財務諸表
CoverPage
提出書類、表紙 | 有価証券報告書 |
提出日、表紙 | 2024-06-17 |
英訳名、表紙 | DAIICHI SANKYO COMPANY, LIMITED |
代表者の役職氏名、表紙 | 代表取締役社長 奥澤 宏幸 |
本店の所在の場所、表紙 | 東京都中央区日本橋本町三丁目5番1号 |
電話番号、本店の所在の場所、表紙 | 03-6225-1111(代表) |
様式、DEI | 第三号様式 |
会計基準、DEI | IFRS |
連結決算の有無、DEI | true |
当会計期間の種類、DEI | FY |
corp
沿革 | 2【沿革】 2005年2月三共株式会社及び第一製薬株式会社(以下「両社」という。)が、株式移転により完全親会社である共同持株会社を設立し、両社がその完全子会社となる経営統合に基本合意2005年5月両社の取締役会で当社設立を決議し、経営統合契約を締結2005年6月両社の定時株主総会において当社設立を承認2005年9月当社設立東京証券取引所第一部に株式を上場2005年12月第一三共ヘルスケア株式会社を設立2006年3月米国において三共ファルマInc.(存続会社)と第一ファーマ・ホールディングスInc.、第一ファーマシューティカルCorp.及び第一メディカル・リサーチInc.が合併、第一三共Inc.に商号変更2006年4月ゼファーマ株式会社の全株式をアステラス製薬株式会社より取得2006年7月欧州において三共ファルマGmbH(含グループ各社)の商号を、第一三共ヨーロッパGmbH(グループ)に変更2007年4月当社が三共株式会社及び第一製薬株式会社を吸収合併2007年4月第一三共ヘルスケア株式会社がゼファーマ株式会社を吸収合併2008年11月ランバクシー・ラボラトリーズLtd.の株式取得により同社グループを子会社化2010年4月第一三共エスファ株式会社を設立2011年4月北里第一三共ワクチン株式会社を設立2011年4月プレキシコンInc.の株式取得により同社を子会社化2011年11月第一三共(中国)投資有限公司を設立2012年4月ジャパンワクチン株式会社を設立2014年11月アンビット・バイオサイエンシズCorp.の株式取得により同社を子会社化2015年3月ランバクシー・ラボラトリーズLtd.がサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.に吸収合併されたことにより、同社グループを連結の範囲から除外2017年11月北里第一三共ワクチン株式会社の全株式取得により同社を完全子会社化 2018年8月 第一三共バイオテック株式会社を設立 2019年1月 ルイトポルド・ファーマシューティカルズInc.の会社名をアメリカン・リージェントInc.に変更 2019年4月 ジャパンワクチン株式会社を解散 2022年4月 東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、東京証券取引所市場第一部からプライム市場に移行 |
事業の内容 | 3【事業の内容】 当社グループは、当社と子会社49社、関連会社1社の計51社で構成され、医薬品等の製造販売を主な事業内容としております。 当社グループの営んでいる主な事業内容と当社グループを構成している各関係会社の当該事業に係る位置付けは、次のとおりであります。 なお、当社グループは、報告セグメントが単一であるため、セグメント情報の記載を省略しております。 国内(12社):当社は医薬品の研究開発・製造・販売を行っております。連結子会社の第一三共プロファーマ㈱及び第一三共ケミカルファーマ㈱は医薬品の製造を行っております。連結子会社の第一三共エスファ㈱は医薬品の研究開発・販売を、第一三共ヘルスケア㈱は一般用医薬品等の研究開発・販売を、第一三共バイオテック㈱はワクチンの研究開発・製造をそれぞれ行っております。第一三共プロファーマ㈱、第一三共ケミカルファーマ㈱、第一三共エスファ㈱、第一三共バイオテック㈱は当社に製品を供給しております。当社は連結子会社の第一三共バイオテック㈱及び第一三共RDノバーレ㈱に研究開発業務を委託しております。連結子会社の第一三共ビジネスアソシエ㈱は当社及び国内グループ各社に人事や経理等の事務サービスを提供しているほか不動産賃貸及び保険代理業務等多岐にわたる業務を行っております。海外(39社):米国において、持株会社である連結子会社の第一三共U.S.ホールディングスInc.のもと、連結子会社の第一三共Inc.は医薬品の研究開発・販売を行っております。当社は第一三共Inc.に製品の供給、研究開発業務の委託をしております。第一三共Inc.の子会社であるアメリカン・リージェントInc.は医薬品の研究開発・製造・販売を行っております。欧州において、連結子会社の第一三共ヨーロッパGmbH及びそのグループ会社19社は、欧州各国で医薬品の研究開発・製造・販売を行っております。当社は第一三共ヨーロッパGmbHに原料の供給、製造の委託、研究開発業務の委託をしております。その他の地域において、連結子会社の第一三共(中国)投資有限公司、第一三共製薬(上海)有限公司及び第一三共ブラジルLtda.等は医薬品の研究開発・製造・販売を行っており、当社はそれぞれの会社に中間体及び製品を供給しております。当社グループの状況について事業系統図を示すと次のとおりであります。 |
関係会社の状況 | 4【関係会社の状況】 名称住所資本金又は出資金主要な事業の内容議決権の所有割合関係内容(連結子会社) 百万円 % 第一三共エスファ㈱東京都中央区450医薬品70.0役員の兼任等当社が製品を購入当社が事務室等を賃貸第一三共ヘルスケア㈱東京都中央区100医薬品100.0役員の兼任等当社が製品を供給当社が事務室等を賃貸第一三共プロファーマ㈱東京都中央区100医薬品100.0役員の兼任等当社が製品を購入当社が事務室及び工場土地を賃貸当社が設備資金を貸与第一三共ケミカルファーマ㈱東京都中央区50医薬品100.0役員の兼任等当社が製品を購入当社が事務室及び工場土地を賃貸当社が設備資金を貸与第一三共バイオテック㈱埼玉県北本市50医薬品100.0役員の兼任等当社が製品を購入当社が研究開発業務を委託当社が事務室を賃貸第一三共RDノバーレ㈱東京都江戸川区50医薬品100.0役員の兼任等当社が研究開発業務を委託当社が事務室を賃貸第一三共ビジネスアソシエ㈱東京都中央区50その他100.0役員の兼任等当社が事務業務を委託当社が事務室及び賃貸用不動産を賃貸当社が事務室を賃借第一三共U.S.ホールディングスInc.アメリカニュージャージーUSD3.0医薬品100.0役員の兼任等第一三共Inc.アメリカニュージャージー千USD170医薬品100.0(100.0)役員の兼任等当社が製品を供給当社が販促及び研究開発業務を委託アメリカン・リージェントInc.アメリカニューヨーク千USD200医薬品100.0(100.0)役員の兼任等第一三共ヨーロッパGmbHドイツミュンヘン千EUR16,001医薬品100.0役員の兼任等当社が製品を供給当社が製造を委託当社が販促及び研究開発業務を委託当社が設備資金を貸与第一三共フランスS.A.S.フランスリュ・エル・マルメゾン千EUR500医薬品100.0(100.0) 第一三共ドイツGmbHドイツミュンヘン千EUR51医薬品100.0(100.0) 第一三共イタリアS.p.A.イタリアローマ千EUR120医薬品100.0(100.0) 第一三共スペインS.A.スペインマドリッド千EUR120医薬品100.0(100.0) 第一三共UK Ltd.イギリスバッキンガムシャー百万GBP5医薬品100.0(100.0) 名称住所資本金又は出資金主要な事業の内容議決権の所有割合関係内容 % 第一三共(中国)投資有限公司中国上海千USD146,800医薬品100.0役員の兼任等当社が製品を供給当社が研究開発業務を委託第一三共製薬(上海)有限公司中国上海千USD53,000医薬品100.0(100.0)役員の兼任等当社が製品を供給台湾第一三共股份有限公司台湾台北百万TWD345医薬品100.0役員の兼任等当社が製品を供給韓国第一三共㈱大韓民国ソウル百万KRW3,000医薬品100.0役員の兼任等当社が製品を供給第一三共ブラジルLtda.ブラジルサンパウロ百万BRL39医薬品100.0役員の兼任等当社が製品を供給その他28社 (持分法適用関連会社) 百万円 % ㈱日立医薬情報ソリューションズ東京都千代田区250その他27.2役員の兼任等当社が事務業務を委託(注)1.主要な事業の内容欄は、次の事業区分によっております。医薬品 … 医療用医薬品、一般用医薬品その他 … 不動産賃貸他2.上記関係会社のうち、第一三共エスファ㈱、第一三共ケミカルファーマ㈱、第一三共Inc.、第一三共ヨーロッパGmbH、第一三共(中国)投資有限公司及び第一三共製薬(上海)有限公司は、特定子会社に該当しております。3.議決権の所有割合の( )内は、間接所有を内数で示しております。4.第一三共Inc.及びアメリカン・リージェントInc.については、売上収益(連結会社相互間の内部売上収益を除く)の連結売上収益に占める割合が10%を超えております。主要な損益情報等第一三共Inc.(1) 売上収益 511,200百万円 (2) 税引前利益 58,308百万円(3) 当期利益 67,523百万円(4) 資本合計 191,977百万円(5) 資産合計 652,840百万円アメリカン・リージェントInc.(1) 売上収益 204,684百万円 (2) 税引前利益 88,756百万円(3) 当期利益 69,140百万円(4) 資本合計 334,827百万円(5) 資産合計 409,217百万円5.2023年10月1日付で、当社は、クオールホールディングス㈱との株式譲渡契約に基づき、当社が保有する第一三共エスファ㈱の発行済株式総数の30%に相当する株式をクオールホールディングス㈱に譲渡いたしました。なお、2024年4月1日付で、当社は、第一三共エスファ㈱の発行済株式総数の21%に相当する株式をクオールホールディングス㈱に譲渡し、合計で発行済株式総数の51%に相当する数の株式の譲渡を完了したことから、同社は連結の範囲から外れております。6.第一三共RDノバーレ㈱につきましては、研究開発体制の再編に伴い、その機能を当社に移管し、2024年3月31日付で事業を終了いたしました。 |
従業員の状況 | 5【従業員の状況】 (1) 連結会社の状況 2024年3月31日現在セグメントの名称従業員数(人)医薬事業18,726合計18,726 (注)従業員数は就業人員数であり、当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含めております。 (2) 提出会社の状況 2024年3月31日現在従業員数(人)平均年齢(歳)平均勤続年数(年)平均年間給与(円)5,81745.520.311,134,849 セグメントの名称従業員数(人)医薬事業5,817合計5,817 (注)1.従業員数は就業人員数であり、当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含めております。2.平均年間給与は、基準外賃金及び賞与を含めております。 (3) 労働組合の状況 当社グループには第一三共労働組合等が組織されており、2024年3月31日現在の労働組合の組合員数合計は7,887名であります。 労使関係について特に記載すべき事項はありません。 (4) 管理職に占める女性従業員の割合、男性従業員の育児休業取得率及び従業員の男女の賃金の差異① 提出会社の状況当連結会計年度管理職に占める女性従業員の割合(%)(注)1男性従業員の育児休業取得率(%)(注)2従業員の男女の賃金の差異(%)(注)3、4全従業員うち正規雇用従業員うち非正規雇用従業員11.7101.779.177.786.2 (注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき算出しております。なお、管理職とは、管轄組織の責任者として業績や人材の管理を行うマネジメント職を指しております。また、出向者は出向先の従業員として集計しております。2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行細則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等の取得割合を算出しております。また、出向者は出向先の従業員として集計しております。3.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき算出しております。男性の平均賃金(基本給・賞与・諸手当含む)に対する女性の平均賃金の割合を示し、出向者は出向元の従業員として集計しております。4.男女平均年間賃金の差異は、人事制度上の問題ではなく従業員の年齢構成や世帯状況などによる背景が影響しております。具体的には、次のとおりであります。・男女の年齢構成の違い:高年齢層ほど男性従業員比率が高く、その結果上位等級に占める男性比率が高くなる傾向にあること。・男女の諸手当受給状況の違い:女性従業員の各種諸手当(住宅手当・こども手当など)の受給割合が概ね低い(世帯主・家族扶養などの条件に適合しない)こと。今後の人事諸施策において、更なる是正に向け取り組んで参ります。 ② 連結子会社の状況当連結会計年度名称管理職に占める女性従業員の割合(%)(注)1男性従業員の育児休業取得率(%)(注)2従業員の男女の賃金の差異(%)(注)3、4全従業員うち正規雇用従業員うち非正規雇用従業員第一三共エスファ㈱2.1100.076.568.191.1第一三共ヘルスケア㈱10.580.068.571.184.0第一三共プロファーマ㈱8.3128.674.373.880.1第一三共ケミカルファーマ㈱2.0111.170.769.585.2第一三共バイオテック㈱19.2150.078.178.074.1第一三共RDノバーレ㈱19.4100.076.178.790.5第一三共ビジネスアソシエ㈱8.3100.079.375.781.5 (注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき算出しております。なお、管理職とは、管轄組織の責任者として業績や人材の管理を行うマネジメント職を指しております。また、出向者は出向先の従業員として集計しております。2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行細則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等の取得割合を算出しております。また、出向者は出向先の従業員として集計しております。3.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき算出しております。男性の平均賃金(基本給・賞与・諸手当含む)に対する女性の平均賃金の割合を示し、出向者は出向元の従業員として集計しております。4.男女平均年間賃金の差異は、人事制度上の問題ではなく従業員の年齢構成や世帯状況などによる背景が影響しております。具体的には、次のとおりであります。・男女の年齢構成の違い:高年齢層ほど男性従業員比率が高く、その結果上位等級に占める男性比率が高くなる傾向にあること。・男女の諸手当受給状況の違い:女性従業員の各種諸手当(住宅手当・こども手当など)の受給割合が概ね低い(世帯主・家族扶養などの条件に適合しない)こと。今後の人事諸施策において、更なる是正に向け取り組んで参ります。 ③ 連結会社の状況 海外グループ会社も含めたグローバル全体における管理職に占める女性従業員の割合は34.9%であります。なお、グローバル全体における男性従業員の育児休業取得率及び従業員の男女の賃金の差異については、集計を実施していないため、記載を省略しております。 |
経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 | 1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループにおける経営方針、経営環境及び優先的に対処すべき課題等は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結会社)が判断したものであります。 (1) 第一三共の価値創造プロセスとESG経営 当社グループでは、ESG経営を「ESGの要素を経営戦略に反映させることで、財務的価値と非財務的価値の双方を高める、長期目線に立った経営」と定義し、実践しております。 社会からの多様な要請に応えるため、社内外の様々な経営資源を価値創造プロセスに投入し、サイエンス&テクノロジーを競争優位の最大の源泉として、各ステークホルダーや社会への価値を提供しております。この価値創造プロセスを循環させることで、企業と社会の持続的成長を両立させることができると考えております。 中長期的な企業価値へ影響を及ぼす重要度と、様々なステークホルダーを含む社会からの期待の両面から、8つの重要課題をマテリアリティとして特定し、事業に関わるマテリアリティと事業基盤に関わるマテリアリティに整理しております。 (2) 2030年ビジョン ESG経営のもと、新たに「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」となることを2030年ビジョンとして掲げました。 パーパス(存在意義)である「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」の実現に向けて、当社グループに期待される社会課題の解決(革新的医薬品の創出、SDGsへの取り組み等)を目指し、われわれの強みであるサイエンス&テクノロジーに基づき、イノベーティブなソリューション提供に挑戦し続けます。 (3) 第5期中期経営計画(2021年度-2025年度) ESG経営を実践しつつ、2025年度目標「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を達成し、2030年ビジョン実現に向けた成長ステージに移行することを目指した計画として、第5期中期経営計画を策定し、4つの戦略の柱を設定いたしました。 ① 4つの戦略の柱(ⅰ) 3ADC最大化の実現 第5期中期経営計画においては、エンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdの3ADC(注1)の最大化の実現が最重要課題となります。 エンハーツについては、アストラゼネカとの戦略的提携を通じた市場浸透と新適応の取得を加速して参ります。また、HER2を標的とする競合品に対する優位性を確立するとともに、乳がん治療におけるHER2低発現コンセプトの定着を目指しております。 Dato-DXdについては、アストラゼネカとの戦略的提携を通じて、より早いタイミングでの承認取得とその後の適応追加を目指しております。また、効果的な上市計画を策定・実行するとともに、TROP2を標的とする競合品に対する優位性を確立して参ります。 HER3-DXdについては、自社開発による最速での上市を目指しております。また、効果的な上市計画を策定・実行した上で、がん治療ターゲットとしてのHER3を確立して参ります。 以上の取り組みに加え、注意すべき副作用の一つである間質性肺疾患(ILD)のモニタリングとリスク分析を通じた適正使用を促進するとともに、製品ポテンシャルに合わせて効率的かつ段階的に要員と供給キャパシティを拡大して参ります。 <2021年度-2023年度の主な進捗> エンハーツについては、着実な市場浸透、上市国・地域の拡大とHER2陽性乳がんの2次治療、化学療法既治療のHER2低発現乳がん等の新適応の取得により、当初計画を上回る ペースで売上収益が拡大いたしました。加えて、乳がんの早期治療をはじめとする更なる新適応の取得や適応がん種の拡大に向けた臨床試験も進捗いたしました。Dato-DXdについては、非扁平上皮非小細胞肺がん及びホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は陰性乳がんの2次治療以降の承認申請が受理される等、承認取得とその後の適応追加に向けた開発が進展いたしました。HER3-DXdについては、I-DXd(抗B7-H3 ADC)及びDS-6000(抗CDH6 ADC)とともに、良好な臨床試験データが蓄積し、製品価値極大化を計画するステージに移行いたしました。加えて、ADCの開発競争が一層激化していることを受け、DXd ADCフランチャイズ極大化のためのキャパシティ、リソース、ケイパビリティ増強の必要性が高まってきたことから、より早く、より多くの患者さんにお届けするために、当該3製品について米国メルクとの戦略的提携契約を締結し、同社と共同開発・販促することを決定、開始いたしました。また、HER3-DXdについてはEGFR変異を有する非小細胞肺がんの3次治療の承認申請が受理される等、承認取得とその後の適応追加に向けた開発が進展いたしました。今後も、効果的な開発投資により、第5期中期経営計画後半における飛躍的成長に繋げるよう、製品価値最大化の実現に向けた取組みを着実に進めて参ります。 (注)1.ADC:Antibody Drug Conjugateの略、抗体薬物複合体。抗体医薬と薬物(低分子医薬)を適切なリンカーを介して結合させた医薬品で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体医薬を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつ、がん細胞への攻撃力を高めた薬剤。 (ⅱ) 既存事業・製品の利益成長 持続的な成長に向けた投資を継続していくために、がん事業のみならず、既存事業・製品における利益成長も重要な課題であります。 リクシアナについては、収益性の高い、安定した利益を生み出す製品であることから、当該製品より得た収益を、3ADC及び3ADCに次ぐ成長ドライバーへの投資の源泉とすべく、売上収益の更なる拡大に取り組んで参ります。 タリージェ、Nilemdo等の新製品については、適応追加等を通じた、早期拡大を目指しております。リクシアナに加え、これら新製品の早期拡大により、がん以外の新薬事業においても持続的な成長を目指しております。 各国・各地域においては、新薬を軸とした収益構造へのトランスフォーメーションを強化することで、持続的な利益成長を支える事業構造へと転換を図って参ります。 アメリカン・リージェントについては、インジェクタファー、ジェネリック注射剤を中心とした利益成長を目指しております。第一三共ヘルスケア株式会社については、店舗販売や通販事業を中心とした利益成長を目指しております。 <2021年度-2023年度の主な進捗> リクシアナは、用法及び用量の追加により製品価値が向上し、順調に売上収益が拡大いたしました。更に、各国・各地域においてタリージェ、ヴェノファー、Nilemdo/Nustendi等も着実に成長を遂げました。加えて、エムガルティをはじめとする新製品の上市や、各国・各地域における独占販売期間満了後の製品譲渡及び日本のジェネリック医薬品事業を取り扱う第一三共エスファ株式会社の株式譲渡等が進展し、新薬を軸とした事業構造へのトランスフォーメーションが進みました。今後も、収益性の高い製品の売上を拡大することで、持続的な利益成長を支える事業構造へと転換を図って参ります。 (ⅲ) 更なる成長の柱の見極めと構築 持続的成長を図るため、3ADCに次ぐ成長ドライバーを見極めるとともに、マルチモダリティ研究戦略によりポストDXd-ADCモダリティを選定することも重要な課題であります。 3ADCに次ぐ成長ドライバーについて、DXd-ADCファミリー、第二世代・新コンセプトADC、改変型抗体等の領域から見極めて参ります。 様々なモダリティ技術の中から、持続的成長のためのポストDXd-ADCモダリティを選定して参ります。LNP-mRNAについては、新型コロナウイルス感染症以外でのワクチンにも活用して、ワクチン事業の成長につなげて参ります。 <2021年度-2023年度の主な進捗> I-DXd、DS-6000については、良好な臨床試験データが蓄積し、製品ポテンシャルが一層高まったことから、3ADCに次ぐ成長ドライバーと位置づけ、将来の更なる成長に向けて、エンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdとともに、両製品の開発を加速しております。加えて、第二世代ADC DS-9606(ターゲット非開示ADC)の臨床試験を開始するとともに、COVID-19に対するmRNAワクチンの承認を取得し、供給する等、ポストDXd ADCモダリティ選定も進展いたしました。今後も、当社独自のADC技術等を用いた更なる成長の柱の見極めと構築を進めて参ります。 (ⅳ) ステークホルダーとの価値共創 長期視点でESG経営を進めていく上で、患者さん、株主、社会・環境、従業員といったステークホルダーとの価値共創も重要な課題であります。 3ADCによる様々ながん種への展開や、希少疾患の比重が高まる中、医薬品開発のみならずバリューチェーン全体で、患者さんを中心としたマインド(Patient Centric Mindset)による取り組みを強化し、患者さんへの貢献を果たして参ります。 持続的な企業価値の向上を図るため、バランスのとれた成長投資と株主還元を実現して参ります。 脱炭素社会、サーキュラーエコノミー、自然共生社会といった、社会・環境課題に対し、研究開発から営業に至るバリューチェーン全体で、環境負荷の低減に向けた様々な取り組みにチャレンジし、社会・環境へ貢献して参ります。 平時における自社生産拠点からの季節性インフルエンザワクチン等の安定供給に加え、COVID-19及び将来の新興・再興感染症ワクチンにも応用可能な技術の確立、将来のパンデミック時のワクチン供給体制の整備を通じて、社会へ貢献して参ります。 グループ共通の核となる行動様式(Core Behavior)を定め、グループ全体で実践していくことで、独自の企業文化「One DS Culture」の醸成を図り、グローバル組織と人材における強みを更に強化して参ります。 <2021年度-2023年度の主な進捗> COVID-19に対するmRNAワクチンであるダイチロナ筋注(1価:オミクロン株 XBB.1.5)の日本における供給等、パンデミックリスクへの対応が進捗いたしました。また、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的イニシアチブである「RE100(注2)」に加盟するとともに、日本の自社拠点における使用電力を再生可能エネルギー化する等、環境課題に対する取組みが進展いたしました。引き続き、ステークホルダーとの価値創造プロセスの強化に向けた諸施策を実践して参ります。(注)2.RE100:国際環境NGOであるThe Climate Groupと企業に気候変動対策に関して情報開示を促しているCDPによって運営される、企業の再生可能エネルギー100%を推進する国際的イニシアチブ ② 戦略の実行を支える基盤 4つの戦略の柱の実行を支える基盤を強化するため、DX推進によるデータ駆動型経営を実現するとともに、先進デジタル技術による変革を進めて参ります。加えて、新たなグローバルマネジメント体制により迅速な意思決定を実現して参ります。 <2021年度-2023年度の主な進捗> 社内外のエンハーツの統合データ分析が可能な分析基盤をグローバルで運用開始いたしました。また、オンコロジービジネスユニットを新設し、がん領域における治療体系や市場環境の急速な変化に対し、ビジネスとサイエンスの両面から迅速に対応いたしました。今後も、業容の変化と拡大にあわせてデータ駆動型経営を加速するとともに、グローバル体制を強化して参ります。 ③ 株主還元方針 普通配当1株当たり27円の維持に加え、利益成長に応じた増配や機動的な自己株式取得を実施することで、株主還元のさらなる充実を図って参ります。 KPIとして、株主資本を基準とする株主資本配当率(DOE)を採用し、安定的な株主還元を行う方針とし、2025年度のDOEは株主資本コストを上回る8%以上を目標に掲げ、株主価値の最大化を目指しております。 <2021年度-2023年度の主な進捗> 前連結会計年度においては、エンハーツの想定以上の売上拡大を受け、当初計画で想定していた増配時期を前倒しし、2022年度の1株当たり年間配当を2021年度実績の27円から30円に増配いたしました。 当連結会計年度においては、エンハーツの更なる売上収益拡大等により、引き続き業績が好調に推移していることに加え、米国メルクとの戦略的提携契約締結に伴う契約時一時金を受領したこと等を受け、2023年度の1株当たり年間配当予想を2022年度実績に比べ20円増配の50円とすることを決定いたしました。 引き続き、利益成長に応じた増配や機動的な自己株式取得により、株主還元の更なる充実を図って参ります。 ④ 計数目標 第5期中期経営計画における2025年度の計数目標として、売上収益1兆6,000億円(うち、がん領域において6,000億円以上)、研究開発費控除前コア営業利益率40%以上、ROE16%以上、DOE8%以上を目指しております。なお、2025年度の為替レートの前提は1USD=105円、1EUR=120円であります。 |
サステナビリティに関する考え方及び取組 | 2【サステナビリティに関する考え方及び取組】 当社グループ(当社及び連結会社)は、企業行動憲章に基づき、事業と一体となってサステナビリティ課題へ取り組むとともに、持続的な成長に向けた重要課題(マテリアリティ)を特定し、ESG経営を推進しています。当社グループを取り巻く環境変化や社会要請・期待を踏まえ、毎年、マテリアリティの改善を図るとともに、環境・安全衛生やコンプライアンス等の課題に特化した各委員会を通じてグループ全体での取り組みを推進しています。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1)サステナビリティに関する考え方① 企業行動憲章を基軸としたサステナビリティ方針とESG経営の推進 当社グループは、企業理念実践のために、すべての企業活動において遵守すべき行動原則を定め、事業を通じてサステナビリティ課題に取り組んでいます。各原則に基づき、法令及びルールなどを遵守し、生命関連企業としてふさわしい高い倫理観と社会的良識をもって行動し、多様な社会からの要請・期待に積極的に応えることで、持続可能な社会への貢献とともに、持続的な企業価値の向上を図ります。 また、当社グループのESG経営「ESGの要素を経営戦略に反映させることで、財務的価値と非財務的価値の双方を高める、長期目線に立った経営」を推進して参ります。参照箇所:第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 第一三共の価値創造プロセスとESG経営 ② マテリアリティ(ⅰ) マテリアリティの特定とKPI目標設定 当社グループでは、当社グループの中長期的な企業価値に影響を及ぼす重要度と、当社グループのさまざまなステークホルダーを含む社会からの期待の両面から、中長期的取り組み課題を抽出し、取締役会メンバーによる複数回の議論を経て、2020年3月、持続的な成長に向けて取り組むべきマテリアリティを特定しました。そして、第5期中期経営計画と連動したマテリアリティ毎の長期目標、取り組み指標「KPI」を設定し、2021年4月に公表しています。 「事業マテリアリティ」として、当社グループの価値創造の根幹である「革新的な医薬品の創出」のほか、「高品質な医薬品の安定供給」、「高品質な医療情報の提供」、「医療アクセスの拡大」を定めています。また、「事業基盤マテリアリティ」として、「環境経営の推進」、「コンプライアンス経営の推進」、「企業理念の実現に向けたコーポレートガバナンス」、「競争力と優位性を生み出す多様な人材の活躍推進と育成」を定めています。(ⅱ) マネジメントサイクル 毎年、KPI目標への取り組みの情報開示を通じ、ステークホルダーとの建設的な対話・ESG評価結果等から、新課題を抽出し、取締役会・経営会議での議論・承認を経て、マテリアリティの特定・進化・KPI設定を行っています。 2023年度は、取締役会・経営会議において、マテリアリティの進捗や進化を2回報告・議論し、2024年度も現行のマテリアリティ及びKPIを継続することを決定しております。 (ⅲ) 指標及び目標 各マテリアリティの長期目標、実現に向けた課題、KPI指標、2025年度の目標値、2023年度実績はコーポレートウェブサイトに示しています。《コーポレートウェブサイト 関連ページ》株主・投資家の皆さま- IRライブラリ- 第一三共株式会社 (daiichisankyo.co.jp)(2024年7月上旬公表予定) ③ サステナビリティにおけるガバナンス体制 当社グループにおけるマテリアリティマネジメントでは、業績評価・目標管理制度や各委員会等を通じて各KPI目標値の進捗を確認するとともに、経営会議・取締役会にて全KPI目標値についての進捗報告や、KPI項目・目標値の追加や改善に関する審議を実施し、社内外役員間で活発な意見交換が行われています。また、コンプライアンス経営、EHS経営、社会貢献活動に関わる事項については、各委員会(企業倫理委員会、EHS経営委員会、社会貢献委員会)にて活動方針を決定し全社推進を図るとともに、サステナビリティに関する重要事項については、経営会議や取締役会に報告しています。 ・企業倫理委員会(事務局:コンプライアンス・リスク管理部) 国内外の法令及び企業倫理を遵守し、企業の社会的責任を果たすべく経営を推進し、役員及び従業員によるコンプライアンスの実践を確保するために設置委員長:コンプライアンスオフィサー(コンプライアンス・リスク管理部長)委員 :委員長が指名した社内委員10名のほかに、委員会運営の透明性、信頼性を確保するために社外弁護士1名を加え11名で構成 ・EHS経営委員会(事務局:サステナビリティ部、人事部) 当社グループの企業活動全般において、環境の保全と健康と安全の確保に努め、持続可能な社会に貢献すると同時に、リスクが発生する可能性の高い環境(Environment)、健康(Health)、安全(Safety) マネジメントを一体的に運営、推進するために設置委員長:EHS経営最高責任者(ヘッド オブ グローバル コーポレートストラテジー)委員 :委員長が指名した14名で構成 ・社会貢献委員会(事務局:サステナビリティ部) 良き企業市民として、企業の社会的責任の観点より社会貢献活動を推進するために設置委員長:ヘッド オブ グローバル コーポレートストラテジー委員 :委員長が指名した6名で構成 (2)人的資本への取組 当社グループは、「人」を最重要な「資産」であると位置づけています。パーパスの実現に向け、最重要資本である人的資本の拡充を推進し、持続的な価値創造の原動力としています。 ① ガバナンス 経営と一体となった人財マネジメントを運営・推進するため、CHRO(Chief Human Resource Officer)をトップとするグローバルでの人事組織体制を構築・運用しています。定例の経営会議にCHROが参画し、経営・ビジネス上の進捗や課題を直接的に把握することで、グローバル視点での的確な戦略・施策立案を行っています。また、四半期ごとにGHRLTM(Global Human Resource Leadership Team Meeting)を実施し、戦略・施策の遂行状況をモニタリングしています。 ② 戦略・施策 経営戦略と連動した人財戦略の実行に向け、強化すべき人的資本を「Power of individual:成長し続ける個人の強み」「Power in numbers:強化領域への継続的人財供給」「Power of synergy:人や組織のシナジーを創出する環境・仕組み」の3つの要素として捉え、各要素をモニタリングしながら、施策の効果検証や人的資本拡充のさらなる高度化に取り組んでいます。また、各施策を的確かつ具体的に設計・推進するために、グローバル共通の上位概念・指針として「ピープルフィロソフィー」を制定しています。 * S&T:サイエンス&テクノロジー, DX:デジタルトランスフォーメーション, I&D:インクルージョン&ダイバーシティー Power of individual競争優位の源泉であるサイエンス&テクノロジー(S&T)のさらなる強化に向け、採用チャネルを多角化しながら、S&T人財の獲得を強化・推進しています(2022年度はグローバル全体で395名獲得)。国内では、中長期的視野での持続的成長を目的に、バイオ、グローバルビジネス並びにDXを当社の強化領域とし、独自の育成プログラムと組み合わせて当該領域への人員再配置を実行しました。また、自律的なキャリア形成を目的に、英語力向上意識醸成プログラム並びに各種DXスキル育成プログラムを企画実行し、それぞれ500名並びに1,873名の社員が受講を完了しました。並行して、より実践的な英語でのコミュニケーションリテラシー向上を目的に、グローバルスキル研修を企画実行し、353名の社員が受講を完了しました。 Power in numbers社員のさらなる成長を目的としたグローバル共通でのパフォーマンスマネジメント(新評価制度)導入に伴い、約650名のマネジメント職を対象にコーチング&フィードバック研修を実施しました。また、グローバル共通のラーニングプラットフォームとしてLinkedInラーニングツールを導入し、当社グループのパーパス・ミッションや、グローバルで協働するために必要な行動・スキルに関するコンテンツを展開しています。さらに、グローバルでの人財交流促進や、次世代のグローバルリーダー育成を目的として、海外グループ会社への出向プログラムも実施し、2023年度時点で、国内から米国へ111名、欧州へ32名、アジア中南米へ22名の社員が出向しています。海外グループ会社から国内にも11名の社員が出向しており、双方向での交流・育成に努めています。当社グループの持続的成長に極めて重要となるグローバル視点での経営マネジメント・リーダーシップの育成を目的に、2024年度からDS Academyを開始しました。 Power of synergy・One DS Cultureの浸透パーパス実現に向けて、グローバル全体で当社の課題を克服しながら強みを活かすために必要となる文化「One DS Culture」並びにCulture醸成に必要となる3つの行動様式「Core Behaviors」を2020年度に策定しました。毎年度、グローバル各社からカルチャーアンバサダーを任命し、Core Behaviorsの実践推進を通じたCulture浸透を加速しています。この浸透度合いを確認・検証する目的で、グローバル全体でエンゲージメントサーベイ(One DS Voice)を実施し、当社グループの強みや課題を特定のうえ、改善策を実行しています。なお、2023年度におけるエンゲージメントサーベイ回答率は90%、スコア全24項目で昨年比上昇(総合値は78、対ベンチマーク+4)となりました。 ・インクルージョン&ダイバーシティー当社グループは、国籍・人種・性別・年齢などの属性面に加え、考え方・価値観・ライフスタイルなども含んだ多様な社員が共存し、そのすべての社員が受け容れられ、最大限に実力を発揮することが、グローバルな事業展開やイノベーション創出に繋がると考えています。Core Behaviorsの1つに「Be Inclusive & Embrace Diversity」を定めるとともに、2022年3月の国際女性デーには「Global I&D Statement」を策定し、社内外に当社のI&Dに対する姿勢や考え方を明示しました。国内においても、イノベーション創出という経営戦略と連動した形で女性活躍推進に取り組んでおります。「2025年度までに女性管理職15%以上」という数値目標を設定し、その達成に向け、各組織長との対話会や全社アンケートの実施・分析などを通じて、各種施策を実行しています。また、2017年1月より、女性マネジメント職によるネットワーキング活動(Shining Women’s Advancement Network; SWAN)を開始し、経営陣がオーナーとなって、経営陣とSWANメンバーとの交流や、女性マネジメント同士の経験や悩みの共有機会などを作ることで、次世代女性リーダー育成支援にもつなげています。さらに、海外グループ会社が加盟しているHealthcare Businesswomen‘s Association(HBA)に当社としても加盟し、より広い視点でのグローバルでのI&D連携を加速するとともに、グローバル全体で活躍した女性社員を表彰するプロセスとしてもこのHBAを活用しています。LGBTQ+当事者や周囲の社員にとっても働きがいのある職場環境の醸成を目的に、国内では支援制度の導入や外部相談窓口の設置などを行っています。また、LGBTQ+当事者のための匿名コミュニティとして「レインボーチャット」を開設し、価値観が近い社員同士が気兼ねなく悩みを相談し合える環境を構築しています。さらに、海外グループ会社では、グローバルリーダーからのビデオメッセージ発信や、各種セミナーの実施などを通じて、社員の帰属意識(Belonging)向上につなげています。 (ご参考) インクルージョン&ダイバーシティーに関する当社ホームページ https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/inclusion-diversity/ ・健康経営・ワークライフバランス推進(i)社員の健康と安全「健康宣言・安全宣言」を社内外に発信するとともに、必要な投資を積極的に行い、社員の健康・安全の保持・増進に取り組んでいます。 <健康宣言・安全宣言> 「当社グループの企業理念及びビジョンの実現に向けて会社と従業員が共に成長を遂げるためには、従業員の心と体の健康・安全が不可欠であり、当社グループは、全ての従業員が安全に就業し、健康を保持・増進するための環境づくりに積極的に取り組むことをここに宣言します。」 社員の健康と安全については、EHS(Environment, Health and Safety)経営委員会を設置し、海外・国内グループ会社での方針・目標・施策を定めて推進しています。国内グループ会社においては最高健康経営責任者である社長をトップとした健康経営推進体制にて、会社と労働組合で合意した安全衛生管理の中期方針に基づいた安全衛生施策を推進しています。具体的には、経営課題に対応した施策と期待成果を「健康・労働安全戦略マップ」として策定し、「社員一人ひとりの生産性向上」と「安全で快適な職場形成」の2つを解決すべき経営課題と定めて、国内での重点領域を生活習慣病・がん・メンタルヘルス・運動機能の4領域として、安全衛生施策を推進しています。各施策の効果については、高ストレス者率や喫煙率などの評価指標を設定し、評価に基づきさらなる改善を図っています。 また当社は、これまでの積極的かつ継続的な活動が評価され、経済産業省が実施する「健康経営度調査」において、2018年から7年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」の認定を受けており(当社国内グループとしては4年連続)、 2024年には「健康経営銘柄2024」に選出されました。 (ご参考)第一三共グループの「健康経営推進体制」、「健康・労働安全戦略マップ」、「評価指数」等については、以下を参照 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/employee_health/ (ご参考)「健康経営銘柄2024」に認定 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/performance-reports/news/detail/index_7062.html (ⅱ)ワークライフバランスの推進当社国内グループでは、仕事と生活の好循環を生み出すための「ワークライフサイクル(WLC)」というコンセプトを提唱しています。このWLCの実現に向け、時間や場所に縛られない柔軟な働き方の推進(多様な労働時間制度・テレワーク制度など)や仕事とライフ(育児・介護・治療など)の両立支援、キャリア形成支援(キャリア支援休職・副業など)に加え、各種セミナーや対話会の実施などに取り組んでおります。また、当社グループのグローバル化の進展に伴い、国・地域を跨いだコミュニケーションや会議の機会が増えていることを踏まえ、グローバルでの働き方に関する課題解決を図る「Global Work Style」プロジェクトを2021年度より開始しました。Global Work Style の基本コンセプト「Global Meeting Guideline」や国・地域を跨る共通施策「Global Meeting Measures」を、それぞれCEOメッセージとともにグローバル展開しています。組織独自で設定・運用している「No meeting day」や「De-stressor week」の推進支援も行っています。 (ご参考)ワークライフバランスに関する当社ホームページ https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/worklife-cycle/ ・グローバル共通の人事基盤構築当社グループのビジョンと持続的な成長の達成に向けてグローバル連携を促進すべく、グローバル共通の人事制度並びに人事情報システムの構築・導入を進めています。 ③ リスク管理 当社グループが事業活動を推進し事業目標を達成する上では、各職務に必要な高度な専門性と高い業務遂行能力を持った人財を育成・採用・確保する必要がありますが、採用市場の競争激化などにより、これらの人財を十分に確保できない場合には、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。その対応策として、事業目標を達成する上で必要となる人財の要件を明確に定義し、計画的な採用活動を強化するとともに、社内教育プログラムを始めとする多様なアプローチを活用して人財の育成・確保を図っています。また、先述の通り、グローバル連携を促進するため、グローバル共通の人事制度並びに人事情報システムの構築・導入を進めています。さらに、「One DS Culture」の醸成やInclusion & Diversity (I&D)を推進しながら、グローバル共通のエンゲージメントサーベイによる分析・改善施策を実施しています。 ④ 指標及び目標 先述の「事業基盤マテリアリティ」の「競争力の優位性を生み出す多様な人材の活躍推進」として、以下のKPIを設定し、経営会議や取締役会にてモニタリングしています。 女性上級幹部社員※比率※部所長或いはそれと同等以上の役職にある女性社員2025年度目標:30%企業風土・職場環境に関するエンゲージメントサーベイ肯定的回答率2025年度目標:80%以上もしくは2021年度比10%向上育成・成長機会に関するエンゲージメントサーベイを通じた肯定的回答率2025年度目標:80%以上もしくは2021年度比10%向上社員一人あたりの教育投資額実績値の公表 (3) 気候変動への取組(TCFD*に基づく開示) 地球温暖化や異常気象などの気候変動について、生活や仕事に影響する重要な課題と認識し、様々な環境問題に対し責任ある企業活動を行うために、第一三共グループ企業行動憲章及び第一三共グループEHSポリシーに基づき、環境経営を推進しています。 また、2019年5月にTCFD提言への賛同を表明し、2020年にはガバナンスやシナリオ分析結果など、TCFDの開示枠組みに沿った情報開示を行いました。さらに2021年10月に改訂されたTCFD提言に対応した情報開示を進めると共に、グローバルな課題である気候変動に積極的に応えていくため、気候変動に関するガバナンスや事業戦略の更なる強化を目指します。* Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース ① ガバナンス 企業活動全般において、環境(Environment)の保全と健康と安全(Health & Safety)の確保に努めマネジメントを一体的に運営・推進するため、EHS経営最高責任者を委員長とし、関係組織長(取締役含む)、グループ会社社長を委員として構成する「EHS経営委員会」を設置しています。年2回グローバルEHS経営に関する方針や目標設定、活動の審議・報告を実施しており、審議・報告事項については、取締役会に報告し監督される体制となっています。2023年度は、ネットゼロ移行計画策定及びScope3削減に向けたビジネスパートナーエンゲージメントの推進などについて審議・報告しました。 ② 戦略 地球への環境負荷が増大する中、持続可能な社会が実現されなければ、企業活動を行っていくことはできません。特に、生命関連製品である医薬品は、気象災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や医薬品供給能力の低下は大きな事業リスクであり、社会リスクでもあります。したがって、当社事業の環境負荷低減・脱炭素化を推し進めていくと同時に、ビジネスパートナーとの協働によりサプライチェーン全体の脱炭素化も推進し、カーボンニュートラルの達成と物理的影響を緩和することが重要であると考えています。 一方で、CO2排出量は事業からの直接排出量(Scope1、Scope2)は少なく、サプライチェーンからの排出量(Scope3)が多いことが特徴です。このような認識に基づき、気候変動に伴う当社ビジネスへの影響を把握し、当社のレジリエンス(強靭性)を明確にするため、シナリオ分析を実施しました。 (ⅰ)シナリオ分析の方法 2021年度には部門横断のタスクチームを立ち上げ、関係部門に対し、シナリオ分析の概要及びIEA(国際エネルギー機関)・ IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表するネットゼロシナリオなどに関する勉強会を実施し、2030年以降の事業リスク及び機会について検討を行いました。IEA・ IPCCのシナリオを用い、「移行」及び「物理」双方について、バリューチェーン全体のリスク・機会を洗い出し、洗い出されたリスク・機会については、2022年度にEHS経営委員会で審議・評価を行い、承認を受けています。具体的には「調達」「直接操業」「製品・サービス需要」の観点からリスク・機会を洗い出し、6つに分類しました。IEA・IPCCの脱炭素化シナリオ(1.5℃)と、脱炭素化が達成されないシナリオ(4℃)を選択したのは、移行リスク・物理的リスクの両方において、その極端なケースを想定し、予め備えることが重要であると判断したためです。それぞれについて、「発生頻度」「事業影響・財務影響」「投資家の関心有無」の観点から2030年と2050年までを対象に総合的なリスク・機会の評価を実施し、事業への潜在的影響及びレジリエンスを整理しました。 (ⅱ)シナリオ分析の結果と第一三共のレジリエンス1.5℃シナリオ(移行が進んだ世界)環境の変化リスク・機会当社グループへの潜在的影響影響度*1当社グループのレジリエンス事業リスク*2脱炭素関連の政策・法規制強化炭素税導入2030年時点の炭素税が130$/t-CO2に上昇すると想定しても、年間のコスト負担は約15億円~30億円。*3小財務的インパクトは限定的であり、1.5℃目標に引き上げた気候変動対策を推進することで更に軽微なものにしていく。低再エネ導入に伴う炭素税負担回避将来的な炭素税導入・上昇の対策として、再エネ調達による排出量削減が重要。小再生可能エネルギーを積極的に活用することにより、2030年時点の年間の炭素税負担回避額は約16億円~32億円。*3国内外事業所の電力は、2030年度までに100%再生可能エネルギー由来に転換する。機会再エネ設備導入コスト増エネルギー源は電気・ガスが中心。地域によっては既に再エネ電力を調達。既存の電力をすべて再エネにした場合、年間のコスト負担は約3~6億円。小再エネ・省エネ設備の追加費用は低下傾向であり、対策の推進によりコスト削減に繋げる。低/機会エネルギーコスト等増加エネルギー事業会社の脱炭素対策が実施されるが、対策自体の導入・運用コストが増加すると将来的なエネルギー調達コスト増を予想。小化石燃料由来のエネルギーコストの上昇が予想されるが、現時点では影響は限定的。低調達コストへの価格転嫁ビジネスパートナーが自らの炭素税負担を価格転嫁することで調達コストが上昇する可能性があり、供給網全体での排出量削減が重要。中ビジネスパートナーとの協働により、Scope3の削減を進め、炭素税負担の回避に繋げることで調達コストの上昇を抑える。低/機会企業評価に対する脱炭素への取組の影響増大企業価値の増大脱炭素への取組がESG投資家から評価され、株価上昇など企業価値向上。大脱炭素社会に向けた取り組み、TCFD提言への積極的な対応、株主・投資家の期待に応える情報開示を行うことで評価向上に繋げる。機会 4℃シナリオ(物理的影響が大きくなる世界)環境の変化リスク・機会当社グループへの潜在的影響影響度当社グループのレジリエンス事業リスク気象災害(大雨・洪水・台風)の発生頻度増、規模拡大サプライチェーン寸断安定供給に支障をきたすリスクの高まり。生産・出荷不能により、工場停止や売上減などのリスク。大在庫管理を強化し、災害時でも安定供給に努める複数社からの購買を実施、複数社から購買できていない原料については今後検討していく。中自社拠点の一時操業停止重要な研究・製造拠点が浸水する可能性(水災リスクは総計約94億円)。製造拠点の一部は河川に近くとも浸水の可能性は低いが、交通寸断などにより一時操業停止の可能性。大事業継続計画(BCP)の観点から拠点の水災リスク評価を実施し、強靭化を進めている。緊急事態訓練における洪水対応・減災対策を強化し、水災マニュアルの整備・実証を担保してレジリエンスを高める。低異常気象(浸水)による不良在庫化物流拠点などの浸水に伴い、操業停止に加えて製品在庫も被害を受ける可能性。気温上昇気候変動に伴う疾患増加等悪性黒色腫、循環器、呼吸器疾患、各種熱帯病などに対する関連医薬品の需要拡大と社会からの要請・期待の高まり。疾病構造の変化に伴う既存製品の需要減少の可能性。大需要拡大に応える生産ラインの確保、在庫管理強化に努める。疾病構造の変化やパンデミックも含め、アンメットメディカルニーズ・社会要請の高い疾患に対する研究開発を外部リソースとの連携も合わせ検討する。中/機会空調設備のコスト増本社、研究開発、製造拠点ともに屋内作業が基本であり、気温上昇に伴い空調コスト増が予想されるが影響は限定的。軽微コスト増は吸収可能な範囲であり、財務影響は軽微であるが、引き続きエネルギー効率改善に努める。低保険料/BCPコストの増加気温上昇に伴う風水害の激甚化により、現在でも火災保険料が上昇傾向にある。ただし、将来的な保険料の上昇見通しは限定的。軽微日本では4℃上昇時、洪水発生頻度が4倍上昇すると予想されているが、その結果、保険料が数倍に上昇したとしても財務影響は軽微である。低 環境の変化リスク・機会当社グループへの潜在的影響影響度当社グループのレジリエンス事業リスク水不足自社拠点の一時操業停止最も取水リスクの高い工場である中国とブラジルでの操業停止の可能性。その他地域で想定を超える短期的な渇水の可能性。中雨水タンク設置・リサイクル水活用などの渇水対策を推進する。*4長期に渡り渇水となった場合、薬事規制の動向をみつつ、他拠点活用・製造委託などの緊急時供給対応を検討する。中 生物多様性の喪失天然化合物由来製品の生産性低下生物多様性の喪失により原料が入手できず生産が止まってしまった場合、約20億円/年の損失を予想。中数年分の原料在庫は確保されており、リスクが顕在化する前に迅速な対応を実施する。低*1 影響度は、軽微(1億円未満)、小(1億円~50億円)、中(50億円~100億円)、大(100億円~300億円)を基準に評価*2 事業リスクは影響度と発生頻度を考慮し総合的に評価*3 2030年時点の炭素排出量に炭素価格を乗じて算出*4 ブラジル工場に貯水タンク設置(約450万円の費用投入) 事業活動に対する直接的な移行リスクは限定的であると認識していますが、サプライチェーンについては、今後、炭素税や移行対策などのコスト上昇がリスクとして考えられます。また、物理的リスクについては、気象災害などの激甚化による安定供給に懸念があります。このような分析結果に基づき、移行リスクについてはこれまでの省エネ対策の推進に加え、再生可能エネルギーの活用や脱炭素技術の導入、ビジネスパートナーとの協働による炭素税などの負担回避を通じたコスト低減を機会として創出していきます。また、物理的リスクについては、水害対策を含めたBCPの深化、サプライチェーンの安定性を高める予防策の実施、多様性の確保、支援策の確保、代替策の確保等の対策を実施することで、当社グループにおける毀損を回避し、持続的な企業価値向上を目指していきます。 シナリオ分析で評価・特定された重要なリスク対策については、EHS経営委員会及び取締役会でグループ全体の進捗管理を行っていきます。 ③ リスク管理 気候変動や水に関するリスクなど、事業活動の変更を余儀なくされる可能性のあるリスクを把握し、当社グループのリスクマネジメントシステムの一環としてリスク対応策を実施しています。EHS経営委員会は、気候変動による影響が当社ビジネスにどのようなリスクと機会をもたらすのか、その財務的なインパクトを評価・管理し、レジリエンスを高める重要な役割を果たしており、重大リスクの懸念がある場合は取締役会に報告し、総合的リスク管理に統合されます。加えて、長期的なカーボンニュートラルへの移行を目指し、中期及び短期での目標・実施計画を審議・決定しています。<リスク>1.5℃シナリオIEA SDS(WEO2021), IEA NZE 2050炭素税導入、再エネ設備導入コスト増、不十分な開示によるレピュテーショナルリスク発生4℃シナリオIPCC RCP8.5サプライチェーン寸断、自社拠点の一時操業停止、気温上昇に伴う空調コスト増、取水リスクによる操業困難化、天然化合物由来製品の生産性低下 <機会>1.5℃シナリオSBT*達成に向けた各種施策によるコスト削減や負担回避・投資家からの評価向上4℃シナリオ気候変動に伴い増加する疾患への貢献* Science Based Target:パリ協定の水準に整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のこと ④ 指標及び目標 バリューチェーンごとに事業への潜在的影響及び気候関連のリスク・機会を評価・管理するため、第5期中期経営計画におけるKPI及び環境に関する目標を定めています。第5期中期経営計画の進捗を踏まえ、2021年度に気候変動に関わるKPIの見直しを行った結果、Scope1及びScope2については1.5℃の世界に対応した目標水準へ引き上げを行うとともに、2022年度には、Scope3についてもサプライヤーエンゲージメント目標として、サプライヤーに要請するCO2排出量削減目標の設定を「1.5℃水準」へと更新し、2023年6月に、SBTイニシアチブより「1.5℃目標」の認証を取得しました。 CO2排出量(Scope1+Scope2)2025年目標:2015年度比42%減、2030年目標:2015年度比63%減CO2排出量(Scope3、Cat.1)2025年目標:2020年度比売上高原単位15%減ビジネスパートナー・エンゲージメント(Scope3、Cat.1)2025年目標:ビジネスパートナーの70%以上が1.5℃水準の目標を設定再生可能電力利用率2025年目標:60%以上、2030年目標:100% CO2排出量 単位:t-CO2 2021年度2022年度*12023年度Scope188,24986,00682,658Scope2*2103,15023,72924,061*1 2022年度の算出値は第三者保証を受けた数値に更新*2 2022年度から国内自社拠点における使用電力を再生可能エネルギー化し、Scope2のCO2排出量を大幅に削減 算定方法Scope1:日本の二酸化炭素およびエネルギーの換算係数は、地球温暖化対策の推進に関する法律の数値を使用。日本以外の国々については、排出源地域の当局等の基準あるいはGHGプロトコルに基づく。Scope2:電力購入の契約に基づく排出係数を用いて算定(マーケット基準) |
戦略 | ② 戦略 地球への環境負荷が増大する中、持続可能な社会が実現されなければ、企業活動を行っていくことはできません。特に、生命関連製品である医薬品は、気象災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や医薬品供給能力の低下は大きな事業リスクであり、社会リスクでもあります。したがって、当社事業の環境負荷低減・脱炭素化を推し進めていくと同時に、ビジネスパートナーとの協働によりサプライチェーン全体の脱炭素化も推進し、カーボンニュートラルの達成と物理的影響を緩和することが重要であると考えています。 一方で、CO2排出量は事業からの直接排出量(Scope1、Scope2)は少なく、サプライチェーンからの排出量(Scope3)が多いことが特徴です。このような認識に基づき、気候変動に伴う当社ビジネスへの影響を把握し、当社のレジリエンス(強靭性)を明確にするため、シナリオ分析を実施しました。 (ⅰ)シナリオ分析の方法 2021年度には部門横断のタスクチームを立ち上げ、関係部門に対し、シナリオ分析の概要及びIEA(国際エネルギー機関)・ IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表するネットゼロシナリオなどに関する勉強会を実施し、2030年以降の事業リスク及び機会について検討を行いました。IEA・ IPCCのシナリオを用い、「移行」及び「物理」双方について、バリューチェーン全体のリスク・機会を洗い出し、洗い出されたリスク・機会については、2022年度にEHS経営委員会で審議・評価を行い、承認を受けています。具体的には「調達」「直接操業」「製品・サービス需要」の観点からリスク・機会を洗い出し、6つに分類しました。IEA・IPCCの脱炭素化シナリオ(1.5℃)と、脱炭素化が達成されないシナリオ(4℃)を選択したのは、移行リスク・物理的リスクの両方において、その極端なケースを想定し、予め備えることが重要であると判断したためです。それぞれについて、「発生頻度」「事業影響・財務影響」「投資家の関心有無」の観点から2030年と2050年までを対象に総合的なリスク・機会の評価を実施し、事業への潜在的影響及びレジリエンスを整理しました。 (ⅱ)シナリオ分析の結果と第一三共のレジリエンス1.5℃シナリオ(移行が進んだ世界)環境の変化リスク・機会当社グループへの潜在的影響影響度*1当社グループのレジリエンス事業リスク*2脱炭素関連の政策・法規制強化炭素税導入2030年時点の炭素税が130$/t-CO2に上昇すると想定しても、年間のコスト負担は約15億円~30億円。*3小財務的インパクトは限定的であり、1.5℃目標に引き上げた気候変動対策を推進することで更に軽微なものにしていく。低再エネ導入に伴う炭素税負担回避将来的な炭素税導入・上昇の対策として、再エネ調達による排出量削減が重要。小再生可能エネルギーを積極的に活用することにより、2030年時点の年間の炭素税負担回避額は約16億円~32億円。*3国内外事業所の電力は、2030年度までに100%再生可能エネルギー由来に転換する。機会再エネ設備導入コスト増エネルギー源は電気・ガスが中心。地域によっては既に再エネ電力を調達。既存の電力をすべて再エネにした場合、年間のコスト負担は約3~6億円。小再エネ・省エネ設備の追加費用は低下傾向であり、対策の推進によりコスト削減に繋げる。低/機会エネルギーコスト等増加エネルギー事業会社の脱炭素対策が実施されるが、対策自体の導入・運用コストが増加すると将来的なエネルギー調達コスト増を予想。小化石燃料由来のエネルギーコストの上昇が予想されるが、現時点では影響は限定的。低調達コストへの価格転嫁ビジネスパートナーが自らの炭素税負担を価格転嫁することで調達コストが上昇する可能性があり、供給網全体での排出量削減が重要。中ビジネスパートナーとの協働により、Scope3の削減を進め、炭素税負担の回避に繋げることで調達コストの上昇を抑える。低/機会企業評価に対する脱炭素への取組の影響増大企業価値の増大脱炭素への取組がESG投資家から評価され、株価上昇など企業価値向上。大脱炭素社会に向けた取り組み、TCFD提言への積極的な対応、株主・投資家の期待に応える情報開示を行うことで評価向上に繋げる。機会 4℃シナリオ(物理的影響が大きくなる世界)環境の変化リスク・機会当社グループへの潜在的影響影響度当社グループのレジリエンス事業リスク気象災害(大雨・洪水・台風)の発生頻度増、規模拡大サプライチェーン寸断安定供給に支障をきたすリスクの高まり。生産・出荷不能により、工場停止や売上減などのリスク。大在庫管理を強化し、災害時でも安定供給に努める複数社からの購買を実施、複数社から購買できていない原料については今後検討していく。中自社拠点の一時操業停止重要な研究・製造拠点が浸水する可能性(水災リスクは総計約94億円)。製造拠点の一部は河川に近くとも浸水の可能性は低いが、交通寸断などにより一時操業停止の可能性。大事業継続計画(BCP)の観点から拠点の水災リスク評価を実施し、強靭化を進めている。緊急事態訓練における洪水対応・減災対策を強化し、水災マニュアルの整備・実証を担保してレジリエンスを高める。低異常気象(浸水)による不良在庫化物流拠点などの浸水に伴い、操業停止に加えて製品在庫も被害を受ける可能性。気温上昇気候変動に伴う疾患増加等悪性黒色腫、循環器、呼吸器疾患、各種熱帯病などに対する関連医薬品の需要拡大と社会からの要請・期待の高まり。疾病構造の変化に伴う既存製品の需要減少の可能性。大需要拡大に応える生産ラインの確保、在庫管理強化に努める。疾病構造の変化やパンデミックも含め、アンメットメディカルニーズ・社会要請の高い疾患に対する研究開発を外部リソースとの連携も合わせ検討する。中/機会空調設備のコスト増本社、研究開発、製造拠点ともに屋内作業が基本であり、気温上昇に伴い空調コスト増が予想されるが影響は限定的。軽微コスト増は吸収可能な範囲であり、財務影響は軽微であるが、引き続きエネルギー効率改善に努める。低保険料/BCPコストの増加気温上昇に伴う風水害の激甚化により、現在でも火災保険料が上昇傾向にある。ただし、将来的な保険料の上昇見通しは限定的。軽微日本では4℃上昇時、洪水発生頻度が4倍上昇すると予想されているが、その結果、保険料が数倍に上昇したとしても財務影響は軽微である。低 環境の変化リスク・機会当社グループへの潜在的影響影響度当社グループのレジリエンス事業リスク水不足自社拠点の一時操業停止最も取水リスクの高い工場である中国とブラジルでの操業停止の可能性。その他地域で想定を超える短期的な渇水の可能性。中雨水タンク設置・リサイクル水活用などの渇水対策を推進する。*4長期に渡り渇水となった場合、薬事規制の動向をみつつ、他拠点活用・製造委託などの緊急時供給対応を検討する。中 生物多様性の喪失天然化合物由来製品の生産性低下生物多様性の喪失により原料が入手できず生産が止まってしまった場合、約20億円/年の損失を予想。中数年分の原料在庫は確保されており、リスクが顕在化する前に迅速な対応を実施する。低*1 影響度は、軽微(1億円未満)、小(1億円~50億円)、中(50億円~100億円)、大(100億円~300億円)を基準に評価*2 事業リスクは影響度と発生頻度を考慮し総合的に評価*3 2030年時点の炭素排出量に炭素価格を乗じて算出*4 ブラジル工場に貯水タンク設置(約450万円の費用投入) 事業活動に対する直接的な移行リスクは限定的であると認識していますが、サプライチェーンについては、今後、炭素税や移行対策などのコスト上昇がリスクとして考えられます。また、物理的リスクについては、気象災害などの激甚化による安定供給に懸念があります。このような分析結果に基づき、移行リスクについてはこれまでの省エネ対策の推進に加え、再生可能エネルギーの活用や脱炭素技術の導入、ビジネスパートナーとの協働による炭素税などの負担回避を通じたコスト低減を機会として創出していきます。また、物理的リスクについては、水害対策を含めたBCPの深化、サプライチェーンの安定性を高める予防策の実施、多様性の確保、支援策の確保、代替策の確保等の対策を実施することで、当社グループにおける毀損を回避し、持続的な企業価値向上を目指していきます。 シナリオ分析で評価・特定された重要なリスク対策については、EHS経営委員会及び取締役会でグループ全体の進捗管理を行っていきます。 |
指標及び目標 | * Science Based Target:パリ協定の水準に整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のこと ④ 指標及び目標 バリューチェーンごとに事業への潜在的影響及び気候関連のリスク・機会を評価・管理するため、第5期中期経営計画におけるKPI及び環境に関する目標を定めています。第5期中期経営計画の進捗を踏まえ、2021年度に気候変動に関わるKPIの見直しを行った結果、Scope1及びScope2については1.5℃の世界に対応した目標水準へ引き上げを行うとともに、2022年度には、Scope3についてもサプライヤーエンゲージメント目標として、サプライヤーに要請するCO2排出量削減目標の設定を「1.5℃水準」へと更新し、2023年6月に、SBTイニシアチブより「1.5℃目標」の認証を取得しました。 CO2排出量(Scope1+Scope2)2025年目標:2015年度比42%減、2030年目標:2015年度比63%減CO2排出量(Scope3、Cat.1)2025年目標:2020年度比売上高原単位15%減ビジネスパートナー・エンゲージメント(Scope3、Cat.1)2025年目標:ビジネスパートナーの70%以上が1.5℃水準の目標を設定再生可能電力利用率2025年目標:60%以上、2030年目標:100% CO2排出量 単位:t-CO2 2021年度2022年度*12023年度Scope188,24986,00682,658Scope2*2103,15023,72924,061*1 2022年度の算出値は第三者保証を受けた数値に更新*2 2022年度から国内自社拠点における使用電力を再生可能エネルギー化し、Scope2のCO2排出量を大幅に削減 算定方法Scope1:日本の二酸化炭素およびエネルギーの換算係数は、地球温暖化対策の推進に関する法律の数値を使用。日本以外の国々については、排出源地域の当局等の基準あるいはGHGプロトコルに基づく。Scope2:電力購入の契約に基づく排出係数を用いて算定(マーケット基準) |
人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略 | (2)人的資本への取組 当社グループは、「人」を最重要な「資産」であると位置づけています。パーパスの実現に向け、最重要資本である人的資本の拡充を推進し、持続的な価値創造の原動力としています。 ① ガバナンス 経営と一体となった人財マネジメントを運営・推進するため、CHRO(Chief Human Resource Officer)をトップとするグローバルでの人事組織体制を構築・運用しています。定例の経営会議にCHROが参画し、経営・ビジネス上の進捗や課題を直接的に把握することで、グローバル視点での的確な戦略・施策立案を行っています。また、四半期ごとにGHRLTM(Global Human Resource Leadership Team Meeting)を実施し、戦略・施策の遂行状況をモニタリングしています。 ② 戦略・施策 経営戦略と連動した人財戦略の実行に向け、強化すべき人的資本を「Power of individual:成長し続ける個人の強み」「Power in numbers:強化領域への継続的人財供給」「Power of synergy:人や組織のシナジーを創出する環境・仕組み」の3つの要素として捉え、各要素をモニタリングしながら、施策の効果検証や人的資本拡充のさらなる高度化に取り組んでいます。また、各施策を的確かつ具体的に設計・推進するために、グローバル共通の上位概念・指針として「ピープルフィロソフィー」を制定しています。 * S&T:サイエンス&テクノロジー, DX:デジタルトランスフォーメーション, I&D:インクルージョン&ダイバーシティー Power of individual競争優位の源泉であるサイエンス&テクノロジー(S&T)のさらなる強化に向け、採用チャネルを多角化しながら、S&T人財の獲得を強化・推進しています(2022年度はグローバル全体で395名獲得)。国内では、中長期的視野での持続的成長を目的に、バイオ、グローバルビジネス並びにDXを当社の強化領域とし、独自の育成プログラムと組み合わせて当該領域への人員再配置を実行しました。また、自律的なキャリア形成を目的に、英語力向上意識醸成プログラム並びに各種DXスキル育成プログラムを企画実行し、それぞれ500名並びに1,873名の社員が受講を完了しました。並行して、より実践的な英語でのコミュニケーションリテラシー向上を目的に、グローバルスキル研修を企画実行し、353名の社員が受講を完了しました。 Power in numbers社員のさらなる成長を目的としたグローバル共通でのパフォーマンスマネジメント(新評価制度)導入に伴い、約650名のマネジメント職を対象にコーチング&フィードバック研修を実施しました。また、グローバル共通のラーニングプラットフォームとしてLinkedInラーニングツールを導入し、当社グループのパーパス・ミッションや、グローバルで協働するために必要な行動・スキルに関するコンテンツを展開しています。さらに、グローバルでの人財交流促進や、次世代のグローバルリーダー育成を目的として、海外グループ会社への出向プログラムも実施し、2023年度時点で、国内から米国へ111名、欧州へ32名、アジア中南米へ22名の社員が出向しています。海外グループ会社から国内にも11名の社員が出向しており、双方向での交流・育成に努めています。当社グループの持続的成長に極めて重要となるグローバル視点での経営マネジメント・リーダーシップの育成を目的に、2024年度からDS Academyを開始しました。 Power of synergy・One DS Cultureの浸透パーパス実現に向けて、グローバル全体で当社の課題を克服しながら強みを活かすために必要となる文化「One DS Culture」並びにCulture醸成に必要となる3つの行動様式「Core Behaviors」を2020年度に策定しました。毎年度、グローバル各社からカルチャーアンバサダーを任命し、Core Behaviorsの実践推進を通じたCulture浸透を加速しています。この浸透度合いを確認・検証する目的で、グローバル全体でエンゲージメントサーベイ(One DS Voice)を実施し、当社グループの強みや課題を特定のうえ、改善策を実行しています。なお、2023年度におけるエンゲージメントサーベイ回答率は90%、スコア全24項目で昨年比上昇(総合値は78、対ベンチマーク+4)となりました。 ・インクルージョン&ダイバーシティー当社グループは、国籍・人種・性別・年齢などの属性面に加え、考え方・価値観・ライフスタイルなども含んだ多様な社員が共存し、そのすべての社員が受け容れられ、最大限に実力を発揮することが、グローバルな事業展開やイノベーション創出に繋がると考えています。Core Behaviorsの1つに「Be Inclusive & Embrace Diversity」を定めるとともに、2022年3月の国際女性デーには「Global I&D Statement」を策定し、社内外に当社のI&Dに対する姿勢や考え方を明示しました。国内においても、イノベーション創出という経営戦略と連動した形で女性活躍推進に取り組んでおります。「2025年度までに女性管理職15%以上」という数値目標を設定し、その達成に向け、各組織長との対話会や全社アンケートの実施・分析などを通じて、各種施策を実行しています。また、2017年1月より、女性マネジメント職によるネットワーキング活動(Shining Women’s Advancement Network; SWAN)を開始し、経営陣がオーナーとなって、経営陣とSWANメンバーとの交流や、女性マネジメント同士の経験や悩みの共有機会などを作ることで、次世代女性リーダー育成支援にもつなげています。さらに、海外グループ会社が加盟しているHealthcare Businesswomen‘s Association(HBA)に当社としても加盟し、より広い視点でのグローバルでのI&D連携を加速するとともに、グローバル全体で活躍した女性社員を表彰するプロセスとしてもこのHBAを活用しています。LGBTQ+当事者や周囲の社員にとっても働きがいのある職場環境の醸成を目的に、国内では支援制度の導入や外部相談窓口の設置などを行っています。また、LGBTQ+当事者のための匿名コミュニティとして「レインボーチャット」を開設し、価値観が近い社員同士が気兼ねなく悩みを相談し合える環境を構築しています。さらに、海外グループ会社では、グローバルリーダーからのビデオメッセージ発信や、各種セミナーの実施などを通じて、社員の帰属意識(Belonging)向上につなげています。 (ご参考) インクルージョン&ダイバーシティーに関する当社ホームページ https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/inclusion-diversity/ ・健康経営・ワークライフバランス推進(i)社員の健康と安全「健康宣言・安全宣言」を社内外に発信するとともに、必要な投資を積極的に行い、社員の健康・安全の保持・増進に取り組んでいます。 <健康宣言・安全宣言> 「当社グループの企業理念及びビジョンの実現に向けて会社と従業員が共に成長を遂げるためには、従業員の心と体の健康・安全が不可欠であり、当社グループは、全ての従業員が安全に就業し、健康を保持・増進するための環境づくりに積極的に取り組むことをここに宣言します。」 社員の健康と安全については、EHS(Environment, Health and Safety)経営委員会を設置し、海外・国内グループ会社での方針・目標・施策を定めて推進しています。国内グループ会社においては最高健康経営責任者である社長をトップとした健康経営推進体制にて、会社と労働組合で合意した安全衛生管理の中期方針に基づいた安全衛生施策を推進しています。具体的には、経営課題に対応した施策と期待成果を「健康・労働安全戦略マップ」として策定し、「社員一人ひとりの生産性向上」と「安全で快適な職場形成」の2つを解決すべき経営課題と定めて、国内での重点領域を生活習慣病・がん・メンタルヘルス・運動機能の4領域として、安全衛生施策を推進しています。各施策の効果については、高ストレス者率や喫煙率などの評価指標を設定し、評価に基づきさらなる改善を図っています。 また当社は、これまでの積極的かつ継続的な活動が評価され、経済産業省が実施する「健康経営度調査」において、2018年から7年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」の認定を受けており(当社国内グループとしては4年連続)、 2024年には「健康経営銘柄2024」に選出されました。 (ご参考)第一三共グループの「健康経営推進体制」、「健康・労働安全戦略マップ」、「評価指数」等については、以下を参照 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/employee_health/ (ご参考)「健康経営銘柄2024」に認定 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/performance-reports/news/detail/index_7062.html (ⅱ)ワークライフバランスの推進当社国内グループでは、仕事と生活の好循環を生み出すための「ワークライフサイクル(WLC)」というコンセプトを提唱しています。このWLCの実現に向け、時間や場所に縛られない柔軟な働き方の推進(多様な労働時間制度・テレワーク制度など)や仕事とライフ(育児・介護・治療など)の両立支援、キャリア形成支援(キャリア支援休職・副業など)に加え、各種セミナーや対話会の実施などに取り組んでおります。また、当社グループのグローバル化の進展に伴い、国・地域を跨いだコミュニケーションや会議の機会が増えていることを踏まえ、グローバルでの働き方に関する課題解決を図る「Global Work Style」プロジェクトを2021年度より開始しました。Global Work Style の基本コンセプト「Global Meeting Guideline」や国・地域を跨る共通施策「Global Meeting Measures」を、それぞれCEOメッセージとともにグローバル展開しています。組織独自で設定・運用している「No meeting day」や「De-stressor week」の推進支援も行っています。 (ご参考)ワークライフバランスに関する当社ホームページ https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/worklife-cycle/ ・グローバル共通の人事基盤構築当社グループのビジョンと持続的な成長の達成に向けてグローバル連携を促進すべく、グローバル共通の人事制度並びに人事情報システムの構築・導入を進めています。 ③ リスク管理 当社グループが事業活動を推進し事業目標を達成する上では、各職務に必要な高度な専門性と高い業務遂行能力を持った人財を育成・採用・確保する必要がありますが、採用市場の競争激化などにより、これらの人財を十分に確保できない場合には、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。その対応策として、事業目標を達成する上で必要となる人財の要件を明確に定義し、計画的な採用活動を強化するとともに、社内教育プログラムを始めとする多様なアプローチを活用して人財の育成・確保を図っています。また、先述の通り、グローバル連携を促進するため、グローバル共通の人事制度並びに人事情報システムの構築・導入を進めています。さらに、「One DS Culture」の醸成やInclusion & Diversity (I&D)を推進しながら、グローバル共通のエンゲージメントサーベイによる分析・改善施策を実施しています。 ④ 指標及び目標 先述の「事業基盤マテリアリティ」の「競争力の優位性を生み出す多様な人材の活躍推進」として、以下のKPIを設定し、経営会議や取締役会にてモニタリングしています。 女性上級幹部社員※比率※部所長或いはそれと同等以上の役職にある女性社員2025年度目標:30%企業風土・職場環境に関するエンゲージメントサーベイ肯定的回答率2025年度目標:80%以上もしくは2021年度比10%向上育成・成長機会に関するエンゲージメントサーベイを通じた肯定的回答率2025年度目標:80%以上もしくは2021年度比10%向上社員一人あたりの教育投資額実績値の公表 |
人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標 | (2)人的資本への取組 当社グループは、「人」を最重要な「資産」であると位置づけています。パーパスの実現に向け、最重要資本である人的資本の拡充を推進し、持続的な価値創造の原動力としています。 ① ガバナンス 経営と一体となった人財マネジメントを運営・推進するため、CHRO(Chief Human Resource Officer)をトップとするグローバルでの人事組織体制を構築・運用しています。定例の経営会議にCHROが参画し、経営・ビジネス上の進捗や課題を直接的に把握することで、グローバル視点での的確な戦略・施策立案を行っています。また、四半期ごとにGHRLTM(Global Human Resource Leadership Team Meeting)を実施し、戦略・施策の遂行状況をモニタリングしています。 ② 戦略・施策 経営戦略と連動した人財戦略の実行に向け、強化すべき人的資本を「Power of individual:成長し続ける個人の強み」「Power in numbers:強化領域への継続的人財供給」「Power of synergy:人や組織のシナジーを創出する環境・仕組み」の3つの要素として捉え、各要素をモニタリングしながら、施策の効果検証や人的資本拡充のさらなる高度化に取り組んでいます。また、各施策を的確かつ具体的に設計・推進するために、グローバル共通の上位概念・指針として「ピープルフィロソフィー」を制定しています。 * S&T:サイエンス&テクノロジー, DX:デジタルトランスフォーメーション, I&D:インクルージョン&ダイバーシティー Power of individual競争優位の源泉であるサイエンス&テクノロジー(S&T)のさらなる強化に向け、採用チャネルを多角化しながら、S&T人財の獲得を強化・推進しています(2022年度はグローバル全体で395名獲得)。国内では、中長期的視野での持続的成長を目的に、バイオ、グローバルビジネス並びにDXを当社の強化領域とし、独自の育成プログラムと組み合わせて当該領域への人員再配置を実行しました。また、自律的なキャリア形成を目的に、英語力向上意識醸成プログラム並びに各種DXスキル育成プログラムを企画実行し、それぞれ500名並びに1,873名の社員が受講を完了しました。並行して、より実践的な英語でのコミュニケーションリテラシー向上を目的に、グローバルスキル研修を企画実行し、353名の社員が受講を完了しました。 Power in numbers社員のさらなる成長を目的としたグローバル共通でのパフォーマンスマネジメント(新評価制度)導入に伴い、約650名のマネジメント職を対象にコーチング&フィードバック研修を実施しました。また、グローバル共通のラーニングプラットフォームとしてLinkedInラーニングツールを導入し、当社グループのパーパス・ミッションや、グローバルで協働するために必要な行動・スキルに関するコンテンツを展開しています。さらに、グローバルでの人財交流促進や、次世代のグローバルリーダー育成を目的として、海外グループ会社への出向プログラムも実施し、2023年度時点で、国内から米国へ111名、欧州へ32名、アジア中南米へ22名の社員が出向しています。海外グループ会社から国内にも11名の社員が出向しており、双方向での交流・育成に努めています。当社グループの持続的成長に極めて重要となるグローバル視点での経営マネジメント・リーダーシップの育成を目的に、2024年度からDS Academyを開始しました。 Power of synergy・One DS Cultureの浸透パーパス実現に向けて、グローバル全体で当社の課題を克服しながら強みを活かすために必要となる文化「One DS Culture」並びにCulture醸成に必要となる3つの行動様式「Core Behaviors」を2020年度に策定しました。毎年度、グローバル各社からカルチャーアンバサダーを任命し、Core Behaviorsの実践推進を通じたCulture浸透を加速しています。この浸透度合いを確認・検証する目的で、グローバル全体でエンゲージメントサーベイ(One DS Voice)を実施し、当社グループの強みや課題を特定のうえ、改善策を実行しています。なお、2023年度におけるエンゲージメントサーベイ回答率は90%、スコア全24項目で昨年比上昇(総合値は78、対ベンチマーク+4)となりました。 ・インクルージョン&ダイバーシティー当社グループは、国籍・人種・性別・年齢などの属性面に加え、考え方・価値観・ライフスタイルなども含んだ多様な社員が共存し、そのすべての社員が受け容れられ、最大限に実力を発揮することが、グローバルな事業展開やイノベーション創出に繋がると考えています。Core Behaviorsの1つに「Be Inclusive & Embrace Diversity」を定めるとともに、2022年3月の国際女性デーには「Global I&D Statement」を策定し、社内外に当社のI&Dに対する姿勢や考え方を明示しました。国内においても、イノベーション創出という経営戦略と連動した形で女性活躍推進に取り組んでおります。「2025年度までに女性管理職15%以上」という数値目標を設定し、その達成に向け、各組織長との対話会や全社アンケートの実施・分析などを通じて、各種施策を実行しています。また、2017年1月より、女性マネジメント職によるネットワーキング活動(Shining Women’s Advancement Network; SWAN)を開始し、経営陣がオーナーとなって、経営陣とSWANメンバーとの交流や、女性マネジメント同士の経験や悩みの共有機会などを作ることで、次世代女性リーダー育成支援にもつなげています。さらに、海外グループ会社が加盟しているHealthcare Businesswomen‘s Association(HBA)に当社としても加盟し、より広い視点でのグローバルでのI&D連携を加速するとともに、グローバル全体で活躍した女性社員を表彰するプロセスとしてもこのHBAを活用しています。LGBTQ+当事者や周囲の社員にとっても働きがいのある職場環境の醸成を目的に、国内では支援制度の導入や外部相談窓口の設置などを行っています。また、LGBTQ+当事者のための匿名コミュニティとして「レインボーチャット」を開設し、価値観が近い社員同士が気兼ねなく悩みを相談し合える環境を構築しています。さらに、海外グループ会社では、グローバルリーダーからのビデオメッセージ発信や、各種セミナーの実施などを通じて、社員の帰属意識(Belonging)向上につなげています。 (ご参考) インクルージョン&ダイバーシティーに関する当社ホームページ https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/inclusion-diversity/ ・健康経営・ワークライフバランス推進(i)社員の健康と安全「健康宣言・安全宣言」を社内外に発信するとともに、必要な投資を積極的に行い、社員の健康・安全の保持・増進に取り組んでいます。 <健康宣言・安全宣言> 「当社グループの企業理念及びビジョンの実現に向けて会社と従業員が共に成長を遂げるためには、従業員の心と体の健康・安全が不可欠であり、当社グループは、全ての従業員が安全に就業し、健康を保持・増進するための環境づくりに積極的に取り組むことをここに宣言します。」 社員の健康と安全については、EHS(Environment, Health and Safety)経営委員会を設置し、海外・国内グループ会社での方針・目標・施策を定めて推進しています。国内グループ会社においては最高健康経営責任者である社長をトップとした健康経営推進体制にて、会社と労働組合で合意した安全衛生管理の中期方針に基づいた安全衛生施策を推進しています。具体的には、経営課題に対応した施策と期待成果を「健康・労働安全戦略マップ」として策定し、「社員一人ひとりの生産性向上」と「安全で快適な職場形成」の2つを解決すべき経営課題と定めて、国内での重点領域を生活習慣病・がん・メンタルヘルス・運動機能の4領域として、安全衛生施策を推進しています。各施策の効果については、高ストレス者率や喫煙率などの評価指標を設定し、評価に基づきさらなる改善を図っています。 また当社は、これまでの積極的かつ継続的な活動が評価され、経済産業省が実施する「健康経営度調査」において、2018年から7年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」の認定を受けており(当社国内グループとしては4年連続)、 2024年には「健康経営銘柄2024」に選出されました。 (ご参考)第一三共グループの「健康経営推進体制」、「健康・労働安全戦略マップ」、「評価指数」等については、以下を参照 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/employee_health/ (ご参考)「健康経営銘柄2024」に認定 https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/performance-reports/news/detail/index_7062.html (ⅱ)ワークライフバランスの推進当社国内グループでは、仕事と生活の好循環を生み出すための「ワークライフサイクル(WLC)」というコンセプトを提唱しています。このWLCの実現に向け、時間や場所に縛られない柔軟な働き方の推進(多様な労働時間制度・テレワーク制度など)や仕事とライフ(育児・介護・治療など)の両立支援、キャリア形成支援(キャリア支援休職・副業など)に加え、各種セミナーや対話会の実施などに取り組んでおります。また、当社グループのグローバル化の進展に伴い、国・地域を跨いだコミュニケーションや会議の機会が増えていることを踏まえ、グローバルでの働き方に関する課題解決を図る「Global Work Style」プロジェクトを2021年度より開始しました。Global Work Style の基本コンセプト「Global Meeting Guideline」や国・地域を跨る共通施策「Global Meeting Measures」を、それぞれCEOメッセージとともにグローバル展開しています。組織独自で設定・運用している「No meeting day」や「De-stressor week」の推進支援も行っています。 (ご参考)ワークライフバランスに関する当社ホームページ https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/worklife-cycle/ ・グローバル共通の人事基盤構築当社グループのビジョンと持続的な成長の達成に向けてグローバル連携を促進すべく、グローバル共通の人事制度並びに人事情報システムの構築・導入を進めています。 ③ リスク管理 当社グループが事業活動を推進し事業目標を達成する上では、各職務に必要な高度な専門性と高い業務遂行能力を持った人財を育成・採用・確保する必要がありますが、採用市場の競争激化などにより、これらの人財を十分に確保できない場合には、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。その対応策として、事業目標を達成する上で必要となる人財の要件を明確に定義し、計画的な採用活動を強化するとともに、社内教育プログラムを始めとする多様なアプローチを活用して人財の育成・確保を図っています。また、先述の通り、グローバル連携を促進するため、グローバル共通の人事制度並びに人事情報システムの構築・導入を進めています。さらに、「One DS Culture」の醸成やInclusion & Diversity (I&D)を推進しながら、グローバル共通のエンゲージメントサーベイによる分析・改善施策を実施しています。 ④ 指標及び目標 先述の「事業基盤マテリアリティ」の「競争力の優位性を生み出す多様な人材の活躍推進」として、以下のKPIを設定し、経営会議や取締役会にてモニタリングしています。 女性上級幹部社員※比率※部所長或いはそれと同等以上の役職にある女性社員2025年度目標:30%企業風土・職場環境に関するエンゲージメントサーベイ肯定的回答率2025年度目標:80%以上もしくは2021年度比10%向上育成・成長機会に関するエンゲージメントサーベイを通じた肯定的回答率2025年度目標:80%以上もしくは2021年度比10%向上社員一人あたりの教育投資額実績値の公表 |
事業等のリスク | 3【事業等のリスク】 当社グループでは、組織の目的・目標の達成を阻害する可能性を有し、かつ事前に想定し得る要因をリスクとして特定し、企業活動に潜在するリスクへの適切な対応(保有、低減、回避、移転)を行うとともに、リスクが顕在化した際の人・社会・企業への影響を最小限に留めるべく、リスクマネジメントを推進しております。具体的には、潜在するリスクへの適切な対応を定めるリスクマネジメント体制を構築するとともに、事業に影響を与えかねない災害等が万が一起こった場合においても事業の継続を可能とするためのBCPや、想定以上のリスクが顕在化した際の損失を最小とするクライシスマネジメント体制を整えております。 (1) リスクマネジメント当社グループのリスクマネジメントの推進にあたっては、ヘッド オブ グローバル コンプライアンス・リスクマネジメントがリスクマネジメント推進責任者として当社グループ全体のリスクマネジメントを統括し、事業計画策定・実行の年次サイクルに合わせたリスクマネジメント体制を運営しております。各ユニット・機能においてはそれぞれの責任者が、組織の目的・目標の達成に向け、リスクの抽出、リスクアセスメントの実施、対応策の策定・実行、組織内でのリスクマネジメントに関わる情報提供・教育・啓発等自律的にリスクマネジメントを推進しております。リスクマネジメント事務局では、各ユニットから抽出されたリスクについて、影響度と発生可能性の観点からリスクアセスメントを確認・調整し、企業経営に重大な影響が想定されると評価したリスク項目を、毎年、経営会議及び取締役会において重大リスクとして特定いたします(下図「当社グループにおけるリスクレベル分類の概念図」参照)。さらに特定した重大リスクごとに担当責任者が任命され、関係組織と連携の上、リスク対応策を実行しております。その進捗状況は、年2回のリスクモニタリングを通じて確認され、必要に応じた是正・改善がなされます。重大リスク顕在化の予兆が確認された際は、速やかにリスクマネジメント推進責任者に情報が集約され、CEOに報告される体制としております。 (2) 事業継続計画(BCP)当社グループのBCPは、事業継続へ影響を及ぼす様々な脅威に対処するべくオールハザード型BCPとして整備し、有事においても社会からの要請に応えるために医薬品等の安定供給及び品質確保を可能とする体制、並びに研究開発の継続性を確保できる体制を構築しています。当社グループでは、クライシスの多様化とビジネスのグローバル化に対応するべく、脅威が顕在化した際により適切に対応できるよう継続的な改善を図っています。また、優先して供給する品目については、製薬企業としての社会的責任の大きな製品や、事業継続のために重要な製品等について速やかな供給の実現を目指し、定期的に見直しを行っています。 ① サプライチェーンにおけるBCP施策当社グループでは、ビジネスのグローバル化に伴い、原材料等の調達や製品の製造・物流等のサプライチェーンが複雑化する中で、医薬品の安定供給を継続するために必要な設備、在庫、要員、情報システム等の経営資源に対し、予防策の実施、多重性の確保、支援策の確保、代替策の確保の4つの視点からそれぞれ対策を講じています。 ② 新型インフルエンザ行動計画当社グループでは、新型インフルエンザウイルスの世界的な大流行(パンデミック)に備え、従業員及びその家族の安全を確保し、医薬品の供給を継続することを目的とした「新型インフルエンザ行動計画」を2009年より策定しております。また、当社は、新型インフルエンザ等対策特別措置法において指定公共機関に指定されており、国や地方の行政機関が行う対策に協力する責務があります。医薬品の供給継続により、医療体制の維持に貢献することで、社会的責任を果たして参ります。 (3) クライシスマネジメント当社グループのグローバルクライシスマネジメントポリシーでは、企業活動に潜在するリスクのうち、顕在化し緊急な対応が必要な事象、発生可能性が極めて高くなった事象を総称して「クライシス」と定義しており、その発生による損失の最小化を図ることを目的に、クライシスマネジメントに関わる基本的事項を定めております。基本方針として、「クライシス発生時は、『第一三共グループの社員及び関係者の生命や地域社会の安全を確保する』『生命関連企業の一員としての責任を全うする』ことを基本に、迅速かつ確実にクライシスマネジメントを展開し、人・社会・企業への影響を最小限に止め、事業の継続や早期復旧を図るべく努力する」ことを定めております。当社グループでは、クライシスの種類(災害・事故、事件<テロを含む>・不祥事・法令違反、情報管理に関する問題、製品に関する問題)やクライシスの影響度合いに応じて、機動的な対応を可能とする体制を構築しております(下図「クライシス発生時の初期対応」参照)。報告基準や報告ルートを明確に定め、クライシスマネジメント責任者(CEO又はCEOが指名した者)、クライシス初期対応責任者(ヘッド オブ グローバル リスクマネジメント)を設置し、グローバルに影響が大きく、全社対応の必要性があるクライシスについては、リスクマネジメント推進責任者(ヘッド オブ グローバル コンプライアンス・リスクマネジメント)とも当該情報を共有し、迅速かつ的確な初期対応により、事態の拡大防止と早期収束に努めて参ります。また、クライシス収束後は、事後分析により、再発の防止や対応の改善を図って参ります。 (4) 重大リスクとして認識している事項有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結会社)が判断したものであり、既知若しくは未知のリスク、不確実性又はその他の要因により、実際の結果とは乖離する可能性があります。 ① 研究開発・他社とのアライアンス等に関するリスク・リスク新薬候補品の研究開発には、多額の費用と長い年月が必要ですが、その間に期待された有用性が確認できず研究開発を中止する可能性があります。また、臨床試験で良好な結果が得られても承認審査基準の変更等により承認が得られなくなる可能性があります。さらに、第三者との研究開発に係る提携に関して契約の条件変更・終了等が起こった場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社は、重点領域であるがん領域において、特にエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン T-DXd/DS-8201)とダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062)をフラグシップアセットと位置付け、開発の拡大・加速化に取り組んでおり、それぞれ2019年3月、2020年7月にアストラゼネカ社と戦略的提携を開始いたしました。さらにパトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd/U3-1402)、イフィナタマブ デルクステカン(I-DXd/DS-7300)及びDS-6000(R-DXd)について2023年10月に米国メルク社と戦略提携を開始しました。当該品目について、研究開発・承認申請・上市の遅延、期待した有効性・安全性が得られない、あるいは販売計画からの進捗遅延等が生じた場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社ではアストラゼネカ社及び米国メルク社との戦略的提携を統合的にガバナンスする仕組みとして各種の共同委員会を設置し、ビジョンと戦略の策定、提携事業の損益管理、開発面及び営業面での投資判断、業績と主要マイルストーン管理、グローバルな上市準備等を推進しております。また、当局との継続的なコミュニケーションを通じた薬事リスクの管理・低減にも努めております。 ② 医薬品の品質問題や副作用に関するリスク・リスク医薬品は医薬品医療機器等法を含む国内外の法規制等の下で製造販売されておりますが、品質問題や、予期せぬ副作用発現の問題が発生した場合は、当社グループの医薬品の売上が減少するとともに、製品回収や販売中止、健康被害に関する賠償責任等に係る多額の費用が発生する等、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応品質について、安全で高品質の製品を患者さんにお届けし、安心して使用いただくために、GMP(Good Manufacturing Practice: 医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)及びGDP(Good Distribution Practice: 輸送・保管における医薬品の品質を確保することを目的とした基準)に適合する管理体制を強化し、原材料の調達から保管、医薬品の製造に加え、流通段階も含め一貫した品質保証に取り組んでいます。また、グループ会社の事業所及びビジネスパートナーに対して定期的に監査を行い、適切な品質マネジメント体制の維持・向上及びリスク低減に努めています。安全性について当社グループでは、国内外の安全管理情報(副作用情報等)を収集し、客観的に評価・検討・分析した結果を医療現場へ情報提供することで医薬品の適正使用を推進しております。さらに、全従業員を対象とした安全管理情報についての研修を毎年実施し、安全管理を徹底することで、患者さんの安全性リスクの最小化に努めております。 ③ 海外における事業展開に関するリスク・リスク当社グループは、医薬品の開発、製造、販売等の分野で、海外においても積極的に事業を展開しており、このような海外事業においては、当該地域における政治不安や経済情勢の悪化等の地政学的な要因、当該地域の法規制や行政指導等に抵触するリスク、現地の労使関係等に関するリスクが存在します。これらのリスクが顕在化した場合には、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社グループでは、海外子会社に対してリスク管理に関連する窓口担当者を任命しており、定期的に情報収集・情報交換を実施しております。また、各地で問題が発生した場合には、この窓口担当者をハブとする現地子会社との連携により、迅速な課題解決を行っております。 ④ 製造・仕入れに関するリスク・リスク地震、水害、暴風雨等の自然災害、火災、原子力発電所の事故、長時間の停電等社会インフラの障害、戦争、テロ等の発生により、当社グループの工場、研究所、事業所等の施設の損壊又は事業活動の停滞等が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、製品の一部は当社グループの工場において独自の技術により製造しており、商品及び原材料の一部は、特定の取引先にその供給を依存しております。このため、何らかの理由により製造活動や仕入れが遅延又は停止した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社グループのBCPは、事業継続へ影響を及ぼす様々な脅威に対処するべくオールハザード型BCPとして整備し、有事においても医療体制維持のための医薬品安定供給と品質確保を可能とする体制を整備しております。当社は、行政の防災計画改定や社会的要請の変化に対応して、優先供給品目に関わる業務・組織体制を見直す等、脅威が顕在化した際により適切に対応できるよう継続的なBCPの改善を図っております。また、優先供給品目については、製薬企業としての社会的責任の大きな製品や、事業継続のために重要な製品等の速やかな供給を実現するべく、定期的に見直しを行っております。特に医薬品の安定供給においては、生産・物流拠点の分散や主要原材料の複数購買の実施といったバックアップ体制を構築するとともに、自家発電装置の設置等、電力供給が停止した際の影響を最小限に抑える施策等にも取り組んでおります。また、主要システムの二重化等、IT基盤の強化も行っております。 ⑤ 環境、安全に関するリスク・リスク医薬品の研究、製造の過程等で使われる化学物質の中には、人の健康や生態系に悪影響を与える物質も含まれております。当社グループでは化学物質を用いた実験、製造、保管管理等に万全を期しておりますが、万一、社内外の人への暴露、土壌汚染、大気汚染、水質汚濁等、深刻な問題が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動に伴う気象災害や温暖化、生物多様性の喪失等により、医薬品のサプライチェーン寸断、製造コスト上昇等のリスクが顕在化した場合、医薬品の安定供給、財政状態等に悪影響を与える可能性があります。・対応当社グループでは、人体への影響、土壌汚染、大気汚染、水質汚濁等を防ぐため、化学物質の保管や取扱い方法を厳格に定め、グループの各工場・研究所において法規制より厳しい自主管理基準値を設定し、モニタリングによる適正管理を実施しております。また、関連法規制に基づく調査義務が発生した場合の的確な対応はもとより、事業所閉鎖・用途の変更等において法的な調査義務がない場合でも、法令に準拠した方法で調査を実施しております。万が一、汚染が判明した場合には、行政に報告するとともに、近隣の方々に対しても、適切に情報を開示し、汚染状況に応じた適切な対応(拡散防止、浄化対策等)を行います。既に浄化対策等を終了した事業所では、継続的にモニタリングを行い、分析結果を行政、近隣の方々に報告しております。気候変動に伴うリスクについては、シナリオ分析に基づき対策を実施しております。計画規模の洪水で浸水が想定される日本国内の研究所及び生産施設のある事業場については、事業場ごとのリスクアセスメントと水災マニュアルの作成を完了し、諸対策を進めております。その他の気候変動対策についてはサステナビリティ情報に記載したTCFD提言に基づく情報開示をご参照ください。また、パリ協定にも賛同し2022年度に1.5℃目標に整合した野心的な目標に改め、温室効果ガス削減に取り組んでおります。気候変動を含む環境パフォーマンスデータについては、投資判断にも影響する重要指標と捉え、データの信頼性を高めるために第三者保証を取得しております。生物多様性の喪失に関するリスクについては、天然化合物由来原料が入手できず生産が停止するリスクは想定されますが、すでに数年分の原料在庫は確保しており影響は限定的と考えております。 ⑥ 知的財産権に関するリスク・リスク当社グループの事業活動が他者の特許権その他の知的財産権に抵触するとして第三者から指摘を受けた場合には、事業の断念や係争の可能性があります。一方、第三者が当社グループの知的財産権を侵害する場合には、その保護のため訴訟提起等をすることがあります。それらの動向は経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼすことがあります。ADCに代表されるバイオ医薬品や新規モダリティ医薬品のパイプラインの増大や、ジェネリック医薬品市場の拡大を背景に、訴訟提起等を含め、当社グループの知的財産権に関するリスクが一層増大する可能性があります。・対応当社グループでは、知的財産の創造と保護によってその価値の最大化とリスクの最小化を図っております。また、知的財産係争が発生したときには、社内外の関係者と協力し、事業への影響を最小限にとどめるよう対応しております。2020年10月、Seagen Inc.は、エンハーツを含む当社ADCがSeagen Inc.の保有する米国特許を侵害するとして特許侵害訴訟をテキサス州東部地区連邦地方裁判所に提起しました。2022年7月、同裁判所はエンハーツが当該特許を侵害していること、Seagen Inc.に42百万米ドルの損害が発生したこと、及び当該特許の故意侵害を認定しましたが、損害賠償額は増額しないとする判決を下しました。2023年10月、同裁判所は、上記判決を不服とする当社の申立(post-trial motions)を棄却し、当該判決で決定された42百万ドルの損害賠償額に加え、2022年4月1日からSeagen Inc.の米国特許が満了する2024年11月4日までのエンハーツの米国売上に対する8%のロイヤリティーの支払を命じる一審判決を下しました。2023年11月、当社は、一審判決に対し米国連邦巡回区控訴裁判所に控訴を提起いたしました。なお、仮にSeagen Inc.に当該米国特許の侵害に係る賠償金を支払うこととなった場合には、アストラゼネカ社と締結したエンハーツの共同開発及び販売提携に関する契約に基づき、これをアストラゼネカ社と折半して負担いたします。一方で、2020年12月、当社らは、Seagen Inc.の当該米国特許が無効であるとして、米国特許商標庁に当該米国特許の有効性を審査する特許付与後レビュー(Post Grant Review)の請求を行っていましたが、2024年1月、米国特許商標庁は、当該米国特許が無効であるとの決定を下しました。 ⑦ 訴訟に関するリスク・リスク当社グループの事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題及び公正取引に関する問題等に関し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社グループでは、法令、契約、紛争防止・紛争解決等の観点からリーガルリスクの最小化とビジネス機会の最大化に努めております。 ⑧ 法規制、医療費抑制策等の行政動向に関するリスク・リスク国内医療用医薬品は、薬事行政の下、種々の規制を受けております。薬価基準の改定をはじめとして、医療制度や健康保険に関する行政施策の動向によっては、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、海外においても同様に、医薬品として各種の規制を受けており、行政施策の動向による悪影響を受ける可能性があります。・対応当社では、薬価制度改革並びに流通改善ガイドラインを踏まえた仕切価格・割戻改定を実施しております。また、適切な販売条件を設定・実行し、新薬創出加算品、重点品を中心に売上を拡大するよう努めております。なお、薬価の毎年改定を含めた薬価制度改革の他、海外を含めた行政動向を継続的に注視しており、即時に対応策を検討する体制としております。 ⑨ 法令違反等に関するリスク・リスク当社グループは、グループ企業行動憲章及びグループ個人行動規範のもとに、コンプライアンス行動基準等を制定しているほか、企業倫理委員会や従業員ホットラインの設置等、コンプライアンス体制を構築し、販売情報提供活動ガイドライン等、事業活動に関連する法規制が遵守されるよう徹底しておりますが、役員及び従業員の個人的な不正行為等を含め重大な法令違反が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社グループでは、事業活動のモニタリングを適切に実施し、不適切な活動を早期に発見し、対応するよう努めております。また、必要に応じて教育・啓発等の再発防止の対応を講じる体制としております。また、コンプライアンス違反の未然防止策制定、違反があった場合の厳正な対応を通じて、健全な企業文化の醸成を推進しております。 ⑩ 金融市況及び為替変動に関するリスク・リスク株式市況の低迷等により保有する株式等の売却損や評価損が生じ、金利動向により退職給付債務の増加等が生じる可能性があります。また、為替相場の変動により、不利な影響を受ける可能性があります。当社グループはグローバルに事業を展開し、生産・販売・輸出入を行っておりますので、為替相場の変動は経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社では政策保有株式の削減、年金基金資産配分の期中見直しの実行及び為替ヘッジ取引により、損失額を減少させるよう努めております。また、退職給付に関するリスクの整理と運用状況のモニタリング及び雇用関連法制動向の把握や、不動産市場のモニタリングを実施する等により、リスク低減に向けた方針を早期から準備対応しております。 ⑪ ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク・リスク当社グループは、業務上、各種ITシステムを利用しており、また、個人情報を含む多くの機密情報を保有しております。マルウェアの感染、サイバー攻撃他によるコンピュータシステムの休止等、及び機密情報の漏洩事象が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社グループでは、CDXO(Chief Digital Transformation Officer)がグループ全体のDXの戦略立案と推進を担うとともに、機密情報管理、情報セキュリティ対策の推進をCDXOの指示のもと情報管理最高責任者が担い、新たなデジタル技術、法規制やガイドラインを取り込んだ情報管理・セキュリティに関するポリシー・ルールの整備を進めております。情報管理・セキュリティに関する規程等を整備して従業員へ情報管理の重要性を周知徹底するとともに、ITシステムへのサイバー攻撃等への対策強化として、防御機能、侵害の検知機能と対処機能等のセキュリティシステムの整備を実施していることに加え、クラウドサービス利用への対応やセキュリティ基盤の強化、運用の改善を図っております。個人情報に関しては、定期的な管理台帳更新状況の把握・委託先の安全管理措置評価等により、保有個人データ、特定個人情報等の適正な管理状況をモニタリングするとともに、内部監査結果に基づく適切な指導及び従業員研修による周知・徹底を図っております。 ⑫ 人財に関するリスク・リスク当社グループが事業活動を推進し事業目標を達成する上では、各職務に必要な高度な専門性と高い業務遂行能力を持った人財を育成・採用・確保する必要がありますが、採用市場の競争激化などによりこれらの人財を十分に確保できない場合には、当社グループの経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。・対応当社グループでは、事業目標を達成する上で必要となる人財の要件を明確に定義し、計画的な採用活動を強化するとともに、社内教育プログラムを始めとする多様なアプローチを活用して人財の育成・確保を図っております。また、グローバル連携を促進するため、グローバル共通の人事制度並びに人事情報システムの構築・導入を進めています。さらに、CEOのコミットメントの下、国・地域の垣根を越えた当社グループ共通の「One DS Culture」の醸成やInclusion & Diversity (I&D)を推進しながら、グローバル共通のエンゲージメントサーベイによる分析・改善施策を実施しております。 |
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 | 4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月17日)現在において当社グループが判断したものであります。 当社グループは、積極的なグローバル事業の展開による企業価値の向上に資するために、基準とすべき会計及び財務報告のあり方を検討した結果、資本市場における財務情報の国際的な比較、グループ内での会計処理の統一、グローバル市場における資金調達手段の多様化等を目的として、2014年3月期よりIFRSを適用しております。当社グループの連結財務諸表の作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としており、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要性がある会計方針」に記載しております。 (1) 業績等の概要当社グループの当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)の連結業績は、次のとおりであります。 <連結業績(コアベース)> (単位:億円) 前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減売上収益12,78516,0173,23225.3%売上原価(注)3,4914,14865718.8%販売費及び一般管理費(注)4,7016,2731,57233.4%研究開発費(注)3,3673,6432768.2%コア営業利益(注)1,2261,95372759.3%一過性の収益(注)2192735424.5%一過性の費用(注)239109△130△54.3%営業利益1,2062,11691075.5%税引前利益1,2692,3721,10487%親会社の所有者に帰属する当期利益1,0922,00791583.8%当期包括利益合計額1,4903,0841,594107%(注)当社グループは、経常的な収益性を示す指標として、営業利益から一過性の収益・費用を除外したコア営業利益を開示しております。一過性の収益・費用には、固定資産売却損益、事業再編に伴う損益(開発品や上市製品の売却損益を除く)、有形固定資産及び無形資産並びにのれんに係る減損損失、損害賠償や和解等に伴う損益の他、非経常的かつ多額の損益が含まれます。本表では、売上原価、販売費及び一般管理費、研究開発費について、一過性の収益・費用を除く実績を示しております。<主要通貨の日本円への換算レート(期中平均レート)> 前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)米ドル/円135.48144.62ユーロ/円140.97156.79 売上収益売上収益は、前連結会計年度比3,232億円(25.3%)増収の1兆6,017億円となりました。グローバル主力品エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン:T-DXd/DS-8201)、リクシアナ(一般名:エドキサバン)等の伸長及び円安の進行による為替の増収影響等により、増収となりました。売上収益に係る為替の増収影響は668億円でありました。 コア営業利益コア営業利益は、前連結会計年度比727億円(59.3%)増益の1,953億円となりました。売上原価は、売上収益の増加に伴い、657億円(18.8%)増加の4,148億円となりました。販売費及び一般管理費は、エンハーツに係るアストラゼネカとのプロフィット・シェアの増加による費用増等により、1,572億円(33.4%)増加の6,273億円となりました。研究開発費は、5DXd ADCs(トラスツズマブ デルクステカン、ダトポタマブ デルクステカン:Dato-DXd/DS-1062、パトリツマブ デルクステカン:HER3-DXd/U3-1402、イフィナタマブ デルクステカン:I-DXd/DS-7300、DS-6000)への投資の増加等により、前連結会計年度比276億円(8.2%)増加の3,643億円となりました。コア営業利益に係る為替の増益影響は106億円でありました。 営業利益営業利益は、前連結会計年度比910億円(75.5%)増益の2,116億円となりました。ノバルティス社からの当社米国子会社 プレキシコンInc.に対する米国特許侵害訴訟の和解金の受領等により、一過性の収益が増加したため、コア営業利益に比べて増益額が拡大しました。 税引前利益税引前利益は、前連結会計年度比1,104億円(87.0%)増益の2,372億円となりました。受取利息の増加等により、金融収支が192億円改善したため、増益となりました。 親会社の所有者に帰属する当期利益親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比915億円(83.8%)増益の2,007億円となりました。 当期包括利益合計額当期包括利益合計額は、前連結会計年度比1,594億円(107.0%)増益の3,084億円となりました。 <連結業績(IFRSベース)> (単位:億円) 前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減売上収益12,78516,0173,23225.3%売上原価3,6354,15351814.2%販売費及び一般管理費4,7126,3701,65835.2%研究開発費3,4163,6522366.9%その他の収益1912758443.9%その他の費用71△6△87.0%営業利益1,2062,11691075.5%税引前利益1,2692,3721,10487%親会社の所有者に帰属する当期利益1,0922,00791583.8%当期包括利益合計額1,4903,0841,594107% <グローバル主力品売上収益>(単位:億円)一般名(主な製品名)前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)抗悪性腫瘍剤(抗 HER2 抗体薬物複合体)2,5844,4921,90873.9%エドキサバン(リクシアナ)抗凝固剤2,4402,87743817.9% エンハーツは、既上市国での市場浸透及び上市国の拡大により、前連結会計年度比1,908億円(73.9%)増収の4,492億円となりました。エドキサバンは、日本、欧州等で売上が伸長し、前連結会計年度比438億円(17.9%)増収の2,877億円となりました。当社は、第5期中期経営計画でエンハーツを始めとした「3ADC最大化の実現」及び「既存事業・製品の利益成長」を戦略目標として定めております。第5期中期経営計画の内容につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。 当社グループのユニット別売上収益状況は次のとおりであります。 ① ジャパンビジネスユニット(JBU)ジャパンビジネスユニットの売上収益には、イノベーティブ医薬品事業、ワクチン事業及び第一三共エスファ株式会社が取り扱うジェネリック事業の製品売上収益が含まれております。当ユニットの売上収益は、イナビル、エンハーツ、リクシアナ、タリージェ等の伸長により、前連結会計年度比610億円(13.3%)増収の5,189億円となりました。 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2023年5月、抗悪性腫瘍剤ヴァンフリタの急性骨髄性白血病(AML)1次治療を対象とした承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。・2023年5月、疼痛治療剤タリージェOD錠を新発売いたしました。・2023年8月、エンハーツのHER2遺伝子変異を有する非小細胞肺がん2次治療を対象とした承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。・2023年11月、COVID-19 mRNAワクチン ダイチロナ筋注(1価:オミクロン株XBB.1.5)の日本における承認を取得し、同年12月、本製品を供給いたしました。 <ジャパンビジネスユニット主力品売上収益>(単位:億円)製品名前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減リクシアナ抗凝固剤1,0511,1561049.9%タリージェ疼痛治療剤3854577218.6%プラリア骨粗鬆症治療剤・関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制剤402428266.5%エフィエント抗血小板剤2092564722.6%テネリア2型糖尿病治療剤219205△15△6.8%ビムパット抗てんかん剤2192573817.3%ランマークがん骨転移による骨病変治療剤204204△0△0.0%カナリア2型糖尿病治療剤163159△4△2.4%ロキソニン消炎鎮痛剤185155△30△16.4%エンハーツ抗悪性腫瘍剤(抗 HER2 抗体薬物複合体)117239122104.1%エムガルティ片頭痛発作の発症抑制薬63761321.2% ② 第一三共ヘルスケアユニット(DSHCU)第一三共ヘルスケアユニットの売上収益は、ロキソニン、ミノン等の伸長により、前連結会計年度比56億円(8.0%)増収の760億円となりました。 ③ オンコロジービジネスユニット(OBU)オンコロジービジネスユニットの売上収益には、第一三共Inc.(米国)の製品売上収益及び第一三共ヨーロッパGmbHのがん製品売上収益が含まれております。当ユニットの売上収益は、欧米におけるエンハーツの伸長により、前連結会計年度比1,492億円(80.5%)増収の3,346億円、現地通貨ベースでは、945百万米ドル(69.1%)増収の2,314百万米ドルとなりました。 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2023年8月、米国においてヴァンフリタを新発売いたしました。(適応:AML1次治療)・2023年10月、エンハーツのHER2遺伝子変異を有する非小細胞肺がん2次治療を対象とした欧州における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。・2024年2月、欧州においてヴァンフリタを新発売いたしました。(適応:AML1次治療) <オンコロジービジネスユニット主力品売上収益>(単位:億円)製品名前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減エンハーツ抗悪性腫瘍剤(抗 HER2 抗体薬物複合体)1,8163,2741,45880.3% エンハーツ(米)1,4462,25581056.0%エンハーツ(欧)3711,019648174.9%TURALIO抗腫瘍剤38531539.9% ④ アメリカンリージェントユニット(ARU)アメリカンリージェントユニットの売上収益は、インジェクタファーの減収影響があったものの、ヴェノファー等の増収により、前連結会計年度比161億円(8.6%)増収の2,034億円、現地通貨ベースでは、24百万米ドル(1.7%)増収の1,407百万米ドルとなりました。 <アメリカンリージェントユニット主力品売上収益>(単位:億円)製品名前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減インジェクタファー鉄欠乏性貧血治療剤540501△39△7.2%ヴェノファー鉄欠乏性貧血治療剤5136099618.7% ⑤ EUスペシャルティビジネスユニット(EUSBU)EUスペシャルティビジネスユニットの売上収益には、がん製品を除く第一三共ヨーロッパGmbHの製品売上収益が含まれております。当ユニットの売上収益は、リクシアナ、Nilemdo/Nustendiの伸長により、前連結会計年度比388億円(25.8%)増収の1,892億円、現地通貨ベースでは140百万ユーロ(13.1%)増収の1,207百万ユーロとなりました。 <EUスペシャルティビジネスユニット主力品売上収益>(単位:億円)製品名前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減リクシアナ抗凝固剤1,1711,46229124.8%Nilemdo / Nustendi高コレステロール血症治療剤71184114160.8%オルメサルタン高血圧症治療剤200196△4△2.1% ⑥ ASCAビジネスユニット(ASCABU)ASCA(注)ビジネスユニットの売上収益には、海外ライセンシーへの売上収益等が含まれております。当ユニットの売上収益は、ブラジルにおけるエンハーツの伸長等により、前連結会計年度比413億円(28.9%)増収の1,841億円となりました。(注)Asia, South & Central Americaの略。 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2023年6月、中国においてエンハーツを新発売いたしました。(適応:HER2陽性乳がんの2次治療)・2023年7月、エンハーツのHER2低発現乳がん(化学療法既治療)の中国における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。 ユニット別売上収益構成比は次のとおりであります。 (2) 生産、受注及び販売の実績① 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)医薬事業836,652122.6合計836,652122.6(注)金額は正味販売価格によっております。 ② 受注実績当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を策定し、これにより生産を行っております。受注生産は一部の連結子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。③ 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)医薬事業1,601,688125.3合計1,601,688125.3 (注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。相手先前連結会計年度当連結会計年度金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)アルフレッサ ホールディングス株式会社及びそのグループ会社180,52314.1199,73212.5マッケソン社117,5139.2173,34810.8センコラ社121,6469.5162,71310.2 (3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析① 財務戦略の基本的な考え方当社グループは、ESG経営のもと、新たに「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」となることを2030年ビジョンとして掲げております。2025年ビジョンである「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を実現し、2030年ビジョン達成に向けた持続的な成長ステージへの移行を可能とするべく、2021年に第5期中期経営計画(2021~2025年度)を策定いたしました。その後3年間の計画進捗により、2025年度経営目標を達成すると見込んでおります。具体的には、売上収益2兆1,000億円(第5期中計策定時プラス5,000億円)、がん領域売上収入1兆円以上(同プラス4,000億円)、研究開発費控除前コア営業利益(注)率40%(同変更なし)、ROE16%以上(同変更なし)、株主資本配当率(DOE)8.5%以上(同プラス0.5ポイント)を見込んでおります。また、期間中のキャッシュ・アロケーションについても、成長投資と株主還元の双方をバランス良く実施するという基本方針は変更しておりません。成長投資については、DXd-ADC開発を優先する形で第5期中期経営計画である5年間で総額1兆9,500億円規模の研究開発投資(同プラス4,500億円)、また、ADCの供給体制強化を中心とした同じく8,000億円規模の設備投資(同プラス3,000億円)を見込んでおります。株主還元については、2023年度はエンハーツの成長による利益成長、米国メルク社との戦略的提携の契約時一時金の受領等を受け、年間配当を1株当たり20円増配の50円とし、2024年度については、2025年度主要計数目標の達成確度がより高まっていることから、1株当たり年間配当を10円増配の60円とする計画としております。また、2024年度において取得総額2,000億円または取得株数5,500万株を上限とする自己株式取得ならびに取得自己株式の全株式消却を実施する予定です。今後も利益成長に応じた増配、あるいは機動的な自己株式取得を実施することで、株主還元のさらなる充実を図っていきます。株主還元に関するKPIとして採用している、株主資本を基準とする株主資本配当率(DOE)についても2025年度に8%以上(株主資本コストを上回る水準)という目標を変更することなく、引き続き株主価値の最大化を目指します。(注)固定資産売却、事業再編、減損、訴訟等に関連する特殊要因を除く ② 資金調達の方法及び状況当社グループは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本的な考えとしており、手元資金及び外部資金を有効に活用しております。当社グループは、戦略的投資もしくは資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、手元流動性残高(現預金及び短期投資債券等)から有利子負債を控除した、ネット・キャッシュを重視しております。手元資金としては、事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応のため、十分な現金及び現金同等物を保有しております。適正な現金及び現金同等物の保有額は、月商の3ヶ月程度を考えており、これを超える部分については企業価値向上に資する事業戦略投資の資金として確保しております。これらは金融情勢などを勘案しつつ、安全性並びに流動性の極めて高い短期金融商品で運用しております。外部からの資金調達については、直接金融又は間接金融の多様な手段の中から、その時々の市場環境を考慮した上で当社にとって有利なものを機動的に選択しております。直接金融としては、国内社債発行登録枠として3,000億円及びコマーシャル・ペーパー発行枠として1,500億円を有しております。2016年には超低金利の環境を活かし、国内ヘルスケアセクターでは初となる償還年限が20年、30年の超長期無担保社債を発行し、1,000億円の長期低コスト資金を確保いたしました。間接金融としては、当期に返済期限が到来したことに伴い全ての金融機関借入を完済した一方で、取引先金融機関とは引き続き良好な取引関係を維持しております。また、複数の銀行との間で当座貸越契約及びコミットメントラインを設定し、緊急時の流動性担保の手段も確保しております。なお、円滑な外部資金調達を行うため、当社は株式会社格付投資情報センター(R&I)と、ムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody's)の2社から格付を取得しております。当連結会計年度末時点での当社の長期及び短期の信用格付けは次のとおりであります。 長期短期格付投資情報センター(R&I)AA/安定的a-1+ムーディーズ・ジャパン(Moody's)A2/安定的- なお、連結子会社は、原則として銀行などの外部からの資金調達を行わず、親会社もしくは現地法人などの資金調達拠点を通じたキャッシュ・マネジメント・サービスやグループ・ファイナンスの活用により、資金調達の集約と資金効率化、流動性の確保を図っております。 ③ 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析(ⅰ)財政状態当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末から9,522億円増加し、3兆4,611億円となりました。現金及び現金同等物が2,053億円、並びにその他の金融資産(流動)が1,938億円それぞれ増加いたしました。当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末から7,095億円増加し、1兆7,725億円となりました。社債及び借入金(流動負債及び非流動負債)が414億円減少した一方で、HER3-DXd、I-DXd、DS-6000の戦略的提携の契約一時金の入金等により契約負債(流動負債及び非流動負債)が4,165億円、並びに営業債務及びその他の債務が1,620億円増加いたしました。当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末から2,427億円増加し、1兆6,886億円となりました。配当金の支払による減少があった一方で、当期利益の計上及びその他の資本の構成要素の増加等により増加いたしました。以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は48.8%となり、前連結会計年度末より8.9%減少いたしました。 第5期中計期間中は、バランスのとれた成長投資と株主還元へのキャッシュ・アロケーションを行う方針であります。具体的には、キャッシュ・アロケーションの原資の一定額を成長投資(研究開発費、設備投資)と株主還元にアロケーションした上で、残余キャッシュについて、パイプラインの進捗を踏まえ、さらなる成長の柱の構築に向けた投資と株主還元にバランスを考慮しながら機動的に配分いたします。 (ⅱ)キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、2,053億円増加の6,472億円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、5,993億円の収入(前連結会計年度は1,145億円の収入)となりました。税引前利益2,372億円、減価償却費及び償却費596億円等の非資金項目の他、HER3-DXd、I-DXd、DS-6000の戦略的提携の契約一時金の収入等がありました。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、2,826億円の支出(前連結会計年度は2,578億円の支出)となりました。定期預金の預入による支出及び設備投資や無形資産の取得による支出等がありました。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払、並びに借入金の返済や社債の償還等により、1,236億円の支出(前連結会計年度は896億円の支出)となりました。 (4) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、2025年度における計数目標として、売上収益1兆6,000億円(うち、がん領域において6,000億円以上)、研究開発費控除前コア営業利益率40%以上、ROE16%以上、株主資本配当率(DOE)8%以上を目指しております。当連結会計年度においては、売上収益16,017億円、研究開発費控除前コア営業利益率34.9%、ROE12.8%、DOE6.1%となりました。また、エンハーツの当初計画を上回る売上拡大等により、2024年4月時点において、以下の通りの達成を見込んでおります。 なお、目標達成に向けた主な取り組み課題と実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。 (5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり行った重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。 |
経営上の重要な契約等 | 5【経営上の重要な契約等】 (1) 第一三共エスファ㈱の株式譲渡 当社は、2023年5月16日開催の取締役会において、当社の子会社である第一三共エスファ㈱の全株式をクオールホールディングス㈱に譲渡することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。 ① 株式譲渡の理由国内における後発医薬品は、国の使用促進策とともに先発医薬品からの置き換えが進み、使用割合は既に目標(対象市場の80%)に概ね達しております。現在後発医薬品は不可欠なものと認識されておりますが、一方では安定供給や品質管理などに課題を残しております。第一三共エスファ㈱はオーソライズドジェネリック(AG)製品を強みとして急速に業績を拡大して参りました。一方、クオールホールディングス㈱は、保険薬局事業と医療関連事業の二つの事業で構成されており、それぞれの領域において、医療や健康を支える事業に取り組んでおります。このたび、両社の事業が融合することで発揮されるシナジーにより、AGを中心とするジェネリック事業の拡充に向けた開発力や安定供給力などを強化し、また、新規事業を検討することで、これまで以上に患者さんや医療関係者などステークホルダーの皆さまからのご期待に応えていくことが最適との結論に至りました。 ② 株式譲渡の相手先の名称クオールホールディングス㈱ ③ 当該子会社の名称及び事業内容名 称:第一三共エスファ㈱事業内容:医薬品の研究開発・販売 ④ 譲渡株式数、譲渡価額及び譲渡前後の所有株式数の状況譲渡前の所有株式数18,000株(議決権数:18,000個、議決権所有割合:100%)譲渡株式数18,000株譲渡価額25,000百万円譲渡後の所有株式数0株(議決権数:0個、議決権所有割合:0%) ⑤ 株式譲渡の日程取締役会決議日2023年5月16日株式譲渡契約締結日2023年5月16日株式譲渡実行日(予定)2023年10月1日(当社所有株式の30%)2024年4月1日(当社所有株式の21%)当社所有株式の残り(49%)の株式譲渡実行日については、別途協議にて決定いたします。 (2) 技術導入契約会社名相手先国名技術内容対価契約期間第一三共㈱(当社)Amgen Inc.アメリカ抗RANKL抗体「デノスマブ」に関する技術契約一時金マイルストーン一定料率の実施料自 2007年7月至 2027年6月第一三共㈱(当社)Amgen Inc.アメリカバイオ後続品に関する技術マイルストーン自 2016年7月至 製品ごとに商業化の終了日第一三共㈱(当社)Cell Therapy Ltd.イギリス虚血性心不全の細胞治療薬「ハートセル」に関する技術契約一時金マイルストーン一定料率の実施料自 2016年4月至 商業化の終了日第一三共㈱(当社)MedImmune, LLCアメリカ鼻腔噴霧インフルエンザ弱毒生ワクチンに関する技術契約一時金マイルストーン自 2015年9月至 上市後5年第一三共㈱(当社)Ultragenyx Pharmaceutical Inc.アメリカAAVベクターを用いた遺伝子治療薬製造技術契約一時金マイルストーン一定料率の実施料自 2020年3月至 実施料支払期間満了日までアメリカン・リージェントInc.(連結子会社)Vifor (International) Ltd.スイス貧血治療剤「ヴェノファー」及び「インジェクタファー」に関する技術製品購入価格自 1997年12月至 2040年12月 (3) 販売契約等(導入)契約会社名相手方の名称国名契約の内容対価契約期間第一三共㈱(当社)UCB Biopharma Sprlベルギー同社のてんかん治療薬「ビムパット」の日本国内における独占販売及び共同販促契約一時金マイルストーン自 2014年11月至 上市後10年第一三共㈱(当社)田辺三菱製薬㈱日本同社の血糖降下剤「テネリア」の日本国内における独占販売及び共同販促契約一時金マイルストーン自 2012年3月至 2024年9月第一三共㈱(当社)田辺三菱製薬㈱日本同社の血糖降下剤「カナグル」の日本国内における共同販促契約一時金マイルストーン自 2012年3月至 2024年9月第一三共㈱(当社)田辺三菱製薬㈱日本同社の2型糖尿病治療用配合剤「カナリア」の日本国内における独占販売及び共同販促マイルストーン製品育成費用自 2017年3月至 上市後10年(以後1年ごとの自動更新)第一三共㈱(当社)日本イーライリリー㈱、Eli Lilly and Company日本アメリカ同社の片頭痛発作の発症抑制薬「エムガルティ」の日本国内における独占販売及び共同販促契約一時金製品購入価格自 2020年10月至 2031年3月(以後後発品の上市か合意解約されるまで1年ごとの自動更新)第一三共㈱(当社)日本イーライリリー㈱、Eli Lilly and Company日本アメリカ同社の片頭痛治療剤「レイボー」の日本国内における独占販売及び共同販促製品購入価格自 2021年8月至 2031年3月(以後後発品の上市か合意解約されるまで1年ごとの自動更新)第一三共㈱(当社)Esperion Therapeutics, Inc.アメリカ高コレステロール血症治療剤「ベムペド酸」の韓国、ブラジル、台湾、香港、マカオ、タイ、ベトナム、ミャンマー及びカンボジアにおける独占販売契約一時金マイルストーン一定料率の実施料自 2021年4月至 対象特許の満了日、データ保護期間の満了日又は上市後12年のうちいずれか遅く到来する日第一三共ヨーロッパGmbH(連結子会社)Esperion Therapeutics, Inc.アメリカ高コレステロール血症治療剤「ベムペド酸」の欧州における独占販売契約一時金マイルストーン一定料率の実施料自 2019年1月至 対象特許の満了日又は上市後12年のうちいずれか遅く到来する日 (4) 販売契約等(導出)契約会社名相手方の名称国名契約の内容対価契約期間第一三共㈱(当社)AstraZeneca UK Limitedイギリス抗がん剤「エンハーツ」の全世界での共同開発及び販売提携契約一時金マイルストーン一定料率の実施料日本を除く全世界における利益と開発・販売等費用の折半自 2019年3月至 国ごとに販売を中止するまで第一三共㈱(当社)AstraZeneca UK Limitedイギリス抗がん剤「Dato-DXd」の全世界での共同開発及び販売提携契約一時金マイルストーン一定料率の実施料日本を除く全世界における利益と開発・販売等費用の折半自 2020年7月至 国ごとに販売を中止するまで第一三共㈱(当社)Servier Canada inc.カナダ抗凝固剤「リクシアナ(エドキサバン)」のカナダにおける独占販売契約一時金マイルストーン一定料率の実施料自 2016年6月至 対象特許の満了日、データ保護期間の満了日又は2031年6月のうちいずれか遅く到来する日第一三共㈱(当社)Merck & Co., Inc.アメリカ抗がん剤「HER3-DXd」「I-DXd」「R-DXd」の全世界での共同開発及び販売提携契約一時金マイルストーン一定料率の実施料日本を除く全世界における利益と販売費等費用の折半、開発費の一部の負担自 2023年10月至 全ての開発及び販売を恒久的に中止するまでアメリカン・リージェントInc.(連結子会社)Fresenius USA Manufacturing, Inc.アメリカ貧血治療剤「ヴェノファー」の米国内における販売契約一時金一定料率の実施料自 2008年11月至 2028年12月第一三共ヨーロッパGmbH(連結子会社)Menarini International Operations Luxembourg S.A.ルクセンブルク血圧降下剤「オルメテック(オルメサルタン)」の欧州における共同販売契約一時金製品供給代金一定料率の実施料自 2001年6月至 2024年12月第一三共ノーザンヨーロッパGmbH(連結子会社)Organon Trade LLCアメリカ抗凝固剤「リクシアナ(エドキサバン)」の欧州一部地域における独占販売契約一時金製品供給代金自 2016年2月至 2026年2月又は対象特許の満了日のうちいずれか遅く到来する日 (5) 業務委託契約契約会社名相手方の名称国名契約の内容対価契約期間第一三共㈱(当社)㈱日立製作所日本IT業務の同社への委託業務委託費自 2022年4月至 2025年3月 |
研究開発活動 | 6【研究開発活動】 当社グループは、5つのDXd ADC(トラスツズマブ デルクステカン:T-DXd/DS-8201、ダトポタマブ デルクステカン:Dato-DXd/DS-1062、パトリツマブ デルクステカン:HER3-DXd/U3-1402、イフィナタマブ デルクステカン:I-DXd/DS-7300、DS-6000)の製品価値最大化を目指してリソースを集中投入するとともに、持続的成長の実現に向けてSOC(注1)を変革する製品群(Next Wave)の創薬を目指す「5DXd ADCs and Next Wave」戦略のもと、グローバル臨床開発の加速化にも注力して研究開発に取り組んでおります。中長期的には、がんに加え、当社のサイエンス&テクノロジーの優位性を活かして様々な疾患に対する治療薬創製を目指し、新規モダリティ(注2)の技術研究等を通じた創薬力の強化に取り組んでおります。(注)1.Standard of Careの略。現在の医学では最善とされ、広く用いられている治療法。2.モダリティとは低分子薬、抗体医薬、ADC、核酸医薬、遺伝子治療等の治療手段のこと。 当連結会計年度の研究開発費(IFRSベース)は、3,652億円(前連結会計年度比6.9%増)となり、売上収益に対する研究開発費の比率は、22.8%となりました。 (1) 5DXd ADCs 当連結会計年度における5DXd ADCsの臨床開発の状況は次のとおりであります。 トラスツズマブ デルクステカン及びダトポタマブ デルクステカンは、アストラゼネカと共同開発しております。また、パトリツマブ デルクステカン、イフィナタマブ デルクステカン(DS-7300)、DS-6000については、2023年10月に戦略的提携契約を締結したMerck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(以下「米国メルク」)と共同開発しております。 ① トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd/DS-8201:抗HER2 ADC、製品名:エンハーツ) 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2023年6月、米国臨床腫瘍学会(ASCO)においてHER2発現の複数の固形がんを対象としたフェーズ2試験(試験名:DESTINY-PanTumor02)の初のデータを発表いたしました。・2023年6月、ASCOにおいてHER2陽性大腸がんの3次治療を対象としたフェーズ2試験(試験名:DESTINY-CRC02)の初のデータを発表いたしました。・2023年7月、HER2低発現乳がん(化学療法既治療)を対象とした中国における承認を取得いたしました。・2023年8月、HER2遺伝子変異を有する非小細胞肺がんの2次治療を対象とした日本における承認を取得いたしました。・2023年9月、HER2陽性(IHC3+)固形がんの2次治療以降及びHER2陽性(IHC3+)大腸がんの3次治療以降を対象とした米国食品医薬品局(FDA)からの画期的治療薬(注3)の指定を獲得いたしました。・2023年9月、世界肺がん学会(WCLC)においてHER2遺伝子変異を有する非小細胞肺がんの2次治療以降を対象としたフェーズ2試験(試験名:DESTINY-Lung02)のデータを発表いたしました。・2023年9月、HER2遺伝子変異を有する非小細胞肺がん2次治療を対象とした欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品委員会(CHMP)による承認の勧告を受領いたしました。・2023年10月、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)においてHER2発現の複数の固形がんを対象としたフェーズ2試験(試験名:DESTINY-PanTumor02)のプライマリー解析データを発表いたしました。・2023年10月、HER2遺伝子変異を有する非小細胞肺がん2次治療を対象とした欧州における承認を取得いたしました。・2023年12月、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)においてHER2低発現乳がん(化学療法未治療/既治療)を対象としたフェーズ1b試験(試験名:DESTINYBreast08)のうち、ホルモン療法との併用コホートの初のデータを発表いたしました。・2023年12月、HER2陽性胃がん3次治療以降を対象とした中国における承認申請を受理いたしました。・2024年1月、RTOR(Real-Time Oncology Review、注4)プログラム適応の下、HER2陽性の複数の固形がんを対象とした米国における承認申請の受理及び優先審査(注5)の指定を獲得いたしました。・2024年3月、HER2遺伝子変異非小細胞肺がんの2次治療以降を対象とした中国における承認申請が受理されました。 (注)3.重篤な疾患を対象に、既存の治療薬よりも高い治療効果を示す可能性のある薬剤の開発と審査を促進し、患者により早く新薬を届けるために定められた制度。4.患者が安全かつ効果的な治療をできるだけ早期に受けられるよう、より効率的な審査プロセスの探求を目指した制度。申請者が正式に完全な申請書を提出する前に、FDAが多くのデータを早期に審査することが可能となります。5.米国において、治療上重要な進歩をもたらす薬剤や、現在適切な治療法がない疾患への治療法を提供する薬剤に対して指定され、通常審査期間(10ヶ月目標)に比べ審査期間の短縮(6ヶ月目標)が見込まれます。 ② ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062:抗TROP2 ADC) 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2023年6月、ASCOにおいて非小細胞肺がんを対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用療法のフェーズ1b試験(試験名:TROPION-Lung02)の最新データを発表いたしました。・2023年7月、非小細胞肺がんの2次治療以降を対象としたフェーズ3試験(試験名:TROPION-Lung01)の結果概要を発表いたしました。・2023年9月、WCLCにおいてアクショナブル遺伝子変異のない非小細胞肺がんの1次・2次治療を対象としたフェーズ1b試験(試験名:TROPION-Lung04)のうち、デュルバルマブとの併用コホートの初のデータを発表いたしました。・2023年9月、ホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は陰性の乳がんの2次治療以降を対象としたフェーズ3試験(試験名:TROPION-Breast01)の結果概要を発表いたしました。・2023年10月、ESMOにおいて非小細胞肺がんの2次治療以降を対象としたフェーズ3試験(試験名:TROPION-Lung01)の初のデータを発表いたしました。・2023年10月、ESMOにおいてアクショナブル遺伝子変異を有する非小細胞肺がんを対象としたフェーズ2試験(試験名:TROPION-Lung05)のプライマリー解析データを発表いたしました。・2023年10月、ESMOにおいてホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は陰性の乳がんの2次治療以降を対象としたフェーズ3試験(試験名:TROPION-Breast01)の初のデータを発表いたしました。・2023年10月、ESMOにおいてトリプルネガティブ乳がんの1次治療を対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用療法のフェーズ1b/2試験(試験名:BEGONIA)の最新データを発表いたしました。・2023年11月、トリプルネガティブ乳がん及びホルモン受容体低発現かつ、HER2低発現または陰性乳がんの術前・術後薬物療法を対象としたデュルバルマブとの併用療法を評価するフェーズ3試験(試験名:TROPION-Breast04)を開始いたしました。・2023年11月、トリプルネガティブ乳がんの1次治療を対象とした単剤又はデュルバルマブとの併用療法を評価するフェーズ3試験(試験名:TROPION-Breast05)を開始いたしました。・2024年2月、非扁平上皮非小細胞肺がんの2次治療以降を対象とした米国における承認申請が受理されました。・2024年3月、非扁平上皮非小細胞肺がんの2次治療以降及びホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は陰性の乳がんの2次治療以降を対象とした欧州における承認申請が受理されました。・2024年3月、ホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は陰性の乳がんの2次治療以降を対象とした日本及び中国における承認申請が受理されました。 ③ パトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd/U3-1402:抗HER3 ADC) 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2023年4月、EGFR変異を有する非小細胞肺がんの3次治療以降を対象としたフェーズ2試験(試験名:HERTHENA-Lung01)の結果概要を発表いたしました。・2023年9月、WCLCにおいてEGFR変異を有する非小細胞肺がんの3次治療を対象としたフェーズ2試験(試験名:HERTHENA-Lung01)の初のデータを発表いたしました。・2023年12月、RTORプログラム適応の下、EGFR変異を有する非小細胞肺がんの3次治療を対象とした米国における承認申請の受理及びFDAからの優先審査の指定を獲得いたしました。 ・2024年3月、局所進行又は転移性固形がんを対象としたフェーズ2試験(試験名:HERTHENA-PanTumor01)を開始いたしました。 ④ イフィナタマブ デルクステカン(I-DXd/DS-7300:抗B7-H3 ADC) 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2023年4月、小細胞肺がんを対象としたFDAからの希少疾病用医薬品(Orphan Drug、注6)の指定を獲得いたしました。・2023年9月、WCLCにおいて固形がんを対象としたフェーズ1/2試験の小細胞肺がんサブグループ解析の最新データを発表いたしました。・2023年10月、ESMOにおいて固形がんを対象としたフェーズ1/2試験の食道扁平上皮がん、去勢抵抗性前立腺がん及び扁平上皮非小細胞肺がんのサブグループ解析の最新データを発表いたしました。(注)6.米国における患者数20万人未満の希少疾病に対する治療、診断、予防を目的とした医薬品を対象として、開発の支援・促進を目的として指定される制度。 ⑤ DS-6000(抗CDH63 ADC) 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2023年10月、ESMOにおける卵巣がんを対象としたフェーズ1試験の最新データを発表いたしました。 (2) Next Wave 当連結会計年度におけるNext Waveの臨床開発の主な進捗は次のとおりであります。・2023年4月、DS-5670(COVID-19 mRNAワクチン)(1価:起源株)の、健康成人を対象とした日本における初回免疫フェーズ3試験の結果概要を発表いたしました。・2023年5月、DS-5670(2価:起源株/オミクロン株 BA.4-5)の12歳以上を対象とした日本における追加免疫フェーズ3試験を開始いたしました。・2023年5月、DS-5670(2価:起源株/オミクロン株 BA.4-5)の5歳から11歳を対象とした日本における追加免疫フェーズ2/3試験を開始いたしました。・2023年5月、キザルチニブ(AC220:FLT3阻害剤、日本製品名:ヴァンフリタ)のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病(AML)の1次治療を対象とした日本における承認を取得いたしました。・2023年5月、DS-2325(KLK5阻害剤)のネザートン症候群を対象としたFDAからの希少小児疾患(Rare Pediatric Disease、注7)の指定を獲得いたしました。・2023年6月、DS-1103(抗SIRPα抗体)の固形がんを対象としたエンハーツとの併用フェーズ1試験を開始いたしました。・2023年6月、バレメトスタット(DS-3201:EZH1/2阻害剤、日本製品名:エザルミア)の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)を対象としたフェーズ2試験(試験名:VALENTINEPTCL01)の結果概要を入手いたしました。・2023年7月、キザルチニブのFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病(AML)の1次治療を対象とした米国における承認を取得いたしました。・2023年8月、DS-5670(1価:起源株)(日本製品名:ダイチロナ筋注)の、SARSCoV-2による感染症の予防を適応とした追加免疫の日本における承認を取得いたしました。・2023年9月、DS-5670(2価:起源株/オミクロン株 BA.4-5)の12歳以上を対象とした日本における追加免疫フェーズ3試験の主要評価項目達成を発表いたしました。・2023年9月、DS-5670(1価:オミクロン株 XBB.1.5)の日本における承認を申請いたしました。・2023年9月、DS-1471(抗CD147抗体)の固形がんを対象としたフェーズ1試験を開始いたしました。・2023年9月、DS-3939(抗TA-MUC1 ADC)の固形がんを対象としたフェーズ1/2試験を開始いたしました。・2023年9月、キザルチニブに関するAMLの1次治療を対象としたEMAのCHMPによる承認の勧告を受領いたしました。・2023年10月、開発中の季節性インフルエンザ及び新型コロナに対する混合mRNAワクチンについて、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する令和5年度「ワクチン・新規モダリティ研究開発事業(一般公募)」の「重点感染症に対する感染症ワクチンの開発」へと採択されました。・2023年11月、キザルチニブのFLT3-ITD変異陽性のAMLの1次治療を対象とした欧州における承認を取得いたしました。・2023年11月、DS-5670(1価:オミクロン株 XBB.1.5)の日本における承認を取得いたしました。・2023年12月、米国血液学会(ASH)においてバレメトスタットのPTCLを対象としたフェーズ2試験(試験名:VALENTINE-PTCL01)の初のデータを発表いたしました。・2023年12月、DS-2325のネザートン症候群の患者を対象としたフェーズ1b/2試験を開始いたしました。・2024年1月、バレメトスタットのPTCLを対象とした日本における承認申請が受理されました。・2024年2月、バレメトスタットのHER2陽性胃がんを対象としたエンハーツとの併用及び非扁平上皮非小細胞肺がんを対象としたDato-DXdとの併用フェーズ1b試験を開始いたしました。・2024年3月、VN-0102/JVC-001(麻しん・おたふくかぜ・風しん3種混合乾燥弱毒生ワクチン)の日本における承認申請が受理されました。(注)7.米国で18歳までに発症し、患者数20万人未満の希少疾病に対する治療、予防を目的とした医薬品を対象として指定され、本剤が承認を取得した際の優先審査バウチャーの付与等の優遇措置を受けることができる制度。 |
設備投資等の概要 | 1【設備投資等の概要】 当社グループでは、生産設備の増強・合理化及び研究開発の強化・効率化等を目的とした設備投資を継続的に実施しております。当連結会計年度は、第一三共プロファーマ㈱及び第一三共ケミカルファーマ㈱の製造設備、アメリカン・リージェントInc.及び第一三共ヨーロッパ GmbHにおける製造設備等を中心に全体で89,386百万円の設備投資を行いました。 |
主要な設備の状況 | 2【主要な設備の状況】 当社グループにおける主要な設備は次のとおりであります。(1) 提出会社 2024年3月31日現在 事業所名(所在地)セグメントの名称設備の内容帳簿価額(百万円)従業員数(人)建物及び構築物機械装置及び運搬具土地(面積㎡)その他合計本社(東京都中央区)医薬事業管理設備3,514-1,861(1,909)4,5779,9541,476品川研究開発センター(東京都品川区)医薬事業研究設備22,325163,346(67,200)3,48629,1741,352葛西研究開発センター(東京都江戸川区)医薬事業研究設備13,9321245(56,045)67614,666104館林バイオ医薬センター(群馬県邑楽郡千代田町)医薬事業研究設備5,708262,357(78,867)2,76410,857112製薬技術本部平塚拠点(神奈川県平塚市)医薬事業研究設備8,569123160(29,644)1,82110,674347(注)帳簿価額のうち「その他」は工具、器具及び備品、リース取引により認識した使用権資産であり、建設仮勘定は 含めておりません。 (2) 国内子会社 2024年3月31日現在 会社名事業所名(所在地)セグメントの名称設備の内容帳簿価額(百万円)従業員数(人)建物及び構築物機械装置及び運搬具土地(面積㎡)その他合計第一三共プロファーマ㈱平塚工場(神奈川県平塚市)医薬事業製造設備27,6979,4001,139(210,676)69338,931684第一三共ケミカルファーマ㈱小名浜工場(福島県いわき市)医薬事業製造設備15,19510,7884,381(325,921)1,44031,806280〃小田原工場(神奈川県小田原市)医薬事業製造設備7,5822,3341,162(133,064)43511,514247〃館林工場(群馬県邑楽郡千代田町)医薬事業製造設備3,0301,988682(22,842)4806,181228第一三共バイオテック㈱本社(埼玉県北本市)医薬事業管理設備製造設備研究設備5,9064,081-50710,496427 (注)1.帳簿価額のうち「その他」は工具、器具及び備品、リース取引により認識した使用権資産であり、建設仮勘定は含めておりません。2.第一三共プロファーマ㈱及び第一三共ケミカルファーマ㈱の各工場は、提出会社からの賃借資産を含めて おります。 (3) 在外子会社 2024年3月31日現在 会社名事業所名(所在地)セグメントの名称設備の内容帳簿価額(百万円)従業員数(人)建物及び構築物機械装置及び運搬具土地(面積㎡)その他合計第一三共ヨーロッパGmbH本社(ドイツ ミュンヘン)医薬事業管理設備-8-8,8758,884543〃パッフェンホーフェン工場(ドイツ バイエルン)医薬事業製造設備11,9843,6492,160(78,260)5,50123,296692アメリカン・リージェントInc.ニューオルバニー工場(アメリカ オハイオ)医薬事業製造設備18,7726,591545(127,407)28326,193306〃ヒリヤード工場(アメリカ オハイオ)医薬事業製造設備4,6102,72464(15,253)987,498113〃シャーリー工場(アメリカ ニューヨーク)医薬事業製造設備5,0023,434255(64,750)1868,878362第一三共Inc.本社(アメリカ ニュージャージー)医薬事業管理設備3,49724-12,20815,7302,239 (注)1.帳簿価額のうち「その他」は工具、器具及び備品、リース取引により認識した使用権資産であり、建設仮勘定は含めておりません。2.第一三共ヨーロッパGmbHのパッフェンホーフェン工場は、第一三共リアルエステートGmbHからの賃借資産を含めております。 |
設備の新設、除却等の計画 | 3【設備の新設、除却等の計画】 (1) 重要な設備の新設等会社名事業所名(所在地)セグメントの名称設備の内容投資予定金額資金調達方法着手及び完了予定年月完成後の増加能力総額(百万円)既支払額(百万円)着手完了アメリカン・リージェントInc.シャーリー工場(アメリカ ニューヨーク)医薬事業製造設備13,56511,187自己資金2016年4月2024年10月拡充〃ニューオルバニー工場(アメリカ オハイオ)医薬事業製造設備49,2052,849自己資金2024年4月2027年10月拡充第一三共ヨーロッパGmbHパッフェンホーフェン工場(ドイツ バイエルン)医薬事業製造設備10,07417,169自己資金2019年9月2024年6月新設〃〃医薬事業製造設備28,0519,572自己資金2021年6月2024年11月新設〃〃医薬事業製造設備15,511558自己資金2023年7月2026年3月新設第一三共ブラジルLtda.アルファビレ工場(ブラジル サンパウロ)医薬事業製造設備7,3524自己資金2023年6月2025年12月拡充第一三共ケミカルファーマ㈱小名浜工場(福島県 いわき市)医薬事業製造設備31,36025,086自己資金2022年1月2024年12月新設第一三共プロファーマ㈱平塚工場(神奈川県 平塚市)医薬事業製造設備24,30022,721自己資金2020年9月2025年4月新設〃〃医薬事業製造設備8,8006,993自己資金2022年4月2025年4月新設〃〃医薬事業製造設備7,690667自己資金2023年2月2026年6月新設〃〃医薬事業製造設備28,3001,870自己資金2023年2月2026年2月新設〃〃医薬事業製造設備6,700-自己資金2024年5月2026年1月新設第一三共バイオテック㈱北本工場(埼玉県 北本市)医薬事業製造設備3,1382,509補助金2023年5月2024年9月拡充〃〃医薬事業製造設備46,530-自己資金及び補助金2024年2月2028年3月新設 (2) 重要な設備の除却等 経常的な設備の更新のための除却を除き、重要な設備の除却等の計画はありません。 |
研究開発費、研究開発活動 | 365,200,000,000 |
設備投資額、設備投資等の概要 | 89,386,000,000 |
Employees
平均年齢(年)、提出会社の状況、従業員の状況 | 46 |
平均勤続年数(年)、提出会社の状況、従業員の状況 | 20 |
平均年間給与、提出会社の状況、従業員の状況 | 11,134,849 |
管理職に占める女性労働者の割合、提出会社の指標 | 0 |
全労働者、労働者の男女の賃金の差異、提出会社の指標 | 1 |
正規雇用労働者、労働者の男女の賃金の差異、提出会社の指標 | 1 |
非正規雇用労働者、労働者の男女の賃金の差異、提出会社の指標 | 1 |
Investment
株式の保有状況 | (5)【株式の保有状況】 ① 投資株式の区分の基準及び考え方 当社は、専ら株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的とする銘柄を純投資目的と区分し、それ以外を目的とする銘柄を純投資目的以外の目的として区分しております。 ② 保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式(ⅰ) 保有方針及び保有の合理性を検証する方法並びに個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容 当社は、事業上の長期的な関係の維持・強化に繋がり、当社の企業価値の向上に資すると判断する場合を除き、原則として上場株式を保有いたしません。保有する上場株式については、取締役会で定期的に、一定の経営指標、資本コスト等を踏まえて収益性、採算性を個別銘柄ごとに検証するとともに、事業戦略、事業上の関係を総合的に勘案して、保有の合理性を適宜見直すこととしており、実際の売却は市場への影響等を総合的に考慮のうえ、順次実施しております。その結果、2023年度においては9銘柄(一部売却を含む)を約125億円で売却いたしました。 (ⅱ) 銘柄数及び貸借対照表計上額 銘柄数(銘柄)貸借対照表計上額の合計額(百万円)非上場株式274,385非上場株式以外の株式2054,966 (当事業年度において株式数が増加した銘柄) 銘柄数(銘柄)株式数の増加に係る取得価額の合計額(百万円)株式数の増加の理由非上場株式1917事業上の関係の維持強化のため非上場株式以外の株式--- (当事業年度において株式数が減少した銘柄) 銘柄数(銘柄)株式数の減少に係る売却価額の合計額(百万円)非上場株式22非上場株式以外の株式912,454 (ⅲ) 特定投資株式及びみなし保有株式の銘柄ごとの株式数、貸借対照表計上額等に関する情報特定投資株式銘柄当事業年度前事業年度保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由当社の株式の保有の有無株式数(株)株式数(株)貸借対照表計上額(百万円)貸借対照表計上額(百万円)㈱しずおかフィナンシャルグループ6,809,0008,315,500同社株式は、財務取引関係の維持強化のため保有しております。有9,8527,908Ultragenyx Pharmaceutical Inc.1,243,9131,243,913同社が保有する遺伝子治療薬製造技術を非独占的に利用する契約を締結しており、今後の事業上の関係を維持強化するため保有しております。無8,7936,661㈱スズケン952,598952,598同社株式は、販売取引関係の維持強化のため保有しております。有4,4193,186㈱三井住友フィナンシャルグループ474,600569,500同社株式は、財務取引関係の維持強化のため保有しております。有4,2283,017アルフレッサ ホールディングス㈱1,802,1443,202,144同社株式は、販売取引関係の維持強化のため保有しております。有4,0055,430クオリプス㈱1,000,000-同社が開発するiPS細胞由来心筋シートの商業化に関する契約を締結しており、今後の事業上の関係を維持強化するため保有しております。なお、同社株式が新規上場したことに伴い、当事業年度より特定投資株式に該当しております。無3,695-MS&ADインシュアランスグループホールディングス㈱431,563478,363同社株式は、財務取引関係の維持強化のため保有しております。有3,5091,964キッセイ薬品工業㈱913,000913,000同社株式は、事業上の関係の維持強化のため保有しております。有3,2272,411クオールホールディングス㈱1,304,0001,304,000同社株式は、事業上の関係の維持強化のため保有しております。無2,3041,513東京海上ホールディングス㈱459,600574,500同社株式は、財務取引関係の維持強化のため保有しております。有2,1611,463㈱メディパルホールディングス809,0072,184,007同社株式は、販売取引関係の維持強化のため保有しております。有1,8763,939東レ㈱2,385,0002,385,000同社株式は、事業上の関係の維持強化のため保有しております。有1,7651,804㈱みずほフィナンシャルグループ570,536760,836同社株式は、財務取引関係の維持強化のため保有しております。有1,7371,428東邦ホールディングス㈱391,3941,091,394同社株式は、販売取引関係の維持強化のため保有しております。有1,4292,564 銘柄当事業年度前事業年度保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由当社の株式の保有の有無株式数(株)株式数(株)貸借対照表計上額(百万円)貸借対照表計上額(百万円)㈱アインホールディングス114,000114,000同社株式は、事業上の関係の維持強化のため保有しております。無629632㈱いよぎんホールディングス470,000470,000同社株式は、財務取引関係の維持強化のため保有しております。有551353㈱ほくやく・竹山ホールディングス438,500438,500同社株式は、販売取引関係の維持強化のため保有しております。有381277第一生命ホールディングス㈱59,10059,100同社株式は、財務取引関係の維持強化のため保有しております。有227143Silence Therapeutics PLC48,48948,489同社株式は、事業上の関係の維持強化のため保有しております。無15840㈱レナサイエンス30,00030,000同社が保有する独占的実施許諾(ライセンス)に関する優先交渉権を獲得するオプション契約を締結しており、今後の事業上の関係を維持強化するため保有しております。無1113三井住友トラスト・ホールディングス㈱-11,285同社株式は、財務取引関係の維持強化のため保有しておりましたが、当事業年度中に全て売却しております。無-51(注)1.「-」は、当該銘柄を保有していないことを示しております。2.定量的な保有効果及び一部の業務提携等の概要については、取引先との営業秘密等との判断により記載いたしませんが、一定の経営指標、資本コスト等を踏まえて収益性、採算性を個別銘柄ごとに検証するとともに、事業戦略、事業上の関係を総合的に勘案して、保有の合理性を検証しております。 みなし保有株式銘柄当事業年度前事業年度保有目的、業務提携等の概要、定量的な保有効果及び株式数が増加した理由当社の株式の保有の有無株式数(株)株式数(株) 期末時価(百万円) 期末時価(百万円) アルフレッサ ホールディングス㈱3,908,0003,908,000退職給付信託運用のうち、議決権の行使を指示する権限のあるもの。有8,6856,627㈱メディパルホールディングス3,274,0003,274,000退職給付信託運用のうち、議決権の行使を指示する権限のあるもの。有7,5955,906東邦ホールディングス㈱1,637,0001,637,000退職給付信託運用のうち、議決権の行使を指示する権限のあるもの。有5,9783,846㈱バイタルケーエスケー・ホールディングス1,614,0002,214,000退職給付信託運用のうち、議決権の行使を指示する権限のあるもの。有2,0271,979(注)1.貸借対照表計上額の上位銘柄を選定する段階で、特定投資株式とみなし保有株式を合算しておりません。2.定量的な保有効果については、取引先との営業秘密等との判断により記載いたしませんが、一定の経営指標、資本コスト等を踏まえて収益性、採算性を個別銘柄ごとに検証するとともに、事業戦略、事業上の関係を総合的に勘案して、保有の合理性を検証しております。 ③ 保有目的が純投資目的である投資株式 該当事項はありません。 |
株式数が増加した銘柄数、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社 | 1 |
株式数が減少した銘柄数、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社 | 9 |
銘柄数、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社 | 27 |
貸借対照表計上額、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社 | 4,385,000,000 |
銘柄数、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社 | 20 |
貸借対照表計上額、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社 | 54,966,000,000 |
株式数の増加に係る取得価額の合計額、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社 | 917,000,000 |
株式数の減少に係る売却価額の合計額、非上場株式以外の株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社 | 12,454,000,000 |
株式数、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社 | 30,000 |
貸借対照表計上額、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社 | 11,000,000 |
株式数、保有目的が純投資目的以外の目的であるみなし保有株式の明細、提出会社 | 1,614,000 |
貸借対照表計上額、保有目的が純投資目的以外の目的であるみなし保有株式の明細、提出会社 | 2,027,000,000 |
株式数が増加した理由、非上場株式、保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式、提出会社 | 事業上の関係の維持強化のため |
銘柄、保有目的が純投資目的以外の目的である特定投資株式の明細、提出会社 | クオリプス㈱ |