAQ(自己評価質問書)を活用した自社生産拠点の人権侵害リスクの評価と是正措置を行っています。これらに加え、人権影響評価で特定された強制労働含む労働環境や、労働安全衛生の課題の発生リスクが高い拠点に絞ったリスク低減の取組みを進めています。この条件に該当する中国・マレーシアの生産拠点においては、段階的に第三者による監査を進めるとともに、構内委託先で外国人技能実習生が働いている日本の生産拠点については、雇用状況に関する確認を進めています。 ・サプライチェーン領域 すべての仕入先に対して、「オムロングループサステナブル調達ガイドライン」で定めるRBAに準拠した「サプライヤ行動規範」の遵守と、当社グループの定めるミニマム要件達成を依頼しています。重要仕入先に対しては、RBAより求められる要件のクリアを両社の共通目標に設定し、継続的に現状調査と評価、改善を実施しています。これらに加えて、人権影響評価で特定された課題の発生リスクが高いと考えられる中国・マレーシアに生産拠点を持つ仕入先を2024年度までの取り組み対象と定めて深掘りした調査と改善を進めています。 ・製品・サービス領域 テクノロジーが人権に与える影響の中でも、特にAI倫理に注力して取組みを進めています。AIガバナンス体制の構築に向けて、2024年度より当社グループのAI倫理に対する姿勢や取組みを示す「AI方針」と、既存のリスクマネジメント体制と連携したAIガバナンス委員会を運用します。 ・バリューチェーン全体 バリューチェーン全体における苦情処理メカニズムと救済へのアクセスについては、当社グループの従業員(派遣社員を含む)および仕入先が利用できる内部通報制度をグローバルに運用しています。内部通報窓口に寄せられた情報については秘密保持を厳守し、通報者が通報したことにより不利益を受けないことを保証しています。通報内容については中立公正に事実確認を行い、適正な措置を行っています。また、当社はJaCER(一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構)に正会員として加盟しており、JaCERの提供する「対話救済プラットフォーム」を活用することで、地域社会や顧客、直接取引関係のない2次以降の仕入先も含めたあらゆるステークホルダーに対する人権救済・是正の取組みを進めています。 ③リスク管理・リスクを評価・識別・管理するプロセス 2022年度にUNGPに基づいた当社グループ全体での人権影響評価を米国NPO団体のBSR(Business for Social Responsibility)と共同で実施しました。この人権影響評価の実施にあたっては、サプライチェーンを含むバリューチェーン全体において、当社グループが自らの事業活動を通じて引き起こす、または加担する可能性のある人権侵害リスクの評価・特定を行いました。具体的なステップとしては、はじめに国際規範や業界・ステークホルダーの動向調査と、海外地域統括本社を含む全社15部門に対する社内インタビュー調査を行いました。次に、国際人権基準を踏まえ人権課題を網羅的に抽出した後に、それらの中から電機電子業界特有の課題を絞り込みました。さらに当社グループのバリューチェーンにおいて権利保有者に影響を及ぼす可能性のある課題を19個特定しました。最後に「リスクの重要度」と「事業への関連性」の2軸からマッピング・優先順位付けを行い、優先的に取り組む7つの課題(顕著な人権課題)を特定しました。これら7つの課題に対して、各責任部門が実行計画を策定し取組みを進めています。 <特定した人権課題のマッピング> ・全社リスクマネジメントへの統合状況 当社グループは、リスクを全社的に管理する体制を構築することが重要であることを踏まえ、グループ共通のフレームワークで統合リスクマネジメントの取組みを行っています。人権リスクをグループ重要リスクと識別・評価し、人権影響評価で抽出された課題を踏まえて、定期的にモニタリングを行っています。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク⑧人権」に記載しています。 ④指標と目標・②戦略に記した定性目標に従って、各テーマにおける年度ごとの取組み内容を定めています。なお2023年度の主な実績は以下の通りです。 2023年度の主な実績自社・日本、中国、アジア・パシフィック、欧州、米州の主要な自社生産拠点に対するRBAのSAQの実施:25拠点・RBA基準による第三者監査の実施:3拠点(中国、ベトナム、マレーシア)サプライチェーン・重要仕入先向けのセルフチェック:60社・全仕入先向けのセルフチェック:575社・中国に生産拠点を持つ仕入先(注1)への人権に関する詳細なセルフチェック:69社・マレーシアに生産拠点を持つ仕入先(注2)への人権に関する詳細なセルフチェック:51社製品・サービス・「AI方針」策定(公表予定)・AIガバナンス委員会の設立救済メカニズム・日本以外の仕入先に対しても、2023年度より全エリアで通報を受け付ける体制を構築・JaCERの提供する「対話救済プラットフォーム」の運用を開始
(注)1.人権侵害リスクが高いと考えられる労働集約型業種の仕入先を選定2.人権侵害リスクが高いと考えられるマレーシア近隣国から外国人労働者を雇用している仕入先を選定
戦略 ②戦略当社グループの存在意義は「事業を通じて社会価値を創出し、社会の発展に貢献し続けること」です。これ を実現していくために、オムロンが注力すべきサステナビリティ重要課題を特定し、中長期戦略の中に組み込んで具体的な取組みと目標を設定して事業を通じて実行しています。「SF2030」では、事業とサステナビリティを統合し、社会価値と経済価値の両方を創出することで企業価値の最大化を目指します。詳細は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しています。 なお、自社領域、サプライチェーン領域におけるサステナビリティマネジメントの一環として、2024年1月に、企業の社会的責任を推進する企業同盟であるResponsible Business Alliance(以下、RBA)に加盟しました。今後、RBA加盟企業としてバリューチェーンにおける社会的責任を追求する取組みを進化させることで、強固なグローバルサプライチェーンを構築し、社会の持続的な発展とオムロンの持続的な成長を目指してまいります。
指標及び目標 ④指標及び目標・サステナビリティに関する指標及び目標は、以下に記載しています。 2030年度の目標        :「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」 2023年度の実績・2024年度の目標:「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」 ・サステナビリティ課題への取組みに対する社外からの評価 当社がこれまで継続してきた、事業を通じたサステナビリティ課題の解決への取組みが高く評価され、DJSIワールドを始め世界標準の様々なインデックスへの組み入れや表彰を受けています。 <第三者評価の推移> 2018年度2019年度2020年度2021年度2022年度2023年度Dow JonesSustainability IndicesDJSI-WorldDJSI-WorldDJSI-WorldDJSI-WorldDJSI-WorldDJSI-WorldS&P GlobalSustainability Award--Gold ClassSilver ClassTop 5%メンバー選定CDP(気候変動)BA-A-A-AA-EcoVadisSILVERGOLDPLATINUMGOLDPLATINUMPLATINUM ※社外からの評価の詳細については下記をご参照ください。 https://sustainability.omron.com/jp/evaluation/
人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略 ②戦略「SF2030」人財戦略ビジョン 「SF2030」の目標である、事業を通じた社会価値創出の原動力は、社員一人ひとりです。会社と社員が「選び・選ばれ」、「ともに成長する」新たな関係を構築していくことを前提に、企業理念の実践を通じて、社会的課題の解決を志す、スペシャリティを備えた多様な人財が集い、一人ひとりが主体性を持って能力を発揮する集団であり続けられる人財戦略をグローバルに実行していきます。 人的創造性の向上 人的資本を有効に活用して企業価値の向上につなげているかを定量的に測る指標として「人的創造性」を設定し、その向上に取り組んでいます。人的創造性とは、売上から変動費を差し引いた付加価値額を人件費で割ったものです。付加価値とは、当社グループが顧客や市場に向けて創り届けた価値の大きさ、人件費とは、価値創造の担い手である人財の価値の総和の大きさを指します。企業が適正な付加価値を得て、それを使って新たな価値の拡大再生産を行うことは、企業と社員の持続的成長の実現に不可欠です。私たちが成し遂げたいことは価値創造であり、分子の付加価値を伸ばすために分母である人財への投資をしっかりと行い、社員一人ひとりのポテンシャルを最大限発揮させることで、それ以上の付加価値を生み出していきます。 <人的創造性の考え方> 「構造改革期間」における取組み 2024年4月1日~2025年9月30日までの「構造改革期間」は、SF 1st Stageの戦略および目標値は取り下げ、変化の激しい事業環境に対しても耐性があり、かつ、「SF2030」で描く姿を実現する人財ポートフォリオの再構築を通じて、人財の能力転換を図ります。 主な取組み・人財ポートフォリオの再構築 今後の持続的な売上高・利益の成長を実現していくために、まず、国内約1,000名、海外約1,000名の合計約2,000名を削減し、グローバルで最適な人員・人件費構造を構築します。そのうえで、これから必要となる能力を持つ人財の獲得と既存人財に対する能力開発の強化を進めます。 ・人財の能力転換 当社グループでは、個人と組織が共に成長し続けることを目指して、経営戦略と連動した人財の能力転換に取り組んでいきます。 例えば、実践を通じた生成AI技術の習得のために、2023年度にスタートした生成AI活用プロジェクト「AIZAQ(アイザック)」を2024年度も継続します。本プロジェクトでは、データソリューションビジネスの推進やデジタルトランスフォーメーションによる生産性改善の強化のために、全社横断で入社1~2年目の若手から部長クラスの社員まで、役職や年齢に関係なく生成AI技術を学んでいます。本技術の活用に意欲のある社員と技術サポートのできる社員が連携し、業務の生産性改善テーマの活用検証を通じて、事業活動に直結する人財開発を行っています。その結果、本プロジェクトを通じて全社への展開を検討するテーマが出ています。商品開発に向けた膨大な顧客データ分析など一定の成果を上げており、今後も新しい改善テーマの活用検証を進めていきます。
人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標 ④指標と目標 人的創造性の向上の実現とダイバーシティ&インクルージョンに取り組みました。2023年度の目標と進捗は以下の通りです。 <人的創造性の向上とダイバーシティ&インクルージョンを加速する8つの取組みと進捗> (注)1.2024年4月20日時点の当社及び連結子会社集計値です。 2.TOGAとは、The OMRON Global Awardsの略称です。(詳細は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (参考)企業理念浸透への取組み」をご参照ください。) ・女性活躍における課題への取組み 当社グループでは、「次世代リーダーの育成による女性活躍の推進」を経営の重点戦略に位置付けて取り組んでいます。その結果、2024年4月現在、オムロングループ(国内)における女性役員は、6名(内訳:社外取締役1名、執行役員常務1名、執行役員2名、関係会社取締役社長1名、関係会社取締役1名)です。 グローバルでは、2022年度に16.6%であった女性管理職比率は2023年度には19.1%
(注)となり、着実に上昇していますが、各国・地域における取締役、監査役、執行役員およびグループの経営・事業を牽引する最重要ポジションに登用されている女性の現職者や後継候補者はグループ全体で不足しています。この課題を解決するため、2023年度から、グローバルの女性管理職を対象として、「ウィメン リーダーズ サークル(Women Leaders Circle)」をスタートしました。グループ最重要ポジションの後継者になるポテンシャルがある人財を発掘して育成し、女性リーダーの母集団を形成していくことを狙いとしています。また、女性同士が、エリア・事業部門を超えたネットワークを形成し、グローバルの女性経営者との対話を通してキャリアイメージを明確にしていくことで、チャレンジする意欲も醸成していきます。今後も継続して取り組み、各エリアや事業部門の要職に就く女性リーダーやその後継者となる人財をグローバルで充足させていきます。 また、女性管理職比率の向上に特に注力している国内では、入社3年後からの女性社員をターゲットとして、「オムロン ウィメン リーダーシップ(OMRON Women Leadership)」を2022年度からスタートしています。早期から選抜・育成することにより、女性管理職候補の母集団を持続的に形成・拡大していくことを狙いに、ライフイベントを考慮したキャリアビジョンの具体化や、マネジメントスキルの向上に取り組んでいます。この取組みを継続し、国内の女性管理職比率の向上を目指します。 女性のさらなる活躍を推進していくため、経営の重点戦略の1つとして、女性リーダーの拡充に向けて取組みを今後も強化していきます。
(注) 2024年4月20日時点の当社及び連結子会社集計値です。     <女性管理職の推移(グローバル/グループ国内) (注)各年度における集計値は翌年度4月20日時点の数値を記載 (参考)オムロンの健康経営 社会的課題を解決するには、何よりも働く社員一人ひとりの健康が経営の基盤になると考え、経営トップが健康経営宣言を行い、以下の3つの活動方針に沿って、健康経営を推進してきました。全社を挙げて構造改革プログラム「NEXT2025」に注力し、顧客価値の拡大を実現し、収益を伴った持続的な成長を目指すなか、その原動力となる社員の一人ひとりが健康で、かつ活力に満ち溢れ、ポテンシャルや専門性を発揮し続ける職場をつくっていくことがますます重要になっています。社員一人ひとりの健康の維持・増進と創造性・専門性の発揮を両立させ、個人と企業の持続的成長につなげていきます。①「イノベーションを起こす人と組織をつくる」ということ。前向きなチャレンジを促進する環境を整えて、仕事にやりがいや楽しさを感じられるようにします。②「心身が健康で、社員が自分の人生を楽しんでいる状態をつくる」ということ。社員に健康に配慮した生活を心がけてもらい、仕事だけでなく趣味なども積極的に楽しめるようにします。③「オムロンを卒業しても社会で活躍し続ける社員でいっぱいにする」ということ。健康を維持・向上できれば、将来にわたって活躍できるようになり、社会に貢献しながら充実した人生を送ることができます。 ※健康経営の取組み詳細については下記をご参照ください。https://sustainability.omron.com/jp/social/wellness-management/
事業等のリスク 3【事業等のリスク】
(1) グローバルな事業活動を支える統合リスクマネジメント 当社グループでは、統合リスクマネジメントというグループ共通のフレームワークでリスクマネジメントを行っています。経営・事業を取り巻く環境変化のスピードが上がり、不確実性が高くなる中で変化に迅速に対応するためには、リスクへの感度を上げ、リスクが顕在化する前に察知し、打ち手を講じていく必要があるためです。 現場だけでは対処できない環境変化から生じる問題を、現場と経営が力を合わせて解決する活きたリスクマネジメントを目指し、グローバルでPDCAサイクルを回しながら、当活動の質の向上を図っています。 「SF2030」を実現していくため、企業理念やルールを守りつつ、いかに効率的、効果的で迅速なリスク判断を現場ができる仕組みを構築するかという点も重要なテーマとして、取組みを進めています。
(2) 統合リスクマネジメントの仕組みと体制 統合リスクマネジメントの枠組みは、内部統制システムの下、グローバルリスクマネジメント・法務本部長(GRL長)を推進責任者とし、オムロングループルール(OGR)(注1)「オムロン統合リスクマネジメントルール」にまとめ、グループ経営における位置づけを明確にしています。また、リスクマネージャを本社機能部門、ビジネスカンパニー、海外の地域統括本社、国内外の各グループ会社で任命し(160名)、経営と現場が一体となってグローバルの活動を推進しています。  主な活動は次の3点です。・環境変化をタイムリーに把握して、関係者で共有し、適時に影響評価を行うこと・定期的に、グローバルにリスクを分析して重要リスクを洗い出し、対策をとること・リスクが顕在化し、危機が発生した場合は、即時に報告し危機対策を講じること <企業倫理リスクマネジメント委員会体制>  GRL長を委員長、主要なリスクマネージャを構成員とする企業倫理・リスクマネジメント委員会(原則年4回開催)においては、重要なリスクの発生状況、環境変化、リスク対策の状況について議論・共有するとともに、グループ全体のリスク評価を行っています。また、危機が発生した場合には、速やかに経営報告され、リスクのランクに応じて危機対策本部を通じて対応を行っています。これらリスクマネジメントの活動状況については、適宜、執行会議や取締役会に報告するとともに、内部監査部門による内部監査を受けています。 <統合リスクマネジメントのサイクル> (注1)当社グループでは、公正かつ透明性の高い経営を実現する経営基盤として、グループ共通の「オムロングループルール(OGR)」を制定しています。OGRは、リスクマネジメントの他、会計・資金、人財、情報セキュリティ、品質保証等の主な機能に対し制定されています。環境変化等を適宜・適切にルールへ反映するため、毎年見直しを行っています。 (3) グループ重要リスクとその分析 当社グループでは、「SF2030」において、「新たな社会・経済システムへの移行」に伴い生じる社会的課題を解決するため、事業ドメインにおける社会価値創出、事業とサステナビリティとの一体としての取組みを行っています。2024年4月から2025年9月については構造改革期間とし、構造改革プログラム「NEXT2025」を実行中です。これらを遂行する中で対処すべき重要な要素を、リスクと捉えています。 リスクのうち、当社グループを運営する上で、グループの存続を危うくするか、重大な社会的責任が生じうるリスク(Sランク)および重要なグループ目標の実現を阻害するリスク(Aランク)を「グループ重要リスク」に位置付け、対策の実行状況やリスク状況の変化をモニタリングしています。「グループ重要リスク」に対して適切な対策が講じられない場合、重大な社会的責任が生じたり、事業戦略の失敗につながり、結果的に企業価値が喪失する可能性があります。 <2023年度末時点のリスク評価> 2023年度末に実施した当社グループのリスク分析に基づくグループ重要リスクのテーマは下表の通りです。事業ポートフォリオや人員数・能力の最適化等「NEXT2025」の実行に伴うリスク、事業スピードの加速や収益性の改善をはかる中でのグループガバナンス・コンプライアンスリスク等については特に注視をしていきます。これらのリスクは、適切かつ充分な対策が取られなかった場合、長期ビジョン目標の実現、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があるため、投資家の皆様の判断にも重要な影響を及ぼす可能性がある事項と考えています。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ない又は重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月21日)現在において当社グループが判断したものです。 <事業等のリスクの全体像> <グループ重要リスクへの対応>①  事業ポートフォリオリスクシナリオ環境認識当社グループが解決すべき社会的課題に対する取組みの必要性は高まる一方で、足元では中国経済の成長鈍化やサプライチェーンの混乱など経済環境が悪化、今後もボラティリティが高い不透明な状況が続くことが見込まれます。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの各事業における活動エリアや製品展開に大きな影響があります。 ・制御機器事業における中華圏エリアでの事業展開 ・ヘルスケア事業における血圧計事業 ・社会システム事業におけるエネルギーソリューション事業影響成長業界・エリアの需要拡大に的確に応えていくことは、新たな社会価値創出、事業機会となります。一方、現在依存度の高い中華圏エリアや各事業で成長の牽引役となる事業・製品の事業環境が想定以上に悪化し、環境変化に対応するポートフォリオの最適化が図れなかった場合、売上減少等の業績低迷や、収益を伴った持続的成長が実現しないリスクがあります。対応体制『構造改革プログラム「NEXT2025」』のもと、欧州・米州への事業展開を加速する等、中国依存を低減する業界・エリアポートフォリオの構築に取り組みます。※『構造改革プログラム「NEXT2025」』の詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)構造改革「NEXT2025」」をご参照ください。 ②  地政学リスクシナリオ環境認識米中関係やロシア・ウクライナ情勢、中東紛争などを巡る各国・地域の政策により、グローバルビジネスの環境は複雑さを増しています。特に半導体等重要物資の安定供給や先端技術開発の促進、輸出入や投資への規制等、経済安全保障政策は、多国間枠組みの形成・活用を含め更に進展しています。今後、政治的対立や人権問題、紛争リスクの高まりによる各種措置の更なる拡大や各国での選挙に伴う政策転換の可能性もあり、これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・中国・アジア等の主要工場からグローバル市場への製品供給 ・米国等におけるロボット等 先端技術に対する投資や事業拡大 ・経済安全保障政策の対象製品に関わる顧客への販売、金融・交通等 社会インフラに関する事業の推進影響グローバルでのサプライチェーン再編等の動向は、新たな社会価値創出、事業機会となります。一方、市場変化への対応が十分でなかった場合、当社グループへの需要が減少し、また、新たな法規制への対応が適切に行われなかった場合には、輸出規制や制裁違反等が発生する可能性があります。その結果、売上減少・戦略の見直しや重大な行政罰、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。対応体制事業対応方針については、取締役会や執行会議等の経営会議体にて議論し、決定しています。法規制対応については、各主管部門が統括し、例えば、輸出規制はグローバルリスクマネジメント・法務本部が輸出管理全社委員会のもと、グローバルに安全保障取引管理を行っています。 ・関連OGR:統合リスクマネジメントルール・安全保障取引管理ルール取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。 ・地政学リスク影響を低減する中長期的な生産・研究開発等の体制検討と推進 ・グローバルの政治・経済情勢や法規制動向のモニタリング、経済制裁等に対する影響分析と対応[具体的なリスク対応例:ロシア・ウクライナ情勢] 安全保障取引管理について、グローバルに懸念のある取引を事前審査するプロセスを強化することにより、複雑化する各国の輸出規制や制裁に対する対応体制の整備を進めました。 ③  IT・情報セキュリティリスクシナリオ環境認識社会経済活動の急速なデジタル化は、データに基づく経営判断やAI・IoT機器を中心とした新たな製品・サービスの開発等 企業運営に変革をもたらしています。グローバルにデータ流通の基盤が整備されていく一方で、AIの悪用等によるサイバー攻撃や人財の流動化等に伴う技術情報漏えいのリスクはますます高まり、また、プライバシー保護や経済安全保障の観点から個人データや技術情報等、重要情報の取扱いや移転について各国で規制の強化も進んでいます。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・サプライチェーンも含むグローバルのシステムによる事業運営 ・新たな経営システムの構築を目的とした「コーポレートITシステムプロジェクト」 ・データソリューション事業での健康データの活用等「モノとサービス」での新規ビジネスモデルの推進影響医療におけるビッグデータ活用等の動向は、新たな社会価値創出、事業機会となります。一方、サイバー攻撃対策や技術情報の管理等の情報セキュリティ対応が十分でなかった場合、当社グループの事業活動や製品・サービス提供の停止および情報の漏えいといったセキュリティインシデントが発生する可能性があります。また、グローバルの個人データ規制について、特に国外移転対応が適切に行われなかった場合、法令違反が発生する可能性があります。その結果、売上減少や重大な行政罰、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。対応体制基本方針として「情報セキュリティ基本方針」を新たに制定し公表しています。施策については、統括担当取締役の監督のもと、情報セキュリティ、製品セキュリティ、個人情報管理の領域ごとに、各本社機能本部長が執行責任者として統制・管理しています。各領域を横断する課題については、統括担当取締役を議長とする「サイバーセキュリティ統合会議」を開催し、解決しています。さらに、経営レベルで推進の方向付けを行うために、社長を議長とする「情報セキュリティ戦略会議」にて優先課題と戦略を議論しています。実行面においても、サイバーセキュリティ統括担当役員として、グローバルビジネスプロセス&IT革新本部長を議長とし、全地域統括本社のIT責任者が参画する「情報セキュリティ推進会議」を通じて施策を推進・管理しています。また、個人データについては、グローバルリスクマネジメント・法務本部長の責任のもと、各国法令動向や当社グループの状況を把握し、法規制対応の強化を図っています。・関連OGR:IT統制ルール・情報セキュリティルール取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。 ・グローバル標準のフレームワークであるNIST-CSF(注1)に準拠した評価と対策の強化 ・外部専門機関を通じた包括的な脅威情報の収集とグループ内への対策の展開 ・インシデント対応オフィス(CSIRT)による事故発生時の迅速な報告と被害最小化に向けた対応 ・高リスクのサプライチェーンのセキュリティ確保のためリスク評価と対応の推進 ・情報リテラシー向上のための社員教育・サイバー攻撃訓練の実施 ・Webサイトの脆弱性診断と改善の実行 ・グローバルでの個人データ規制への対応体制構築[具体的なリスク対応例:有事を想定した対応体制・プロセスの進化] ランサムウエア危機管理手順の整備、経営層向けサイバー攻撃演習訓練、地域統括本社毎のインシデント対応訓練などの活動により、有事における対応力の向上を図りました。(注1)NIST-CSF:米国国立標準技術研究所(NIST)が2014年に発行したサイバーセキュリティフレームワーク(CST)。   汎用的かつ体系的 なフレームワークで、米国だけでなく世界各国が準拠を進めている。 ④  品質リスクシナリオ環境認識品質は企業に対する社会的信頼の基盤です。新技術を活用した新規性の高い製品・サービスにおいても、高い安全性や正確性の確保が求められ、AI利用や製品セキュリティに対する新たな法規制等も検討・制定が進んでいます。また、人の健康や環境負荷低減に対する社会的要請はますます高まり、有機フッ素化合物(PFAS)等をはじめとする化学物質の含有やリサイクル、表示等に関する規制が各国で厳格化しています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・不具合発生時に火災や事故、設備の停止等につながる制御機器やエネルギーソリューション製品の展開 ・様々な国の製品安全や化学物質、サイバーセキュリティ等の法規則が適用されるグローバル製品の展開 ・製造現場のデータ活用サービスi-BELT等「モノとサービス」を組み合わせたビジネスモデルの推進影響新たな技術や製品安全等の高い基準にグローバルで対応した品質の確保は、新たな社会価値創出、事業機会につながります。一方、製品やサービスの設計・検査の不備や、品質不具合発生時等の顧客対応や報告が十分でなかった場合、グローバルの法規制・規格等への準拠が適切に行われなかった場合には、当社グループ製品の大規模リコール、製品の生産・流通の停止等が生じる可能性があります。その結果、損失の発生や売上減少、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。対応体制社長を最高責任者とする品質保証体制を構築し、「品質第一」を基本とする「品質基本方針」のもと、グローバル購買・品質・物流本部が推進しています。重大な品質問題が発生した場合は、取締役会の監督のもと、迅速かつ適切に対応を行っています。 ・関連OGR:品質保証ルール、製品品質リスク管理ルール取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。 ・ISO9001等(ISO13485:医療機器産業、IATF16949:自動車産業)品質マネジメントシステム(QMS)の取得 ・サービス事業に適合したQMSの適用展開 ・安全リスクが高い技術(リチウムイオン電池、パワーデバイス等)に関する品質技術確立 ・製品セキュリティ体制強化(外部からの脆弱性情報収集と対応(PSIRT)・セキュリティ監視活動等) ・製品環境や安全関連の法規制・規格の動向の把握、影響評価を行う管理体制の強化 ・品質相談窓口の設置・運用、品質コンプライアンス研修・現場品質点検の実施 ⑤ 会計・税務リスクシナリオ環境認識適正な財務報告と税務コンプライアンスは企業活動の基本です。企業のグローバル化や取引のボーダーレス化が加速し、新たなビジネスモデルやサービスが生まれる中で、会計基準も高度化し税制も複雑化しています。また、各国間の協調・連携が進み企業に対する税の透明性に対する要請も高まっています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・グローバルでの顧客との取引・グループ間取引 ・「モノ」に加え「モノ」と「サービス」の組合せによる多様なサービス展開影響グローバルの会計基準への準拠と税務手続きに対する信頼の確保は、新たな社会価値創出、事業機会につながります。一方、新サービスや事業、構造改革等を行うに際して、資産が適切に管理されなかった場合や、会計処理が適切に行われなかった場合、また、各国の租税法や移転価格税制、関税法、および当局の執行動向に適切な対応が行えなかった場合、決算修正、多額の追徴や和解金の支払い、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。対応体制財務報告に係る内部統制の基本的枠組み、取締役会で承認した「税務方針」(注1)のもと、グローバル理財本部を中心に、会計・税務の適正性を担保するための体制・ルールを整備し、運用しています。・関連OGR:会計・資金ルール、不正統制ルール、J-SOX推進ルール、関税・通関ルール取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。 ・内部統制の自主点検強化とリスク兆候への重点監査 ・外部専門家等を活用した会計基準の定期的な情報収集と影響等の調査・対応 ・OECDの各種報告書や新しい国際課税ルールの整備状況などを踏まえた国際税務に係る方針の見直し ・現地法人と連携した各国・地域における税制や当局の執行状況の変化への対応 ・関税コンプライアンス体制およびモニタリングの強化(注1)「税務方針」については下記をご参照ください。https://sustainability.omron.com/jp/governance/tax/ ⑥  事業継続リスク(自然災害等)リスクシナリオ環境認識洪水・豪雨、巨大地震等の自然災害や感染症の発生により、社会が機能不全に陥る可能性がグローバルで継続しています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。・グローバルの様々な国や地域に存在する仕入先や生産拠点・緊急時においても継続が求められる社会インフラや人の健康管理に使用される製品・サービスの提供・防災・減災需要に対するエネルギーソリューションビジネスの展開影響企業に対する事業継続の要請や社会のレジリエンスを高める取組みは、新たな社会価値創出、事業機会となります。一方、予期できない災害等が発生した場合、社会インフラ・経済活動の大規模停止、自社工場の生産停止、重要仕入先からの長期にわたる部品供給停止等により、事業活動の一部停止や縮小等が生じる可能性があります。その結果、売上減少やブランド価値の棄損につながるリスクがあります。対応体制人身の安全、社会インフラの維持、復興への全面協力等を定めた基本方針のもと、各ビジネスカンパニーと本社機能部門とが連携し、生産、購買調達、物流、ITを含めた事業継続計画を整備しています。・関連OGR:統合リスクマネジメントルール・購買ルール取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。 ・有事を想定したシミュレーション・訓練 ・社員の安否確認システムの運用、リスクに応じた事業所での非常食や飲料水の備蓄対応 ・仕入先の生産地情報の一元管理、代替え生産拠点の評価体制整備 ・緊急時のエスカレーションルート・影響を把握する仕組みの整備 ⑦ 環境リスクシナリオ環境認識脱炭素・環境負荷低減の実現に向け、気候変動を「機会」と「リスク」の二側面で捉えた企業としての社会的責任の実践と更なる競争優位性の構築が求められています。また、企業価値評価・投資活動に反映させるため、企業の環境課題への取組みに対する開示要請は年々高まっており、内容の第三者保証を法規制化する動きも進んでいます。一方で、温暖化に起因する洪水や干ばつ等の頻発化により生じる食料・水不足、プラスチック問題、生態系の破壊等は地球レベルでの社会課題となっており、グローバル各国でカーボンニュートラルに向けた政策が加速する中、企業に対する温室効果ガス排出量の削減やトレーサビリティの確保等の要請も拡大しています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・制御機器事業における生産性とエネルギー効率を高める生産現場オートメーションの実現 ・社会システム事業におけるエネルギー制御技術の進化による再生可能エネルギーの普及 ・電子部品事業におけるカーボンフットプリント削減に繋がる部品の開発・提供 ・「循環型社会」実現に向けたグローバル全生産拠点での廃棄物の削減影響脱炭素に貢献する製品やサービスに対するニーズの高まりは、新たな社会価値の創出と事業機会となります。一方、多くの企業が社会課題の解決に挑む中、戦略と実行の成否は事業競争力に直結します。また、販促活動においていわゆるグリーンウォッシングといわれる不適切な開示を行った場合には、社会的信用が失われ、その結果、取引停止・製品の開発中止や戦略の見直し、ブランド価値の棄損につながる可能性があります。対応体制環境課題への対応については、取締役会決議により制定されたオムロン環境方針に基づいた活動を行っています。具体的な執行体制としては、社長CEOから権限委譲されたサステナビリティ推進担当役員の責任のもと、グローバルコーポレートコミュニケーション&エンゲージメント本部が中心となって取組みを推進し、自社領域はグローバル人財総務本部長、サプライチェーン領域はグローバル購買・品質・物流本部長、事業戦略領域は各ビジネスカンパニー長がそれぞれ責任を持って対応しています。・関連OGR:環境経営ルール、購買ルール取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。 ・Scope1・2、Scope3カテゴリー11ごとに目標を設定した温室効果ガスの削減の加速 ・回収・リサイクルの拡大、循環型の原材料調達、再資源化率の最大化等による循環経済への移行 ・TCFD提言に沿った情報を含む環境課題にかかる情報開示※環境リスクへの対応の詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組  (1)オムロンのサステナビリティの考え方及び取組み、(2)気候変動への対応」をご参照ください。 ⑧ 人権リスクシナリオ環境認識持続可能な社会の実現に向け、人権課題に対して、自社だけでなくバリューチェーン全体を通じて、企業が責任を果たすことが求められています。一方で、強制労働、児童労働、低賃金や未払い、長時間労働、安全や衛生が不十分な労働環境、ハラスメント等の是正は社会課題となっており、デューディリジェンスによるサプライチェーンの可視化や人権侵害懸念国・地域からの輸入禁止等により、人権の尊重を法規制で担保する取組みが進んでいます。また、AIの活用等技術革新による新たな人権課題も生じています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・中国・アジアを含めグローバルの事業拠点とサプライチェーン ・AIを活用した製品・サービスの研究開発・提供影響人権に配慮したバリューチェーンの構築やAIの活用は、新たな社会価値の創出、事業機会となります。一方、バリューチェーン上の人権課題に適切な対応を行わなかった場合やAIに対する法規制等に準拠せず製品やサービスを通じて差別などの人権問題を発生させた場合には、社会的信用が失われ、その結果、取引停止・製品の開発中止や戦略の見直し、ブランド価値の棄損につながる可能性があります。対応体制人権課題への対応については、取締役会決議により制定されたオムロン人権方針に基づいた活動を行っています。具体的な執行体制としては、社長CEOから権限委譲されたサステナビリティ推進担当役員の責任のもと、グローバルコーポレートコミュニケーション&エンゲージメント本部が中心となって取組みを推進し、自社領域はグローバル人財総務本部長、サプライチェーン領域はグローバル購買・品質・物流本部長、事業戦略領域は各ビジネスカンパニー長、AIを含むテクノロジーの倫理的な活用については技術・知財本部長、救済メカニズムについてはグローバルリスクマネジメント・法務本部長がそれぞれ責任を持って対応しています。・関連OGR: HRMルール、労働安全衛生管理ルール、購買ルール取組具体的には、企業の人権尊重責任を果たすために、国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」に沿って、以下を含む対策を推進しています。 ・RBA(注1)アセスメントツールを活用したリスク評価 ・仕入先に対するサステナブル調達ガイドラインの提示・遵守状況確認 ・AIに関する情報収集およびAIを事業で活用するための社内ルールの整備 ・グローバルでの人権救済メカニズムの運用(注1)RBA:Responsible Business Allianceの略。電子業界を中心とするグローバルなCSRアライアンス。※人権リスクへの対応の詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)オムロンのサステナビリティの考え方及び取組み、(4)人権尊重に関する取組み」をご参照ください。 ⑨  人財・労務リスクシナリオ環境認識グローバルで人財の流動化が進むなか、IT人財をはじめ先端技術を保有する希少な人財の獲得競争がこれまで以上に激化しています。また、世界的なインフレや人手不足を契機として、賃金水準はグローバルで上昇傾向にあります。このような環境では、人財から選ばれる人的資本経営を実行し、従業員のエンゲージメントを高めることが重要になってきます。加えて、近年は社会から人的資本の情報開示が求められるようになっています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・既存人財に対する更なる能力開発と、必要な能力を有する人財の獲得 ・ダイバーシティ&インクルージョンの加速影響スペシャリティを備えた多様な人財が集い、一人ひとりが主体性を持って能力を発揮し続ける人財づくり・環境づくりは企業価値向上の原動力となります。一方、構造改革期間での人事施策の効果が十分でない場合は、新たな人財の採用が困難になるだけでなく、希少なスキルや経験を持つ従業員の流出や労務トラブルにつながる可能性があります。加えて、人的資本の情報開示が不適切な場合、投資家からの信頼低下等により、ブランド価値の毀損にもつながる可能性があります。対応体制重要な人財戦略については、取締役会・執行会議にて議論し、決定しています。CHRO(最高人事責任者)の下、グローバル人財総務本部が中心となり施策を実行しています。 ・関連OGR:HRMルール取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。 ・人財ポートフォリオの再構築 ・執行役員・経営基幹職のマネジメント適正評価、登用・配置 ・能力転換に向けた人財への投資 ・社会課題解決の成果を分かち合う取組み・制度(中期連動株式報酬制度等) ・企業理念を全社員に浸透させ、共感と共鳴の拡大を促す取組み「TOGA」の実行※人財・労務リスクへの対応の詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組  (1)オムロンのサステナビリティの考え方及び取組み、(3)人的資本に関する取組み」をご参照ください。 ⑩  知的財産リスクシナリオ環境認識社会課題を解決しながら持続的に企業価値を向上するためには、強みのある知的財産・無形資産を形成した上で価値創造ストーリーと連結することが必要不可欠となり、また、技術開発やビジネスモデルの構築においてオープンイノベーションやアライアンスが加速しています。一方で、知的財産を巡る企業や国家間の競争や対立も激化するとともに、スタートアップ企業との事業連携における公正取引上の課題も指摘されています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。・ロボティクス、センシング、パワエレ、AI・データ解析等の注力する技術領域・データヘルスケア、食生産のオートメーション、製造現場のDX支援等の新規事業創造影響知的財産・無形資産への投資を促進し競争力の源泉とする動向は、新たな社会価値創出、事業機会となります。一方、その取得や保護が十分でなかった場合、技術・ノウハウの流出やブランドの模倣等が発生し、事業競争力を喪失する可能性があります。また、特許等の侵害や不正使用に関する紛争が発生した場合、当社グループの製品・サービスの提供停止や巨額の損害賠償請求・ロイヤリティの支払い等が生じる可能性があります。その結果、損失の発生や売上減少、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。対応体制技術・知財本部を主管として、基本方針に基づく知的財産活動を実行しています。また、知的財産戦略については定期的に取締役会にて報告・議論されています。 ・関連OGR:知財管理ルール取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。 ・IPランドスケープを活用して研究テーマの方向性決定や協業先選定の確度を高める取組み ・事業や研究開発と連動させた知的財産戦略を策定・実行し、強みのある知的財産権を蓄積 ・研究開発および設計にあたっての第三者の知的財産権調査 ・第三者の当社グループへの知的財産権の侵害に対する分析・評価と権利行使の強化 ・オンライン取引も含む模倣品摘発活動、悪意を持った当社ブランド名と類似した商標権取得の阻止 ⑪  M&A・投資リスクシナリオ環境認識社会課題を解決する手段として、テクノロジーの進化が求められる中、技術力のある企業とのアライアンス、M&A、出資を通じたイノベーションの加速が期待されています。一方で、投資先の業績・評価の変動に加え、経済安全保障政策による投資規制やIT等新たな分野における独占禁止法の運用強化等の動きもあります。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・ポートフォリオマネジメントのもとアライアンスや事業売却も含むM&A・投資の推進 ・新規事業の創出等のための、オムロンが捉える社会的課題に共感・共鳴しあえるパートナーとの共創影響戦略的なM&A・投資を通じた新たな経営資源の獲得は、社会価値創出、事業機会となります。一方、計画やデューディリジェンスが不十分であったり、PMI(Post Merger Integration)やM&A・投資先に対するガバナンスが適切に行われなかった場合には、想定したシナジー効果や提携が計画通り進まない可能性があります。その結果、多額の減損や計画の大幅な見直しにつながるリスクがあります。対応体制M&A・投資の方針と実行は、投資規律のもと、経営ルールに定める責任権限に基づき取締役会等の経営会議体にて議論・決定し、案件ごとに、ビジネスカンパニーと本社部門および外部専門家から構成されるプロジェクトチームにより推進しています。 ・関連OGR:経営ルール取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。 ・事業戦略に基づいたM&A・投資候補の探索・評価 ・対象企業の財務内容や契約内容の確認等の詳細な事前審査・デューディリジェンス ・取締役会における、買収や出資後の経済効果の具体的目標進捗のレビュー(少なくとも年に1回)[具体的なリスクへの対応例:上場子会社に対する監視・監督] 出資先であるJMDC社に対してTOBを実施し、23年10月に連結子会社化しました。同社の戦略・事業計画や進捗と課題について、当社取締役会にて監視・監督を行い、同社の持続的成長を実現する体制を構築します。 ⑫  グループガバナンス・コンプライアンスリスクシナリオ環境認識気候変動や高齢化等の社会課題に対する取組みはグローバルで加速し、企業の果たす役割が重要になる中、公正な取引に対する社会的要請も益々高まっています。国際機関や各国政府により反競争法的行為や贈収賄防止等に対する法規制は厳格化するとともに、ITやAI等技術の進化やアライアンス等によるイノベーションの推進等に対応した規制の検討や運用も進んでいます。また、一部の新興国、地域においては法による統治機能が脆弱であったり、政情が不安定であることから、汚職や腐敗等が社会問題化する場合があります。日本では、昨今の円安やエネルギー価格高騰等の影響から、下請事業者に対する保護要請が高まっています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。 ・各国政府の許認可を含む製品・サービスのグローバル展開 ・様々なビジネスパートナーとの共創による新たな製品やビジネスモデルの開発影響グローバルな需要拡大に的確に捉えること、企業のイノベーションに対する期待は、新たな社会価値創出、事業機会となります。一方、事業スピードの加速や収益性の改善が求められ、各地域やグループ会社における事業運営の自立化も進む中、ガバナンス不全や社内管理の不備により、公正な取引や会計などに関する法規制・コンプライアンス違反が発生した場合には、重大な行政罰、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。対応体制企業倫理・コンプライアンスを含む内部統制としての対応方針は、取締役会で議論し決定しています。「オムロングループマネジメントポリシー」のもと、OGRに基づくグループ会社におけるガバナンス体制の構築と運用、企業倫理リスクマネジメント委員会による活動の展開を行っています。 ・関連OGR:法人運営ルール、倫理行動ルール、内部監査ルール、購買ルール等取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。 ・各機能主管部門におけるグローバルでの牽制とモニタリング ・地域統括会社毎のリスクマネジメントにより、エリア特性に応じた重要リスクへの対応 ・毎年10月のグローバル企業倫理月間等による定期的なコンプライアンス教育 ・グローバル内部通報制度の運用 ・リスクアプローチに基づく内部監査と改善指導 ・購買統括部門における対象事業所に対するモニタリング・下請法研修
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 事業環境、経営成績等の状況・分析・検討①当社グループの経営成績の実績及び見通し<2023年度実績> 当期(2023年度)の当社グループの売上高は、前期比で減少しました。血圧計等の健康機器需要が中国や欧州を中心に回復したヘルスケア事業や、拡大する再生可能エネルギー需要を捉えた社会システム事業は好調に推移しましたが、制御機器事業において、グローバルで製造業における設備投資需要の低迷が継続したことに加え、販売代理店における在庫調整の影響を受けたことにより、前期比で大きく減少しました。また、電子部品事業においても、民生業界向けの需要低迷の継続により前期比で大きく減少しました。 売上総利益率は、価格適正化や変動費コストダウンの取組みの成果はあったものの、事業構成比変動影響や制御機器事業における商品の構成比変動、滞留在庫に対する評価損の計上による付加価値率の低下の影響が大きく、前期比で低下しました。 販売費及び一般管理費については下期以降、固定費の生産性改善取組みを進めたものの、インフレによる人件費増や一部の厳選投資・全社のシステム投資等を進めた結果、通期では増加しました。以上により営業利益については、前期比で大きく減少しました。 当社株主に帰属する当期純利益は、営業利益の減少に加え、株式会社JMDC(以下、JMDC社)の株式について追加取得時点の市場価格にて再評価を行ったことによる損失等(120億円)を計上したことなどの影響もあり、81億円と前期比で大きく減少しました。 <2024年度見通し> 当社グループにおける次期(2024年度)の事業環境は、グローバルでのインフレや、欧州・ロシア、中東情勢など、地政学リスクが継続し、不透明な状況が続くと見通します。 当社グループが事業活動を展開する事業領域においては、制御機器事業・電子部品事業では下期から緩やかな需要回復を見込んでいます。一方で、ヘルスケア事業は堅調な市場成長を見通しており、社会システム事業も好調な事業環境が継続すると見ています。  このような中、当社グループでは、2024年2月26日に公表、着手した構造改革プログラム「NEXT2025」において、収益成長基盤の再構築に取り組むことで、売上高と営業利益は増収増益を見通します。一方で、2,000人規模の人員削減による約280億円の一時的な費用を当見通しに含めているため、税引前当期純利益については減益となる見込みです。 <売上高・営業利益・売上総利益率の推移> <2024年度の経営方針と重点取組み> 次期は、「All for creating customer value~すべてのアクションを顧客にとっての価値の創出に集中させ、収益・成長基盤を再構築する」を全社方針とし、構造改革プログラム「NEXT2025」の完遂に向けた取組みを加速させます。この取組みのもと、次期は、売上高8,250億円(当期比+0.8%)、売上総利益率44.7%(同+2.4ポイント)、営業利益490億円(同+42.7%)の増収増益を目指します。  また、2022年度に掲げた非財務目標については、構造改革プログラム「NEXT2025」開始に伴い2024年度の目標を変更して取組みます。  <財務目標> <非財務目標> (注)1 非財務目標に記載されている数値は、2022年度に設定したSF 1st Stageの当初設定目標 2「カーボンニュートラルの実現」、「デジタル化社会の実現」、「健康寿命の延伸」に繋がる注力事業の売上高 3 GHG:温室効果ガス 4 リージョン:米州、欧州、アジア、中華圏、韓国、日本 5 2024年4月20日時点の当社及び連結子会社集計値 6 人員数・能力の最適化完了後目標設定予定。 7 非財務目標の⑧から⑩は、社員投票で決定した目標 8 *はJMDC社を含めた数値   <(参考)サステナビリティ目標と進捗> (注)1 エンゲージメントサーベイ「VOICE」は2年に一度実施しており、2022年度の調査結果を2023年度の実績として記載 2 Scope1・2: 自社領域から直接的・間接的に排出される温室効果ガス 3 Scope3カテゴリー11: 自社のバリューチェーンからの温室効果ガスの排出のうち製造・販売した製品・サービス等の使用 に伴う排出 4 2023年4月3日に出資完了したオムロンキリンテクノシステムズ株式会社を含む4月20日時点の当社および連結子会社集計値 2023年3月31日時点の当社および連結子会社について集計した女性管理職比率は16.8% 5 JaCER:一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構 6 2024年4月20日時点の当社及び連結子会社集計値 7 CFP:カーボンフットプリント。提供する商品やサービスにおいて、原材料調達から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル 全体における環境負荷をCO2排出量に換算して定量的に算出したもの 8 *はJMDC社を含めた数値 9 以下のサステナビリティ目標に対する2023年度の実績は、第三者機関による限定的保証業務を受け、今年度発行の統合レポートに掲載する予定です。 ・海外コアポジション現地化率 ・日本国内の障がい者雇用率 10 以下のサステナビリティ目標に対する2023年度の実績は、オムロンコーポレートサイトに掲載し、ビューローベリタス ジャパン株式会社による限定的保証業務により第三者保証等を実施中であり、2024年6月中に完了する見込みです。 ・温室効果ガス排出量(Scope1・2、およびScope3カテゴリ1,2,3) ・環境貢献量 11 上記限定的保証業務は、いずれも国際監査・保証基準審議会の国際保証業務基準(ISAE)3000「過去財務情報の監査又は レビュー以外の保証業務」に準拠した業務です。 ②各事業セグメントの実績及び見通し<「SF2030」における価値創造の取組み> 制御機器事業では、事業ビジョン「オートメーションで人、産業、地球の豊かな未来を創造する」を設定しました。オートメーションを通じ豊かな医・食・住環境を支える持続的な産業の発展と、働く人々の幸せ、そして地球環境の維持との両立を目指しています。制御機器事業は、事業ビジョンの設定において、今後10年で直面するであろう社会の変化を想定しました。それは、目まぐるしく世界が変化する中で、さまざまな社会的課題が浮き彫りになる時代だと考えています。このような市場背景の中で、制御機器事業が解決すべき社会的課題を、「働く人」と「産業の高度化」の二つの側面で捉えました。 「働く人」とは、ミレニアル世代やZ世代に代表される価値観の変化や技術の進化に伴う働く人のマインドの変化、そして働く人にとっての労働機会の変化です。そして、「産業の高度化」とは、次々と生まれる先進技術により2次産業でのモノづくりの革新だけでなく、1次産業や3次産業にまで広がる大きな変革です。制御機器事業が取り組むべき社会的課題は、制御機器事業が強みとするオートメーションにより、働くすべての人々の幸せと産業の高度化の両立を実現し、さらに社会的要請でもある地球環境の保全にも貢献していくことです。制御機器事業が目指すのは、持続可能な産業の進化により、世界中の人々が共通して求める医・食・住環境が充実した社会です。これは、長年に渡りモノづくりを源流で支えてきたオムロンだからこそ可能なチャレンジであり、事業ビジョンには、このような思いを込めました。 その実現に向け2016年に提唱した独自のモノづくりコンセプト、「i-Automation!」を進化させ、業界随一の幅広い制御機器の品揃えと技術・ソリューションで社会的課題を解決するイノベーションを量産し、持続可能な社会を支えるモノづくりの高度化に貢献していきます。 <2023年度の業績と2024年度の見通し>2023年度の業績売上高の状況 製造業における設備投資需要は、グローバルで年間を通して低調に推移しました。特に、EV向け二次電池や半導体関連の投資延期・縮小の影響を大きく受けました。また、課題となっていた販売代理店における在庫については減少傾向にあるものの、引き続き高水準で推移しました。これらの結果、売上高は前期比で大きく減少しました。営業利益の状況 売上高の減少に加え、売上商品構成の変化や滞留在庫に対する評価損の計上などによる売上総利益率の低下により、営業利益は前期比で大きく減少しました。 2024年度の見通し売上高の見通し 半導体関連の投資需要は第3四半期以降、日本、韓国等を中心に回復を見通すものの、他業界における投資の需要回復は緩やかなものと想定しています。また、販売代理店において高水準で推移している在庫については、上期中には概ね正常化すると見ています。これらの状況から、次期の売上高は当期比で減少を見込みます営業利益の見通し 売上高は当期を下回るものの、構造改革を着実に実行し、売上総利益率の改善、固定費の適正化を進めることで、次期の営業利益は当期比で増加を見込みます。 <売上高・営業利益・売上総利益率の推移>                <社会価値創出のKPIの進捗>   (注)経営管理区分の見直しにより、2022年度より、IABの一部をDMBに含めて開示しています。   これに伴い2021年度を新管理区分に組み替えて表示しています。 <「SF2030」における価値創造の取組み> ヘルスケア事業では、家庭で測定した血圧が人々の健康に役立つという信念のもと、その普及に取り組んできました。今では、高血圧治療の現場で家庭で測った血圧データが活用されるようになり、高血圧患者の降圧コントロールにも成果が見られます。しかし、高齢化に伴い高血圧患者はグローバルに増え、高血圧に起因する脳・心血管疾患の発症も増加しています。加えて、新興国を中心に増え続ける呼吸器疾患患者、日常生活に大きな影響を与える膝や腰、肩の慢性的な痛み。これらは人々のQOLを著しく低下させてしまいます。 「SF2030」のビジョン「Going for ZERO 〜予防医療で世界を健康に〜」には、世界中の一人ひとりが健康ですこやかに生活できる社会を、オムロンの手で切り拓いていく、という強い意志を込めました。 これまで培ってきた技術と知見を活用し、「循環器」「呼吸器」「ペインマネジメント」領域において、脳卒中や心不全などの「脳・心血管疾患の発症ゼロ」、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの「呼吸器疾患の増悪ゼロ」、膝痛や腰痛などの「慢性痛による日常生活の制限ゼロ」の3つのゼロにチャレンジします。 そして、病気にならない、病気を重症化させないための予防医療という新しい価値を提案し、「健康であり続けたい」という世界中の人々の願いをかなえます。 2021年、グローバルでの家庭用血圧計の累計販売台数は3億台を突破しました。しかし、世界を見渡すと、まだ普及率は低く、市場規模は2020年の6,100万台から2024年には、8,700万台に拡大するとされています。中でも、今後ますます市場の拡大が見込まれる中国・インドに注力し、基盤事業を強化します。 <2023年度の業績と2024年度の見通し>2023年度の業績売上高の状況 欧州などの一部地域で主力製品である血圧計の需要が好調に推移しました。また、中国では肺炎など呼吸器疾患の増加により、ネブライザに対する需要が大きく増加しました。これらの結果に加え、円安による為替影響もあり、売上高は前期比で増加しました。営業利益の状況 売上高の増加に加え、物流費や部材費のコストダウンにより、営業利益は前期比で大きく増加しました。 2024年度の見通し売上高の見通し グローバルで慢性疾患患者数の増加傾向が継続する中、血圧計等の健康機器の需要は増加すると見ています。このような中、グローバルで拡大するオンラインチャネルでの販売強化に加え、新興国における需要拡大を捉えてまいります。特に、日本、欧米、中国での家庭心電計の販売拡大や、各エリアの現地ニーズを捉えた商品展開の強化により、次期の売上高は当期比で増加を見込みます。営業利益の見通し 売上高の増加に加え、慎重な固定費運用や、売上カテゴリ構成の変化に伴う利益率の改善、物流費のコストダウンにより、次期の営業利益は当期比で増加を見込みます。 <売上高・営業利益・売上総利益率の推移>                <社会価値創出のKPIの進捗>    <「SF2030」における価値創造の取組み> 2030年に向かうこれからは、地球温暖化を起因とした自然災害の多発や、少子高齢化に伴う労働人口の不足など、暮らしの安心・安全・快適への障害となる、新たな社会的課題が顕在化する時代です。そして、そのような時代を生きる人々の価値観も多様化していきます。社会システム事業は、顧客のニーズに応えることに加え、顕在化する社会的課題を踏まえ、社会システムのあり方を考え、その答えを導き出してまいります。そして、その答えに共感していただいたステークホルダーの皆様とともに、 「次世代の社会システム」をつくっていく。この一連のプロセスと想いを「SF2030」の事業ビジョンの「Design」に込めました。社会システム事業は、暮らしをよくする“ソーシャルグッド”を生み出しながら人々の暮らしをより良くし、笑顔溢れる明るい未来を実現します。 「SF2030」においてオムロンが捉えた解決すべき社会的課題は、「カーボンニュートラルの実現」と「デジタル化社会の実現」です。CO2総排出量の増加や気候変動の加速、少子高齢化の加速による労働力不足といった社会的課題は深刻化し、社会生活にもさまざまな不都合や不安が生じます。また、企業各社では事業運営の効率化や省力化の進展と同時に、事業継続や環境配慮への対応が求められるなど、経営課題は複雑化していきます。これからは、既存の機器やサービス提供による現場課題の解決だけではなく、お客様の経営課題の解決に、ともに取り組むことが必要です。これからの安心・安全・快適な社会とは何か?オムロン自身が将来像を描き、社会システム事業で培ってきたノウハウを活かしたソーシャルオートメーションで、次世代の社会システムの実現を目指します。 <2023年度の業績と2024年度の見通し>2023年度の業績売上高の状況 エネルギーソリューション事業は、再生可能エネルギーの自家消費ニーズの高まりや補助金制度の利用、産業・商業領域でのカーボンニュートラルに向けた取組み加速による投資拡大を受け、蓄電システムなどが好調に推移しました。また、駅務システム事業は、旅客者数の回復と運賃改定による鉄道各社の好調な業績を背景に、設備投資需要が好調に推移しました。これらの結果、売上高は前期比で大きく増加しました。営業利益の状況 売上高の増加により営業利益は前期比で大きく増加しました。 2024年度の見通し売上高の見通し エネルギーソリューション事業では、エネルギー価格の高騰やカーボンニュートラルに向けた取り組みが継続し、住宅・産業領域での再生可能エネルギーに対する需要が堅調に推移すると見ています。駅務システム事業では、顧客の設備投資が引き続き堅調に推移すると見ています。以上より、次期の売上高は当期比で増加を見込みます。営業利益の見通し 売上高の増加や生産性向上により、次期の営業利益は当期比で増加を見込みます。 <売上高・営業利益・売上総利益率の推移>                <社会価値創出のKPIの進捗>   <「SF2030」における価値創造の取組み> 電子部品事業は、「SF2030」において、3つのトランスフォーメーションを実現していきます。 1つ目は、事業のトランスフォーメーションです。オムロンの注力ドメインの一つとして、「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会」の社会的課題を解決する事業を目指します。コア技術と多彩な機能の組み合わせで製品の価値を向上させ、お客様が必要な機能をデバイス&モジュールを軸としたソリューションとして提供し、社会課題の解決に取り組んでいきます。コアとなる“繋ぐ・切る”技術は、創業以来、社会・お客様に提供し続けているリレー、スイッチ、コネクター、センサーなどのデバイス&モジュールの高機能化と品質向上で磨き続けてきた製品に流れる電気を繋ぐ・切る(オン・オフする)機能や、センシングする機能です。これらで、「新エネルギーと高速通信の普及」に貢献する新たな社会価値を創出していきます。 2つ目は、注力領域のシフトです。コア技術を軸とした事業の強みが最大限発揮でき、さらなる成長機会が見込まれる4つの事業領域にフォーカスしていきます。注力領域は、DCドライブ機器、DCインフラ機器、高周波機器、遠隔/VR機器です。DCドライブ機器、DCインフラ機器においては、環境負荷対応により電源の直流化・高容量化、インフラの電動化が進んでいきます。製品の普及促進に向けて課題となるのが、感電や発火を防ぐための安全対策です。高周波機器、遠隔/VR機器においては、急速なデジタルシフトで高速通信・データの大容量化を実現する技術・デバイスが必要となります。これら課題解決の根幹を、我々の“繋ぐ・切る”技術で実現します。 3つ目は、提供価値のシフトです。これまでの価値に加えて、「グリーン・デジタル・スピード」を軸とした新たな価値を加えていきます。脱炭素社会の実現に貢献するデバイス群の創出、デジタル価値の提供、営業・開発・生産が一体となり、社会変化に柔軟かつタイムリーに対応するコンカレント活動などにより提供価値スピードを加速していきます。 <2023年度の業績と2024年度の見通し>2022年度の業績売上高の状況 民生業界向け部品の需要は、顧客の投資抑制や生産活動が停滞したことに加え、顧客での在庫調整の影響を受け、米州、中国を中心に大きく減少しました。自動車向け部品の需要は、下期に一部市場で自動車生産台数の増加は見られたものの、総じて低調に推移しました。これらの結果、売上高は前期比で大きく減少しました。営業利益の状況 売上高の減少などにより、営業利益は前期比で大きく減少しました。 2024年度の見通し売上高の見通し 半導体関連業界向けの需要は緩やかに回復すると想定するものの、民生業界向けの需要は、顧客の在庫調整が続き、正常化は第3四半期以降になると想定することから低調に推移すると見ています。以上により、次期の売上高は当期比で減少を見込みます。営業利益の見通し 売上高は減少を見込むものの、価格適正化や固定費削減などの事業構造改革の実行により、次期の営業利益は当期比で増加を見込みます。 <売上高・営業利益・売上総利益率の推移>                <社会価値創出のKPIの進捗>   (注)経営管理区分の見直しにより、2022年度より、IABの一部をDMBに含めて開示しています。   これに伴い2021年度を新管理区分に組み替えて表示しています。 <「SF2030」における価値創造の取組み> データソリューション事業本部は、オムロングループ全体をモノづくりからデータを活用したソリューションビジネスに進化させ、新たな成長ステージへ先導します。オムロンが長期ビジョンSF2030で掲げる3つの社会的課題「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会の実現」「健康寿命の延伸」を解決するためには、データの活用が重要です。2023年10月16日にグループ会社となった株式会社JMDC(以下、JMDC社)との協業により、ヘルスケアドメインにおける拡張に留まらず、オムロングループのデバイスやコンポーネントから得られる膨大な現場データと、JMDC社のデータマネジメント力、ソリューション開発力を組み合わせることで、オムロンのビジネスモデルを進化させるとともに、社会的課題の解決につながる次の成長事業を創造します  データソリューション事業には、当社が2023年10月16日に連結子会社化したJMDC社の、同日以降の財務数値を含んでいます。 <2023年度の業績と2024年度の見通し>2023年度の業績売上高の状況 JMDC社における契約健康保険組合数、データ利活用先である製薬企業および保険会社との取引量、さらに遠隔読影サービスを利用する医療機関数などが引き続き拡大し、売上高は堅調に推移しました。営業利益の状況 売上高の増加により、営業利益は堅調に推移しました。 2024年度の見通し売上高の見通し JMDC社の事業において、製薬企業中心に医療データ利活用の動きが引き続き拡大すると見込んでいます。また個人の健康、予防意識の高まりを受け、保険者、生活者向けサービスの需要も拡大が続くと見ています。加えて、次期の売上高は、JMDC社の通期売上高が当事業に寄与するため、当期比で大きく増加すると見込みます。営業利益の見通し 売上高増加に伴い、次期の営業利益は当期比で増加を見込みます。なお、当セグメントには新たなデータサービス創出に向けた成長投資も織り込んでいます。(JMDC社の財務数値に加え、JMDC社の連結子会社化によって識別した無形資産の償却費、オムロンが進めるデータソリューション事業に関する財務数値を当セグメントに含めています。) <売上高・営業利益・売上総利益率の推移>
(2) 財政状態、キャッシュ・フローの状況・分析・検討①財政状態 当期(2023年度)末の資産の部は、JMDC社の株式の追加取得などにより、前連結会計年度末に比べ3,566億円増加して13,547億円となりました。また、負債の部は、長期借入金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ1,368億円増加の4,037億円となりました。純資産の部は、JMDC社の株式の追加取得に伴う非支配持分の増加などにより、前連結会計年度末に比べ2,198億円増加し9,510億円となりました。株主資本比率は58.1%となったものの、強固な財務基盤を維持しています。 資金流動性については、当期末現在の手元現預金を1,431億円保有していることに加えて、金融機関との間で300億円のコミットメントライン契約を維持しており、高い水準を維持しています。また、今後の成長投資資金の確保に備え、格付機関から長期発行体格付として高格付を維持するとともに、グローバルで金融機関との良好な関係を維持することで、資金調達力を確保してまいります。 2023年3月末2024年3月末増減資産合計(資産の部合計)9,982 億円13,547億円+3,566億円負債の部合計2,669 億円4,037億円+1,368億円株主資本7,285 億円7,867億円+582億円非支配持分28 億円1,643億円+1,616億円純資産の部合計7,312 億円9,510億円+2,198億円負債及び純資産合計9,982 億円13,547億円+3,566億円  なお、当期(2023年度)のROE(株主資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)は、当社グループの資本コスト(当社推定値8%)を大きく下回る水準となりました。さらなる企業価値向上のためには、蓄積されたキャッシュと今後生み出すキャッシュを既存事業の強化と新たな成長機会に再投資し、成長を加速することが必要と認識しています。引き続き、経営資本の適正配分により、将来キャッシュ・フローの創出能力と資本効率を高めて企業価値向上を実現し、株主の皆さまの期待に応えてまいります。   <ROIC>                    <ROE>     (注)車載事業売却影響除くROIC、ROEは、当期純利益から車載事業売却益を控除して計算したものです。   <株主資本、株主資本比率> ②キャッシュ・フローの状況キャッシュアロケーションの方針と推移 当社グループにおけるキャッシュアロケーションポリシーと株主還元方針は、以下のとおりです。 <キャッシュアロケーションポリシー>(ⅰ)長期ビジョンの実現による企業価値の最大化を目指し、中長期視点で新たな価値を創造するための投資を優先します。ただし、2024年4月1日~2025年9月30日までの「構造改革期間」は、全社のリソースを集中して構造改革プログラム「NEXT2025」に取り組み、「業績の立て直し」と「収益・成長基盤の再構築」を実現するために必要な投資を最優先で実行します。その上で、安定的・継続的な株主還元を実行していきます。 (ⅱ)これら価値創造のための投資や株主還元の原資は内部留保や持続的に創出する営業キャッシュ・フローを基本とし、必要に応じて適切な資金調達手段を講じて充当します。なお、金融情勢によらず資金調達を可能とするため、引き続き財務健全性の維持に努めます <株主還元方針>(ⅰ)中長期視点での価値創造に必要な投資を優先した上で、毎年の配当金については、「株主資本配当率(DOE)3%程度」を基準とします。そのうえで、過去の配当実績も勘案して、安定的、継続的な株主還元に努めます。 (ⅱ)上記の投資と利益配分を実施したうえで、さらに長期にわたり留保された余剰資金については、機動的に自己株式の買入れなどを行い、株主の皆さまに還元していきます。  当社グループのキャッシュアロケーションの推移は以下の通りです。 <キャッシュアロケーション推移> (注)1 為替レートの影響は除いて表示しています。   2 投資キャッシュ・フローについては、事業売却・買収等による影響を分けて表示しています。     事業売却・買収等による収入・支出には、連結キャッシュ・フロー計算書の「事業売却(現金流出額との純額)」     「事業買収(現金取得額との純額)」および 「関連会社に対する投資の増加」が含まれています。 2023年度のキャッシュ・フローの状況 営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権や棚卸資産が前期末比で大きく減少したこと等により、449億円の収入(前期比86億円の収入減)となりました。 投資活動によるキャッシュ・フローは、JMDC社の株式の追加取得や資本的支出などにより1,071億円の支出(前期比516億円の支出増)となりました。なお、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたフリーキャッシュ・フローは622億円の支出(前期比601億円の支出増)となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いによる支出の一方で、借入金の増加により860億円の収入(前期比1,447億円の収入増)となりました。 以上の結果、当期末における現金及び現金同等物残高は、前期末から378億円増加し、1,431億円となりました。 2023年3月期2024年3月期増減営業活動によるキャッシュ・フロー535億円449億円△86億円投資活動によるキャッシュ・フロー△555億円△1,071億円△516億円フリーキャッシュ・フロー△21億円△622億円△601億円財務活動によるキャッシュ・フロー△588億円860億円+1,447億円 2024年度のキャッシュ・フローの見通し 次年度(2024年度)においては、構造改革プログラム「NEXT2025」の遂行による利益率改善や棚卸資産を中心とした運転資金の効率化を図ってまいります。 投資活動においては、投資規律を維持し、設備投資・投融資の案件を厳選して実行してまいります。なお、2024年度の設備投資は、ITシステム刷新等により当期比106億円の増加を見込んでいます。 また、財務活動では、グループ全体の効率的な資金配置を継続して実行していくとともに、金融情勢を踏まえた柔軟な調達・運用を実施してまいります。 <2024年度のキャッシュ・フロー関連項目> 2023年度(実績)2024年度(見通し)増減  減価償却費308 億円370 億円+62 億円  資本的支出(設備投資)454 億円560 億円+106 億円   (注)資本的支出は、連結キャッシュ・フロー計算書記載の金額 資金調達、資本政策の方針 当社グループは、成長投資の実行と安定的な事業運営を行うため、資本効率を高めつつ、事業運営に必要な流動性と多様な調達手段を確保することを基本としています。そのための資金調達を含む資本政策については、以下の基本方針としています。 (ⅰ)株主価値を維持向上するために、投下資本利益率(ROIC)、株主資本利益率(ROE)および1株当たり利益(EPS)の目標水準を考慮した経営を行います。また、経済環境等の急激な変化に備え、金融情勢によらず資金調達が可能な高格付けを維持できる自己資本比率を目標とします。 (ⅱ)支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資本政策については、取締役会において、上記の目標とする投下資本利益率(ROIC)、株主資本利益率(ROE)および1株当たり利益(EPS)等への影響を十分に考慮した上で合理的な判断を行います。 (ⅲ)大規模な希釈化をもたらす資本調達を実施する場合には、資金使途の内容と回収計画を取締役会において十分に審議のうえ決議するとともに、投資家・株主への説明を行います。 <格付情報> 本報告書提出時点における格付けについては、株式会社格付投資情報センター(R&I)から以下のとおり取得しております。 格付長期短期  格付投資情報センター   AA-  a-1+ <社債情報> 現在発行している社債はありません。 (参考)ROIC経営への取組み 当社グループはROICを重要な経営指標としています。全社一丸となってこの指標を持続的に向上させるため、「ROIC経営」を社内に広く浸透させています。長期ビジョン「SF2030」においても、ROIC経営を推進し、今後も飛躍的な成長を実現していきます。 事業特性が異なる複数の事業部門を持つ当社グループにとって、ROICは各事業部門を公平に評価できる最適な指標です。営業利益の額や率などを指標とした場合、事業特性の違いや事業規模の大小で評価に差が出ますが、投下資本に対する利益を測るROICであれば、公平に評価することができます。独自の事業ポートフォリオを展開していく当社グループにとって、ROICは欠かすことができない指標です。当社グループのROIC経営は、「ROIC逆ツリー展開」、「ポートフォリオマネジメント」の2つで構成しています。 <ROIC逆ツリー展開> ROIC逆ツリー展開により、事業戦略を起点にROICを各部門のKPIに分解して落とし込むことで、現場レベルでのROIC向上を可能にしています。ROICを単純に分解した「ROS」、「投下資本回転率」といった指標では、現場レベルの業務に直接関係しないことから、部門の担当者はROICを向上させるための取組みをイメージすることができません。例えば、ROICを自動化率や設備回転率といった製造部門のKPIにまで分解していくことで、初めて部門の担当者の目標とROIC向上の取組みが直接つながります。現場レベルで全社一丸となりROICを向上させているのが、当社グループの強みです。 <ポートフォリオマネジメント> 全社を約60の事業ユニットに分解し、ROICと売上高成長率の2軸で経済価値を評価するポートフォリオマネジメントを行っています。これにより新規参入、成長加速、構造改革、事業撤退などの経営判断を適切かつ迅速に行い、全社の価値向上をドライブしています。 また、限られた資源を最適に配分するために、「経済価値評価」だけではなく、「市場価値評価」も行っています。それにより、各事業ユニットの成長ポテンシャルを見極められ、より最適な資源配分を可能にしています。 (3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当有価証券報告書に記載する連結財務諸表は、米国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。連結財務諸表の作成にあたり、期末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示および報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りや仮定を用いており、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。長期性資産の減損、のれんおよび非償却性の無形資産の減損、および繰延税金資産の回収可能性等については、事業環境の変化の影響を踏まえて見積りおよび判断を行っています。 詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 Ⅰ 重要な会計方針の概要 F 会計処理基準」に記載していますが、当社の経営戦略および連結財務諸表に与える影響から重要性があると考えられるものは以下のとおりです。 戦略投資等にかかるのれん等の評価 当社グループは将来に向けた成長力強化の一環として積極的な戦略投資を行っています。 制御機器事業(IAB)においては、モノ作り現場の課題に対して、“i-Automation!”で革新を起こすアプリケーションを強化することを目的として、2015年にモーションコントローラーメーカーであるDelta Tau Systems, Inc. およびロボットメー カーであるAdept Technology, Inc.を、2017年にコードリーダーメーカーであるMicroscan Systems, Inc.をいずれも 米国にて取得しました。 ヘルスケア事業(HCB)においては、脳・心血管疾患の重症化を防ぎ、治療をサポートする事業での協業を目的として、米国を中心に心疾患の診断と治療の支援サービスおよび商品を提供するAliveCor,Inc.へ2020年2月に出資を行いました。 また、長期ビジョン「SF2030」ではデータを基軸とした価値創造への収益構造転換が重要になると考えており、その先駆けとして、2022年2月に医療データサービス会社であるJMDC社との資本業務提携のために同社株式の取得を行いました。また、2023年10月には同社株式の追加取得を行い、連結子会社としました。  当社グループでは、投資管理プロセスを運用しており、買収案件の投資回収状況やのれん減損テストの結果、買収事業の進捗と今後の計画については年に1回、取締役会へ報告しています。 ・のれん評価 当社は、のれんの評価について、のれんの償却は行わず、少なくとも年に1回又は減損の兆候が識別された場合に減損テストを実施しています。 IABにおいて取得した事業ののれんについては、取得した事業が“i-Automation!”戦略と一体となってシナジー効果が創出されることから、シナジー効果の享受が期待される、検査装置事業を除いたIABをのれんの報告単位として決定しています。 JMDC社の連結子会社化により取得した事業ののれんについては、当社の既存ビジネスとJMDC社の協業により、ソリューションビジネスを推進するために2023年12月21日付で設立したデータソリューション事業本部(DSB)を報告単位として決定しています。 減損テストの実施に当たっては、当該報告単位の公正価値をディスカウント・キャッシュ・フロー法により算出した評価額と市場価格にコントロールプレミアムを加味した市場株価法による評価額に基づいて算出し、対応する帳簿価額と比較して評価を行っています。ディスカウント・キャッシュフロー法による公正価値は経営者により承認された原則5年間の事業計画を基礎とした将来キャッシュ・フローの見積額を、加重平均資本コストをもとに算定した割引率で現在価値に割り引いて算定しています。事業計画の策定には、マクロ経済状況、市場成長率、利益率、設備計画等の仮定を用いており、事業計画予測期間以後のキャッシュ・フローは、各事業の所在国のインフレ率で永続的に成長する仮定や、類似企業の公開市場での評価を参考にしており、多くの重要な見積りを含んでいます。 加重平均資本コストは、リスクフリーレート、所在国の経済や市場の状況を反映させるためのリスクプレミアム、インフレ率、負債コスト、類似企業の決定、類似企業に対してプレミアムもしくはディスカウントが適用されるべきかの決定等、多くの見積りを使用して算出しています。 当年度の減損判定においては、公正価値が帳簿価額を超過していたため、のれんの減損損失は認識しておりません。  各オペレーティングセグメントの当期末連結貸借対照表におけるのれん残高及び減損テストの方法は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 Ⅱ 主な科目の内訳及び内容の説明 G のれん及びその他の無形資産」に記載しています。 ・関連会社に対する投資の評価 当年度末連結貸借対照表に計上されている関連会社に対する投資及び貸付金には、HCBのAliveCor,Inc.に対する持分法による投資10,265百万円が含まれており、純資産に対する当社の持分相当額を上回る9,173百万円は、主に持分法適用開始時に識別したのれん相当額によるものです。 当社は、関連会社に対する投資について、投資先の超過収益力に基づく公正価値評価を行い、その価値の下落が一時的とは認められない場合には、持分の簿価が当該関連会社の公正価値の当社持分を超過した分について持分法損失を認識しています。同社についてはスタートアップ企業であるため将来事業計画の達成可能性の不確実性やのれん相当額の重要性を鑑み当該公正価値をのれんの評価と同じ方法で算出した結果、公正価値が投資簿価を上回ることから、評価損失の計上は不要と判断しています。 (4) 生産、受注及び販売の実績 当年度におけるセグメントごとの販売実績は、「(1) 事業環境、経営成績等の状況・分析・検討」に記載のとおりです。なお、当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額で示すことはしていません。 (5) 経営成績に重要な影響を与える要因について 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しています。
経営上の重要な契約等 5【経営上の重要な契約等】
 当社は、2023年9月8日開催の取締役会決議に基づき、同日付で、株式会社JMDC(以下、JMDC社)と資本業務提携 契約の変更契約を以下の通り締結いたしました。  オムロン株式会社(以下、オムロン)は、JMDC社株式を追加取得し、更なる社会的課題の解決と事業価値の拡大のためにJMDC社との間の資本業務提携関係を強化することを目的として、JMDC社との間で、2023年9月8日付で、本資本業務提携変更契約を締結いたしました。本資本業務提携変更契約の概要等(2022年2月22日付資本業務提携契約のうち本資本業務提携変更契約により変更されていない規定の概要等を含みます。)は、以下のとおりです。 (a)本資本業務提携に基づく業務提携の領域 本資本業務提携に基づく業務提携の領域を以下のとおり拡大しております(2022年2月22日付資本業務提携契約からの変更箇所は下線部分になります。)。(ア)ヘルスデータプラットフォームの強化・オムロングループ保有データのJMDC社グループへの連携によるヘルスデータプラットフォームの構築・データ収集のためのJMDC社グループのプロダクト・サービスの販売協力(イ)予防ソリューションの開発・1次~3次予防や介護予防領域における生活者・患者への行動変容サービスや医療事業者の治療・指導支援 サービスの共同開発と社会実装を含む、デバイスとデータを駆使した画期的な予防ソリューションの開発・オムロングループによる保険者向けのデバイスの開発とJMDC社グループへの供給(ウ)JMDC社グループの海外事業展開の加速・海外でのJMDC社グループのプロダクト・サービスの販売協力・JMDC社グループによるオムロングループの海外拠点の活用(エ)デバイス・サービスのクロスセル・パーソナル・ヘルス・レコードとデバイスを連携したソリューションの医療機関、保険者、自治体、企業等への展開・オムロングループとJMDC社グループの製品・サービス・ソリューションに関する相互取引(オ)オムロングループのデータソリューション事業の開発と社会実装・インダストリアルオートメーション並びにソーシャルソリューション領域における協業テーマの設置・推進・オムロングループに対するJMDCグループからの人材派遣や、オムロングループによるJMDC社グループへの業務委託 (b)両社間の従業員の出向 オムロン及びJMDC社は、本資本業務提携変更契約において、本資本業務提携を円滑に推進することを目的として、オムロンの従業員のJMDC社への出向及びJMDC社の従業員のオムロンへの出向(それぞれ複数名を想定する。)の受入れについて、相手方から提案があった場合には、相手方と誠実に協議することを確認する旨、当該出向の時期や処遇の詳細(人数や人選を含む。)については、従業員の意向を踏まえて、協議の上、決定する旨を合意しております。 (c)役員の派遣 オムロン及びJMDC社は、2022年2月22日付資本業務提携契約において、オムロンは、JMDC社の指名・報酬委員会に対し、JMDC社の業務執行取締役でない取締役候補者(以下「オムロン指名取締役」といいます。)1名を推薦することができ、JMDC社の指名・報酬委員会は、オムロン指名取締役を取締役候補者として指名することについて合意しております。なお、本資本業務提携変更契約において、当該合意内容について変更はされておりません。 (d)株式等の発行又は処分 オムロン及びJMDC社は、本資本業務提携変更契約において、JMDC社が自らの裁量において、資金調達、M&A等に伴い株式等(株式、新株予約権、新株予約権付社債及びその他の株式を取得できる権利の総称を意味します。以下本項において同じです。)を発行又は処分することができる旨、及び、JMDC社はかかる株式等の発行又は処分により(i)オムロンの連結子会社でなくなる場合又は(ii)10%以上の希釈化が生じる場合には、((i)の場合)オムロンがJMDC社を連結子会社とし、又は((ii)の場合)(ii)に示す希釈化を回復するために必要な範囲でJMDC社の株式等を追加取得する機会(その内容はJMDC社が合理的に判断する)を事前又は事後(但し、JMDC社は募集株式の発行又は処分の公表の遅くとも1か月前までにオムロンに通知等する)にオムロンに提供する(但し、オムロンがJMDC社の株式を売却その他の処分を行った場合には、機会提供に関する規定の効力は消滅する)旨を合意しております。 (e)JMDC社株式の取扱い オムロン及びJMDC社は、2022年2月22日付資本業務提携契約において、オムロンは、JMDC社の株式等の追加取得を行う場合には、当該追加取得についての最終決定予定日の1ヶ月前までに、JMDC社に書面で通知する旨、並びに、オムロンは、その保有するJMDC社株式の処分を希望する場合(当該処分の対象となる株式に係る議決権割合が5%超であるものに限る。)には、当該処分についての最終決定予定日の3ヶ月前までに、JMDC社に書面で通知する旨、及び、オムロンは、その保有するJMDC社株式の処分先についてJMDC社から当該通知の受領日から2ヶ月以内に意向が示 された場合、経済的に概ね同等のものである限り、かかる意向につき最大限尊重する旨を合意しております。なお、 本資本業務提携変更契約において、当該合意内容について変更はされておりません。
研究開発活動 6【研究開発活動】
 当社グループは、技術の強化と人財の育成を目的に中長期的視野に立った技術戦略を定め、研究開発を実行しています。自社の強み、コア技術として進化させ続けている「センシング&コントロール+Think」技術を技術戦略の核として、全社的視点から当社の研究開発部門である技術・知財本部が基盤的な技術開発を担い、各事業部門がその応用技術開発や商品開発を実施しています。主力事業である制御機器事業をはじめ、ヘルスケア事業、社会システム事業、電子部品事業に重点的に研究開発費を割当て、製品開発およびものづくり技術の強化を実施しています。 (1)当社グループの研究開発への取組み 自社コア技術の注力領域としてロボティクス、センシング、パワーエレクトロニクス、AI・データ解析の4領域に対し継続的な研究開発に取組んでいます。 当社グループのコア技術に関する情報はこちらをご覧ください。 https://www.omron.com/jp/ja/technology/technology/<注力する技術領域>  ロボティクスにおいては、2023年7月より中外製薬株式会社様、オムロン サイニックエックス株式会社、当社の3社による共同研究として、ラボオートメーションシステムの実現に向けた実証実験を開始しています。創薬研究の生産性向上、実験データの品質向上、ならびに新たな実験活動を実現する研究工程の自動化において、既存システムより自由度、汎用性、人との共存性の高い柔軟なラボオートメーションシステムの実現を目指しています。<ラボオートメーションシステム>  パワーエレクトロニクスにおいては、技術・知財本部と社会システム事業の開発部門が連携し開発した、電気自動車を大容量の蓄電池システムと見立て住宅や施設で活用可能とするV2Xシステムを発売いたしました。同システムは、次世代半導体デバイスGaN(窒素ガリウム)をV2Xシステムに先進的に活用したことで国内最小最軽量クラス(注1)を実現し、これまで設置が難しかった狭小地等への設置が可能になりました。 (注1) EV・PHEV向けパワーコンディショナメーカー各社公開の商品情報に基づき、当社で独自調査を行ったもの(2022年12月現在)  センシングとAI・データ解析においては、継続的な研究開発活動に加え、学会等での社外発信を積極的に行い、製造現場などで扱うワイヤーなどの線形状物体が重なり合っていても輪郭を高精度に検出する手法に関する論文(注2)が、公益社団法人 精密工学会「2023年度 精密工学会髙城賞」を受賞いたしました。 (注2) 論文タイトル:「線形状物体における高精度な形状予測のためのインスタンスセグメンテーションモデル」  また、技術・知財本部に属する研究子会社であるオムロン サイニックエックス株式会社においては、ディープラーニングモデルの「トランスフォーマー」を活用した無機材料の結晶構造の生成に関する手法を提案した論文(注3)、機械学習分野のトップカンファレンスであるICLR2024で採択されました。この成果は、これまで研究者が試行錯誤により行っていた材料開発の効率化に期待されます。 (注3) 論文タイトル:「Crystalformer: Infinitely Connected Attention for Periodic Structure Encoding」  グループ全体の研究開発に関する費用の総額は、前連結会計年度は501億82百万円、当連結会計年度は501億44百万円です。なお、研究開発費には技術・知財本部で行っている技術開発費用65億10百万円が含まれています。
(2)知的財産活動 当社グループにおける知財活動は、技術・知財本部傘下の知的財産センタを中心に、長期ビジョンの実現に向けて知財・無形資産の活用と連結する価値創造ストーリーとしてビジネスモデルの具体化を進め、「独占排他型」と「共有共鳴型」を最適なバランスで組み合わせた両利きの知財活動を実行することを方針とし、その実践に取り組んでいます。 自社製品の売上やシェアを伸ばすことを目的として、知財を他者と共有せず独占することを原則とする知財活動のみならず、各事業の価値創造ストーリー実現に向け、パートナーとのアライアンスを重視しながら、必要な知財を相互にシェアすることで、ビジネスエコシステムを広げて市場の成長を促進しています。  その実現に向け、知的財産センタでは、知財で新たな価値を創り、届けることで当社グループを持続的な成長に導けるよう、ミッション&ビジョンを定め取り組みを進化させています。以下に、ミッションの達成に向けた具体的な知財活動事例を紹介します。 <オムロン知的財産センタのミッション・ビジョン>  まず、事業創造の初期段階から知的財産センタが参画し、「IPランドスケープ」(注4)を通じて想定顧客のニーズ分析や技術課題を構造化しています。そして、事業仮説の具体化、開発テーマの設定において、仮説検証のサイクルを効率的に回すことで、事業・技術・知財の戦略を三位一体で策定・実行する環境を整えています。 (注4) IPランドスケープ:特許等の知財情報や非知財情報、社内情報等を俯瞰的に分析して、経営判断の戦略情報として活用するとともに、事業・技術戦略へフィードバックして戦略策定・実行を推進する手法  また、事業環境や社会環境が変化していく中で、コーポレートブランドの核である「OMRON」商標の使用範囲はグローバルに拡大しています。それに伴い、第三者によるECサイトでの模倣品販売、SNS上での偽アカウント等、巧妙な不正使用も増加しています。知的財産センタは、グローバル各国で「OMRON」商標を活用しながらブランディングを行うと共に、各拠点の知財部門と連携しながらブランド侵害のモニタリングを行い、各国の法律・制度も踏まえた対策を実施しています。2024年2月には、インドにおいて、「OMRON」が日本企業では16件目の著名商標(注5)に認定されました。今後さらに模倣品対策を強化し、オムロンブランドの維持・拡大を通じて顧客に安心・信頼を届けることに努めます。 (注5) 著名商標:対象国全土で高い認知度を有する商標として認定されるもの                                     <TOP100グローバル・イノベーター2024表彰> さらに、戦略に基づき出願から活用までシームレスに繋げる「知財サイクル」を回すことで、特許等の知財権を侵害する企業に対して、国内外を問わず警告や訴訟提起を行う等の対応を徹底しています。また、事業部門がお客様に新たなソリューションを提案する中で、知財・無形資産がオムロン製品・サービスの競争力の源泉となっていることをお伝えし、お客様との共創によって、オムロンならではの価値を生み出せることをご理解いただくことにも取り組んでいます。 これらの知財活動が評価され、オムロンは、世界で最も革新的な企業・研究機関を選出する「Top100 グローバル・イノベーター」(クラリベイト社)に8年連続で選出されています。  このように、技術・知財本部では、磨き続けるコア技術の進化と両利きの知財活動の進化をもとに、ソーシャルニーズの創造を世に先んじて取り組んでまいります。 (3)事業セグメント別の研究開発活動 セグメントの名称 当連結会計年度(自 2023年4月1日  至 2024年3月31日)金額(百万円)インダストリアルオートメーションビジネス25,897ヘルスケアビジネス8,273ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス4,340デバイス&モジュールソリューションズビジネス4,939データソリューションビジネス185本社他6,510合計50,144 ①インダストリアルオートメーションビジネス(制御機器事業) 当セグメントは、人を重労働から解放しエネルギー制御と融合させる「①人を超える自働化」、機械が人に寄り添い人の可能性を引き出し、人と機械が共に成長する「②人と機械の高度協調」、前述の2つのコンセプトを支える、現場の商品や人のナレッジ、そしてデータを繋ぎ、価値ある形に擦り合わせる「③デジタルエンジニアリング革新」のモノづくりコンセプトで研究開発に取り組んでいます。 これら3つのコンセプトを基に、デジタルデバイス、環境モビリティ、食品・日用品、医療、物流の5つの業界において、「顧客起点」で価値創造とグローバルの顧客への価値伝達を進めています。従来のモノ視点から、コト視点で俯瞰して顧客課題を捉えるようにシフトし「ソリューション」としての創出・提供に取り組んでいます。様々な先進コア技術やオムロンの幅広いFA商品群を起点にして、機能モジュールやソフトウェア、アプリケーション、サービスを体系的に構成し、各業界の顧客や工程に合わせて提供できるように技術や商品開発を強化しています。積極的に特許の出願や活用する取組みも強化し、”Top 100 Global Innovators”を8年連続で受賞しています。 加えて、新規技術獲得には、自社内だけで不足しているものは積極的にグローバルのスタートアップ企業や大学等も含めた産官学でのオープンイノベーションも進めています。 ②ヘルスケアビジネス(ヘルスケア事業) 当セグメントは、マーケティング部門と研究開発部門が一体となり、パーソナライズ医療の実現に向けて、真のユーザーニーズの把握・創出に努め、一層の開発スピードアップを目指しています。また研究開発部門は、一人ひとりの健康ですこやかな生活の実現に向け、脳・心血管疾患の発症ゼロを目指す「循環器事業」、喘息・COPD患者の重症化ゼロを目指す「呼吸器事業」、慢性痛による日常の活動制限ゼロを目指す「ペインマネジメント事業」の3事業領域において新しい価値を提供できる新商品の創出を目指しています。 当期の主な開発テーマとして、循環器事業においては、疾患の早期発見・治療に繋げることを目的として、血圧、脈拍、脈波、心電計測技術を搭載した心機能低下を捉える新たな血圧計の開発を進めるとともに、遠隔診療サービスのシステム開発・改善に取り組んでいます。 呼吸器事業においては、喘息やCOPDの患者を対象に、発作の予兆や症状を計測する機器の開発にパートナーと共に取り組んでいます。 ペインマネジメント事業においては、新たな鎮痛技術を搭載した低周波治療器の開発に取り組んでいます。 ③ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス(社会システム事業) 当セグメントは、太陽光発電用パワーコンディショナー、蓄電システム、自動改札機や券売機などの駅務システム、交通管制システム、決済システム、UPSなどのネットワーク保護といった、多岐にわたる端末・システムに対するお客様のニーズに応える商品開発に取り組んでいます。 エネルギーソリューション事業では、再生可能エネルギーへの一層の関心の高まりに応えるため、蓄電システムおよび太陽光発電用パワーコンディショナーを中心に高効率化や小型軽量化などの技術開発並びに発電した電力の自家消費ニーズに応える商品創出などに継続して取り組んでいます。 駅務システム事業、交通管制システム事業においては駅や道路など、公共の場における利用者の安心・安全・快適に貢献する商品として、AI技術・IoT技術を組み込んだ人や車の動きを検知するセンサー・システムの開発に取り組んでいます。 また、近年、社会課題となっている労働人口減少に対し、社会インフラにおける労働生産性を向上させる技術が求められる中、データサイエンス分野の技術力強化を進めています。 ④デバイス&モジュールソリューションズビジネス(電子部品事業) 当セグメントは、リレー、スイッチ、コネクターを中心としてエレクトロメカニカルコンポ商品および顔認証等の組込画像ソフト技術、光技術などを用いたセンシングコンポ商品、更にはモジュール化技術による高機能化を強みにお客様のニーズに応える新製品開発に取り組んでいます。モジュール化技術においてはセンサ開発を得意とするオムロンと予報精度No.1の技術を誇る株式会社ウェザーニューズの両社の強味を活かし、気温・湿度・気圧・雨量・風向・風速・照度の7つの気象要素を1分毎に観測する小型の気象IoTセンサである「ソラテナPro」を共創し開発しました。これにより現場の気象を見える化し、アプリを通して気象の変化をすばやく伝えるため、農業・建築・ドローン・物流・電力・食品小売など業界を問わず企業の安全対策や生産性向上などにご活用いただけます。また、気象における課題解決に貢献する製品として高い評価を獲得したことで、第66回「十大新製品賞」(主催: モノづくり日本会議、日刊工業新聞社)において、「日本力賞」を受賞することができました。「ソラテナPro」を通してデジタル化社会の促進や災害リスクの低減を支援することで、持続可能な社会づくりに貢献していきます。 ⑤データソリューションビジネス(データソリューション事業) 当セグメントは人材やテクノロジーに積極的に投資し、医療ビッグデータを活用した新しい取組みやサービス開発にチャレンジし続けます。ヘルスケアデータの収集のためのサービス開発とヘルスケアデータの利活用方法の開発を目的にアカデミアとの連携を含めた研究開発活動を実施しています。また、ディープラーニングを中心とするAIテクノロジーを用いた診断アシストエンジンを日々の読影の中で活用できるようにする診断アシストプラットフォーム「AI-RAD」の開発に取り組んでおります。
設備投資等の概要 1【設備投資等の概要】
 当社グループでは、将来の成長に向けた生産設備の増強および拠点投資、ならびにITインフラの刷新など必要な設備投資を厳選して実施しました。その結果、当期の設備投資額は448億94百万円(前期比0.4%減)となりました。  部門別の設備投資金額は、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前期比増減(%)インダストリアルオートメーションビジネス7,255△22.0ヘルスケアビジネス3,948△40.1ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス5,55863.7デバイス&モジュールソリューションズビジネス6,073△36.6データソリューションビジネス1,164-本社他20,89628.9合計44,894△0.4(注)「本社他」には、本社機能部門および上記各部門に属さない子会社などが含まれます。
主要な設備の状況 2【主要な設備の状況】
 当社グループにおける主要な設備は次のとおりです。なお、帳簿価額は、提出会社又は子会社の財務諸表におけるものを記載しています。(1) 提出会社2024年3月31日現在 事業所名(主な所在地)セグメントの名称設備の内容帳簿価額(百万円)従業員数(人)土地(面積千㎡)建物及び構築物機械装置及び運搬具その他計草津事業所(滋賀県草津市)インダストリアルオートメーションビジネスデバイス&モジュールソリューションズビジネス制御機器の生産および研究開発設備電子機器部品の研究開発設備2,817(69)4,0181,8601,72310,418969綾部事業所(京都府綾部市)インダストリアルオートメーションビジネス制御機器の生産1,417(163)1,4257522783,872201京都事業所(本社)(京都市下京区)本社他全社管理業務用設備-1,2981168442,2581,250京阪奈イノベーションセンタ(京都府木津川市)本社他新技術・新製品の開発、特許・技術情報関連施設3,789(72)3,1782402427,449264桂川事業所(京都府向日市)本社他全社管理業務用設備-3,08812233,31285 (注)1 帳簿価額のうちその他は、工具、器具及び備品および建設仮勘定の合計です。    2 帳簿価額のうち土地は「土地の再評価に関する法律」(平成10年3月31日公布法律第34号)および「土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律」(平成13年6月29日公布法律第94号)の適用による再評価後の金額です。3 帳簿価額のうち土地の面積については、自社所有分を( )で記載しています。4 セグメントの名称は、主要なオペレーティング・セグメントを記載しています。5 従業員数は就業人員数です。6 上記の他、連結会社以外からの主要な賃借設備の内容は下記のとおりです。事業所名(所在地)セグメントの名称設備の内容賃借期間年間賃借料(百万円)京都事業所(本社)(京都市下京区)本社他建物2025年3月まで1,080東京事業所(東京都港区)本社他建物2030年12月まで1,209
(2) 国内子会社2024年3月31日現在 会社名事業所名(主な所在地)セグメントの名称設備の内容帳簿価額(百万円)従業員数(人)土地(面積千㎡)建物及び構築物機械装置及び運搬具その他合計オムロンリレーアンドデバイス㈱(熊本県山鹿市)デバイス&モジュールソリューションズビジネス電子機器部品の生産設備1,046(222)1,3711,0007354,152418オムロンヘルスケア㈱(京都府向日市)ヘルスケアビジネス健康機器の研究・開発および販売・管理業務用施設ならびに生産設備2,194(34)3,9997981577,148654オムロン阿蘇㈱(熊本県阿蘇市)ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス創エネ・省エネ機器の製造・販売・開発218(60)4544953411,508243 (注)1 帳簿価額のうちその他は、金型および建設仮勘定の合計です。2 帳簿価額のうち土地の面積については、自社所有分を( )で記載しています。3 セグメントの名称は、主要なオペレーティング・セグメントを記載しています。4 従業員数は就業人員数です。 (3) 在外子会社2024年3月31日現在 会社名事業所名(主な所在地)セグメントの名称設備の内容帳簿価額(百万円)従業員数(人)土地(面積千㎡)建物及び構築物機械装置及び運搬具その他合計OMRON (SHANGHAI) CO., LTD.(中国上海)インダストリアルオートメーションビジネス制御機器の生産設備-[54]2,1922,8401,3526,3841,464OMRON ELECTRONICCOMPONENTS(SHENZHEN) LTD.(中国深圳)デバイス&モジュールソリューションズビジネス電子機器部品の生産設備-[124]1,69712,2772,51016,4842,067OMRON DALIAN CO., LTD.(中国大連)ヘルスケアビジネス健康機器の生産設備-[57]6,0319924477,4701,418 (注)1 帳簿価額のうちその他は、金型および建設仮勘定の合計です。2 帳簿価額のうち土地の面積については、賃借分を[ ]で記載しています。3 セグメントの名称は、主要なオペレーティング・セグメントを記載しています。4 従業員数は就業人員数です。
設備の新設、除却等の計画 3【設備の新設、除却等の計画】
 当連結会計年度末現在における重要な設備の計画は次のとおりです。(1) 新設 当社グループの設備投資については、将来の競争力強化等を目的に、経済状況・需要動向・投資効率等を総合的に勘案し計画しています。当連結会計年度後1年間の設備投資予定額は55,600百万円であり、その所要資金については主に自己資金を充当し、必要に応じ外部資金調達も活用して確保する予定です。
(2) 重要な設備の除却等 該当事項はありません。
研究開発費、研究開発活動50,144,000,000
設備投資額、設備投資等の概要44,894,000,000

Employees

平均年齢(年)、提出会社の状況、従業員の状況45
平均勤続年数(年)、提出会社の状況、従業員の状況16
平均年間給与、提出会社の状況、従業員の状況8,739,000
管理職に占める女性労働者の割合、提出会社の指標0
全労働者、労働者の男女の賃金の差異、提出会社の指標1
正規雇用労働者、労働者の男女の賃金の差異、提出会社の指標1
非正規雇用労働者、労働者の男女の賃金の差異、提出会社の指標1

Investment

株式の保有状況 (5)【株式の保有状況】
①投資株式の区分の基準及び考え方 当社は純投資目的である株式は保有しておらず、全て純投資目的以外の目的である株式投資に区分しています。なお、純投資目的とは株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることのみを目的とする場合とし、それ以外の目的で保有する株式は全て純投資目的以外の株式としています。 ②保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式1.保有方針及び保有の合理性を検証する方法並びに個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容 当社は持続的な企業価値向上のため、更なる社会的価値創造の協働を目的とする場合に限り株式を保有します。 なお、純投資目的以外の株式のうち特定投資株式については、保有目的および合理性について中長期的な観点から精査し、保有の適否を毎年、取締役会において検証します。保有の適否検証においては、投資先企業との協働の状況、事業への影響、投資先企業のROE、取引による当社利益への寄与度等を考慮します。検証の結果、保有目的および合理性が希薄となった株式については、事業や市場への影響に配慮しつつ売却を進めます。 2.銘柄数及び貸借対照表計上額 銘柄数(銘柄)貸借対照表計上額の合計額(百万円)非上場株式402,059非上場株式以外の株式46,659 (当事業年度において株式数が増加した銘柄) 銘柄数(銘柄)株式数の増加に係る取得価額の合計額(百万円)株式数の増加の理由非上場株式--該当なし非上場株式以外の株式--該当なし (当事業年度において株式数が減少した銘柄) 銘柄数(銘柄)株式数の減少に係る売却価額の合計額(百万円)非上場株式--非上場株式以外の株式33,434 3.特定投資株式及びみなし保有株式の銘柄ごとの株式数、貸借対照表計上額等に関する情報特定投資株式銘柄当事業年度前事業年度保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由当社の株式の保有の有無株式数(株)株式数(株)貸借対照表計上額(百万円)貸借対照表計上額(百万円)ダイキン工業㈱236,200236,200・主として電子部品事業において社会的価値の向上を協働することを目的とし、保有しています。・定量的な保有効果
(注)3無4,8665,587スズデン㈱415,2001,297,610・制御機器事業の主要販売代理店としてお客様への提供価値を拡大することを目的とし、保有しています。・定量的な保有効果
(注)3有8973,396サンワテクノス㈱355,080355,080・制御機器事業の主要販売代理店としてお客様への提供価値を拡大することを目的とし、保有しています。・定量的な保有効果
(注)3有849690㈱メンタルヘルステクノロジーズ49,20049,200・データヘルス事業においてメンタルヘルスケア領域でのソリューション共創を目的とし、保有しています。・定量的な保有効果
(注)3・データヘルス事業においてメンタルヘルスケア領域でのソリューション共創を目的とし、取得しております。無4758トヨタ自動車㈱-8,090,035・全株式を売却しています。 無-15,209明治電機工業㈱-320,000・全株式を売却しています。 無-387 みなし保有株式銘柄当事業年度前事業年度保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由当社の株式の保有の有無株式数(株)株式数(株)貸借対照表計上額(百万円)貸借対照表計上額(百万円)㈱村田製作所3,939,1651,313,055・退職給付信託に拠出しており、当社が議決権行使の指図権を有しています。・定量的な保有効果
(注)4・株式分割による増加有11,12410,557㈱京都フィナンシャルグループ
(注)56,112,3681,528,092・退職給付信託に拠出しており、当社が議決権行使の指図権を有しています。・定量的な保有効果
(注)4・株式分割による増加有16,8769,551ローム㈱1,872,000468,000・退職給付信託に拠出しており、当社が議決権行使の指図権を有しています。・定量的な保有効果
(注)4・株式分割による増加有4,5465,134㈱SCREENホールディングス426,834255,867・退職給付信託に拠出しており、当社が議決権行使の指図権を有しています。・定量的な保有効果
(注)4・株式分割による増加有8,5222,981㈱三菱UFJフィナンシャル・グループ3,349,0003,349,000・退職給付信託に拠出しており、当社が議決権行使の指図権を有しています。・定量的な保有効果
(注)4有5,2142,840コニカミノルタ㈱621,000621,000・退職給付信託に拠出しており、当社が議決権行使の指図権を有しています。・定量的な保有効果
(注)4無308353㈱三井住友フィナンシャルグループ68,60068,600・退職給付信託に拠出しており、当社が議決権行使の指図権を有しています。・定量的な保有効果
(注)4有611363
(注)1 貸借対照表計上額の上位銘柄を算定する段階で、特定投資株式とみなし保有株式を合算していません。2 保有する特定投資株式およびみなし保有株式を合わせて60銘柄に満たないため、全銘柄を記載しています。3 特定投資株式の定量的な保有効果については事業上の理由から記載していませんが、保有合理性は上記1の方法に基づき検証を行っており、十分な保有合理性があると判断しています。4 みなし保有株式の定量的な保有効果については事業上の理由から記載していませんが、特定投資株式に準じた方法で検証を行っており、十分な保有合理性があると判断しています。5 ㈱京都銀行は、持株会社移行に伴い、2023年10月2日付で㈱京都フィナンシャルグループへ商号変更しております。③保有目的が純投資目的である投資株式該当事項はありません。
株式数が減少した銘柄数、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社3
銘柄数、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社40
貸借対照表計上額、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社2,059,000,000
銘柄数、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社4
貸借対照表計上額、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社6,659,000,000
株式数の減少に係る売却価額の合計額、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社3,434,000,000
株式数、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社49,200
貸借対照表計上額、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社47,000,000
株式数、保有目的が純投資目的以外の目的であるみなし保有株式の明細、提出会社68,600
貸借対照表計上額、保有目的が純投資目的以外の目的であるみなし保有株式の明細、提出会社611,000,000
株式数が増加した理由、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社該当なし
株式数が増加した理由、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社該当なし
銘柄、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社明治電機工業㈱
保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社・全株式を売却しています。
当該株式の発行者による提出会社の株式の保有の有無、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社
銘柄、保有目的が純投資目的以外の目的であるみなし保有株式の明細、提出会社ローム㈱