財務諸表
CoverPage
提出書類、表紙 | 有価証券報告書 |
提出日、表紙 | 2024-03-29 |
英訳名、表紙 | Blue innovation Co., Ltd. |
代表者の役職氏名、表紙 | 代表取締役社長 最高執行役員 熊田 貴之 |
本店の所在の場所、表紙 | 東京都文京区本郷五丁目33番10号 |
電話番号、本店の所在の場所、表紙 | 03-6801-8781(代表) |
様式、DEI | 第三号様式 |
会計基準、DEI | Japan GAAP |
当会計期間の種類、DEI | FY |
corp
沿革 | 2【沿革】 当社は、1999年6月に、現社長の熊田貴之の父、熊田知之が日本企業の工場の中国進出をサポートするために、当社の前身である有限会社アイコムネット(以下、アイコムネット)を設立して、事業を開始しております。2001年8月に、現社長の熊田貴之がアイコムネットに入社し、大学院在学中に研究を行っていた海岸防災(失われた海岸を復元する先端技術の開発)に関わる受託事業として海岸防災コンサルティングサービス事業を開始しました。当該サービスの中でドローンを活用し災害直後の空中写真を撮影する「ドローンを活用した海岸モニタリングシステム」を東京大学と開発したことをきっかけとして、ドローンにおける知見を蓄積し、今後の社会課題を解決するソリューションとしてドローンが有用であると確信して、ドローンを主としたソリューション事業の提供を展開するに至りました。2013年4月には、よりドローン事業を推進する方針を示すために社名を現在のブルーイノベーション株式会社に変更しており、現在では人が実施していた設備の点検、物流等の業務を、ドローンやAGVで代替して実施することにより効率化や安全化、省力化を図ることを目的としたソリューションの提供を行っております。 設立以降の当社に係る経緯は、以下のとおりであります。年月事業の変遷1999年6月有限会社アイコムネットとして会社を設立2001年8月防災環境事業(海岸コンサルティングサービス)を開始2008年4月「航空写真・映像事業部」(ドローンの空撮サービス)を開始2010年3月本社所在地を東京都江東区青海へ移転2012年1月本社所在地を東京都千代田区神田錦町へ移転2013年4月株式会社に改組し、社名をブルーイノベーション株式会社に変更2014年7月一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA ※)の設立に参画2016年5月ドローン専用飛行支援地図サービス「SORAPASS」サービスを開始2016年9月東京都板橋区に「Drone Lab ITABASHI」を開設2017年3月東京電力ホールディングス株式会社、株式会社テプコシステムズと共同で電力設備を自動点検する「ドローン飛行支援システム」を発表2017年12月本社所在地を東京都文京区本郷に移転2018年1月ドローン統合管理システム「BEP(Blue Earth Platform)」を発表2018年3月Flyability SA(スイス)と業務提携し、狭小空間での飛行に最適な、球体ガードで覆われたドローン「ELIOS」による屋内点検分野での新たなソリューション・サービスをスタート2019年9月Flyability SAが製造する全ての製品に関する日本での販売に係るReseller契約(以下、国内独占販売契約)に基づき、球体ドローン ELIOS 2の提供を開始2020年9月JUIDAが新設する「プラント点検上級操縦技能証明証」に参画2021年2月工場・プラント施設点検向けドローンのリース契約を開始2021年5月送電線に沿ってドローンが自動飛行・撮影する「送電線点検用ドローン自動飛行システム」を開発2021年6月用途に必要なBEPの機能、デバイスを選り出した「BEPパッケージ」を開発、提供開始2022年1月トッパン・フォームズ株式会社(現、TOPPANエッジ株式会社)と共に、AGV自動巡回点検ソリューションの提供を開始2022年2月ISMS認証(ISO27001)を取得2022年3月ロボットオフィス清掃ソリューション「BEPクリーン」のトライアルサービスを提供開始2022年4月AGV自動巡回点検ソリューション「BEPサーベイランス」のトライアルサービスを提供開始2022年6月Flyability SAとの国内独占販売契約に基づき、球体ドローン ELIOS 3の提供を開始2022年11月送電線ドローン点検ソリューション「BEPライン」の販売とソフトウェアの月額課金サービス及び委託点検サービス提供を開始2022年11月全自動ドローン運航・管理システムによる「津波避難広報ドローンシステム」の本格運用を宮城県仙台市で開始2023年2月ドローン飛行日誌作成・情報管理サービス「BLUE SKY」の提供を開始2023年6月物流用ドローンポートの設備要件を国際標準規格化「ISO5491」2023年12月東京証券取引所グロース市場に株式を上場※一般社団法人日本UAS産業振興協議会(Japan UAS Industrial Development Association)の略称。日本の無人航空機を含む次世代移動システム産業の振興を目的として、2014年7月に設立。東京大学名誉教授鈴木真二氏が理事長を務める。 |
事業の内容 | 3【事業の内容】 当社は、複数の自律移動ロボット(ドローン(※1)やAGV(Automated Guided Vehicle)(※2)などを指す)を遠隔で制御し、統合管理するためのソフトウェアプラットフォーム(※3)であるBlue Earth Platform(以下、BEP)を基軸に、人が実施していた設備の点検、物流等の業務を、ドローンやAGVで代替して実施することにより効率化や安全化、省力化を図ることを目的としたソリューションの提供を行っております。 BEPとは、センサモジュールとソフトウェア(アプリ、クラウド)で構成された当社開発の統合的なシステム上のプラットフォームのサービス総称です。顧客の課題に対応して、ドローンの機体とセンサ、並びにソフトウェア開発の適切な組み合わせを、BEPの環境下で開発した上でソリューションとして提供していることから、各ソリューション名に「BEP」の名称を冠しております。「BEP」の環境下で、顧客の要望に合わせて、ドローン等の自律移動ロボットの移動・遠隔制御・デバイスとの連携等の「動かす」こと、ドローン等の取得した情報の保存・連携・監視等の「集める」こと、ドローン等の運行管理・挙動の解析等の「管理する」ことを実現しております。 特に足元では、社会課題として、インフラ老朽化による点検需要の増加が著しく、弊社としても点検ソリューションが主要事業となっております。点検業界においては、人件費高騰に伴う点検コストの増加、一方で危険作業におけるノウハウの属人化や労働力不足が発生しているものと当社は認識しており、それに対して、当社はドローン導入のソリューションを提供することで、業務の安全化、効率化、低コスト化の実現という価値を提供しております。また、併せてドローンパイロットの育成に関する教育ソリューション事業も行っており、ソリューションの提供に加えて点検等に必要なパイロットの提供にも関わっております。その他、物流、オフィスにおけるドローン、AGVを利用したソリューションの提供も行っており、将来的には、BEPにドローン、AGVの全てが接続されて、自律した運用を実現することで、スマートで新しいまちづくりの実現を目指して事業を展開しております。 当社の事業は、ドローン関連事業の単一セグメントであるため、以下に当社の主要なサービスの内容を記載いたします。 1.事業ドメインの全体像 当社の事業は、主にドローンを基軸として、点検、教育、物流及びネクスト(新規ソリューション創造)の4つのソリューションを提供しております。2023年度における各ソリューションの売上比率は、点検が49%、教育が24%、物流が21%、ネクストが6%です。 (1) 点検ソリューション 点検ソリューションでは、ドローンを活用しプラント施設の点検を提供する「BEPインスペクション」、ドローンを活用し送電線点検を提供する「BEPライン」、AGVを活用してプラントや製造工場等の自動巡回点検を提供する「BEPサーベイランス」があり、また、それぞれのBEPのソリューションパッケージのソフトウェアサービスでは、撮影した映像や移動ログ、解析データを提供するサービスも含まれます。 (2) 教育ソリューション 教育ソリューションでは、ドローン操縦の基礎教育を提供する「BEPベーシック」、ドローンを活用した様々なソリューションの教育を提供する応用教育、ドローンパイロットに必要な情報を提供するドローン専用飛行支援地図サービス「SORAPASS」を提供します。(3) 物流ソリューション 物流ソリューションでは、物流用ドローンが離発着するドローンポートを製品化した「BEPポート」の実証サービスを提供します。(4) ネクストソリューション ネクストソリューションでは、次なる事業の柱になる新規ソリューションの創造を行っており、複数台数・複数機種の掃除ロボットを活用したオフィス清掃を提供する「BEPクリーン」等を現在開発し、実証サービスを提供しています。 当社は、上記各ソリューションについて、BEPを軸としたパッケージを作り顧客にソリューション提供しており、具体的に各ソリューションのBEPパッケージの導入コンサルティング、実証実験から、導入講習、トライアル導入、本格導入、保守メンテナンスを、販売又は継続収益形態(ドローン機体のリース契約又は点検サービスの月額課金形態)によるサービス提供を行っております。 以下に、ソリューション提供における当社の顧客獲得から導入の一般的な流れを示します。 各業務の項目・概要は次のとおりとなっております。なお、下表については、点検ソリューション、物流ソリューション及びネクストソリューションに該当するものであり、教育ソリューションについては該当しておりません。サービス項目期間サービス内容・導入コンサルティング6か月~1年法人向けにBEPパッケージ導入のコンサルティングを行い、コンサルティングに関する業務委託料を売上として計上しております。委託料は、月額固定金額での契約と一括契約があります。・実証実験(PoC)1日~6か月法人向けにBEPパッケージ導入の実証実験を行い、実証実験に関する業務委託料を売上として計上しております。・ソリューション開発6か月~3年導入コンサルティングや実証実験により活用方針を明確にし、必要に応じて要件定義を実施後、BEPパッケージに新規デバイス(IoTカメラやLiDARなどのセンサ類)の接続やソフトウェアのカスタマイズ開発(顧客専用画面や顧客システムとの連結等の開発)を行い、業務委託料を売上として計上しております。・トライアル導入、導入講習1か月~3か月本格導入前の試用期間として、一定期間BEPパッケージを提供します。また、法人向けの社員教育プログラムを提供し、特にドローン活用したBEPパッケージの場合は、技術や法律などパイロットの品質を維持向上する内容を提供します。コンサルティング料もしくは業務委託料を売上として計上しております。・本格導入1年契約(自動更新)ドローン等の機体、センサモジュール、ソフトウェア(運航計画と移動ログ記録、映像記録等)の販売又は継続収益形態(ドローン機体のリース契約又はソフトウェアの月額課金形態)によるサービスを提供しております。また、付帯して保険や代替機提供、保守メンテナンスサービス等も提供する場合もあります。販売の場合は、一括して販売個数に応じて売上を計上しております。継続収益形態の場合には、業務委託料、リース料等を売上として毎月計上しております。・受託運用(ドローンを活用したBEPパッケージのみ)1日ごと単日等の期間を定めたスポット対応で、ドローンを保有していない法人にドローン運用サービスを提供し、保有している法人にはパイロット派遣サービスを提供します。ドローン運用サービスの業務委託料を売上として計上しております。 教育ソリューションについては、主に基礎教育事業と応用教育事業があり、JUIDAと連携した基礎教育事業においては、JUIDAから業務委託を受けたドローン教育関連の業務委託料(ストック型)を売上として計上しており、応用教育事業においては、ドローンに関する講習の業務委託料(フロー型)を売上として計上しております。 2.サービス内容 各ソリューションによる詳細なサービス内容は以下のとおりです。(1)点検ソリューション 点検ソリューションは、プラント点検「BEPインスペクション」、送電線点検「BEPライン」及び自動巡回点検「BEPサーベイランス」を提供しております。「BEPインスペクション」は、全国の石油化学プラント、製鉄所、水力・火力発電所、ゴミ処理場等の屋内施設を中心に、現在までに250以上の現場で点検運用サービスを導入し、50台以上のドローン・ソフトウェアを販売しております。「BEPライン」は、東京電力などと開発した送電線検知可能なセンサモジュールとソフトウェアを電力会社向けに販売、提供しております。「BEPサーベイランス」は、火力・水力発電所、鉄道車両等の屋内施設に対し、実証実験とAGV・ソフトウェアのトライアルセットを販売しております。点検ソリューションは、東京電力や九州電力をはじめとした一般電気事業者などに対し実証実験を実施しており、そのうち数社についてはトライアル導入、本格導入へと順次展開していっております。 各ソリューションサービスにおけるドローン・AGV等の活用ニーズは以下のとおりとなります。ソリューションサービスクライアント顧客課題ドローン・AGVによる解決方法プラント点検「BEPインスペクション」電力会社(火力・水力発電所)石油化学会社製鉄会社環境プラント1)作業員が危険な狭小空間に入る必要があり、危険な点検作業が伴う2)足場を組む、クレーンを使う等の日単位の膨大な点検作業が必要3)点検に膨大なコストがかかるプラント点検のリモート化:従来は足場を組み、長期間にわたり多額のコストをかけて行ってきた目視点検が、ドローンによる目視点検により、期間短縮及びコスト削減が可能になり、250現場以上で導入実績あり。1)安全性の向上:死亡事故ゼロ2)作業効率の向上:足場を組まずに、点検作業可能になり時間短縮3)コスト削減:点検時の足場やクレーンを設置しないためコスト削減送電線点検「BEPライン」電力会社(送配電部門)主な一般電気事業者の送電線は、全国で約10万kmあり、ドローン点検の対象となる架空線は約9万km(その他は地中線)あり、定期点検(1~5年に1回)と緊急時(落雷等)点検が必要不可欠。1)感電や墜落事故の危険:送電線点検作業時の事故により、死亡事故なども発生している2)山間部は立入り困難、送電停止手続きが煩雑である3)多額の送電線点検コストがかかり、今後老朽化により点検コストの増大が見込まれる送電設備の点検を自動化:ドローンに搭載された対象物検知センサにより送電線を自動検知し、一定距離を保って自動飛行・撮影を行い、ドローンによる送電線の自動点検を実現。1)安全性の向上:点検作業の無人化(死亡事故ゼロ)2)作業効率の向上:遠隔から近寄らずに点検可能3)コスト削減:点検を省力化・低コスト化(スマートメンテナンス)自動巡回点検「BEPサーベイランス」電力会社(火力・水力発電所)鉄道会社1)発電所などのプラント施設は、多くの施設・機器があり、点検員がそのすべてを常時監視して異常を発見するのは困難2)点検作業員の高齢化と将来的な人員不足3)施設老朽化に伴い、異常をできるだけ早期に確認したい巡回点検を自動化:従来の発電所点検員が行う巡回を、AGVで代替し、自動巡回点検を実施。各種センサにより、膨大なデータの取得、解析が可能となり、効率化、安全化、省力化、高精度化が実現。1)巡回・点検の自動化2)点検効率の向上3)平時・異常時の遠隔点検 各点検ソリューションにおける詳細は以下のとおりです。① 「BEPインスペクション」 当社はFlyability SA(スイスのドローンメーカー。以下「Flyability社」)と国内独占提携しており、衝突に強く屋内で安全に飛行可能なFlyability社の「ELIOS」を使用した屋内の点検ソリューション提供を行っております。ソリューション提供にあたっては導入実証実験又はデモンストレーションを行い、プラント点検の効率化、低コスト化などを検証します。効果を確認後、「ELIOS」の機体を販売又はリース契約として提供し、3Dモデリングやレポート化が可能な「ELIOS」専用ソフトウェアや保守メンテナンスは継続収益形態によるサービスで提供します。なお、2023年2月より提供開始したBEPを軸として開発した「BLUE SKY」((2)教育ソリューションで後述)は、「ELIOS」の機体に対応し、飛行記録、映像記録のデータ収集、飛行日誌の自動生成、機体情報・バッテリー管理が可能で、現在はJUIDA会員のパイロット向け(個人契約向け)のみに月額課金形態で提供しています。また、機体の販売方法については、顧客への直接販売及び販売代理店を活用した間接販売を行っております。 ② 「BEPライン」 BEPインスペクション同様に導入実証実験又はデモンストレーションによる効果を確認後、当社が開発した対象物検知センサモジュールを販売又はリース契約として提供し、センサモジュール専用のソフトウェア(飛行計画と飛行ログ記録、リアルタイム情報、送電線映像記録)・保守メンテナンスを継続課金形態によるサービスで提供しております。販売方法は、顧客への直接販売がメインとなります。 当社は東京電力グループと共同で、送電線点検用ドローン自動飛行システム「BEPライン」を開発し、東京電力管内の支社及び事務所の送電線の点検業務に「BEPライン」を複数台導入し、実用化に成功しております。開発した「BEPライン」の構成は、対象物検知センサモジュールと飛行計画等が可能なソフトウェアとなります(特許出願中)。 ③ 「BEPサーベイランス」 発電所や製油所などのプラント工場では、設備の計器の確認やオイル漏れの有無、損害箇所の有無などを定期的に確認する巡回点検が義務付けられています。現状の巡回点検は、人による巡回で行われているため、点検員の高齢化や人員の不足、感応評価による評価基準のバラつきなどが問題になっています。また、設備の老朽化に伴う点検需要の増加もあり、ロボットによる自動化が求められています。 「BEPサーベイランス」は、それらの課題を解決するために、複数台のAGVを活用した自動巡回ロボットを提供しています。サービス提供にあたっては、BEPライン等と同様に導入実証実験又はデモンストレーションを行い、その効果を確認後、AGVを販売又はリース契約として提供し、AGV専用のソフトウェア(複数台の遠隔制御・一元管理、カメラ、マイク、センサなど搭載デバイスのデータを一元管理、AI解析、5G通信リアルタイム情報)・保守メンテナンスを継続課金形態によるサービスで提供しております。販売方法は、顧客への直接販売及び販売代理店を活用した間接販売を行っています。 各ソリューションサービスの主な顧客は以下のとおりです。ソリューションサービス主な顧客名プラント点検「BEPインスペクション」東京電力や九州電力など一般電気事業者、株式会社JERA、出光興産株式会社、ENEOSシステムズ株式会社送電線点検「BEPライン」東京電力ホールディングス株式会社、東京電力パワーグリッド株式会社自動巡回点検「BEPサーベイランス」東日本旅客鉄道株式会社 (2)教育ソリューション 教育ソリューションは、JUIDAと連携して以下のサービスを提供しております。① 基礎教育「BEPベーシック」 日本におけるドローンの新たな産業・市場の創造支援と産業の健全な発展への貢献を目的として、2014年7月に設立された業界団体のJUIDAに設立当初から参画し、設立メンバーとして法人・個人会員管理業務をサポートしてまいりました。JUIDAは28,000を超える会員数を有する団体へと成長し、世界20カ国以上、30以上の機関と基本合意書を締結し、ドローン教育として日本初ドローン関連ISO規格(ISO23665)発行に成功している国内の有力なドローンの業界団体です。当社は、JUIDAと連携して、民間独自のカリキュラムによるドローン教育を提供しており、2022年に施行されたドローンの国家ライセンスがスタートしたことで、JUIDAは国の登録講習機関等監査実施団体となり、国が認定する登録講習機関(ドローンスクール)を監査する立場となり、当社は国の認定する登録講習機関(ドローンスクール)として、今までの民間独自の講習に加え国家ライセンスの講習も提供しております。(a)ドローンスクール管理業務の運営受託 JUIDAでは、ドローンの運用にあたり、安全性・信頼性を高めていくためには、操縦士や安全運航管理者の養成が何よりも重要と考え、2015年10月よりドローンの操縦士及び安全運航管理者養成スクールの認定制度をスタートし、全国にJUIDA認定スクールを展開しております。 当社は、JUIDAよりスクール管理業務の一部を委託されており、スクールで提供する教育プログラム作成、講師育成、JUIDA認定資格の発行支援などを行っており、会員数、ドローンスクール数に応じた継続課金形態による運営サービスを提供しております(会員数28,345名、ドローンスクール272校、操縦技能証明証30,884名、安全運行管理者証明証発行26,409名(2023年12月末時点)。 (b)パイロット管理システムの提供 パイロットの教育履歴、技能レベル、飛行実績などのデータを適切に管理するため、パイロット管理システム(BEPに連結されたシステム)を開発し、JUIDAに、そのソフトウェアと保守メンテナンスを継続課金形態によるサービスで提供しております。JUIDAの操縦技能証明証又は安全運行管理者証明証の保持者の適正な管理や、依頼したいソリューション案件などがある場合に、具体的なパイロットデータ情報に基づき最適なパイロットを検索し提案することを可能にするシステムとなります。 (c)ドローン飛行日誌作成・情報管理サービス「BLUE SKY」 2022年12月5日の改正航空法施行に伴って義務化されたドローン飛行時の飛行日誌作成や機体情報の管理などを自動化するサービス「ドローン飛行日誌作成・情報管理サービス|BLUE SKY」の提供を、2023年2月より、(b)のパイロット管理システムの会員に向けて開始し、JUIDA会員(個人正会員・個人準会員)には、無料で提供しております。一方、JUIDAには、そのソフトウェアと保守メンテナンスを継続課金形態によるサービスで提供しております。BLUE SKYは、ドローンのフライトログの自動アップロードやデータ分析、航空局指定フォーマットでの飛行日誌の自動生成、機体・バッテリー管理などがパソコンやスマートフォンなどで簡単に管理・作成・出力できるサービスです。当社のデバイス・情報統合プラットフォーム「BEP」と、世界で約26万人のユーザーを持つ米国のリアルタイムフライトストリーミングプラットフォーム「AirData UAV」とのシステム連携により提供されるもので、世界中のドローンメーカー20社のドローンやアプリケーションに対応しています。 ② 応用教育 プラント点検や基地局点検など点検サービスの実用化に伴い、ソリューション特化型のドローン教育講習のニーズが各企業で高まっております。当社には、法人向け教育プログラム作成、講師提供、認定資格の提供、パイロット管理システムなど、JUIDAとの連携で培った一貫した教育パッケージがあり、これをベースに顧客ごとに、各ソリューション向けの教育プログラムを作成し、コンサルティング料もしくは講習会の業務受託としてサービス提供しております。作成した教育プログラムを顧客と共に顧客内(支社など)、業界内で導入展開すると共に、JUIDAのプラント点検上級操縦技能証明証のように、JUIDA監修の元で業界内での標準化を図り、導入展開を加速する活動も行っております。現在、林野庁、大手通信キャリア、電力施設メンテナンス会社等に提供した実績があります。 ③ ドローン専用飛行支援地図サービス「SORAPASS」 ドローン専用飛行支援地図サービス「SORAPASS」を、約5万人以上のSORAPASS会員(アカウント登録者数)に向けて、基本は無料で一部保険等の有料サービス(継続課金形態)を組み合わせたフリーミアムモデルとしてサービス提供しております。SORAPASSは、国内向けのドローンパイロットのプラットフォーム(BEPに連結されたシステム)であり、飛行禁止区域MAP、気象情報の把握や飛行申請サポート、ドローンレンタル(有料)、保険などの申請(有料)、パイロット・機体・飛行実績の管理など、ドローン飛行に必要なサービスを提供しております。 各ソリューションサービスの主な顧客は以下のとおりです。ソリューションサービス主な顧客名基礎教育「BEPベーシック」一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)応用教育(森林教育)林野庁、日本森林技術協会 (3)物流ソリューション 物流ソリューションは、国土交通省や地方自治体、物流サービスプロバイダに対して、ドローンが離発着するドローンポートシステム「BEPポート」の開発と導入実証実験を、コンサルティング料もしくは実証実験に関する業務受託としてサービス提供しております。東京都江戸川区、江東区、静岡県東伊豆町、高知県香南市、大分県日田市で実証実験を実施しております。 当社は、2016年より、国土交通省と共に物流用ドローンポートの開発に着手し、現在、ISO(国際標準化機構)において、TC20/SC16(無人航空機システム)エキスパート、TC20/SC17(空港インフラ)エキスパート、及びvertiport(垂直離着陸用飛行場:ドローンポートと同義)のワーキングドラフト5491のコンビーナ(委員長)を務めております。2023年6月に、150kg以下の物流ドローンにおけるドローンポートの国際標準化(ISO5491発行)に成功し、当社が業界のパイオニアとして推進している事業になります。 物流ソリューションにおけるドローンの活用ニーズは以下のとおりとなります。ソリューションサービスクライアント顧客課題ドローンによる解決方法物流「BEPポート」国土交通省、地方自治体、日本規格協会、大手自動車メーカーなど1)物流業界では、市場規模は堅調に拡大しているものの、慢性的な人手不足に悩まされ、小口配送化により従業員の負担は増大し、人手不足に追い打ちをかけている。2)道路の交通渋滞解消、災害時の物資(医療)輸送を実現するため、新たな交通又は物流手段となる、空飛ぶクルマ、ドローンを活用したサービスの実用化のニーズがある(空の産業の創出)。3)炭素排出の無い次世代型のエネルギーシステムを搭載した空飛ぶクルマ、ドローンに注目が集まっている(カーボンニュートラル)。4)人口密集地、有人地帯の上空で目視外飛行を実現するための制度整備として航空法が改正され(いわゆる「レベル4」)、2022年12月5日以降可能。空の物流を自動化:当社では、都市内を飛行する小型ドローンに加え、新たに空飛ぶクルマや高ペイロードドローンが離発着し荷物を降ろす固定式(大型)と可搬式のドローンポートを開発し、固定式ドローンポートはスーパーシティ(※4)への導入を展開し、可搬式ドローンポートは地方自治体や災害避難所への導入を展開。1)空のインフラが整備されることで、道路の渋滞減少、物流事業者の減少対策、災害物資(医療)輸送、CO2削減など社会課題を解決するとともに、新たな空の産業の創出につながる。2)わが国で、災害時、平時のドローン物流、空飛ぶクルマによる人の輸送が期待される。また、当社はISO(国際標準化機構)においてTC20/SC17(空港インフラ、垂直離着陸用飛行場)ワーキングの委員長を務めており(ISO5491発行に成功)、世界に日本発のドローンポートを普及し、結果として上記ソリューションも普及する。 固定式ドローンポート可搬式ドローンポート (4)ネクストソリューション ネクストソリューションは、次なる事業の柱になる新規ソリューションの創造を行っております。 現時点では、iRobot Corporation(以下、「iRobot社」)と提携して、複数フロアのあるオフィスやホテル、店舗に対し、BEPを活用してルンバ等を群制御(※5)する清掃サービス「BEPクリーン」を開発し、実証サービスを提供しています。2022年には大手不動産会社やゼネコン等でそれぞれ実証実験を行い、その後トライアルサービスとして、ルンバはリース契約として提供し、専用のソフトウェア(複数台の遠隔制御・一元管理、清掃状況監視、異常発生通知、清掃結果)・保守メンテナンスは継続課金形態に移行している顧客もおります。 当社は世界で3,500万台以上の販売実績のある清掃ロボットメーカーであるiRobot社と提携し、BEPを活用してゴミ収集ロボットのルンバや拭き掃除ロボットのブラーバを群制御することで、複数フロアのあるオフィスやホテル、店舗などへの清掃サービスを提供可能にしていることが特徴であります。 ネクストソリューションにおける清掃ロボットの活用ニーズは以下のとおりとなります。ソリューションサービスクライアント顧客課題清掃ロボットによる解決方法オフィス清掃「BEPクリーン」オフィスビル、商業施設、学校、コンビニ、ホテル、病院、倉庫、美術館、博物館、公共施設、シェアハウスなどオフィスやホテル、店舗の清掃は、従来は、人が行う清掃代行サービスが主であり、1)清掃員の高齢化や労働人口の低下に伴い、ロボットを活用した自動化が求められている。2)従来の清掃ロボットは、1台で広いフロアのゴミ収集、拭き掃除などを実現するために、価格帯が比較的高い。3)既存の清掃ロボットは、エレベーターでの移動に関して、人の手を介在させる必要がある。当社はiRobot社と提携し、BEPを活用してルンバ(ゴミ収集ロボット)やブラーバ(拭き掃除ロボット)を群制御することで、1)複数フロアのあるオフィスやホテル、店舗などへの清掃サービスが提供可能。2)BEPを活用することで、ルンバやブラーバを複数台、各フロアで郡制御することで、従来のお掃除ロボットよりも安価なソリューションを提供。3)BEPを活用して、ルンバを統合管理するだけではなく、セキュリティシステムや施設との連携、保守部品の供給、契約管理を実現できる。 3.当社の強み(1)屋内点検など、特殊環境下における高い技術力 当社は、屋内施設のように一般のドローンでは飛行できない非GPS環境(※6)での点検や、屋外においてもGPS(衛星測位システム)のみでは高精度に点検できない特殊環境での点検に強みがあります。例えば、市販のドローンは、屋外でGPSのサポートを受けて自動飛行するのが一般的ですが、屋内等の特殊環境下ではGPSが入らず、自動飛行できない課題がありました。当社では、特殊環境に合わせたセンサを選定し、複数のセンサを組合わせて最適な自己位置を推定する技術(マルチセンサポジショニング:センサフュージョン(※7)のアルゴリズム(※8))に強みがあり、当社のセンサモジュールを市販の一般的なドローンへ搭載することで、非GPS環境下でも自動飛行が実現可能になります。当社のセンサモジュール搭載のドローンは、当社のサーバー・アプリと連動し、遠隔で飛行制御の指示が可能になり、ドローンの撮影データ、飛行ログ等のデータ管理も可能になります。 また、当社は、世界で競争環境の激しいハードウェアメーカーではなく、どのハードウェアデバイス(ドローン、AGV、ロボット等)とも繋がることが可能なソフトウェアの開発と提供を行っております。自社ハードウェアにこだわらず、各顧客の特殊環境下に合わせたドローン及びセンサの選定、チューニング及びソフトウェアの開発を行うことにより、最適なドローンのソリューションを提供することが当社の強みとなっております。 (2)パイロット育成ノウハウとネットワーク JUIDAや官公庁との連携により、法規制や実業務に即したソリューション特化型カリキュラムの共同開発に加え、全国のパイロットのスキルなど管理するシステムや実運用に向けたノウハウを全国に展開しております。また、全国でトータル10万人以上のパイロットネットワークと繋がり、点検ソリューション等のドローンのソリューション提供時において、同時に数十箇所の複数拠点のドローン運用が同時に可能であることが、当社の強みであり、ドローン教育の事業を有することがユニークな業界内のポジショニングにつながっております。 また、当社はJUIDAと連携し、改正航空法施工の1年前にドローン安全ガイドラインを策定し、ドローンの国家資格制度が始まる7年前から操縦技能証明・安全運航管理者証明発行を開始する等、常に業界内で先行して行動し、国策の前例となり貢献してきた経緯があります。 業界をリードする動きができている背景として、当社は、技術、法規制、人材育成の3分野でパートナー連携し、市場を創出する取り組みをしていることが挙げられます。・技術:インフラ企業と事業課題の共同研究開発を行い、ハードウェアメーカーと連携し、ソリューションを創造しています。・法規制:国と連携しガイドライン作成、国際標準化に向けた取り組みを行い、デジュールスタンダード(※9)の基盤を作っています。・人材育成:JUIDAと連携し、ドローンパイロットの教育カリキュラムの開発と人材育成を行い、全国に連携可能なパイロットネットワークを作っています。 <用語解説> 本項において使用しております用語の定義については、以下のとおりです。No.用語用語の定義※1ドローン遠隔操縦あるいは自律式の無人航空機一般。※2AGVAutomated Guided Vehicleの略称。産業用途で多く使用される自動運転車の一種で人間が運転操作を行わなくとも自動で走行できる搬送車。※3プラットフォーム自律移動ロボットを使ったソリューションや製品を開発する際に使用可能な技術要素(ソフトウェアや装置など)を備えたソフトウェア、ハードウェア群を意味する。開発者が自社ソリューションや製品において、自律移動ロボットを使って効率よく開発、提供するために必要な一連の技術要素をパッケージ化したもの。※4スーパーシティ各地域の持つ社会的な課題を最先端のテクノロジーによって解決を図ることを目的とした国家戦略特区。※5群制御自律的に存在する複数の個を組織化し、集団としてより高度な合目的動作を行う制御方式。※6非GPS環境橋梁下や室内などのGPS・GNSSデータが取得できない環境。※7センサフュージョン複数の異なるセンサから得られる情報を組み合わせて、より正確な情報や全体的な状況把握をする技術。※8アルゴリズム問題を解決するための手順や計算方法。※9デジュールスタンダードISОやJISなどの国際標準化機関などによって定められた規格。 <事業系統図> 当社は、ドローン・ロボットにBEPを接続し、システム・運用サービスを提供しております。 ※1 ハードウェアは、一括購入(フロー型)とリースによる月額利用(ストック型)の選択が可能。※2 ソフトウェアは、月額利用が基本(ストック型)。※3 運用サービスは、スポット契約が基本(フロー型)。 |
関係会社の状況 | 4【関係会社の状況】 該当事項はありません。 |
従業員の状況 | 5【従業員の状況】 (1)提出会社の状況 2023年12月31日現在従業員数(人)平均年齢(歳)平均勤続年数(年)平均年間給与(千円)69(9)41.74.16,688 (注)1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。3.当社の事業は、ドローン関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。 (2)労働組合の状況 当社において労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。 (3)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異 当社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。 |
経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 | 1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。 1.経営方針(1)当社が目指す社会 近年、わが国では、高度成長期以降に整備されたインフラ施設の老朽化が進む中で、老朽化による維持管理の負担増、インフラ維持・点検監視を行う労働力についても少子高齢化に伴う減少、ノウハウの属人化による技術のばらつきなど複数の課題解決が急務であり、新しいシステムによる社会活動の解決が必要となっております。 当社は2030年ビジョンとして、インフラ等の強靭な社会システムを構築すべく、当社のBEPを自律分散(※1)型システムへと拡張し、新しい世界の社会インフラを支えるリーディングカンパニーになることを掲げました。具体的には、ドローン、ロボット、AGV等の新しい自律移動ロボットを繋ぐシステムのインフラとなり、スマートで新しいまちづくりに貢献することを目指してまいります。当該ビジョンの実現に向けて、産官学の垣根を越えた新たなソリューションを創出してまいります。 (2)経営理念 当社は、「新しい発想(アイデア)・創造・技術革新(イノベーション)によって、世界中の人々に安心、安全、便利、楽しさを提供し、人々の豊かな生活の実現に貢献する。」を経営理念として掲げております。 常にクリエイティブな技術者集団として、世界中の人々の生活の豊かさを実現すべく、イノベーションを起こし続け、人々の喜びである「楽しさ」を感じていただけるようなサービスを提供し続けることを実現してまいります。 2.経営環境及び経営戦略(1)経営環境 前述の「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、当社はBEPを基軸に、ドローンの適用拡大を進めながらロボットとの連携を実現し、ビジネスを拡大することを推進しております。 当社の事業領域にあたる国内IoT市場の市場規模は、2022年度で6兆818億円(支出額ベース)であり、年間平均8.6%の伸長が想定され、2027年度には9兆1,877億円になることが見込まれております。(出所:IDC「国内IoT市場 産業分野別 テクノロジー別予測、2023年~2027年」) また、現在の当社の中核事業にあたるドローン事業に係る国内市場は、2022年度で3,086億円と推測され、2021年度の2,308億円から778億円増加(前年度比33.7%増)しております。2023年度には前年度比24.0%増の3,828億円に拡大し、2028年度には9,340億円(2022年度の約3.0倍)に達するものと見込まれております。(出所:インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2023」) ドローンの社会活動への活用については、官民協議会においても導入に向けたロードマップが提示されており、操縦者の育成、ISOへの取組み、インフラ・プラント点検に関する取組み並びに運航管理システムの開発等が推進されている状況であり、ドローンの利用はますます拡大するものと当社は考えております。 また、当社の現時点の主要領域である点検ソリューションの潜在市場規模については、ドローンの点検分野の市場規模は2022年度で602億円であり、2028年度までに2,145億円となり、点検分野全体の年平均成長率は24%とドローン全体の成長率(年平均成長率20%)よりも高い有望な市場となっております(出所:インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2023」)。高度成長期に多数作られたインフラ設備の多くが老朽化したこと、さらにインフラの多くが高高度や狭小空間という人力では危険を伴う負荷の大きい作業であることが要因となっていると当社では考えております。 当社のもう一つの主要領域である教育ソリューションの市場については、2022年12月に開始されたドローンの国家ライセンス制度の導入という大きな契機もあり、ドローンライセンスに注目が集まっている状況にあります。国家ライセンスについては、一等と二等が存在するものの、当社が連携しているJUIDA等の民間のドローンライセンス取得保持者には国家ライセンスの取得における負荷が小さくなる優遇処置があり、また、引き続き一定の申請手続きを行えば、民間ライセンスでも飛行は認められる等、継続して需要は見込めるものと考えております。 ドローン飛行における許可承認申請件数については、2016年度から2022年度で年平均37%増加しており(出所:国土交通省ホームページ)、ドローンに関する教育のニーズは今後も高いものと当社では考えております。また、許可承認申請件数の増加に合わせて、ドローンの登録機体数及びパイロット数についても拡大していくものと考えております。 (2)経営戦略 当社は、短期の経営戦略については、ドローンの「領域」と「機能」を拡大することで、高い成長を継続してまいります。また、中長期的には、BEPに蓄積されたフライトデータに関するビッグデータを活用して、ドローン市場における強固な地位を確立しつつ、ドローンやAGV等が自律して動くサービスを提供するプラットフォーマーとなることを目指してまいります。① 領域の拡大 今までに取り組んできた教育、点検ソリューションで着実に経営基盤を固め、2025年度に開催される大阪・関西万博を皮切りに、国際標準化に向けて活動してきたBEPポートを軸に、物流ソリューションを展開していく方針です。また、オフィスソリューション等のネクストソリューションを創造し、新しい領域のソリューション開発へ挑戦し続けます。 現状の主要事業である点検ソリューションにおいては、橋梁等の公共インフラの老朽化や2024年1月に起きた石川県能登半島地震等の災害後の点検ニーズが拡大しているものと認識していることから、当該領域の顧客開拓を推進して成長を実現してまいります。併せて、点検市場の拡大が進む中で教育ソリューションにおけるニーズも高まっていくことが想定されるため、基礎教育及び応用教育の拡大も目指してまいります。 ② 機能の拡大 当社は、「BEPパッケージ」を以下の4段階に区分して開発し、サービス提供を進めております。 手動でドローン等を動かす(1)Standalone solutions、単体のドローンやロボット等がBEPと接続する (2)Connected solutions、ドローンやロボットの複数機種、複数台がBEPと接続する (3)Integrated solutions、BEPに接続されたドローンやロボット等が自律して動く (4)Network-based solutionsの4段階に分けて順に開発、サービス提供しております。 3.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 当社の収益構造は、実証実験等のフロー型売上の積上から、ドローン等のハードウェアのリースやBEPを軸としたソフトウェア、保守メンテナンス等のストック型売上を継続的に拡大することで、収益性を高めつつ、安定した売上成長を重視した経営を行っております。なお、安定した売上成長の観点では年間取引企業数及びストック型売上比率を意識し、また収益性を高めるためには、売上総利益率の高いソフトウェアサービスの売上(=BEPユーザーの利用料)及びBEPユーザー数(法人・個人)を伸ばしていくことが、客観的で重要な経営指標と考えております。 KPI定義採用理由①年間取引企業数当該年度に取引実績のある企業数・法人顧客との取引の積み上げが売上につながる。・年間取引企業の内訳は、新規顧客、既存顧客(リピート)で構成されている。既存顧客は、知見の蓄積並びにトラックレコードとして新規顧客の獲得につながる。また、同一顧客においてもサービス領域の拡張によるアップセルの基盤となる。②ストック型売上比率継続的な収益をもたらす契約による売上が全体に占める比率・継続的、安定的な収益の比率を示す。・ストック型の売上として、ドローン機体やAGV等のリース契約、BEPを軸としたソフトウェア、保守メンテナンスの月額課金形態により継続的に提供するサービスで構成。③BEPユーザー数(法人)BEPを利用している法人数(のべ数)・BEPを活用している法人数が、利益率の高いソフトウェアサービス売上の源になる。・知見の蓄積並びにトラックレコードの積上げが新たな顧客の獲得につながるため、のべ数をKPIとしている。③BEPユーザー数(個人)BEPを利用している個人数(累計)・BEPを活用している人数が、利益率の高いソフトウェアサービス売上の源になる。④BEPユーザー利用料(ソフトウェア売上高)BEPユーザーのBEP利用に伴うソフトウェアライセンス利用料・利益率の高いソフトウェアサービス売上の拡大が会社全体の収益性の向上につながる。 4.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題(1)顧客の拡大 特に現在の主要事業である点検ソリューションでは、既存顧客からのアップセル及び新規顧客の開拓を両輪として成長を目指してまいります。具体的には各既存顧客へのアップセルは、BEPインスペクション、BEPライン、BEPサーベイランスについて、主に各電力会社といずれかの契約を締結している状況であるため、BEPインスペクションからBEPラインへ、BEPラインからBEPサーベイランスへというように、他のソリューションへの契約拡大を行う方針であります。また、各ソリューションにおいてPoC段階の顧客も存在することから、本サービスにつなげることで、売上の拡大につなげてまいります。また、新規顧客の拡大については、橋梁及び水管橋という新たな業界がターゲットになるものと考えております。当業界は、非GPSかつ非常に複雑で狭小である特殊な環境下であることから当社の強みとなるセンシングの技術を活かせる領域と認識しております。橋梁向けの新BEPパッケージを提供して、顧客の拡大を推進してまいります。 また、教育ソリューションでは、国家ライセンスの導入が後押しになり、JUIDAと連携した民間ライセンス取得の優位性がより明確になると共に、そのニーズは堅調に推移すると当社は考えております。その中で基礎教育におけるスクール運営の受託事業を中心に売上が安定的に成長するものと考えております。加えて、ドローン業界が拡大する中で、各業界におけるドローン利用が進み、応用教育における講習のニーズが拡大するものと考えております。国や大手企業との実績のある当社が当該ニーズを獲得して、売上成長につながるものと考えております。 (2)優秀な人材の獲得 当社は、導入コンサルティングからアジャイル型のソリューション開発、運用・サポートまで一気通貫で提供することに強みがあり、それを支える最先端の技術者として今までに世界10ヵ国・地域以上から参加しており、高い技術水準を維持しています。エンジニアの獲得が世間一般で逼迫しており、優秀なエンジニアの獲得は重要な経営課題です。さらに、国内にはセンシングの開発可能なエンジニアの数が少ないため、当社は日本のみならず世界中から人材採用しております。当社のカルチャーは、多様性を重視しており、海外エンジニア社員の当社への評価も高く、社員紹介制度等を導入し、引き続き日本に限らず海外も含めて積極的に人材採用し、優秀なエンジニアを確保しつつ、次のステップへの開発体制を引き続き強化してまいります。 (3)新しい領域への参入 2016年に開催された小型無人機(ドローン)に係る環境整備に向けた官民協議会の中で「無人航空機(ドローン)の利活用と技術開発のロードマップ」案が示され、この中で、小型無人機の将来的な利用形態の本格化に際し必要となる技術開発や環境整備に向け、飛行技術に応じたレベル分けが示されました(出所:経済産業省「小型無人機の利活用と技術開発のロードマップ」)。わが国は、今まで、無人地帯での目視外飛行が可能な「レベル3」の段階にありましたが、2022年12月5日には、都市部を含む有人地帯での目視外飛行(第三者上空)が可能になる「レベル4」が解禁されました。 今後、レベル4解禁で求められるドローンの自動化技術として、社会実装に不可欠な充電などを可能とするドローンの離発着場「ドローンポート」があらゆるソリューションで重要になると当社は考え、今までにドローンポートのシステム部分(Vertiport information system)の開発と国際標準化を進めてきました。レベル4では、人々の頭上を複数ドローンが自動飛行するようになり、安全で確実なドローンの自動離発着や自動充電が重要となり、また物流ソリューションでは、他モビリティとの自動連携、物流のハブ機能としての役割も重要となります。さらに、荷物の受け渡しにおけるセキュリティ向上の観点から、着荷と荷物の一時保管(宅配ボックス機能)も重要になることが予想され、当社はレベル4における新たな社会インフラとなるドローンポートの開発を推進していきます。 当社は、先行的に仙台市において、レベル3ではありますが、東日本大震災の教訓を踏まえ、津波からの避難を呼び掛けるための新たな広報手段として、津波避難広報ドローンポートのシステムの開発を行い、2022年10月17日から本格運用を開始し社会実装しております(複数社との共同企業体による開発)。津波警報等(津波注意報、津波警報及び大津波警報)の発表とともに、全自動で2機のドローンが常設されたドローンポートから離陸・飛行し、沿岸部を訪れている方に対して、搭載するスピーカーから避難を呼びかける音声とサイレンを流すことにより、人の手を介さずに、自動で避難広報を行います。常設されたドローンポートの自動化事例では国内初であり、さらに「自動運航のドローンにより津波避難広報を行うこと」及び「専用のLTE通信網でドローンの制御等を行うこと」の2点において世界初の事例となります。また、2024年1月に、石川県能登半島地震に伴い、輪島市内を流れる牛尾川(鈴屋川の支流)にできた土砂ダムの状況を、当社が開発したドローンポートシステム「BEPポート」を活用し、自動かつ定期的に離発着するドローンにより撮影・監視し、決壊の危険性有無を常時把握することで、二次災害による被害を未然に防ぐことに貢献しました。なお、実災害現場でのドローンポートの社会実装は国内初となります。(4)新しい機能の拡大 現在は、手動でドローン等を動かす(1)Standalone solutions、単体のドローンやロボット等がBEPと接続する (2)Connected solutions、ドローンやロボットの複数機種、複数台がBEPと接続する (3)Integrated solutionsの開発まで完了し、サービスを提供しております。 今後は、(4)Network-based solutions(自律分散)の開発を進め、サービス提供に必要な高度150m以下の空のインフラにおいて、完全なる自律型空間を創るクラウドモビリティ構想(※2)の実現に向けて、グリッドベースナビゲーション(※3)、ブロックチェーン(※4)、確率論的AIモデル(※5)の技術を活用し、BEPのさらなる拡張を目指します。 (5)蓄積されたデータの活用 レベル4に向けて、自動化が加速する中、ますます重要になるのが飛行の安全性であり、その源になるのがフライトログ等の「ビッグデータ」のリアルタイム収集・解析となります。当社のBLUE SKYは、フライトログ、映像・解析データなどをBEPのクラウドに格納し、ビッグデータ化を進めております。さらにAIとも連携し、今後様々なサービスを提供する計画であり、当社は多くのパイロットのビッグデータを保有することで、今後、飛行の安全性の観点で大きく市場へ貢献すると共に、当社サービスの永続性を担保します。近年、社会及び企業のサステナビリティ(持続可能性)をより重視した経営を行う、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)という考え方があり、この考え方が追い風になり、より企業の永続性を考慮する上でも、当社のビッグデータは大きく貢献するものと考えております。 (6)組織体制の整備及び内部管理体制の強化 当社を取り巻く事業環境が急速に変化する中で、安定的かつ継続的に成長していくためには、組織体制の整備・強化を行うことが不可欠であります。このため、事業規模や成長ステージに合わせバックオフィス機能を拡充していくとともに、経営の公正性・透明性を確保するための組織体制の整備や内部管理体制強化に取り組んでまいります。 具体的には、監査等委員や社外取締役によるコーポレート・ガバナンス機能の充実、事業運営上のリスク管理や定期的な内部監査の実施による内部統制システムの強化を行っております。今後も会社の規模に合わせた適正な統制強化を行ってまいります。 (7)収益性の向上 当社の売上高は2020年より37%成長(年平均成長率)で推移していますが、当社のコストの大半は人件費と研究開発費が占めており、先行して人員と研究開発を増強しているため営業損失を計上しています。先行投資の実行により売上高は成長しており先行投資の影響で今までに継続的に営業損失を計上しているものの、赤字幅は2021年以降毎年縮小しております。今後、長期的に高い成長を維持するための先行投資(重点施策)として、主に「BEP新規ユーザーの獲得」と「BEPの機能拡大」を考えており、実現のために①セールス・開発の強化(人件費)、②マーケティングの強化(広告宣伝費)に投資する計画です。なお、当社ビジネスモデルはソフトウェアの開発(BEPの機能拡大)・提供が中心であることから、ハードウェアの開発・提供を行う他社と比較して研究開発費等の事業上の必要経費は少ないものと当社は考えており、利益率の高いソフトウェアによる売上(=BEPユーザー利用料)を拡大(=BEPユーザー数の拡大)することで、収益性の向上を進めております。また、当社は実証実験からスタートして、トライアル、本格導入に至ることが多いことから、既存顧客との継続取引も多い状況であります。今後についても、既存顧客への最適なソリューションの提供により、契約が継続するように推進し、契約として継続収益形態(ドローン機体のリース契約又はソフトウェアの月額課金形態)の拡大を推進して、さらなる収益性の向上及び黒字化の実現を目指してまいります。 <用語解説> 本項「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において使用しております用語の定義については、以下のとおりであります。No.用語用語の定義※1自律分散全体を統合する中枢機能を持たず、自律的に行動する各要素の相互作用によって全体として機能すること。※2クラウドモビリティ構想全てのモビリティは、BEPで創られたグリッド空間と繋がり、グリッド内の情報がリアルタイムで取得でき、結果として時々刻々と変化する最適な飛行ルートを提供可能な世界。※3グリッドベースナビゲーションモビリティ(自律移動ロボット)が移動する空間を格子状に分割し、モビリティの移動経路を動的に算出する計算手法。※4ブロックチェーン分散型ネットワークを構成する複数のコンピューターに、暗号技術を組み合わせ、取引情報などのデータを同期して記録する手法。※5確率論的AIモデルモビリティの位置を確率分布で扱い、そのデータを元に将来の位置をディープラーニングで算出する手法。 |
事業等のリスク | 3【事業等のリスク】 当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。 なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。 1.事業に関するリスク(1)ソリューション開発(顕在化の可能性:中、影響度:中) 当社では、BEPを基軸としたドローンやロボットとの連携によるサービスの実用化に向けて、顧客と共同でソリューション開発を進めております。しかしながら、ソリューション開発には多くの不確実性が伴い、当初想定した成果が得られない場合、又は成果が十分に収益に繋がらない場合も想定されます。また、顧客のニーズによる開発途中の要件変更や品質改善要求、開発遅延等により当初計画どおりのソリューション開発及びサービス提供がなされない場合も想定され、その場合は当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 (2)輸入販売ドローンの調達について(顕在化の可能性:中、影響度:中) 当社で販売しているELIOSシリーズのドローン(以下、ELIOS)はスイスに本社を置くFlyability SA社の製品であり、同社とはELIOS販売に関するReseller契約を毎年締結して、日本における独占販売権を保有しており、また製品の安定確保などが十分に保証されるよう努めております。しかしながら、今後の同社との契約更新の協議の際に独占販売権の喪失や製品の安定確保が困難な状況となった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 また、ELIOSは、当社が求めている屋内の点検可能なドローンハードウェアとして、特殊な球体ガード、飛行の安定性、操作性で優れておりますが、今後、他に優位性がある屋内点検可能なドローンが出てきた場合には、当社はあらゆるハードウェアとも連携し、特定のハードウェアに依存しない方針を取っているため、ELIOS以外のドローンに切り換えることは可能です。しかしながら、新たなドローンへの切り換えに係るソフトウェア等の調整や、新たなドローンの安定調達確保に時間を要した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 (3)急速な技術革新への対応(顕在化の可能性:中、影響度:中) 当社の事業に関連する、人が実施していた業務をドローンやロボットにより代替する技術は、世界的に研究開発が進んでおり、技術革新のスピードが極めて速い分野であります。当社はこうした技術革新に対応できる研究開発活動を推進することで、より事業基盤の拡大を図ってまいります。しかしながら、技術革新への対応が遅れる可能性もあり、その場合には当社の競争力が低下することで、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 (4)業績変動の季節性(顕在化の可能性:高、影響度:小) 当社は、主に大企業向けにソリューションサービスの提供を行っており、顧客企業の予算消化サイクルや、年間契約案件の検収が年末(12月)又は年度末(3月)に集中するため、年末及び年度末に売上が集中する傾向にあり、第1四半期(1月~3月)と第4四半期(10月~12月)に売上高が偏る傾向にあることから、期ずれなどにより翌期へ売上が計上されることがあります。 2022年12期第1四半期2022年12期第2四半期2022年12期第3四半期2022年12期第4四半期売上高(千円)267,790178,890192,481269,236 2023年12期第1四半期2023年12期第2四半期2023年12期第3四半期2023年12期第4四半期売上高(千円)327,466233,296186,782517,029 (5)先行投資に伴う財務影響について(顕在化の可能性:中、影響度:中) 当社は、前述「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 4.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、主力サービスへの開発資金の調達、技術課題、人的サービスからサブスクリプションへの移行、並びに組織体制の整備及び内部管理体制の強化によるコスト増加等の要因により、過年度の業績に関して継続的に赤字を計上しており、2022年12月期及び2023年12月期において、営業損失(2022年12月期△349,526千円、2023年12月期△289,759千円)を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナス(2022年12月期△365,236千円、2023年12月期△320,202千円)の状況となっております。 当社は、費用対効果を見ながら、今後も継続的に必要な投資を実施する方針であり、引き続き一定期間において赤字を計上することを想定しております。中長期的な利益及びキャッシュ・フローの最大化を目指して各事業における成長戦略を進めていく方針ですが、事業環境の急激な変化等により、これらの継続的な投資が当社の想定する成果に繋がらなかった場合や、新規参入事業において当社が想定する収益化に遅れが生じる場合等においては、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。 (6)重大事故等によるドローンの社会的信用の失墜(顕在化の可能性:低、影響度:中) 当社に限らず、他社においてもドローンに関する重大な墜落事故が発生した場合には、ドローンの安全性に対する社会的信用が低下することにより、顧客からの需要低下、規制の強化等により市場の成長が減速する可能性があり、その場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。 (7)ドローン関連法令の改廃(顕在化の可能性:中、影響度:小) 当社は、当該法規制の確認体制を構築して、法規制等の遵守に努めておりますが、今後、予期せぬ規制の制定・改廃が行われることや予定されている規制緩和が計画とおりに進まないことも想定されます。そのような場合に、当社が、当該法規制に柔軟に対応できない場合には、許認可・免許の取り消し等により、当社の活動が制限されることがあり、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。① 航空法 航空法については、当社がドローンを飛行の禁止空域で飛行させること及び所定の飛行の方法によらず飛行させることに関して、同法に基づく許可・承認を得て飛行を行っております。また、有人地帯における目視外飛行(レベル4)に関する航空法の改正がなされ、2022年12月5日より施行となっており、当社も対応を行う必要があります。② 電波法 電波法については、ドローンの操縦には電波を使用するため、他の装置との混線などを防ぐため「特定無線設備の技術基準適合証明(通称:技適)」の取得が義務付けられております。よって、海外製ドローンの輸入にあたっては技適の取得を申請する必要があります。③ 製造物責任法 製造物責任法については、当社はドローンの輸入販売及びドローンなどに付随するソフトウェアの開発・販売等を行っているため、当社商製品の欠陥等が生じたことによって生命、身体又は損害を被ったことを被害者が証明した場合、損害賠償請求が認められる可能性があります。④ 外国為替及び外国貿易法 外国為替及び外国貿易法については、当社が仕入れる製品及び部品の一部は、規制の対象となる可能性があります。そのため、当社が海外よりドローンの輸入、又は関連する技術の授受をする場合は、同法を遵守して適切な輸入管理に努めております。なお、仕入先国の法令や政策変更などにより外国為替法環境が変化した場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 (8)経済動向及び市場環境による影響(顕在化の可能性:中、影響度:小) 企業を取り巻く環境や労働人口減少に伴う企業経営の効率化などの動きにより当社が事業を展開する市場は今後も拡大すると予想されるものの、企業の景気による影響や各種新技術の発展による影響を受ける可能性があります。当社が事業を展開する市場が経済情勢や技術革新などにより事業環境が変化した場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 (9)競合他社の参入(顕在化の可能性:中、影響度:小) 当社が属するIoT及びドローン関連の市場は成長市場として注目され、市場は拡大傾向にあります。当社では、BEPを基軸としたドローンやロボットを利用するサービス提供に係るノウハウやデータを活かし、引き続き顧客のニーズを汲んだサービス提供ができるよう努める方針であります。 しかし、競合企業の新規参入や、競合企業がより優れたサービスを安価で提供した場合、当社の競争力が低下する可能性があります。また、このような競合企業のサービスが当社の各サービスの機能より劣っていたとしても、ユーザーはより低い価格を求めて当該競合企業のサービスを選択する可能性があり、そのような場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 (10)システム障害やインターネット環境の不具合(顕在化の可能性:中、影響度:小) 当社ではクラウド型のプラットフォームサービスの提供を想定していることから、インターネット通信網に依存する形となります。ホスティングサービス業者に障害が生じ、代替手段の調達ができずにサービスが長時間にわたり中断する等の事象が発生した場合や、自然災害、事故、不正アクセス等によって通信ネットワークの切断、サーバー等ネットワーク機器に作動不能等の障害が発生した場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 (11)特定取引先との契約について(顕在化の可能性:低、影響度:中) JUIDAは、ドローン(Unmanned Aircraft Systems=無人航空機システム。以下、UAS)操縦者の養成やUAS業界の発展・育成を目的として2014年7月に設立され、当社はその設立に参画しております。出資関係や役員の兼務はありませんが、代表取締役社長の熊田貴之の父である当社創業者の熊田知之氏がJUIDAの理事兼事務局長を務めていることから、人的・資本的な関連を強く有すると考えられる者である「その他の特定の者」に該当すると判断しております。 JUIDAとの取引は今後も継続する予定でありますが、取引を行うにあたり、「関連当事者取引管理規程」に基づき、その取引が当社の経営の健全性を損なっていないか、合理的判断に照らし合わせて有効であるか、また取引条件は他の外部取引と比較して適正であるか等に特に留意して、社外取締役も出席する取締役会において協議・決議を行うことで、少数株主やその他の一般取引先に不利益が生じないように配慮しております。2023年12月期では、売上高全体に占めるJUIDAへの売上高比率は18.1%(228,835千円)となっておりますが、現在推進しているソリューションサービスの提供拡大に伴い、全体に占める相対的な割合は逓減する見通しです。主な取引内容は、BEPシステム利用料/BEPシステム保守料/会員管理などのJUIDA会員管理業務などとなっております。 また、JUIDAとは良好な関係を築いており、現時点において取引関係等に支障は生じておりませんが、今後何らかの理由により取引契約の更新がなされない場合や、取引条件の変更が生ずる場合等には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 2.経営管理体制に関するリスク(1)知的財産権(顕在化の可能性:低、影響度:小) 当社は、自社開発又は第三者との共同開発によって蓄積する技術について、日本及び主要国において積極的に特許出願や商標出願を行い、当社の知的財産権の保護に努めております。しかしながら、第三者が当社の知的財産権を侵害して不正に利用することを完全に防止することは困難であり、そのような侵害が発生した場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。 また、当社の技術が第三者の知的財産権を侵害しないよう相当の努力を払っておりますが、それでもなお第三者から権利侵害の申立てを受ける可能性があります。当社が意図せず第三者の知的財産権を侵害してしまった場合等には、高額の費用を要する訴訟又はライセンス契約の締結に至る場合があり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 (2)機密情報等の漏洩(顕在化の可能性:低、影響度:中) 当社が提供するソリューションサービスにおいては、その業務の性格上、顧客側で保有している機密情報や個人情報に触れる場合があります。情報の取扱いについては詳細な規程の整備と的確な運用を義務づけております。このような対策にも関わらず当社の人的オペレーションのミス等、その他予期せぬ要因等により、情報漏洩が発生した場合には、当社が損害賠償責任等を負う可能性があり、その場合は当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 (3)特定の人物への依存(顕在化の可能性:低、影響度:中) 当社の代表取締役社長最高執行役員である熊田貴之は、当社(社名変更後のブルーイノベーション)就任後より事業に大きく貢献しており、就任以来当社の経営方針や事業戦略の立案及び遂行において重要な役割を果たしております。当社では、特定の人物に依存しない体制を構築すべく、権限移譲や組織体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、何らかの理由により同氏が当社の経営執行等を継続することが困難になった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 なお、同氏から当社金融機関借入に対する債務保証を受けております。当事業年度末の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(関連当事者情報)」に記載しております。この債務被保証について保証料の支払いを行っておらず、また、債務保証のない借入金への借り換え等により当該債務被保証を解消していく方針であります。 (4)優秀な人材の確保と育成(顕在化の可能性:低、影響度:小) 当社が今後更なる成長を成し遂げていくためには、優秀な人材の確保と育成を重要課題の一つであると位置づけております。当社は現在も優秀な人材の採用を進めておりますが、これらの要員を十分に採用できない場合や、採用後の育成が十分に進まなかった場合、あるいは在職中の従業員が退職するなどした場合には、当社の事業拡大の制約となり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 (5)内部管理体制について(顕在化の可能性:低、影響度:小) 当社は、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、適切な内部管理体制の整備が必要不可欠であると認識しております。そのため、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、また法令・定款・社内規程等の遵守を徹底しております。しかしながら、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追い付かない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の事業、業績及び財務報告の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。 3.その他のリスク(1)自然災害等(顕在化の可能性:低、影響度:中) 当社は、大規模な地震等の自然災害、火災や停電等の事故、新型コロナウイルス等の疫病の流行、コンピューターウイルスに起因する情報システムの停止、テロ行為などによる事業活動の停止等にはその時々に応じて対応をしております。しかしながら、想定を超える大災害等の発生により営業活動が阻害された場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 (2)訴訟、係争について(顕在化の可能性:低、影響度:中) 当社では、本書提出日現在において業績に影響を及ぼす訴訟や係争は生じておりません。しかしながら、今後何らかの事情によって当社に関連する訴訟、係争が行われる可能性は否定できず、かかる事態となった場合、その経過又は結果によっては、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 また、点検時の瑕疵や重大事故発生等により責任を追及されるリスクに関しては、当社の責任範囲が限定されるような契約内容となるよう努めているものの、顧客との契約内容次第では当社の責任範囲が大きくなる可能性があります。現状は、重大事故等は発生していないものの、今後発生した場合には、損害賠償請求による金銭的影響やレピュテーションへの影響が発生する可能性があります。 (3)税務上の繰越欠損金(顕在化の可能性:低、影響度:小) 当社は税務上の繰越欠損金を有しております。当社の業績が順調に推移し、繰越欠損金が解消した場合や税法改正により繰越欠損金による課税所得の控除が認められなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。 (4)配当政策(顕在化の可能性:低、影響度:小) 当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。しかしながら、当社は成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、将来の事業展開及び経営体質の強化のための投資等に充当し、一層の事業拡大を目指すことが、株主に対する最大の利益還元につながると考えております。将来的には、各期の財政状態及び経営成績を勘案しながら株主への利益還元を検討していく所存でありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。 (5)新株予約権・ストック・オプション行使による希薄化リスク(顕在化の可能性:中、影響度:小) 当社は役員及び従業員等に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブを目的としてストック・オプションを付与しております。今後も優秀な人材確保のためのストック・オプションを発行する可能性があり、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。なお、本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は345,640株であり、発行済株式総数3,939,051株の8.8%に相当しております。 (6)ベンチャーキャピタル等の持分比率について(顕在化の可能性:高、影響度:中) 当事業年度末現在、ベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下、「VC等」という。)が所有している株式数は1,037,382株であり、発行済株式総数3,939,051株に占める割合は26.3%となっております。 一般的に、VC等の株式の所有目的は、株式公開後に所有株式の全部又は一部を売却して、キャピタルゲインを得ることであり、当社株式についても今後VC等が所有する株式の全部又は一部を売却することが想定されます。当該株式が市場にて売却された場合には、当社株式の流動性の向上に繋がるものではありますが、需給バランスが短期的に損なわれ、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。 (7)当社株式の流動性について(顕在可能性:中、影響度:中) 当社は、当社株式の流動性の確保に努めることとしておりますが、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は当事業年度末時点において28.9%であります。 今後は、当社大株主にからの株式の売出、当社の事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加分を勘案し、これらの組み合わせにより、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。 |
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 | 4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 (1)経営成績等の状況の概要 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。 ① 財政状態の状況(資産)当事業年度末における流動資産は1,677,777千円となり、前事業年度末に比べ845,246千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が694,767千円増加、売掛金及び契約資産が179,259千円増加、商品及び製品が28,888千円減少したことによるものであります。固定資産は107,303千円となり、前事業年度末に比べ2,712千円増加いたしました。これは主に有形固定資産が13,468千円増加、減価償却により無形固定資産が8,975千円減少したことによるものであります。 この結果、総資産は、1,785,080千円となり、前事業年度末に比べ847,959千円増加いたしました。 (負債)当事業年度末における流動負債は281,731千円となり、前事業年度末に比べ105,121千円増加いたしました。これは主に買掛金が59,000千円増加、未払消費税等が26,027千円増加、前受金が13,842千円増加したことによるものであります。固定負債は475,283千円となり、前事業年度末に比べ80,740千円増加いたしました。これは長期借入金が80,740千円増加したことによるものであります。 この結果、負債合計は、757,014千円となり、前事業年度末に比べ185,861千円増加いたしました。 (純資産)当事業年度末における純資産合計は1,028,066千円となり、前事業年度末に比べ662,097千円増加いたしました。これは新規上場に伴う増資により資本金及び資本準備金がそれぞれ480,683千円増加、当期純損失を299,270千円計上したことによるものであります。 この結果、自己資本比率は57.6%(前事業年度末は39.1%)となりました。 ② 経営成績の状況 当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に関わる制限緩和による経済活動の正常化の動きが続いている一方で、円安に伴う物価上昇、地政学リスクの顕在化や金融引締めによる海外経済の減速が日本経済を下押しするリスクに留意が必要な状況となりました。また、わが国のドローン・ロボットを活用した動きは、コロナ禍以降のDX化、国家安全保障や災害等の緊急時の活用に期待が高まり、導入や検証が少しずつ増加しております。 このような状況の中、当事業年度の経営成績は、売上高1,264,574千円(前事業年度比39.2%増)、営業損失289,759千円(前事業年度は営業損失349,526千円)、経常損失295,670千円(前事業年度は経常損失341,454千円)、当期純損失299,270千円(前事業年度は当期純損失345,123千円)となりました。 なお、当社はドローン関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。当社の販売実績を4つのソリューション別「点検、教育、物流、ネクスト」に区分した売上高の状況は次のとおりであります。(単位:千円) ソリューション区分前事業年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)当事業年度(自 2023年1月1日至 2023年12月31日)点検325,122617,254教育244,345308,741物流252,841263,823ネクスト86,09074,755合計908,3991,264,574 ・点検ソリューション プラントなどの屋内点検用ドローン(BEPインスペクション)及び送電線点検用ドローン自動飛行システム(BEPライン)の販売拡大等により617,254千円(前事業年度比89.9%増)と前事業年度に比べ292,132千円の上振れとなりました。・教育ソリューション ドローンの飛行日誌作成・情報管理サービス「BLUE SKY」(BEPベーシック)を昨年2月に提供開始したこと等に伴う売上拡大により308,741千円(前事業年度比26.4%増)と前事業年度に比べ64,396千円の上振れとなりました。・物流ソリューション 物流、点検用のドローンポート(BEPポート)の開発受託、津波警報ドローンシステム(BEPポート)の利用に伴うソフトウェアライセンス料収入の拡大等により263,823千円(前事業年度比4.3%増)と前事業年度に比べ10,982千円の上振れとなりました。・ネクストソリューション 前事業年度に実績のあった開発受託プロジェクトの完了等の影響により74,755千円(前事業年度比13.2%減)と前事業年度に比べ11,335千円の下振れとなりました。 当社は、安定した売上成長の観点では年間取引企業数、及びストック型売上(ドローン等のハードウェアのリースやBEPを軸としたソフトウェア、保守メンテナンス等)の比率を意識し、また、収益性を高めるためには、売上総利益率の高いソフトウェアサービスの売上(=BEPユーザーの利用料)及びBEPユーザー数(法人・個人)を伸ばしていくことが重要であると考えております。 当事業年度における取引企業数は152社(前事業年度比10社増)となりました。点検ソリューションにおける新規顧客の獲得が貢献しました。 ストック型売上は307,211千円(前事業年度比25.1%増)となった一方、ストック型の売上比率は24.3%(前事業年度比2.7ポイント減)となりました。ドローンの飛行日誌作成・情報管理サービス「BLUE SKY」(BEPベーシック)、及び津波警報ドローンシステム(BEPポート)の利用に伴うソフトウェアライセンス料収入の拡大がストック型売上の増加に繋がった一方、既存顧客に対するフロー型売上が大きく伸びた影響によりストック型売上比率は低下しました。 BEPユーザーの累計数は法人が141社(前事業年度比49社増)、個人が100,039人(前事業年度比12,362人増)、ソフトウェア売上高は235,569千円(前事業年度比115.2%増)となりました。昨年2月よりサービスを開始したドローン飛行日誌作成・情報管理サービス「BLUE SKY」(BEPベーシック)への加入者数が好調に増加したこと、送電線点検用ドローン自動飛行システム(BEPライン)や津波警報ドローンシステム(BEPポート)の利用に伴うソフトウェアライセンス料収入が拡大したこと等により、BEPユーザー数(個人)、ソフトウェア売上高が増加しました。 ③ キャッシュ・フローの状況 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前事業年度末に比べ694,767千円増加し、当事業年度末には1,222,071千円となりました。 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。 (営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動の結果使用した資金は320,202千円(前年同期は365,236千円の使用)となりました。これは主に、税引前当期純損失296,570千円、売上債権の増加額182,559千円、仕入債務の増加額59,000千円、減価償却費45,470千円等によるものであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動の結果使用した資金は30,673千円(前年同期は12,551千円の使用)となりました。これは有形固定資産の取得による支出30,673千円によるものであります。 (財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動の結果得られた資金は1,045,643千円(前年同期は229,996千円の獲得)となりました。これは主に、株式の発行による収入961,367千円、長期借入れによる収入100,000千円等によるものであります。 ④ 生産、受注及び販売の実績a.生産実績 当社の事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。 b.受注実績 当社の事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。 c.販売実績 当事業年度の販売実績は、次のとおりです。なお、当社はドローン関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載は省略しております。セグメントの名称当事業年度(自 2023年1月1日至 2023年12月31日)販売高(千円)前年同期比(%)ドローン関連事業1,264,57439.2 (注) 最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。相手先前事業年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)当事業年度(自 2023年1月1日至 2023年12月31日)金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)一般社団法人日本UAS産業振興協議会207,12522.8228,83518.1株式会社レスターエレクトロニクス2,2710.3226,80817.9 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。 ① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたり、決算日における財政状態及び会計期間における経営成績に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、この見積りと異なる場合があります。 当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載のとおりであります。 また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、重要なものについて、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。 ② 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容(売上高、売上原価、売上総利益) 売上高は、主に点検ソリューション及び教育ソリューションの伸長などにより1,264,574千円(前事業年度比39.2%増)となりました。売上原価は、売上高の増加に伴い698,123千円(前事業年度比34.9%増)となりました。 この結果、当事業年度の売上総利益は566,450千円(前事業年度比44.9%増)となりました。 (販売費及び一般管理費、営業損失) 販売費及び一般管理費は、主に従業員の給料及び手当、研究開発費などの影響により856,210千円(前事業年度比15.7%増)となりました。 この結果、当事業年度の営業損失は289,759千円(前事業年度営業損失349,526千円)となりました。 (営業外収益、営業外費用、経常損失) 営業外収益は、前事業年度とほぼ同水準の10,219千円(前事業年度比5.4%増)となりました。営業外費用は、主に株式上場に関連する費用の計上などにより16,130千円(前事業年度比891.4%増)となりました。 この結果、当事業年度の経常損失は295,670千円(前事業年度経常損失341,454千円)となりました。 (特別利益、特別損失、税引前当期純損失) 特別利益は発生しておりません。特別損失は、固定資産除却損の計上により900千円(前事業年度比7.0%減)となりました。 この結果、当事業年度の税引前当期純損失は296,570千円(前事業年度税引前当期純損失342,423千円)となりました。 (法人税等、当期純損失) 法人税等については、前事業年度と同額の2,700千円となりました。 以上により、当事業年度の当期純損失は299,270千円(前事業年度当期純損失345,123千円)となりました。 ③ 財政状態に関する認識及び分析・検討内容 当事業年度の財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載のとおりであります。 ④ キャッシュ・フローの状況の分析 当事業年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。 ⑤ 資本の財源及び資金の流動性 当社における主な資金需要は、継続的なサービス提供及び新規サービス開発のための販売・研究開発に関する費用や人件費、人員獲得のための採用費、当社の認知度向上及び潜在顧客獲得のためのPRマーケティング費などであります。これらの資金需要に対しては、自己資金、エクイティファイナンス、及び金融機関からの借入などで調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等については特段方針などはなく、資金需要の額や使途に応じて柔軟に検討を行う予定であります。 ⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について 経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。 ⑦ 経営者の問題意識と今後の方針に関して 経営者の問題意識と今後の方針に関しては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。 ⑧ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討内容 「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社は、実証実験等のフロー型売上の積上から、ドローン等のハードウェアのリースやBEPを軸としたソフトウェア、保守メンテナンス等のストック型売上を継続的に拡大することで、収益性を高めつつ、安定した売上成長を重視した経営を行っております。なお、安定した売上成長の観点では年間取引企業数及びストック型売上比率を意識し、また収益性を高めるためには、売上総利益率の高いソフトウェアサービスの売上(=BEPユーザーの利用料)及びBEPユーザー数(法人・個人)を伸ばしていくことが、客観的で重要な経営指標(KPI)であると考えております。 当該指標について、当事業年度における年間取引企業数は152社、ストック型売上比率は24.3%、BEPユーザーの累計数は141社(法人)、100,039人(個人)となり、ソフトウェア売上高は235,569千円となっております。また、売上総利益率は年々増加しており、当事業年度で44.8%となっております。今後も、BEPユーザー利用料による売上高(ソフトウェア売上高)を拡大することで、売上総利益率の拡大に努めてまいります。 KPI2022年実績2023年実績①年間取引企業数142社152社②ストック型売上比率27.2%24.3%③BEPユーザー数(法人)92社141社③BEPユーザー数(個人)87,677人100,039人④BEPユーザー利用料(ソフトウェア売上高)109,470千円235,569千円ストック型売上比率については、ストック型売上の金額は増加したものの(307百万円(前事業年度比25.1%増))、既存顧客に対するフロー型売上が大きく伸びたため、ストック型売上比率は低下しました。 なお、当社の売上はフロー型売上(新規顧客/既存顧客)とストック型売上によって構成されており、過年度の売上の内訳は以下のとおりとなっております。(単位:百万円)2021年実績2022年実績2023年実績フロー型売上(新規)235183150フロー型売上(既存)324479806ストック型売上165245307 また、当社はソフトウェア(BEP利用のためのソフトウェアライセンス)、サービス(人的な運用サービス)、ハードウェア(ハードウェアの販売、リース、保守)を提供しており、過年度における各々の売上高は以下のとおりとなっております。(単位:百万円)2021年実績2022年実績2023年実績ソフトウェア売上高50109235サービス売上高501654580ハードウェア売上高174145448 |
経営上の重要な契約等 | 5【経営上の重要な契約等】 その他の経営上の重要な契約相手方の名称国名契約品目契約締結日契約内容契約期間FLYABILITY SAスイスELIOSなど2024年1月11日Flyability社が製造する全ての製品に関する日本での販売に係るReseller契約(独占販売権)1年間(1年毎に更新) |
研究開発活動 | 6【研究開発活動】 当社は、複数の自律移動ロボット(ドローンやAGV(Automated Guided Vehicle)など)を遠隔で制御し、統合管理するためのプラットフォームであるBlue Earth Platform(以下、BEP)を基軸に、人が実施していた設備の点検等の業務を、ドローンやAGVで代替して実施することにより効率化や安全化、省力化を図ることを目的としたサービスの提供を行っております。 BEPは、自律移動ロボットを用いたソリューションのバリューチェーンのうち、「ロボットを動かす」、「情報を集める」、「情報を管理する」にフォーカスしており、システムは「サーバープラットフォーム」と「センシングプラットフォーム」で構成されており、BEPを基軸に、点検、教育、物流、ネクストの4つのソリューションごとに最適化した「BEPパッケージ」の開発に取り組んでおります。 当事業年度においては、BEPを基軸とした点検、教育、物流、ネクストの4つのソリューションごとに最適化した「BEPパッケージ」による業務へのドローンやロボットの導入、自動化・DX化に向けた研究開発に取り組んでおり、研究開発費の総額は241,810千円となりました。 なお、当社はドローン関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。 |
設備投資等の概要 | 1【設備投資等の概要】 当事業年度において実施した設備投資の総額は50,862千円であります。その内訳は、工具、器具及び備品6,090千円、自社点検及びサブスク用に導入した航空機(ドローン)44,772千円であります。 なお、当事業年度において重要な設備の除却、売却等はありません。 また、当社はドローン関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。 |
主要な設備の状況 | 2【主要な設備の状況】 当社における主要な設備は、次のとおりであります。2023年12月31日現在 事業所名(所在地)設備の内容帳簿価額従業員数(人)建物附属設備(千円)機械及び装置(千円)工具、器具及び備品(千円)航空機(千円)ソフトウエア(千円)合計(千円)本社(東京都文京区)本社設備、開発設備等8,1251,3296,82661,35816,36394,00363Drone Lab ITABASHI(東京都板橋区)開発設備等--5,057205-5,2636 (注)1.現在休止中の主要な設備はありません。2.本社事務所及びラボ拠点については他社から賃借しており、年間の賃借料は22,398千円であります。3.当社はドローン関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。 |
設備の新設、除却等の計画 | 3【設備の新設、除却等の計画】 (1)重要な設備の新設 該当事項はありません。 (2)重要な改修 該当事項はありません。 |
研究開発費、研究開発活動 | 241,810,000 |
設備投資額、設備投資等の概要 | 50,862,000 |
Employees
平均年齢(年)、提出会社の状況、従業員の状況 | 42 |
平均勤続年数(年)、提出会社の状況、従業員の状況 | 4 |
平均年間給与、提出会社の状況、従業員の状況 | 6,688,000 |
Investment
株式の保有状況 | (5)【株式の保有状況】 ① 投資株式の区分の基準及び考え方 当社は、営業政策上の必要性や株式保有の合理性などを総合的に勘案し、中長期的な企業価値の向上に資することを目的として保有する株式を政策保有株式とし、株価の変動や株式に係る配当によって利益を得ることを目的として保有する株式を純投資株式としております。なお、本書提出日現在において、いずれの株式も保有はありません。 ② 保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式 該当事項はありません。 ③ 保有目的が純投資目的である投資株式 該当事項はありません。 |
Shareholders
大株主の状況 | (6)【大株主の状況】 2023年12月31日現在 氏名又は名称住所所有株式数(株)発行済株式(自己株式を除く。)の総数に対する所有株式数の割合(%) 熊田 貴之東京都世田谷区1,490,40037.83 けいはんな学研都市ATRベンチャーNVCC投資事業有限責任組合東京都千代田区丸の内二丁目4番1号682,80217.33 TBSイノベーション・パートナーズ1号投資事業組合東京都港区赤坂五丁目3番6号128,5713.26 熊田 雅之埼玉県川越市113,4002.87 大成株式会社愛知県名古屋市中区栄三丁目31番12号100,0002.53 株式会社レスターホールディングス東京都港区港南二丁目10番9号100,0002.53 株式会社SBI証券東京都港区六本木一丁目6番1号78,5001.99 株式会社SBI新生銀行東京都中央区日本橋室町二丁目4番3号75,0001.90 日本郵政キャピタル株式会社東京都千代田区大手町二丁目3番1号55,5551.41 大成温調株式会社東京都品川区大井一丁目49番10号50,0001.26計-2,874,22872.97 |
株主数-金融機関 | 4 |
株主数-金融商品取引業者 | 21 |
株主数-外国法人等-個人 | 4 |
株主数-外国法人等-個人以外 | 14 |
株主数-個人その他 | 1,548 |
株主数-その他の法人 | 43 |
株主数-計 | 1,634 |
氏名又は名称、大株主の状況 | 大成温調株式会社 |
株主総会決議による取得の状況 | (1)【株主総会決議による取得の状況】 該当事項はありません。 |
株主総会決議又は取締役会決議に基づかないものの内容 | (3)【株主総会決議又は取締役会決議に基づかないものの内容】 該当事項はありません。 |
Shareholders2
発行済株式及び自己株式に関する注記 | 1.発行済株式の種類及び総数並びに自己株式の種類及び株式数に関する事項 当事業年度期首株式数(株)当事業年度増加株式数(株)当事業年度減少株式数(株)当事業年度末株式数(株)発行済株式 普通株式(注)3,279,351659,700-3,939,051合計3,279,351659,700-3,939,051自己株式 普通株式----合計---- (注) 普通株式の発行済株式総数の増加659,700株は、新規上場に伴う公募増資により550,000株及び第三者割当増資(オーバーアロットメント)により109,700株増加したものであります。 |
Audit1
監査法人1、個別 | 太陽有限責任監査法人 |
独立監査人の報告書、個別 | 独立監査人の監査報告書 2024年3月28日ブルーイノベーション株式会社 取締役会 御中 太陽有限責任監査法人 東京事務所 指定有限責任社員業務執行社員 公認会計士石上 卓哉 ㊞ 指定有限責任社員業務執行社員 公認会計士野田 大輔 ㊞ 監査意見 当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられているブルーイノベーション株式会社の2023年1月1日から2023年12月31日までの第25期事業年度の財務諸表、すなわち、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書、重要な会計方針、その他の注記及び附属明細表について監査を行った。 当監査法人は、上記の財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、ブルーイノベーション株式会社の2023年12月31日現在の財政状態並びに同日をもって終了する事業年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。 監査意見の根拠 当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。 監査上の主要な検討事項 監査上の主要な検討事項とは、当事業年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。 受託案件の進捗度に基づく収益認識監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由監査上の対応 会社は、【注記事項】 (重要な会計方針)「5.収益及び費用の計上基準」や(重要な会計上の見積り)「1.受託案件の進捗度に基づく収益認識」に記載のとおり、受託案件に係る売上高を、原則として、履行義務の充足に係る進捗度に基づき、一定の期間にわたり収益認識している。進捗度の見積りは、期末日までに発生した原価が、原価総額の見積りに占める割合によって行っている。ただし、取引開始日から履行義務を充足する時点までの期間がごく短い業務請負契約については、履行義務を充足した時点で収益を認識している。会社は、当事業年度において、受託案件に係る売上高のうち97,155千円について進捗度に基づき一定の期間で収益を認識している。 会社は、進捗度に基づく収益認識の基礎となる原価総額の見積りを受託案件ごとに算定しており、受託案件の進行に応じて適宜見直しを行っている。原価総額の見積りは、経営者の最善の見積りと判断により決定されているが、予見できない仕様変更及び工程変更により大きく変動する可能性があり、一定の不確実性を伴っている。その結果、進捗度が変動する可能性があり、財務諸表に重要な影響を与える可能性がある。 以上より、受託案件の進捗度に基づく収益認識には、経営者による主観的な判断が介在するとともに、将来の不確実性を伴うことから、当監査法人は当該事項を監査上の主要な検討事項とした。 当監査法人は、受託案件の進捗度に基づく収益認識の妥当性を検討するために、以下の手続を実施した。・ 受託案件に係る売上高の計上に関連する内部統制について、その整備状況及び運用状況の評価を行った。・ 受託案件に係る売上高が進捗度に基づき一定の期間にわたり収益認識されていることを確かめるため、受託案件別の売上明細表と契約書等を閲覧するとともに、受託案件ごとに進捗度及び売上高の再計算を実施した。・ 受託案件別に原価総額が合理的に見積られていることを確かめるため、受注稟議書や関連する見積書等を閲覧するとともに、受託案件ごとに算定した原価率と会社全体の平均原価率を比較し、差異要因について担当者に質問した。・ 受託案件別に発生した原価が正確に集計されていることを確かめるため、受託案件別の原価集計表を閲覧するとともに、サンプル抽出した特定の原価の根拠証憑を閲覧した。・ 受託案件別に見積られた原価総額が受託案件の進行に応じて適切に見直されていることを確かめるため、受託案件の検討会議資料を閲覧するとともに、原価に基づく進捗度と取引開始日から期末日までの経過期間を比較し、整合性について担当者に質問した。・ 受託案件別の原価総額の見積りの不確実性を評価するため、当事業年度に終了した受託案件について、原価総額の見積りとその実績を比較検討した。 固定資産の減損損失の認識の判定監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由監査上の対応 会社は、当事業年度末現在、有形固定資産を82,902千円、無形固定資産を16,363千円計上しており、その全てがドローン関連事業に係る固定資産である。 また、【注記事項】 (重要な会計上の見積り)「2.固定資産の減損」に記載のとおり、会社は営業活動から生ずる損益が継続してマイナスとなっていることから、固定資産の減損の兆候があるものと判断し、減損損失の認識の判定を行っている。減損損失の認識の判定は、取締役会で決議された翌事業年度の予算及び中期経営計画に基づき策定された割引前将来キャッシュ・フローの総額と、関連する固定資産の帳簿価額を比較することで行っている。 翌事業年度の予算及び中期経営計画には、今後の売上高の成長率や市場環境の変化等の重要な仮定が含まれている。これらの重要な仮定は経営者の最善の見積りと判断により決定されているが、将来の経済条件の変動等により影響を受ける可能性がある。 以上より、固定資産の減損損失の認識の判定には、経営者による主観的な判断が介在するとともに、将来の不確実性を伴うことから、当監査法人は当該事項を監査上の主要な検討事項とした。 当監査法人は、固定資産の減損損失の認識の判定の妥当性を確かめるため、以下の手続を実施した。・ 固定資産の減損に係る内部統制について、整備状況及び運用状況の評価を行った。・ 固定資産の減損損失の認識の判定において、翌事業年度の予算及び中期経営計画に基づき割引前将来キャッシュ・フローが算定され、関連する固定資産の帳簿価額と比較検討されていることを確かめるため、将来キャッシュ・フローの見積資料や減損損失の認識判定資料を閲覧した。・ 翌事業年度の予算及び中期経営計画が取締役会で決議されたものであることを確かめるため、取締役会議事録を閲覧した。・ 翌事業年度の予算及び中期経営計画に含まれる今後の売上高の成長率や市場環境の変化等の重要な仮定の合理性を確かめるため、関連する市場環境に関する外部資料を閲覧し、会社の売上高の成長率とドローン市場の成長率を比較するとともに、市場環境の変化等について経営者に質問した。・ 将来キャッシュ・フローの見積りの不確実性を評価するため、過年度における予算とその実績を比較検討した。 その他の記載内容 その他の記載内容は、有価証券報告書に含まれる情報のうち、財務諸表及びその監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査等委員会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。 当監査法人の財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。 財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。 当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。 その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。 財務諸表に対する経営者及び監査等委員会の責任 経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。 財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。 監査等委員会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。 財務諸表監査における監査人の責任 監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。 監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。・ 不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。・ 財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。・ 経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。・ 経営者が継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する財務諸表の注記事項が適切でない場合は、財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。・ 財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた財務諸表の表示、構成及び内容、並びに財務諸表が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。 監査人は、監査等委員会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。 監査人は、監査等委員会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去又は軽減するためにセーフガードを講じている場合はその内容について報告を行う。 監査人は、監査等委員会と協議した事項のうち、当事業年度の財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。 利害関係 会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。 以 上 (注)1.上記は監査報告書の原本に記載された事項を電子化したものであり、その原本は当社(有価証券報告書提出会社)が別途保管しております。2.XBRLデータは監査の対象には含まれていません。 |
監査上の主要な検討事項、個別 | 監査上の主要な検討事項 監査上の主要な検討事項とは、当事業年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。 受託案件の進捗度に基づく収益認識監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由監査上の対応 会社は、【注記事項】 (重要な会計方針)「5.収益及び費用の計上基準」や(重要な会計上の見積り)「1.受託案件の進捗度に基づく収益認識」に記載のとおり、受託案件に係る売上高を、原則として、履行義務の充足に係る進捗度に基づき、一定の期間にわたり収益認識している。進捗度の見積りは、期末日までに発生した原価が、原価総額の見積りに占める割合によって行っている。ただし、取引開始日から履行義務を充足する時点までの期間がごく短い業務請負契約については、履行義務を充足した時点で収益を認識している。会社は、当事業年度において、受託案件に係る売上高のうち97,155千円について進捗度に基づき一定の期間で収益を認識している。 会社は、進捗度に基づく収益認識の基礎となる原価総額の見積りを受託案件ごとに算定しており、受託案件の進行に応じて適宜見直しを行っている。原価総額の見積りは、経営者の最善の見積りと判断により決定されているが、予見できない仕様変更及び工程変更により大きく変動する可能性があり、一定の不確実性を伴っている。その結果、進捗度が変動する可能性があり、財務諸表に重要な影響を与える可能性がある。 以上より、受託案件の進捗度に基づく収益認識には、経営者による主観的な判断が介在するとともに、将来の不確実性を伴うことから、当監査法人は当該事項を監査上の主要な検討事項とした。 当監査法人は、受託案件の進捗度に基づく収益認識の妥当性を検討するために、以下の手続を実施した。・ 受託案件に係る売上高の計上に関連する内部統制について、その整備状況及び運用状況の評価を行った。・ 受託案件に係る売上高が進捗度に基づき一定の期間にわたり収益認識されていることを確かめるため、受託案件別の売上明細表と契約書等を閲覧するとともに、受託案件ごとに進捗度及び売上高の再計算を実施した。・ 受託案件別に原価総額が合理的に見積られていることを確かめるため、受注稟議書や関連する見積書等を閲覧するとともに、受託案件ごとに算定した原価率と会社全体の平均原価率を比較し、差異要因について担当者に質問した。・ 受託案件別に発生した原価が正確に集計されていることを確かめるため、受託案件別の原価集計表を閲覧するとともに、サンプル抽出した特定の原価の根拠証憑を閲覧した。・ 受託案件別に見積られた原価総額が受託案件の進行に応じて適切に見直されていることを確かめるため、受託案件の検討会議資料を閲覧するとともに、原価に基づく進捗度と取引開始日から期末日までの経過期間を比較し、整合性について担当者に質問した。・ 受託案件別の原価総額の見積りの不確実性を評価するため、当事業年度に終了した受託案件について、原価総額の見積りとその実績を比較検討した。 固定資産の減損損失の認識の判定監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由監査上の対応 会社は、当事業年度末現在、有形固定資産を82,902千円、無形固定資産を16,363千円計上しており、その全てがドローン関連事業に係る固定資産である。 また、【注記事項】 (重要な会計上の見積り)「2.固定資産の減損」に記載のとおり、会社は営業活動から生ずる損益が継続してマイナスとなっていることから、固定資産の減損の兆候があるものと判断し、減損損失の認識の判定を行っている。減損損失の認識の判定は、取締役会で決議された翌事業年度の予算及び中期経営計画に基づき策定された割引前将来キャッシュ・フローの総額と、関連する固定資産の帳簿価額を比較することで行っている。 翌事業年度の予算及び中期経営計画には、今後の売上高の成長率や市場環境の変化等の重要な仮定が含まれている。これらの重要な仮定は経営者の最善の見積りと判断により決定されているが、将来の経済条件の変動等により影響を受ける可能性がある。 以上より、固定資産の減損損失の認識の判定には、経営者による主観的な判断が介在するとともに、将来の不確実性を伴うことから、当監査法人は当該事項を監査上の主要な検討事項とした。 当監査法人は、固定資産の減損損失の認識の判定の妥当性を確かめるため、以下の手続を実施した。・ 固定資産の減損に係る内部統制について、整備状況及び運用状況の評価を行った。・ 固定資産の減損損失の認識の判定において、翌事業年度の予算及び中期経営計画に基づき割引前将来キャッシュ・フローが算定され、関連する固定資産の帳簿価額と比較検討されていることを確かめるため、将来キャッシュ・フローの見積資料や減損損失の認識判定資料を閲覧した。・ 翌事業年度の予算及び中期経営計画が取締役会で決議されたものであることを確かめるため、取締役会議事録を閲覧した。・ 翌事業年度の予算及び中期経営計画に含まれる今後の売上高の成長率や市場環境の変化等の重要な仮定の合理性を確かめるため、関連する市場環境に関する外部資料を閲覧し、会社の売上高の成長率とドローン市場の成長率を比較するとともに、市場環境の変化等について経営者に質問した。・ 将来キャッシュ・フローの見積りの不確実性を評価するため、過年度における予算とその実績を比較検討した。 |
全体概要、監査上の主要な検討事項、個別 | 監査上の主要な検討事項とは、当事業年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。 |
見出し、監査上の主要な検討事項、個別 | 固定資産の減損損失の認識の判定 |
その他の記載内容、個別 | その他の記載内容 その他の記載内容は、有価証券報告書に含まれる情報のうち、財務諸表及びその監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査等委員会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。 当監査法人の財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。 財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。 当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。 その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。 |
BS資産
商品及び製品 | 25,881,000 |
仕掛品 | 1,274,000 |
原材料及び貯蔵品 | 2,440,000 |
工具、器具及び備品(純額) | 11,884,000 |
有形固定資産 | 82,902,000 |
ソフトウエア | 16,363,000 |
無形固定資産 | 16,363,000 |
長期前払費用 | 38,000 |
投資その他の資産 | 8,036,000 |
BS負債、資本
1年内返済予定の長期借入金 | 18,420,000 |
未払金 | 28,627,000 |
未払法人税等 | 12,045,000 |
未払費用 | 49,216,000 |
賞与引当金 | 16,884,000 |
資本剰余金 | 631,654,000 |
利益剰余金 | -299,270,000 |
負債純資産 | 1,785,080,000 |
PL
売上原価 | 698,123,000 |
販売費及び一般管理費 | 856,210,000 |
受取利息、営業外収益 | 5,000 |
営業外収益 | 10,219,000 |
支払利息、営業外費用 | 1,731,000 |
その他、流動資産 | 5,164,000 |
営業外費用 | 16,130,000 |
固定資産除却損、特別損失 | 900,000 |
特別損失 | 900,000 |
法人税、住民税及び事業税 | 2,700,000 |
法人税等 | 2,700,000 |
PL2
当期変動額合計 | 662,097,000 |
営業活動によるキャッシュ・フロー
減価償却費、営業活動によるキャッシュ・フロー | 45,470,000 |
賞与引当金の増減額、営業活動によるキャッシュ・フロー | -2,357,000 |
受取利息及び受取配当金、営業活動によるキャッシュ・フロー | -5,000 |
支払利息、営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,731,000 |
棚卸資産の増減額(△は増加)、営業活動によるキャッシュ・フロー | 16,527,000 |
仕入債務の増減額、営業活動によるキャッシュ・フロー | 59,000,000 |
未払消費税等の増減額、営業活動によるキャッシュ・フロー | 26,027,000 |
その他、営業活動によるキャッシュ・フロー | 4,433,000 |
小計、営業活動によるキャッシュ・フロー | -323,553,000 |