財務諸表

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提出書類、表紙有価証券報告書
提出日、表紙2024-03-29
英訳名、表紙Oncolys BioPharma Inc.
代表者の役職氏名、表紙代表取締役社長  浦田 泰生
本店の所在の場所、表紙東京都港区虎ノ門四丁目1番28号
電話番号、本店の所在の場所、表紙03-5472-1578(代表)
様式、DEI第三号様式
会計基準、DEIJapan GAAP
当会計期間の種類、DEIFY

corp

沿革 2 【沿革】
年月概要2004年3月腫瘍溶解ウイルスの研究開発及び分子標的抗腫瘍薬の研究開発を目的に、「オンコリスバイオファーマ株式会社」を東京都港区に設立2004年12月東京都港区内で本社移転2005年5月テロメスキャン(OBP-401)が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の2005年度「分子イメージング機器研究開発プロジェクト/悪性腫瘍等治療支援分子イメージング機器研究開発プロジェクト」の助成金に採択2006年3月米国食品医薬品局(FDA)へテロメライシン(OBP-301)の治験申請(IND)を実施2006年6月Yale大学(米国)と新規HIV感染症治療薬の全世界における独占的ライセンス導入契約を締結し、OBP-601として研究・開発に着手2006年10月京都研究センターを京都府京都市に開設2006年10月テロメライシン(OBP-301)の日本国内特許成立(特許第3867968号)2006年10月テロメライシン(OBP-301)のPhase1臨床試験を米国にて開始2007年9月第5回日本バイオベンチャー大賞文部科学大臣賞受賞(主催:フジサンケイビジネスアイ)2007年11月京都研究センターを兵庫県神戸市に移転し、神戸研究センターとする2008年3月Medigen Biotechnology Corp.(台湾)とテロメライシン(OBP-301)に関する戦略的提携契約を締結2008年3月米国食品医薬品局(FDA)へOBP-601の治験申請(IND)を実施2008年5月OBP-601のPhase1a臨床試験を米国にて開始2008年8月フランス保健製品衛生安全庁(AFSSAPS)へOBP-601のPhase1b/2a臨床試験の実施許可を申請2009年1月OBP-601のPhase1b/2a臨床試験をフランスにて開始2009年9月OBP-601の米国特許成立(米国特許第7,589,078号)2009年10月アステラス製薬株式会社と新規分子標的抗癌剤の全世界における独占的ライセンス導入契約を締結し、OBP-801として研究・開発に着手2010年7月テロメスキャン(OBP-401)が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の2010年度「イノベーション実用化開発費助成金」の助成金に採択2010年12月Bristol-Myers Squibb Co.(以下、「BMS社」)とOBP-601に関するライセンス契約を締結2011年4月独立行政法人医薬基盤研究所と新規検査薬テロメスキャンF35(OBP-1101)の全世界における独占的ライセンス導入契約を締結し、研究・開発に着手2011年6月テロメスキャン(OBP-401)をはじめとする検査薬事業を承継させるために、新設分割によりオンコリスダイアグノスティクス株式会社を設立2012年4月連結子会社であるオンコリスダイアグノスティクス株式会社を吸収合併2012年4月テロメスキャン(OBP-401)の研究目的受託検査を開始2012年4月テロメライシン(OBP-301)の米国特許成立(米国特許第8,163,892号)2012年11月テロメスキャン(OBP-401)が、JST(独立行政法人科学技術振興機構)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)の2012年度「フィージビリティスタディ(FS)ステージシーズ顕在化タイプ」に採択2013年5月OBP-801が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」に採択2013年12月東京証券取引所マザーズに株式を上場2014年4月BMS社とOBP-601に関するライセンス契約を解消2014年5月OBP-801が、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」に採択2014年11月テロメライシン(OBP-301)のPhase1/2臨床試験を台湾にて開始2014年11月米国食品医薬品局(FDA)へOBP-801の治験申請(IND)を実施2015年5月OBP-801のPhase1臨床試験を米国にて開始 年月概要2015年7月国立大学法人鹿児島大学とB型肝炎ウイルス(HBV)に関する新規感染症治療薬の創製に関する共同研究契約を締結2015年8月新たな腫瘍溶解ウイルスとしてOBP-702及びOBP-405を開発品目に追加し抗がん剤パイプラインを拡充2015年8月台湾におけるテロメライシン(OBP-301)のPhase1/2臨床試験にて最大用量投与段階(Cohort 3)への移行を決定2016年8月国立研究開発法人国立がん研究センター東病院先端医療科の土井俊彦先生の研究グループと、進行性又は転移性固形癌患者を対象とした腫瘍溶解ウイルス テロメライシン(OBP-301)と抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用による効果検討に関する医師主導治験契約を締結2016年8月悪性黒色腫を対象とする米国でのテロメライシン(OBP-301)Phase2臨床試験のプロトコール申請を完了2016年9月医薬品及び検査薬のライセンス契約締結活動及び研究開発活動の加速を目的として、100%子会社Oncolys USA Inc.(以下「OUS社」)を米国デラウェア州に設立 ニュージャージー州で活動開始2017年3月独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ食道がん放射線併用Phase1臨床試験の治験申請を実施2017年7月テロメライシン(OBP-301)の放射線併用食道がんPhase1臨床試験を日本にて開始2017年12月テロメライシン(OBP-301)の抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用の医師主導治験を日本にて開始2018年5月Stabilitech Biopharma Limited(スタビリテック社)と、テロメライシン(OBP-301)の保存安定製剤のための技術導入を目的としたライセンス契約締結2019年4月テロメライシン(OBP-301)について、日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス契約と、日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における開発・製造・販売に関する独占的オプション権を中外製薬株式会社(以下「中外製薬」)へ付与するライセンス契約及び資本提携契約を締結2019年4月厚生労働省の定める「先駆け審査制度」の対象品目に、テロメライシン(OBP-301)が指定2019年12月中外製薬がテロメライシン(OBP-301)に関する第1回マイルストーンを達成2020年3月中外製薬がテロメライシン(OBP-301)の放射線併用食道がんPhase2臨床試験の投与開始2020年4月100%子会社OPA Therapeutics Inc.(以下「OPA社」)を米国デラウェア州に設立 カリフォルニア州で活動開始2020年6月米国食品医薬品局(FDA:Food & Drug Administration)が、テロメライシン(OBP-301)を食道がんに対する「オーファンドラッグ」に指定2020年6月OBP-601に関する米Transposon Therapeutics, Inc.(米国 以下「Transposon社」)とのライセンス契約を締結2020年6月鹿児島大学と抗SARS-CoV-2薬の特許譲受に関する契約を締結し、ウイルス感染症治療薬を導入2020年11月Transposon社がOBP-601に関する第1回マイルストーンを達成2020年12月朝日インテック株式会社(以下「朝日インテック」)と資本業務提携契約を締結2021年2月世界保健機関(WHO)が、テロメライシン(OBP-301)の国際一般名称をsuratadenoturevに決定2021年6月学校法人順天堂と共同研究講座「低侵襲テロメスキャン次世代がん診断学講座」の開設契約を締結2021年11月Transposon社がOBP-601の進行性核上性麻痺(PSP)を対象とした米国Phase2a臨床試験を開始2021年12月中外製薬とテロメライシン(OBP-301)のライセンス解消契約を締結2022年1月Transposon社がOBP-601の筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び前頭側頭型認知症(FTD)を対象とした米国 Phase2a臨床試験を開始2022年4月市場区分の変更に伴い、マザーズ市場からグロース市場へ移行2022年8月中外製薬からテロメライシン(OBP-301)の放射線併用食道がんPhase2臨床試験を承継2022年8月Transposon社がOBP-601の進行性核上性麻痺(PSP)を対象としたPhase2a臨床試験における症例組入れ完了 年月概要2022年12月テロメライシン(OBP-301)の放射線併用食道がんPhase2臨床試験における最終症例組入れ完了2023年3月Transposon社がOBP-601の筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び前頭側頭型認知症(FTD)を対象とした米国 Phase2a臨床試験における症例組入れ完了2023年7月Transposon社がOBP-601のアイカルディ・ゴーティエ症候群(AGS)を対象とした欧州 Phase2a臨床試験を開始2023年10月テロメライシン(OBP-301)の放射線併用食道がんPhase2臨床試験におけるトップラインデータの公表2023年12月テロメライシン(OBP-301)と免疫チェッ クポイント阻害剤ペムブロリズマブ(Merck & Co., Inc.(以下、「メルク社」))の共同開発体制の構築2023年12月テロメライシン(OBP-301)における三井倉庫ホールディングス株式会社との物流業務委託契約を締結2024年2月テロメライシン(OBP-301)に関して富士フイルム富山化学株式会社(以下、「富士フイルム富山化学」)と日本における販売提携契約を締結
事業の内容 3 【事業の内容】
当社は創薬バイオベンチャー企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性のがんのウイルス療法や重症ウイルス感染症治療薬などの開発と事業化を推進しています。特に、がんのウイルス療法テロメライシンや次世代テロメライシンOBP-702などの「がんのウイルス療法領域」と、ウイルス感染症治療薬OBP-2011を中心とした「重症ウイルス感染症領域」でパイプラインを構築し、「ウイルス創薬企業」として成長を目指しています。また、これまでHIV感染症治療薬として開発してきたOBP-601はドラッグリポジショニングにより神経難病治療薬として開発されています。今後は、各パイプラインの製薬企業へのライセンス活動や自社による承認申請を推進して商業化を早め、さらに新規パイプラインの創製にも取り組んでゆく方針です。 これまで当社は、パイプラインの開発を一定段階まで進め、その後の開発や販売は製薬企業へライセンスを許諾し、その対価として契約一時金やマイルストーン、ロイヤリティ収入などを得るというライセンス型事業モデルを展開していました。しかし、今後は上記のライセンス型事業モデルに加えて、一部のパイプラインに関しては、自社で製造販売承認を得る製薬会社型事業モデルの展開も検討し、「ライセンス型事業モデルと製薬会社型事業モデルのハイブリッド」で事業を展開してゆく方針です。 「オンコリスなしでは医療現場が、ひいては患者様が困る」そういう存在感ある創薬を展開することを基本方針とし、いち早く医療現場の課題解決に貢献してゆきたいと考えています。なお、当社は、創薬開発プランを創出し、その製造、前臨床試験及び臨床試験をアウトソーシングするファブレス経営による医薬品開発を行い、開発期間の効率化・開発経費の最適化を図っています。当社の事業系統図は以下のとおりです。 [事業系統図] 注:上記のライセンス型事業モデルに加えて、一部のパイプラインに関しては、自社で製造販売承認を得る製薬会社型事業モデルの展開も行っていきます。 (1) 主要なパイプライン当社は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬、さらに感染症領域の新たな治療薬の開発を行い、がんや重症感染症領域の医療ニーズ充足に貢献することを目指しています。特にがん領域では、がんのウイルス療法テロメライシンや次世代テロメライシンOBP-702の開発を進めるとともに、がんの超早期発見又は予後検査を行う新しい検査薬のテロメスキャンを揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・予後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築しています。 ① がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301)テロメライシンは、5型のアデノウイルス[*1]を遺伝子改変した腫瘍溶解ウイルスです。5型のアデノウイルスは風邪の症状を引き起こすもので、自然界にも存在します。テロメライシンは、細胞の寿命を決定づけるテロメラーゼの活性が高いがん細胞で特異的に増殖することによって、がん細胞を破壊します。一方、がん細胞と比較してテロメラーゼ活性が低い正常な細胞の中では、増殖能力が極めて低いため、臨床的な安全性を保つことが期待されています。また、用法としては局所療法が中心となるため、体の負担も少なく、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤などとの併用により、さらに強力な抗腫瘍活性が導き出せることも明らかになっています。さらに局所注射した部位以外でのがんの縮小効果が示唆されており、がん免疫療法等との併用効果が期待されています。これまで嘔吐・脱毛・造血器障害などの重篤な副作用は報告されていないことから患者様のQOL(Quality of Life)の向上が期待されます。 a) 対象疾患食道がんなどの固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況テロメライシンは、2006年10月に日本国内の特許(特許第3867968号)を、2012年4月に米国での特許(米国特許第8163892号)を取得したのをはじめ、欧州14か国を含む世界24か国での特許取得が完了しています。日本の特許は、当社と関西ティー・エル・オー株式会社の共有、海外指定国における特許及び特許出願は当社単独で保有しています。(特許取得済みの国)日本・米国・欧州(14か国)・南アフリカ・シンガポール・ニュージーランド・オーストラリア・中国・香港・韓国・カナダc) アライアンスの状況2008年3月にMedigen Biotechnology Corp.(台湾)と戦略的アライアンス契約を締結しました。また、2024年2月に富士フイルム富山化学と日本における販売提携契約を締結しました。d) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。なお、食道がんへの開発に対して、2019年4月に日本国内において厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定されております。また、2020年6月に米国においてオーファンドラッグ(希少疾患治療薬)の指定を食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)から受けております。e) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造しております。f) 販売体制日本国内に関しては、富士フイルム富山化学が販売する予定です。海外に関しては、大手製薬企業等とライセンス契約又は販売提携契約を締結し、契約先が販売する予定です。 <テロメライシンの構造> テロメライシンは、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子プロモーターをアデノウイルス5型遺伝子のE1領域[*2]に組み込み、さらに同領域にIRES配列[*3]を導入することによってがん細胞内での複製効率を高めたがん細胞で特異的に増殖する腫瘍溶解ウイルスです。テロメライシンのDNA構造は以下のとおりです。 ② LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)OBP-601(censavudine)は、神経変性疾患への応用が新たに期待されるLINE-1阻害剤です。レトロトランスポゾン[*4]というヒトの遺伝子がRNAからDNAに逆転写されて、DNAの様々な場所に入り込んでしまうことで神経組織の炎症反応が起こり、その結果、筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」)などの神経変性疾患を引き起こされることが近年明らかになりました。OBP-601は、このRNAからDNAへの逆転写を司る酵素を抑制する作用を有しており、これまでにない新しい作用機序をもった神経変性疾患の治療薬になることが期待されています。 a) 対象疾患PSP(進行性核上性麻痺)、C9-ALS(筋萎縮性側索硬化症)、FTD(前頭側頭型認知症)、AGS(アイカルディ・ゴーティエ症候群)などの神経変性疾患を対象にします。b) 技術導入の概況当社は、OBP-601(censavudine)の特許を出願・保有するYale大学(米国)と独占的ライセンス導入契約を2006年6月に締結しています。また、神経変性疾患治療薬の開発を目的に設立されたTransposon社と、2020年6月に全世界における再許諾権付き独占的ライセンス導出契約を締結しました。今後の開発は、Transposon社が全額費用を負担し、欧米を中心に実施します。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は本剤を自社製造しておらず、製造はライセンス導出先のTransposon社が行います。e) 販売体制Transposon社が第三者である大手製薬企業等へOBP-601のライセンスを再許諾した場合、ライセンス再許諾先が販売を行います。 <OBP-601(censavudine)の作用メカニズム> ③ ウイルス感染症治療薬OBP-2011OBP-2011は、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を強く阻害する新規メカニズムを持った治療薬として開発を行っていました。これまでに行われた前臨床試験の結果から、経口投与が可能であることが確認され、探索的毒性試験や探索的遺伝毒性試験においても問題となるような検査の異常は認められていません。また、アルファ株・ベータ株・ガンマ株・デルタ株・オミクロン株などの変異型コロナウイルス株に対しても、野生型と同等の活性を示すことが細胞培養系の実験で確認されています。今後は、開発優先順位を引き下げ、メカニズム解明を進めるとともに、他のウイルス感染症治療薬としての可能性を探索していきます。 a) 対象疾患ウイルス感染症を対象に効果を探っています。b) 技術導入の概況 当社は、2020年6月に鹿児島大学と抗SARS-CoV-2薬の特許譲受に関する契約を締結しました。c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制 当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制 大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行う予定です。 ④ 次世代テロメライシンOBP-702 OBP-702は、テロメライシンに強力ながん抑制遺伝子p53を搭載した次世代テロメライシンです。p53遺伝子[*5]の欠失又は変異によって細胞ががん化する割合は、がん全体の30~40%になると報告されています。OBP-702はがん細胞に投与されると、ウイルス自体ががん細胞のテロメラーゼ活性を介して増殖し、がん細胞を破壊するのに加え、同時にp53蛋白をがん細胞の中で生成させることにより、さらに強力にがん細胞をアポトーシスさせる機能を有しています。これまでの非臨床試験の結果では、テロメライシンと比較し、抗がん活性が約10倍~30倍高いことが示唆され、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果が示されています。今後、既存の治療法に抵抗を示すがんや、テロメライシンで効果が得られにくかったがん種等、アンメット・メディカル・ニーズを充足させる治療薬を目指して開発してゆきます。 a) 対象疾患膵臓がんなどの各種固形がんを対象にします。b) 技術導入の概況当社は、2015年に次世代テロメライシンOBP-702をパイプラインに加えています。c) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。d) 製造体制当社は、本剤を自社製造しておらず、他の製造会社に委託して製造する予定です。e) 販売体制大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売する予定です。 <次世代テロメライシンOBP-702の構造> ⑤ 検査薬 テロメスキャン(OBP-401)テロメスキャンは、がん細胞内で特異的に増殖し、緑の蛍光色を発するタンパク質(GFP)を産生させてがん細胞を特異的に発光させる機能を持った遺伝子改変アデノウイルスです。5型のアデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲの発光遺伝子を組み入れ、がん細胞や炎症性細胞などのテロメラーゼ陽性細胞で特異的に蛍光発光させる検査用ウイルスです。 <テロメスキャンの構造模式図>テロメスキャンを用いた検査プラットフォームは、これまでの技術では検出が困難であった血液中の微量な生きたままのがん細胞(CTC:Circulating Tumor Cell)の検出を可能とし、幅広いがん種での体外検査による予後予測・がん遺伝子検査・超早期発見などへの応用を目指して開発を進めています。特に、肺がん等でがんの組織生検を行うことなく、血液採取でがん患者様に適したがん治療の選択肢を増やすことを目指しており、医療現場での高品質な検査への応用が期待されています。 a) 技術導入の概況テロメスキャン(OBP-401)は、テロメライシンと同様に発明者及び関西ティー・エル・オー株式会社から「特許を受ける権利」や「特許権」を正当に譲り受け、事業化が推進できる体制を築いています。今後、AIを用いた検査系の立ち上げを行い、検査感度・精度及びスループットの向上を目指してゆきます。 テロメスキャンF35(OBP-1101)は医薬基盤研究所より2011年4月28日付で世界における独占実施権を獲得しています。b) 研究開発の概況活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。c) アライアンスの状況2015年11月にペンシルベニア大学の研究成果商業化を目的に設立されたLiquid Biotech USA Inc.(米国、以下「Liquid Biotech社」)との間で、北米エリアでの独占使用権を付与するライセンス契約を締結しましたが、2021年12月に同契約を解消しました。d) 製造体制当社は、兵庫県神戸市の神戸リサーチラボにおいて、自社製造体制を構築しています。また、必要に応じて他社に委託して製造する予定です。e) 販売体制国内外の検査会社等への遺伝子改変ウイルスを用いたがん検査薬の実施権の許諾と、研究機関や製薬企業へのがん検査及び検査薬販売が主体となります。将来は、検査キットを検査会社や医療機関に提供してゆきます。 ⑥ HDAC阻害剤OBP-801OBP-801はヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase:HDAC)阻害剤[*6]です。OBP-801は、正常細胞のがん化に強く関係しているHDACという酵素の活性を阻害することで、がん細胞の増殖抑制や細胞死などを誘導する効果を示すことを期待して開発されていました。しかし、米国での各種固形がんを対象にしたPhase1臨床試験で用量制限毒性が生じたため、がん領域での開発を中断しています。現在、眼科領域への応用が試みられています。 a) 対象疾患 眼科疾患領域への応用b) 技術導入の概況 当社は、2009年10月にアステラス製薬株式会社よりOBP-801に関する独占実施権を獲得しています。c) 研究開発の概況 活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。 d) 製造体制 当社は本剤を自社製造しておらず、他社に委託して製造しております。 e) 販売体制 将来的に大手製薬企業等へライセンスを導出し、導出先が販売を行います。 〔主要なパイプラインにかかる用語解説〕[*1] アデノウイルスアデノウイルスは、正二十面体構造の二本鎖DNAウイルスで、ヒトの場合は気道に感染し、のどの腫れなどのいわゆる風邪の症状を起こします。アデノウイルスには、1型から51型まで51の血清型があり、ヒトアデノウイルス5型は小児の上気道感染症の原因となるウイルスで、36kbの2本鎖直線状のDNAゲノムを有しています。組換えDNA実験ではアデノウイルス5型がよく使われます。この属のウイルスは深刻な疾患の原因とはならず、サイズの大きな遺伝子を組み込むことができることから、遺伝子治療に応用されてきました。 [*2] E1領域ヒトアデノウイルスゲノムは、5'逆方向末端反復配列(ITR)、パッケージングシグナル(ψ)、初期遺伝子領域E1A及びE1BからなるE1、E2、E3、E4、後期遺伝子領域L1~L5、及び3’ITRを含みます。E1及びE4は調節タンパク質を含み、E2は複製に必要なタンパク質をコードし、L領域はウイルスの構造タンパク質をコードします。E1A及びE1B遺伝子は、ウイルスの増殖に必須な初期遺伝子です。 [*3] IRES配列IRES(Internal Ribosome Entry Site)と呼ばれる遺伝子配列は、一本のメッセンジャーRNAの途中から翻訳を開始させることができる配列です。このため複数の遺伝子を含むベクターに組み込んで使われています。 [*4] レトロトランスポゾンヒトゲノムの約40%を占めており、逆転写酵素などの作用によってレトロトランスポゾンの複製が行われ、遺伝子内にランダムに転移が起きます。その結果、遺伝子の突然変異が起こりやすくなり、様々な病気が発生すると考えられています。このレトロトランスポゾンがランダムに複数コピーされてくると、様々な反応によりインターフェロンが産生され、神経細胞を傷つけることによりALSなどの神経変性疾患が発生すると考えられています。 [*5] p53遺伝子がん抑制遺伝子の中でも代表的な遺伝子の1つであり、「細胞分裂の停止により、破損した遺伝子が修復するための時間稼ぎ」と「変異した遺伝子を持つ細胞の分裂を、強制的に阻止させる細胞死の発動」の役割を担っています。そのため、p53遺伝子は、ゲノム(遺伝子)の守護神という別名を持っています。 [*6] ヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase; HDAC)阻害剤染色体を構成するタンパク質を脱アセチル化することで染色体構造を緊密にし、遺伝子の発現を抑制する酵素を阻害する薬の総称です。
関係会社の状況 4 【関係会社の状況】
該当事項はありません。
従業員の状況 5 【従業員の状況】
(1) 提出会社の状況2023年12月31日現在従業員数(名)平均年齢(歳)平均勤続年数(年)平均年間給与(円)34(6)47.74.89,247,071
(注) 1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(人材会社からの派遣社員等)は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。3.当社は創薬事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。
(2) 労働組合の状況労働組合は、結成されておりませんが、労使関係は円滑に推移しております。 (3) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異当社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)」の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。
経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
(1) 経営方針当社は創薬バイオ企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性の高いがんのウイルス療法薬や重症感染症治療薬などの開発と事業化を推進しています。特に、腫瘍溶解ウイルスであるテロメライシン並びに次世代テロメライシンOBP-702を中心とした「がんのウイルス療法」と、ウイルス感染症治療薬OBP-2011を中心とした「重症ウイルス感染症治療薬」を主な事業領域とした「ウイルス創薬企業」として成長を目指しています。さらに、核酸系逆転写酵素阻害剤のメカニズムを活かしてHIV感染症治療薬として開発して参りましたOBP-601(censavudine)は、LINE-1阻害剤としてドラッグリポジショニングを行い、ライセンス先のTransposon Therapeutics Inc.(以下「Transposon社」)により神経難病治療薬として開発が進められています。 これまで当社は、パイプラインの開発を初期の臨床試験段階まで進め、その後の開発や販売は製薬企業へライセンスを許諾し、その対価として契約一時金やマイルストーン、ロイヤリティ収入などを得るという事業モデルを展開してきました。今後は上記のようなライセンス型事業モデルに加えて、国内のテロメライシンに関しては、自社で製造販売承認を得る製薬会社型事業モデルへ展開を進めます。当社は、大手製薬会社の経営方針に依存するライセンス収入だけのビジネスモデルから脱却し、「医薬品を製造販売業者として供給することで継続した収入が得られる製薬会社型事業モデル」と「ライセンス型事業モデル」のハイブリッド型ビジネスモデルへ当社自身を変革させていく方針です。 「オンコリスなしでは医療現場が、ひいては患者様が困る」そういう存在感ある創薬を展開することを基本方針とし、いち早く医療現場の課題解決に貢献してゆきたいと考えています。
(2) 当社を取り巻く経営環境がんのウイルス療法は1990年代から欧米を中心に研究開発が進み、2010年代以降に大きな進展を遂げました。2015年に米国アムジェン社が遺伝子改変ヘルペスウイルスを使ったがんのウイルス療法を上市させ、日本国内では2021年に第一三共(株)が同様なヘルペスウイルス製剤「デリタクト注」(一般名:テセルパツレブ)を日本国内で上市させました。現在も、世界で数十社が様々なウイルス療法の開発に着手し、開発競争が激しくなっています。一方で、遺伝子改変型アデノウイルスによるウイルス療法は未だ薬事承認されたものはなく、当社が開発しているテロメライシンは、食道がんへの適応に対して開発の最終段階にあり、2019年には厚生労働省から『先駆け審査制度への指定』を受け、米国では2020年にFDA(米国医薬品食品局)から食道がん治療に対する『オーファンドラッグ指定』を受けています。これらの指定により、薬事承認にかかわる相談・審査において優先的な取り扱いを受けることができるようになりました。また、医薬品業界では、大手製薬企業の命運を左右させるようなパテントクリフを補う新薬の創出が大きな課題となってきており、大手製薬会社も独自の新薬の創出に頼るのではなく、ベンチャー企業が創出した従来にない遺伝子治療や細胞治療などの新しいモダリティを求めるようになってきました。このような環境下、当社のような小規模組織は、経営資源であるヒト・モノ・カネを戦略的かつ効率的に活用し、事業のスピードと質を最大化できるというメリットがあります。効率的な経営を実現させるためにCRO(臨床試験・前臨床試験受託企業)やCMO(医薬品製造受託企業)に業務委託を行い、当社米国子会社のOUS社と連携してパイプラインのPOC(Proof of Concept)を明確化させ、ニューモダリティを求める大手製薬会社との提携に繋げて新薬承認へのスピードアップを実現させたいと考えています。 (3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当社は、組織戦略において下記の課題を重要な課題として取り組んでおります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において判断したものであります。 a.経営理念の浸透当社のビジョンは、「未来のがん治療に新たな選択肢を与え、その実績ががん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくこと」です。私たちが求めて止まないのは、医療の“イノベーション”です。そのために、普段からの医学研鑽を惜しみません。少人数で大きな仕事を成し遂げてこそ、アドベンチャーと言えるでしょう。大企業にできないことこそ、私たちが成し遂げるべき目標です。いくら儲かるからではなく、どれだけの人を救えるかに価値観をもち、その結果としての利益を追求してゆきたいと考えます。経営者と社員だけではなく、株主様ともこの意識を共有してゆきます。常に透明な経営を心がけ、定期的な情報公開を行ってゆきます。社会貢献を目指す社会人として、常にコンプライアンスの遵守を心がけます。この経営理念を役職員に浸透させ、経営理念に基づいた経営戦略の遂行を柔軟且つ活気を持って執り行う組織を構築することが、重要な経営課題です。そのために、経営理念を具現化するための行動規範を策定し、役職員に行動規範の遵守を指導するとともに、経営トップが役職員に経営理念を語る機会を積極的に設定しています。その上で、研究開発部門と事業開発部門が一元的に情報を共有することを第一義に組織を構築しています。また、社内リソースを管理する管理部門は、常にステークホルダーを意識し、コンプライアンス遵守を徹底します。さらに、内部監査部門は、経営理念及び行動規範の浸透状況をはじめとするモニタリング機能を充実させていきます。 b.人財の確保と成長役職員個々の自発的な成長こそが当社の成長を支える必須要素です。その実現のために人財の採用・育成を積極的に推進します。特に、当社の研究開発やビジネスは国内外に渡るため、英語能力をはじめ国際的視野を持つ人財を育てることが重要です。社内外ネットワークを活用し、確かな技術・能力・成長意欲のある人財の採用を行い、併せてOJTや各種研修プログラムによる人財育成を行うことで、陣容の充実を図ります。また、業績評価や株式報酬制度を充実させ、業務のスピード及び質を最大化することに努めます。 c.研究開発体制の強化当社の研究開発は、医薬品及び検査薬候補の探索・創製から前臨床試験及び初期臨床試験(POC: Proof of Concept)までを中心とし、前臨床から臨床段階への橋渡し(TR:Translational Research)が主業務です。従って、研究開発計画の企画立案並びにその進捗管理を主たる業務とするプロジェクトリーダーを担える人財の確保並びに育成が重要な課題です。当社の研究開発体制は、国内のみならず海外にも展開しております。当社100%子会社Oncolys USA Inc.(以下「OUS」)の臨床開発部門との連携を充実させ、世界の医療や研究機関との共同研究開発を通じて先進技術を取り込み、技術レベルの向上を図るとともに、アウトソーシング先を積極的に活用し、ローコスト且つハイレベルな研究開発体制の構築を行います。 d.事業開発部門の強化当社は、遺伝子改変ウイルス製剤を用いたがんのウイルス療法と重症ウイルス感染治療薬を事業領域に定めており、この業界においては非常に特殊なウイルス創薬の事業化を目指しています。従って、ビジネス能力だけではなく科学的知識の豊富な人財を確保・育成し、世界の製薬企業とのネットワークをより強固なものにしていきます。さらに、当社の米国子会社であるOUSとの連携を強化することで海外製薬企業とのライセンスや共同開発の機会を数多く創出し、当社のキャッシュ・フロー獲得に貢献できる事業開発体制を構築します。 e.アウトソーシング戦略アウトソーシングを主体とする当社のビジネスにおいて、その効率化は重要な課題であります。必要且つ十分な研究開発及び製造力の確保に向け、外部委託会社であるCRO(Contract Research Organization)及びCMO(Contract Manufacturing Organization)との関係を強化するために、定期訪問等による綿密なコンタクト体制をとるべく全組織に啓蒙しています。また、常に最良のアウトソーシング体制を確保するべく、各々の業務領域において特定の1社依存にならぬよう、セカンドコントラクターの探索及び関係構築も行います。 主要製品・サービス内容、顧客基盤、販売網等については、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (1)主要なパイプライン」及び「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」をご参照ください。
事業等のリスク 3 【事業等のリスク】
当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を与える可能性のあるリスク要因には、以下のようなものがあります。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、本株式に関する投資判断は本項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えられます。なお、文中の将来に関する事項は、別段の表示がない限り、本書提出日時点において、当社が判断したものであります。 創薬事業における研究開発について(1) 事業の内容について① 研究開発投資が高額であることにかかる事項当社が行う医薬品及び検査薬の研究開発は、その期間が長期にわたり、コストも高額であります。当社は、保有するパイプラインにおいて初期の臨床試験までの開発を効率的に進めることに注力し、そこで得られた有効性と安全性のデータを以って製薬企業へのライセンス契約締結を実現することを基本的な事業活動と位置付けています。また、政府など各種の補助金を利用して経費を下げるとともに、ライセンス契約締結後の後期臨床試験以降の開発費用はライセンス先の拠出となることで、当社が負担する開発コストを最小限に抑えるとともに、契約一時金収入及びマイルストーン収入を確保することで、新規パイプラインへの再投資が実現することを事業サイクルとしております。しかしながら、万一、ライセンス契約締結及び維持に支障が発生した場合は、当社の事業収入が減少し、新規パイプライン開発への再投資が困難になる可能性があります。また、ライセンス対象となるパイプラインの開発費用をライセンス先が負担しないため、当社に発生する多大な研究開発費負担が当社業績を圧迫し、結果として開発の大幅な遅れや開発中止といった事態に及んだ場合、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 ② パイプラインの安全性及び有効性にかかる事項当社が開発する医薬品及び検査薬のパイプラインにおいて、安全性や有効性の評価に問題が発見された場合は、開発が大幅に遅れる可能性もしくは開発そのものを中止する可能性があります。当社は、保有するパイプラインの安全性及び有効性の評価を確実なものとするために、ⅰ) 科学評価顧問等のネットワークを最大限活用したパイプライン価値の適正な評価ⅱ) 非臨床・前臨床段階における徹底的な安全性及び有効性の検証ⅲ) PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)やFDA(米国食品医薬品局)等の監督官庁との治験申請の事前ミーティング等を実施し、パイプラインの安全性及び有効性評価のための情報をより効率的に収集できるように努めております。また、臨床試験の実施に当たっては、臨床試験のモニタリングを委託するCRO(受託臨床試験機関)と綿密なコンタクトを取り、常に最新の臨床現場情報を収集するとともに、医学専門家を交えたSRB(安全性評価委員会)を設置する等、臨床試験の安全な実行に対して最大の努力を図っております。さらに、治験保険への加入による損害賠償リスクの移転を図っております。上記のような対策を行ってはおりますが、予期せぬ副作用による開発の遅滞・中止のリスクを完全に排除することは困難であり、開発の大幅な遅れや開発中止もしくは国内外の監督官庁の承認が得られないといった事態に及んだ場合、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 ③ 法的規制にかかる事項医薬品の研究開発における薬機法に基づき、医薬品の前臨床試験においてはGLP(Good Laboratory Practice)、原薬等の製造においてはGMP(Good Manufacturing Practice)並びに、臨床試験においてはGCP(Good Clinical Practice)がそれぞれ定められており、その操作手順やQA/QCが確実に実施されていることが必須条件になっております。当社は遺伝子組換えウイルス製剤を開発しておりますが、日本においては、2000年に生物多様性条約特別締約国会議で採択された「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(カルタヘナ議定書)」に準拠した国内法「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(カルタヘナ法)の定めるところに従って開発・製造・販売を行っていく必要があります。当社は、国内のウイルス取扱施設において、文部科学大臣より「遺伝子組換え生物等の第二種使用等をする間に執る拡散防止措置の確認」について確認を得るとともに、日本国内でテロメライシンの臨床試験を実施するために、カルタヘナに関する厚生労働大臣の承認を得ております。また、臨床施設では厚生労働省等の監督官庁への届出及び承認を確認しています。しかしながら、将来医薬品・ウイルス製造等に関する新たな法律や条例などが制定・施行される可能性があり、それにより当社の事業が何らかの制約を受ける可能性があります。その結果、開発の大幅な遅れや開発中止、或いは販売中止といった事態に及んだ場合、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 ④ 技術革新にかかる事項当社が推進する創薬事業にかかる技術分野においては、いずれも技術革新及び進歩の度合いが著しく速いと考えられます。当社は、常に最新の技術情報の収集・集積に注力しておりますが、万一、医薬品及び検査薬の競合技術等が、当社の対応の及ばない状況下で格段の進歩を遂げた場合、当社の事業に影響を与える可能性があります。また、当該技術の導入等に多大な費用や時間を要する場合、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 ⑤ 競合にかかる事項当社の業務領域と完全に一致する企業は国内に見当たりませんが、国内創薬系バイオ企業の研究開発の動向を適宜確認するとともに、海外も含めたウイルス製剤の研究・開発・販売の動向は注視しています。創薬事業の医薬品開発において本書提出日時点で当社にて把握できている競合品としては、世界の多数企業が腫瘍溶解ウイルスの開発を行っている中、中国が最も先行しており、Shanghai Sunway Biotech Co.,Ltd.(中国)が有する当社と同じ増殖型アデノウイルス製剤Oncorineが、頭頸部がん治療薬として既に上市されております。また、遺伝子改変ヘルペスウイルス製剤Talimogene laherpareovec:T-VEC(Amgen社:米国)が、進行性黒色腫治療薬として2015年10月に米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けるとともに欧州医薬品庁(EMA)の諮問委員会の承認推奨を受けました。これにより、欧米で初めて、ウイルス製剤が医療現場で使用されることとなりました。日本国内では2021年に第一三共株式会社により、遺伝子改変ヘルペスウイルス「デリタクト注」(一般名:テセルパツレブ)が承認されました。上記以外に、現在、レオウイルスReolysin(oncolytic Biotechnology社:カナダ)、CG-0070(Cold Genesys社:米国)などが開発されています。当社では開発スピードを早め、他社の腫瘍溶解ウイルスとは異なる適応症を目標とすることで特徴を抽出し、差別化を図って参ります。しかしながら、これらは未だ臨床開発途中であり、将来、医薬品として上市される保証はなく、臨床試験において、重篤な副作用の発生等で競合品と比して差別化が図れないと判断しうるデータを取得した場合、開発中止の可能性や開発遅延の可能性があります。また、将来、他社とのライセンス契約を締結した場合、ライセンス先の開発戦略の変更や契約解消による開発活動の遅延が生じることで、当社の開発計画及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また、がん検査薬への開発において、当社が対象としている血中循環がん細胞(CTC)の検出分野では、現在Veridex社(J&Jグループ)のCTC検出機器CellSearchシステムが唯一米国にて薬事承認されており、その後多数の企業によるCTC検査系の開発競争が激化しております。しかしながら、CellSearchをはじめとする競合の多くは、EpCAMと呼ばれる細胞表面マーカーを検出する方法を用いており、その細胞表面マーカーの発現が低いと言われている肺がん細胞等の検出が困難であるという欠点を持っております。一方、当社のウイルス改変検査薬においては、肺がんや膵臓がんをはじめとするほとんどの種類のがんにおいて、血中で生きた状態のがん細胞を蛍光発光させることが可能であることを確認しており、競合品との差別化ができると考えています。いずれの開発領域におきましても、本書提出日時点、当社が把握する競合の存在及びその研究開発進捗が必ずしも当社にとって直接マイナスの影響をもたらすものではありませんが、競合品が飛躍的に市場を寡占化した場合等、当社のパイプライン導出や将来のロイヤリティ収入に影響を与える可能性があります。 ⑥ アライアンスにかかる事項当社の収益構造は、当社が研究開発する医薬品並びに臨床検査薬について、その研究開発の進捗に伴って評価された製品的価値の初期評価であるProof of Concept(POC)に基づいて製薬企業等とのライセンス契約を締結し、その対価として契約一時金・研究協力金・開発協力金・マイルストーン収入及び製品の上市以降その販売に伴って発生するロイヤリティ収入等を段階的に見込むものであります。現時点において、Transposon社とLINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)の全世界における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス契約を締結しています。また、テロメライシンの日本国内での販売は、富士フイルム富山化学と販売提携契約を締結しています。導出前の各パイプラインについては、導出先候補となる製薬企業や検査薬企業等のニーズを考慮し、研究開発の進捗状況を効果的に情報提供する等の活動を続けています。しかしながら、当社のパイプラインが導出先候補企業のニーズを満たす保証はなく、導出に至らない、又は導出契約の時期や条件が当社の想定するものと大幅に乖離した場合等において、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。また、パイプラインを導出した場合、導出後の研究開発・承認申請・製造及び販売活動を導出先企業が行うことになるため、当社の収益は導出先企業の戦略及び開発進捗等に依存することとなります。導出先企業が実施する臨床試験において予期せぬ副作用が発生した場合、及び導出先企業における戦略変更によるポートフォリオの見直し等により、導出済みパイプラインの開発中止等の決定がなされた場合、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。なお、予期せぬ副作用により開発中止された場合を除き、当社は速やかに引継導出先を見つける活動を行いますが、引継導出先が早期に決定しない場合は、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 ⑦ 為替相場変動リスクにかかる事項現在、当社の業務委託先及び提携先については、欧米の企業・機関がその大半を占めております。外貨建取引は、財務諸表上全て円換算しております。これらの項目は、現地通貨における価値が変化しなかった場合も、換算時のレートによって円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。為替相場の変動に起因する影響を軽減するために、必要に応じて為替予約などのリスクヘッジを行って参りますが、これによって全てのリスクを回避することは困難であり、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。
(2) 知的財産権について① 特許にかかる事項当社は、本書提出日時点において、当社の事業に対する特許権等の知的財産権に関する第三者との間での苦情及び訴訟等といった問題は認識しておりません。さらに、社内に知的財産権の専任担当者を設置するとともに、顧問弁護士及び弁理士との連携を以って可能な限り特許侵害・被侵害のリスクを軽減すべく活動しております。また、発明者、TLO法に基づく大学等の知的財産管理機関、企業及び研究機関から、「特許権又は特許を受ける権利」を正当に譲り受け、又は「実施権の許諾」を受け、事業化が推進できる体制を築いております。しかし、当社の展開する医薬品・検査薬の一般的なリスクとして、自社で出願した特許以外にも第三者特許が関連する可能性があります。なお、今後、当社が第三者との間で係争に巻き込まれた場合、当社は弁護士や弁理士との協議の上、その内容に応じて対応策を検討していく方針でありますが、係争の解決に労力、時間及び費用を要する可能性があり、その場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、将来的な事業展開においては、他社が保有する特許権等への抵触により、事業上の制約を受けるなど、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 主力パイプラインにかかる主要な特許の状況は以下のとおりです。 対象適応症特許権者又は出願人当社備考テロメライシン(OBP-301)固形がん(食道がんなど)当社特許権者日本で耐性腫瘍への投与に関する特許が成立。Stabilitech Biopharma Limited世界における独占的実施権日本・米国・欧州を含む24カ国でウイルス保存安定製剤に関する特許が成立。OBP-601(censavudine)PSP(進行性核上性麻痺)、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、FTD(前頭側頭型認知症)、AGS(アイカルディ・ゴーティエ症候群)Yale University他世界における独占的実施権日本・米国・欧州を含む16カ国で物質に関する特許が成立。OBP-801眼科領域当社、京都府公立大学法人出願人日本で眼科領域への用途に関する特許を出願中。テロメスキャン(OBP-401)がんの体外検査当社特許権者日本及び欧州を含む10カ国で物質に関する特許が成立。テロメスキャンF35 (OBP-1101)がんの体外検査国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所世界における独占的実施権日本・米国・欧州を含む13カ国で物質に関する特許が成立。さらにテロメスキャン(OBP-401)の項目に記載の特許によっても保護される。OBP-2011ウイルス感染症当社出願人物質に関する特許を国際(PCT)出願中。新型コロナウイルス感染症治療薬用途に関する特許を日本・米国・欧州に出願中。(計2件) ② 職務発明にかかる事項当社における職務発明の取扱に関しては、取締役・従業員が協議の上、取締役会決議により「職務発明規程」を作成し、運用しております。しかしながら、将来、発明者の認定及び職務発明の対価の相当性についての係争が発生した場合、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 (3) 経営上の重要な契約について当社の経営上重要と思われる契約の概要は、「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載のとおりであります。当該契約が期間満了、解除、その他の理由に基づき終了した場合、もしくは当社にとって不利な改定が行われた場合、又は契約の相手方の経営状態が悪化したり、経営方針が変更されたりした場合には、当社の事業戦略及び業績に影響を与える可能性があります。 (4) 社内体制について① 特定人物への依存にかかる事項当社の事業活動においては、当社代表取締役社長である浦田泰生の製薬企業での経験・知識に基づく研究開発及び事業開発戦略に依るところが多く存在しております。浦田泰生の経営ビジョンを、企業理念・経営戦略として明確化して組織に浸透させること、及び後継者育成に専心し、浦田泰生に一元依存しない体制を構築することに努めております。しかしながら、組織強化や後継者育成が遅れをきたし、事業承継が円滑に実施できない場合には、それにより当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 ② 小規模組織であることにかかる事項当社は、小規模な組織であり、社内における管理体制についてもこの規模に応じたものとなっております。当社においては、業務上必要な人員の増員及び育成等を図っていく方針でありますが、各部門において従業員に業務遂行上の支障が生じた場合、人財流出が生じかつ代替要員の不在等の問題が生じた場合には、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 ③ 人財育成・確保にかかる事項当社が成長を続けていくために不可欠な要素の1つが、優秀な人財の確保であります。当社はアウトソーシングを活用したファブレス経営モデルを構築することで、必要人員の絶対数を削減し、統括的なプロジェクトマネジメント能力を有する人財を重点的に確保しつつ、将来当社を担う人財の育成に注力しております。また、経営理念を社内に浸透させ、その崇高な目的に共感できる従業員を育成すること、トップが率先して基幹人財間のコミュニケーションの充実に関与すること、及び社内の評価制度や人事制度を充実させること等により、社内人財の定着率向上に努めております。しかしながら、人財育成が円滑に進まない場合、又は各部門において中心的役割を担う特定の従業員が万一社外に流出した場合、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 (5) 業務上の事故やトラブル等のリスクについて① 研究施設における事故等の発生にかかる事項当社は、神戸リサーチラボを保有しております。同施設で遺伝子組み換えウイルスを検査薬として取り扱うにあたっては、いわゆるカルタヘナ法の定めに基づき、必要な設備を監督官庁に届け出てその確認を受けております。また、遺伝子組み換えウイルスの取扱に関して、遺伝子組換え実験等安全委員会を設置して、その管理を徹底させ、社員の教育指導に努めております。しかしながら、何らかの要因により火災や環境汚染事故等が発生した場合には、重大な損失を招くリスクがあり、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 ② 自然災害等にかかる事項当社は、東京都港区に本社を設置しており、事業活動に関わる資料・データ及び人員の半数以上が本社に集中しております。万一、首都圏直下型の大型地震の発生・台風・津波等の自然災害や大規模な事故・火災・テロ行為等により本社社屋の倒壊、資料・データの散逸、人員の死傷等不測の事態が発生した場合や、有効な治療薬がない感染症等のパンデミックが発生した場合には、当社の事業活動及び国内外において進めている臨床試験の停滞や継続が困難となる状況が生じ、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 ③ 訴訟にかかる事項当社は知的財産権及びその実施権をビジネスの基盤としておりますため、事業を展開する上で、当社の責任の有無に関わらず、第三者から権利又は利益を侵害したとの主張による損害賠償請求訴訟を提起される可能性があります。また、臨床試験において被験者の健康被害が発生した場合、取引関係や労使関係において不測のトラブルが発生した場合等においても、損害賠償請求等の訴訟を提起される可能性があります。当社では、十分な知的財産権の管理や治験保険への加入等リスクの回避・低減に努めております。しかしながら、訴訟が提起された結果、金銭的負担の発生や当社に対する信頼・風評の低下により、当社の事業、財務状況及び業績に影響を与える可能性があります。 (6) その他① 新株予約権及び株式にかかる事項当社は役員、従業員及び社外協力者等に対して、当社事業及び研究開発へのモチベーションの向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)の発行や譲渡制限付株式を交付する株式報酬制度を導入し、事業会社や金融機関等に対して、事業推進のための資金調達を目的として株式や新株予約権を発行しています。また、役員及び従業員に対して、譲渡制限付株式を発行しています。今後も優秀な人財・社外協力者の確保や事業推進のための資金調達を目的として、同様の施策を実施する可能性があります。これらの新株予約権の行使や株式発行が行われた場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化し、当社株価形成に影響を与える可能性があります。また、今後も優秀な人財の確保のためにストック・オプションをはじめとするインセンティブプランや必要に応じた資金調達を実施するために、新たな新株予約権や株式が発行される可能性があります。なお、新株予約権の状況及び内容につきましては、「第4 提出会社の状況 1.株式等の状況 
(2) 新株予約権等の状況」をご覧ください。 ② 資金使途及び資金調達にかかる事項 当社が保有する資金は、主に既存パイプラインの研究開発費用、新規パイプラインの導入及びその研究開発費用、戦略的な投資に充当する考えです。当社が本書提出日時点で計画している資金使途は上記のとおりですが、急激な事業環境の変化等により、計画どおりに使用した場合においても、当初の想定どおりの成果が得られない場合があります。また、当社株価が下落した場合には、必要資金を計画どおりに調達できない可能性があります。計画どおりに必要資金を調達できない場合には、資金使途を変更する可能性があるとともに、当初の想定どおりの成果を得られない可能性があります。
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概況当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。  ① 財政状態及び経営成績の状況当事業年度におけるわが国経済は、2023年12月日銀短観での大企業業況判断Diffusion Index(以下、「DI」)が製造業・非製造業とも市場予測を上回り、幅広い業種で業況判断DIが上昇し良好な結果が示されました。一方で、イスラエル内戦や欧米の政策金利引き上げによる急速な円安進行など、国内外の不安定な状況は今後も継続する見通しのようです。 このような状況下、当社は「未来のがん治療に新たな選択肢を与え、その実績でがん治療の歴史に私たちの足跡を残してゆくこと」をビジョンとし、経営の効率化及び積極的な研究・開発・ライセンス活動を展開いたしました。特に、がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301)を中心に研究・開発・ライセンス活動を推進させています。また、LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)は、Transposon Therapeutics, Inc.(以下「Transposon社」)とのライセンス契約の下、同社の全額費用負担により臨床試験が進められています。当社活動の詳細に関しては、「第2 事業の状況 6.研究開発活動」をご確認ください。以上の結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。 a.財政状態当事業年度末における資産は、現預金の減少等により2,040,598千円(前期比23.0%減)となりました。負債は、未払金の増加や長期借入金の借入れ等により566,500千円(前期比15.2%増)となりました。純資産は、新株発行による増資や当期純損失等により1,474,097千円(前期比31.7%減)となりました。 b.経営成績当事業年度は、売上高63,038千円(前期は売上高976,182千円)、営業損失1,929,986千円(前期は営業損失1,204,506千円)を計上しました。また、営業外収益として受取利息1,475千円、為替差益27,598千円等を計上し、営業外費用として支払利息3,602千円、株式交付費8,777千円等を計上し、経常損失1,913,816千円(前期は経常損失1,163,008千円)になりました。さらに、固定資産売却益136千円を特別利益、当社が保有するテロメライシンに関する分析装置等の減損損失21,898千円を特別損失として計上した結果、当期純損失1,938,505千円(前期は当期純損失1,148,938千円)を計上しました。 ② キャッシュ・フローの状況当事業年度末における現金及び現金同等物は、1,287,763千円(前期比12.2%減)となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローは次のとおりです。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは1,336,922千円の支出(前期は1,717,135千円の支出)となりました。これは主として、税引前当期純損失1,935,578千円、減損損失21,898千円の計上、前払金の減少223,713千円、未収入金の減少123,411千円、未払金の増加132,727千円等によるものです。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは5,392千円の支出(前期は20,117千円の収入)となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出5,686千円等によるものです。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは1,142,542千円の収入(前期は113,830千円の支出)となりました。これは主に株式の発行による収入1,223,450千円、長期借入れによる収入100,000千円、長期借入金の返済による支出194,444千円、リース債務の返済による支出4,540千円等によるものです。  ③ 生産、受注及び販売の実績(1) 生産実績該当事項はありません。
(2) 受注実績該当事項はありません。 (3) 販売実績当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、当社は、創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載は省略しております。 セグメントの名称当事業年度(自 2023年1月1日至 2023年12月31日)前年同期比(%)創薬事業(千円)63,038△93.5合計(千円)63,038△93.5
(注) 1.当事業年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、中外製薬株式会社とのテロメライシンのライセンス契約が2022年10月に終了したためであります。   2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。 相手先前事業年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)販売高(千円)割合(%)中外製薬株式会社913,10793.5 相手先当事業年度(自 2023年1月1日至 2023年12月31日)販売高(千円)割合(%)岡山大学35,00055.5Transposon Therapeutics28,03844.5 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において判断したものであります。① 重要な会計方針及び見積り当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。  ② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当事業年度の経営成績等の状況については、上記「(1)経営成績等の状況の概況」をご参照ください。当社は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、創薬バイオ企業として研究開発先行型の事業を展開しており、独自性の高い遺伝子改変ウイルスによるがん治療薬、重症ウイルス感染症治療薬及びがん検査薬などの開発と事業化を推進しています。特に、ウイルスの増殖能力を利用してがん細胞を殺す「がんのウイルス療法」と、ウイルスの増殖を止めて治療を行う「重症ウイルス感染症治療薬」を事業領域とし、ウイルスを軸にした業界でも類を見ない『ウイルス創薬』を展開して参りました。また、これまでHIV感染症治療薬として開発してきたOBP-601は、そのメカニズムを基に応用を拡大して神経難病治療薬としての開発が進められています。今後も、各パイプラインの製薬企業へのライセンス活動を推進して商業化を早め、さらに新規パイプラインの創製にも取り組んでゆく方針です。 当事業年度では、テロメライシンの日本国内での承認申請を目的とした臨床試験の組入れを完了させ、商用製造の基礎となるGMP製造を推進させました。さらに、テロメライシンの承認申請に向けて、日本国内での販売提携パートナーの獲得に向けたビジネス活動を進め、2024年2月に富士フイルム富山化学と販売提携契約を締結し、製造販売体制の確立に向けた活動を進めました。また、OBP-601のライセンス先であるTransposon社による神経難病患者を対象とした臨床試験が進みました。 当社の経営に影響を与える大きな要因としては、1)研究開発の進捗度合い、2)ウイルス製剤の製造、3)ライセンスや販売提携に伴う資金獲得、4)医薬品市場動向及び5)為替動向等が挙げられます。1) 研究開発については、特に臨床試験では適格な症例を組み入れることがその試験の成功を左右させる大きな要因となります。当社の開発方針はUnmet Medical Needs(治療法が確立されていない医療領域)を対象に臨床開発を展開しており、対象症例が非常に希少であるために臨床試験の症例組み入れが予想よりも遅延する可能性があります。そのために臨床試験受託会社(CRO)を的確にオペレーションし、臨床試験担当医師との情報交換を頻度高く行うなどの努力を最大限行って臨床試験の質とスピードを向上させることを重要視しています。2) ウイルス製剤の製造においては、テロメライシンの商用製造に向けて原薬及び製剤をHenogen社(ベルギー)に委託しています。これまでに商用に向けての製造開発が実施され、スケールアップが行われてきました。今後、商用製造に移行していく計画ですが、ウイルス製造は未だ確立された方法論がなく、試行錯誤の連続になります。ウイルス製造には大きな費用が掛かり、さらに品質試験や安定性試験にも時間と費用を要します。これらの遅延又は失敗により、テロメライシンの承認申請時期を大幅に遅らせる可能性があります。このような状況を防ぐために、当社ではウイルス製造時に当社製造担当者を派遣し、製造受託企業スタッフと綿密な情報交換を行い、当社神戸リサーチラボにおいても補足的検討を即時的に行い、効率的かつ高品質なウイルス製剤が製造できるよう努めています。3) ライセンス契約や販売提携契約に関しては、研究開発の大幅遅滞や失敗、医療行政の変動、競合薬の進展などのリスクに加え、契約締結先の経営戦略変更により契約が解消されるリスクなどが挙げられます。これらのリスクを回避・低減するため、契約条件をより当社に有利にできるよう、過去の契約事例を参照して不足事項を補い、コンサルタントや弁護士の助言を最大限に活用し、より良い契約が完遂できるよう努力していきます。4) 市場動向については、国内外の大手製薬会社やバイオ企業との熾烈な研究開発競争が今後も展開され、がん治療の標準的治療法が年々変更される時代となったために、マーケット調査を強化して将来を見据えた開発方針を立てる必要があります。常に競合情報やマーケット情報をキャッチアップできるよう、国内外の情報収集に努めてゆきます。5) 為替動向に関しては、当社の海外における臨床試験や製造などが主に外貨建てで行われているという理由により、経営成績が大きく影響を受けるため、為替変動リスクを最小限に抑える必要があります。今後は外貨建て収入を増加させることで、外貨建て債務に係る為替リスクの低減を図っていきます。 このような中で、当社はグローバル市場におけるリスク対応力の高い人財を育成し、「ウイルス創薬」という新しい業態において名実ともに存在感のある企業として成長していくために、収入増大による経営基盤の強化を図り、企業統治を高度化していきます。 ③ 資本の財源及び資金の流動性a.資金需要当社の事業活動における運転資金需要の主なものは、医薬品及び検査薬の研究開発に伴う研究開発費、各種ライセンス契約や戦略的アライアンス契約に伴う特許関連費、各事業についての一般管理費があります。また、設備・投資資金需要としては、各種機器や戦略的投資に伴う固定資産投資等があります。 b.財務政策当社は事業活動の維持拡大に必要な資金を、ライセンス契約や販売提携による一時金やマイルストーン収入のみならず、商業化によるロイヤリティー収入や製品販売収入を軸とした事業収入によって確保することを第一に考え、内部資金を活用し、必要に応じて資本市場からの資金調達を行っています。また、運転資金及び設備・投資資金は、当社において一元管理しています。「ウイルス創薬」による医薬品や検査薬の研究開発という成果を実現させるまでには、相対的に時間を要する事業を行っているために、資本性の高い長期資金を得ることで、資金特性のバランスを考慮しています。
経営上の重要な契約等 5 【経営上の重要な契約等】
(1) 当社が開発許諾を受けたライセンス契約 契約締結日契約の名称相手先契約の概要2005年3月31日特許を受ける権利の譲渡に関する契約藤原俊義、田中紀章、京哲、水口裕之、早川堯夫テロメスキャン(OBP-401)の特許を受ける権利の譲渡契約契約期間:特許存続期間2009年10月2日YM753ライセンス契約アステラス製薬株式会社OBP-801の特許の全世界における独占的な実施権の許諾に関する契約1.当社は、OBP-801の特許の全世界における独占的な実施権の許諾を受け、開発段階に応じた一時金、販売マイルストーン及びロイヤリティを支払う。2.契約期間:特許の最長存続期間又は販売マイルストーンの支払い全てが履行されるまでのいずれか遅い方まで2011年4月28日特許実施許諾契約書国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所テロメスキャンF35(OBP-1101)の特許の全世界における独占的な実施権の許諾に関する契約1.テロメスキャンF35(OBP-1101)の特許の全世界における独占的な実施権の許諾を受け、開発段階及び販売実績等に応じた一時金及びロイヤリティを支払う。2.契約期間:特許存続期間 契約締結日契約の名称相手先契約の概要2013年4月3日Amended and Restated Exclusive License AgreementYale UniversityOBP-601の特許の全世界における独占的な実施権の許諾に関する契約1.当社は、OBP-601の特許の全世界における独占的な実施権の許諾を受け、開発段階に応じたマイルストーン、ロイヤリティ及びサブライセンシーから受領した金銭の一定割合を支払う。また、当社株式上場時に一定の金銭を支払う。2.契約期間:国ごとに特許存続期間又は許諾製品の販売開始から10年間のいずれか遅い方まで2018年5月30日License AgreementStabilitech Biopharma Limitedスタビリテック社が保有するウイルス保存安定製剤特許の全世界における実施権の許諾2020年6月19日特許を受ける権利の譲渡契約国立大学法人鹿児島大学1.抗SARS-CoV-2薬の特許譲受に関する契約。(※SARS-CoV-2:新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス)2.契約一時金、開発進展に応じたマイルストーン、第三者からの収入に応じたロイヤリティ等を支払う。
(2) アライアンス契約並びに当社が許諾するライセンス契約 契約締結日契約の名称相手先契約の概要2017年10月20日Amended and Restated Strategic Alliance and License AgreementMedigen Biotechnology Corp.テロメライシン(OBP-301)の特定適応症に関する開発委受託契約1.両社の合意に基づく委受託の対価としてサービスフィーを授受する。2.契約期間:2008年3月6日から特許満了日又は先発権(データ保護期間、再審査期間等)満了日のどちらか遅い方まで2020年6月15日ExclusiveLicense AgreementTransposon Therapeutics, Inc.1.OBP-601の特許の全世界における再許諾権付き独占的ライセンス契約。2.契約一時金及びマイルストーン収入の合計額は、総額3億ドル以上。
研究開発活動 6 【研究開発活動】
当社の当事業年度における研究開発費は、1,351,940千円となりました。なお、当事業年度における研究開発活動の状況は以下のとおりです。 (1) 研究開発体制について 2023年12月31日現在、研究開発部門は19名在籍しており、これは総従業員数の47.5%に当たります。
(2) 研究開発並びにビジネス活動について当社は、以下のプロジェクトを中心に研究開発並びにビジネス活動を進めました。 ① がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301,国際一般名称:suratadenoturev)に関する活動テロメライシンは、日本国内で厚生労働省より再生医療等製品の「先駆け審査指定」を受けて「放射線併用による食道がんPhase2臨床試験」を実施し、2023年10月に専門委員会を経てトップラインデータを開示しました。この結果を基に、2024年の国内でのテロメライシンの新薬承認申請に向けたPMDAとの折衝を行う計画です。テロメライシンの供給面では、商用スケールのウイルス製造開発を進め、2023年11月にプロセスバリデーションの製造を開始し、2024年には商用製造を行う計画です。また、2023年12月には三井倉庫ホールディングス株式会社(以下、「三井倉庫HD」)とテロメライシンの国内製造所に関する契約を締結しました。さらに、テロメライシンの製造販売体制の整備を進め、2024年2月には富士フイルム富山化学とテロメライシンの販売提携契約を締結しました。この結果、ベルギーのヘノジェン社で製造したテロメライシンを日本国内へ輸入し、国内製造所である三井倉庫HDで最終製品化し、富士フイルム富山化学を通じて医療現場へ届けるサプライチェーンが構築できました。一方、海外では、米国における胃がんを対象としてテロメライシンと免疫チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブの共同開発体制を構築するために、コーネル大学と当社、並びにコーネル大学とメルク社の間で、2023年12月に契約が締結されました。本治験はPhase2医師主導治験、当社とメルク社で研究開発費を折半し、2024年から投与が開始される計画です。 現在、テロメライシンは、組入れが終了した臨床試験も含めて、以下の4つの臨床試験が国内外で進められています。 i) 放射線併用食道がんPhase2臨床試験ii) 抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験iii)免疫チェックポイント阻害剤併用セカンドライン胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験iv) 放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験 上記i)の「放射線併用食道がんPhase2臨床試験」は、2019年4月の「先駆け審査制度」の指定に基づき全国17か所の治験実施施設で進められ、2023年10月にトップラインデータを開示しました。なお、同トップラインデータの主な結果は、以下のとおりです。 1)有効性主要評価項目である「局所完全奏効率」(L-CR率)は、内視鏡中央判定委員会の評価により41.7%(小数点以下第2位四捨五入。以下同様。)と示されました。この結果は、事前に試験計画書に示された有効性閾値30.2%を上回る結果であることが確認されました。また、副次的評価項目として規定された「局所著効率」(L-RR率。原発巣は完全に消失しなかったものの、著明に縮小が認められた症例)は16.7%を示し、このL-RRを含めた「局所奏効率」([L-CR+L-RR]率)は58.3%を示しました。さらに、本試験でのデータカットオフ時点での1年生存率は71.4%となり、「食道学会全国登録データ」による放射線単独治療での1年生存率57.4%を上回る成績でした。 2)安全性テロメライシンと関連性のある主な副作用は、発熱が51.4%、リンパ球数減少又はリンパ球減少症が48.6%に認められましたが、軽度ないしは中等度又は一過性の変化でした。 なお、本臨床試験の結果の解釈に関しては、本試験の専門委員会(治験調整委員会、効果安全性評価委員会、内視鏡中央判定委員会、放射線品質管理委員会、医学専門家、生物統計専門家)の同意も得ています。 上記のトップラインデータ結果を受けて、現在当社は2024年に日本国内でテロメライシンの新薬承認申請を行うべく、PMDAと非臨床試験・臨床試験・製造等に関する事前相談を進めています。 テロメライシンのサプライチェーンに関しては、テロメライシンの新薬承認申請に向けて、ベルギーのヘノジェン社で商用製品製造の開発を進めています。2023年11月にプロセスバリデーションを開始し、承認申請を行う2024年には商用製造を開始する計画です。また、2023年12月に、当社はテロメライシンの製剤を最終包装し保管などを担う国内製造所として、再生医療等製品の取扱いなど先端医療に関する物流分野においても豊富な経験があり、再生医療等製品における品質確保のための知見と実績を有する三井倉庫HDと契約を締結しました。2023年6月にはユーロフィン分析科学研究所(京都市)と契約し、当社の神戸リサーチラボとともに、テロメライシンの最終出荷判定に必要とされる品質試験のバリデーションを開始しています。さらに、最終出荷可能と判定されたテロメライシンを国内で効率的に医療現場へ届けるために、富士フイルム富山化学と2024年2月に販売提携契約を締結しました。これらの契約により、テロメライシンの海外から国内医療機関までのサプライチェーン全体に対して、高品質かつ安定的に供給できる流通体制の構築を進めていきます。 また、当社は富士フイルム富山化学との販売提携契約の有無にかかわらず、日本国内へテロメライシンを出荷する製造販売業者に位置付けられます。製造販売には、テロメライシン自体の品質・有効性並びに安全性に関する薬事承認審査以外に、東京都から「GQP(Good Quality Practice:品質管理の基準)」及び「GVP(Good Vigilance Practice: 製造販売後安全管理の基準)」への適合性などの要件に関する審査を受け、再生医療等製品製造販売業の許可を得る必要があります。当社は、2024年1月に総括製造販売責任者・品質保証責任者・安全管理責任者の製販三役の採用を完了し、「信頼性保証本部」を立ち上げました。今後、GQP及びGVPに適合した体制をさらに整備した上で、当社がテロメライシンの市場への出荷に対し品質保証業務及び安全管理業務に関する最終責任を担う能力を持つことをもって東京都に申請し、テロメライシンの承認申請までに再生医療等製品製造販売業の許可を受ける方針です。 上記ii)の「抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験」は、過去に治療歴のある最も重症度が高い患者を対象に、テロメライシンと抗PD-1抗体ペムブロリズマブを併用した場合の有効性及び安全性の評価を行うことを目的として、2019年5月から米国コーネル大学を中心に開始されました。これまでに組入れた16例のうち3例で長期生存が確認され、この結果は本試験の有効性を示す基準を満たす結果と判断されました。本治験の中間解析結果は、米国コーネル大学のマニッシュ・シャー医師により2023年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2023)や2023年11月の米国がん免疫療法学会(SITC2023)で発表されました。 上記iii)の「免疫チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブ併用セカンドライン胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験」は、米国コーネル大学が当社の事前合意を得た上で、メルク社へ新たな治験の実施や治験費用の負担を提案し、2023年12月には、当社とコーネル大学の契約、コーネル大学とメルク社の契約が締結され、共同開発体制が構築されました。今後、当社はテロメライシンを、メルク社は免疫チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブをコーネル大学に提供します。また、治験費用は当社とメルク社で折半します。なお、本治験は2024年から投与が開始される見込みです。 上記iv)の「放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験」は、米国の権威あるがん研究組織NRGオンコロジーグループにより、テロメライシンと放射線化学療法を併用した際の安全性と有効性の検討を目的として2021年12月から開始されました。アメリカ国内6施設で実施されており、第一段階の全6例の組み入れが完了し、第二段階では4例が投与されています。これまでに問題となるような副作用は報告されていません。テロメライシンは米国において食道がんのオーファンドラッグ指定を受けており、同指定の下、本治験は実施されています。そのため、補助金の支給や臨床研究費用の税額控除の優遇を受けることができ、さらに、米国においてテロメライシン承認後の7年間は先発権保護が与えられ、その期間中は市場独占権が得られることになっています。 ②LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)に関する活動2006年にYale大学から導入したOBP-601は、2010年から2014年にかけてBMS社へライセンスし、抗HIV薬としてBMS社によりPhase2b臨床試験が実施され、OBP-601の既存薬との非劣性が示されました。また、BMS社によって、OBP-601の長期毒性試験、がん原性試験や多くの臨床データが得られましたが、BMS社が戦略変更によりHIV領域から撤退したため、ライセンス契約は終了しました。その後、ブラウン大学(米国)の研究成果から、HIVの核酸系逆転写酵素阻害剤(以下「NRTI」)がレトロトランスポゾンの異所性発現を抑制することが示唆されました。その後の研究により、同作用を持つOBP-601が他のNRTIと比べて脳内移行性が高く、またLINE-1という逆転写酵素を強力に阻害してレトロトランスポゾンの産生を強力に抑制するという特長が確認されました。このメカニズムに着目してOBP-601を神経難病治療薬へ応用しようと計画していたTransposon社との間で、当社は2020年6月に全世界を対象とした総額3億ドル超のライセンス契約を締結し、同年11月にTransposon社は第1回マイルストーンを達成しています。現在、Transposon社によって「進行性核上性麻痺(PSP: Progressive Supranuclear Palsy)」とC9 ORFという酵素の異常発現を伴った「筋萎縮性側索硬化症(ALS: Amyotrophic Lateral Sclerosis)及び前頭側頭型認知症(FTD: Frontotemporal Degeneration)」を対象としたプラセボを用いた二重盲検法による2つのPhase2a臨床試験が欧米の多施設で進められています。また、2023年7月にアイカルディ・ゴーティエ症候群(AGS: Aicardi-Goutières Syndrome)を対象にした欧州での単群のPhase2a臨床試験の投与が開始されました。 PSPを対象とした臨床試験は2021年11月に1例目への投与が開始され、2022年8月に目標症例数の組入れが完了しました。当社はTransposon社から中間解析結果の報告を受けましたが、その主な内容は下記のとおりです。① OBP-601がPSP患者の脳脊髄液中のニューロフィラメント軽鎖(以下、「NfL」)の上昇を抑制させることが示唆された。② OBP-601は、脳脊髄液中で神経炎症のバイオマーカーであるIL-6 を低下させることが示唆された。③ 現在までに、本臨床試験で試験を中止するような安全性上の問題は報告されていない。 当社は上記のTransposon社からの上記の報告を受け、以下のような考察を行っています。① OBP-601は、血液中ではなく「脳脊髄液」中のNfL値の上昇を抑制させました。この結果はOBP-601が直接中枢神経系の神経損傷を軽減させたと考えられます。② OBP-601は、脳脊髄液中で神経炎症のバイオマーカーである IL-6 を低下させました。この結果は,OBP-601がLINE-1を阻害することによって神経組織の炎症を抑制していると考えられます。③ 脳脊髄液中のこれらバイオマーカーの変化により、臨床においてもOBP-601が脳内に移行して効果を示すことが示唆されました。なお、これらの結果は2024年3月に開催されるAD/PD 2024(国際アルツハイマー病・パーキンソン病学会)にて発表される予定です。 また、C9 ALS/FTDを対象とした臨床試験も2022年1月に投与が開始されました。2023年3月に目標症例数の組入れが完了し、現在組み入れ患者の長期フォローアップを行っています。現在までに、本臨床試験で試験を中止するような安全性上の問題は報告されていません。 さらに、Transposon社は、AGSという小頭症や高度な精神発達遅滞等を呈する遺伝性疾患を対象に、2023年7月に新たなPhase2a臨床試験の投与を欧州で開始しました。現在までに、本臨床試験で試験を中止するような安全性上の問題は報告されていません。 これらのOBP-601に関する臨床試験は、ライセンス契約に基づき全額Transposon社の費用負担で進められています。なお、Transposon社はOBP-601の開発を目的に設立された企業であり、当社は、Transposon社が戦略変更を理由にOBP-601の開発を中断するリスクは低いと考えています。 ③次世代テロメライシンOBP-702に関する活動OBP-702は、強力な生体内がん抑制遺伝子p53をベクター内に搭載する新規腫瘍溶解ウイルスで、「がん遺伝子治療」と、テロメライシンの持つ「腫瘍溶解作用」を組み合わせた2つの抗腫瘍効果を持つ第二世代のウイルス療法です。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成金事業を活用して、岡山大学消化器腫瘍外科学・藤原俊義教授の研究グループにより非臨床試験が進められました。特に、ゲムシタビン耐性すい臓癌細胞株のマウスモデルを用いた実験においては、PD-L1抗体を併用することでより強い抗腫瘍効果が確認されています。また、がん治療で問題となっているがん組織の間質系細胞(CAF : Cancer Associated Fibroblast)に対しても殺傷効果を示すことが示されており、今後、間質系細胞によって治療が困難と考えられているすい臓がんなどの難治性がんに対する新しい治療法として開発していくことが期待されます。なお、2024年に承認申請を目指すテロメライシンへ経営リソースを集中させるために、OBP-702の開発は助成金の範囲内で継続していく予定です。 ④ウイルス感染症治療薬OBP-2011に関する活動当社は、OBP-2011がヌクレオカプシド形成を阻害する新規メカニズムを有する化合物であることを実験結果から推定していますが、現段階ではその詳細なメカニズムは解明されていません。OBP-2011はすでに承認されているコロナ治療薬の主なメカニズムであるポリメラーゼ阻害やプロテアーゼ阻害とは異なるメカニズムであることが推察されており、コロナウイルスの様々な変異株に対して効果が左右されないというデータが得られています。しかし、新型コロナ治療薬の承認ハードルが上昇していること、並びに新型コロナ治療薬の複数上市による緊急性の低下などの外部環境の変化や、2024年に承認申請を目指すテロメライシンへの経営リソース集中により、開発方針を見直す必要性が生じました。今後は、鹿児島大学と詳細なメカニズム解明を行った上でコロナウイルス以外のRNAウイルスに対する新規適応を検討し、新たなパンデミックに対応できる体制を維持していく考えです。 ⑤がん検査薬テロメスキャン(OBP-401)に関する活動テロメスキャンは、がん患者の血液中を循環している生きたがん細胞(CTC:Circulating Tumor Cells)の検査自動化プラットフォームの確立を目的に、順天堂大学と共同研究講座「低侵襲テロメスキャン次世代がん診断学講座」を2021年6月に開設いたしました。しかし、AIによる画像学習のためには多くの画像取得が必要であり、当初計画と比較して画像取得に時間を要しているため、順天堂大学との開発進捗は遅延しています。なお、2024年に承認申請を目指すテロメライシンへ経営リソースを集中させるため、優先順位は引き下げています。 ⑥HDAC阻害剤OBP-801に関する活動2009年にアステラス製薬株式会社から導入したヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤であるOBP-801は、各種固形がんを対象とした米国でのPhase1臨床試験で用量制限毒性(DLT:Dose Limiting Toxicity)が発生し、推定有効量までの投与量の増量が不可能となったため、がん領域の開発を中断しました。なお、OBP-801は2023年9月に日本国内での分子標的併用腫瘍治療・予防薬としての特許査定を受けています。一方、新規適応領域である眼科領域では、京都府立医科大学眼科学教室の実験において、緑内障手術を行った際に形成される濾過胞の線維化抑制作用が認められ、2023年4月の日本眼科学会や2023年4月に開催されたARVO(視覚と眼科学研究協会学会)で研究結果が発表されました。今後は点眼剤での開発が期待されています。なお、2024年に承認申請を目指すテロメライシンへ経営リソースを集中させるため、優先順位は引き下げています。 主なパイプラインの開発状況は、以下のとおりです。開発品適応疾患併用療法開発地域開発ステージテロメライシン(OBP-301)(suratadenoturev)食道がん放射線療法日本Phase2(申請準備中)放射線化学療法米国Phase1抗PD-1抗体ペムブロリズマブ日本Phase1(論文準備中)胃がん・胃食道接合部がん抗PD-1抗体ペムブロリズマブ米国Phase2(論文準備中)免疫チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブ米国Phase2肝細胞がん単独療法韓国・台湾Phase1(終了)OBP-601(censavudine)進行性核上性麻痺(PSP)単独療法米国Phase2a(予後調査中)筋萎縮性側索硬化症(C9-ALS)/前頭側頭型認知症(FTD)単独療法米国・欧州Phase2a(予後調査中)アイカルディ・ゴーティエ症候群(AGS)単独療法欧州Phase2aOBP-702固形がん抗PD-(L)1抗体を想定日本前臨床OBP-2011ウイルス感染症未定日本前臨床テロメスキャン(OBP-401)固形がん-日本臨床研究OBP-801緑内障手術後の濾過胞線維化抑制-日本前臨床
設備投資等の概要 1 【設備投資等の概要】
当社は、2023年12月期において、分析機器、PC等固定資産の取得により総額24,184千円の設備投資を行いました。また、上記記載の分析機器、PC等固定資産の減損損失21,898千円を計上いたしました。なお、重要な設備の除却又は売却はありません。
主要な設備の状況 2 【主要な設備の状況】
当社における主要な設備は、次のとおりであります。なお、当社は創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別記載を省略しております。2023年12月31日現在事業所名(所在地)設備の内容帳簿価額従業員数(名)建物(千円)機械及び装置(千円)その他(千円)合計(千円)本社(東京都港区)オフィス――――28(5)神戸リサーチラボ(兵庫県神戸市中央区)オフィス検査施設――――6(1)
(注) 1.上記金額には消費税等は含まれておりません。2.帳簿価額のうち「その他」は、工具・器具及び備品とソフトウェアであります。3.従業員数は、就業人員数であり、臨時雇用者数は、年間の平均人員を( )外書で記載しております。4.当社の事業所は全て賃借中のものであります。賃借している主要な設備として以下のものがあります。 2023年12月31日現在事業所名(所在地)設備の内容従業員数(名)土地面積(㎡)年間賃借料又はリース料(千円)本社(東京都港区)オフィス28(5)304.6234,276神戸リサーチラボ(兵庫県神戸市中央区)オフィス検査施設6(1)206.0011,404
設備の新設、除却等の計画 3 【設備の新設、除却等の計画】
当社の設備投資については、景気予測・業界動向・投資効率等を総合的に勘案して策定しております。なお、重要な設備の新設、除却計画はありません。
研究開発費、研究開発活動1,351,940,000
設備投資額、設備投資等の概要24,184,000

Employees

平均年齢(年)、提出会社の状況、従業員の状況48
平均勤続年数(年)、提出会社の状況、従業員の状況5
平均年間給与、提出会社の状況、従業員の状況9,247,071

Investment

株式の保有状況 (5) 【株式の保有状況】
① 投資株式の区分の基準及び考え方当社は、保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の目的である投資株式の区分について、株式を取得し保有する場合にその目的から、もっぱら株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的とする投資株式を「純投資株式」、純投資株式以外で中長期的な企業価値の向上に寄与すると判断したものを「純投資以外の目的である投資株式」としております。 ② 保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式a.保有方針及び保有の合理性を検証する方法並びに個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容当社は純投資目的以外の投資株式について、成長戦略に則った業務提携関係の維持・強化等、当社の中長期的な企業価値の向上に繋がると判断される場合のみに、保有する方針としています。 b.銘柄数及び貸借対照表計上額 銘柄数(銘柄)貸借対照表計上額の合計額(千円)非上場株式--非上場株式以外の株式-- c.特定投資株式及びみなし保有株式の銘柄ごとの株式数、貸借対照表計上額等に関する情報該当事項はありません。 ③ 保有目的が純投資目的である投資株式該当事項はありません。 ④ 当事業年度中に投資株式の保有目的を純投資目的から純投資目的以外の目的に変更したもの該当事項はありません。 ⑤ 当事業年度中に投資株式の保有目的を純投資目的以外の目的から純投資目的に変更したもの該当事項はありません。

Shareholders

大株主の状況 (6) 【大株主の状況】
2023年12月31日現在
氏名又は名称住所所有株式数(株)発行済株式(自己株式を除く。)の総数に対する所有株式数の割合(%)
楽天証券株式会社東京都港区南青山2丁目6番21号890,6004.53
アステラス製薬株式会社東京都中央区日本橋本町2丁目5-1号727,2003.70
株式会社SBI証券東京都港区六本木1丁目6番1号551,1142.80
浦田 泰生東京都港区498,9002.54
野村信託銀行株式会社(信託口2052261)東京都千代田区大手町2丁目2-2378,3001.92
中西 均北海道札幌市北区219,0001.11
日本証券金融株式会社東京都中央区日本橋茅場町1丁目2-10号205,4001.04
SMBC日興証券株式会社東京都千代田区丸の内3丁目3番1号182,5000.92
野村證券株式会社東京都中央区日本橋1丁目13番1号144,5850.73
川端 大造兵庫県明石市128,7000.65計-3,926,29920.00
株主数-金融機関3
株主数-金融商品取引業者28
株主数-外国法人等-個人69
株主数-外国法人等-個人以外27
株主数-個人その他13,828
株主数-その他の法人103
株主数-計14,058
氏名又は名称、大株主の状況川端 大造
株主総利回り1
株主総会決議による取得の状況 (1) 【株主総会決議による取得の状況】
   該当事項はありません。
株主総会決議又は取締役会決議に基づかないものの内容 (3) 【株主総会決議又は取締役会決議に基づかないものの内容】
区分株式数(株)価額の総額(千円)当事業年度における取得自己株式6,500―当期間における取得自己株式――
(注)1.当事業年度における取得自己株式6,500株は、譲渡制限付株式の無償取得によるものです。2.当期間における取得自己株式には、2024年3月1日から本有価証券報告書提出日までの無償取得及び単元未満株式の買取による株式数は含めておりません。

Shareholders2

発行済株式及び自己株式に関する注記 1.発行済株式の種類及び総数並びに自己株式の種類及び株式数に関する事項 当事業年度期首株式数(株)当事業年度増加株式数(株)当事業年度減少株式数(株)当事業年度末株式数(株) 発行済株式 普通株式
(注)117,405,2002,311,900―19,717,100合計17,405,2002,311,900―19,717,100自己株式 普通株式
(注)282,2386,500―88,738合計82,2386,500―88,738
(注) 1.普通株式の発行済株式総数の増加は、新株予約権の権利行使による増加2,311,900株であります。 2.普通株式の自己株式の増加は、譲渡制限付株式の無償取得による増加6,500株であります。

Audit1

監査法人1、個別EY新日本有限責任監査法人
独立監査人の報告書、個別 独立監査人の監査報告書及び内部統制監査報告書 2024年3月28日オンコリスバイオファーマ株式会社取締役会 御中 EY新日本有限責任監査法人東京事務所  指定有限責任社員業務執行社員 公認会計士冨  田  哲  也  指定有限責任社員業務執行社員 公認会計士牧  野  幸  享 <財務諸表監査>監査意見当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられているオンコリスバイオファーマ株式会社の2023年1月1日から2023年12月31日までの第20期事業年度の財務諸表、すなわち、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書、重要な会計方針、その他の注記及び附属明細表について監査を行った。当監査法人は、上記の財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、オンコリスバイオファーマ株式会社の2023年12月31日現在の財政状態並びに同日をもって終了する事業年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。 監査意見の根拠当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。 監査上の主要な検討事項監査上の主要な検討事項とは、当事業年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。委託研究開発費の期間帰属監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由監査上の対応会社はウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬及び検査薬の販売を目指す研究開発先行型の創薬バイオベンチャーである。会社は現在保有する複数のパイプラインについて、市場販売の前提となる当局の新薬承認取得に向けて研究開発活動を継続的に行っている状況であり、その結果として1,351百万円の研究開発費が計上されているが、その金額は前期より増加している(損益計算書関係注記 販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費の総額)。会社が計上する研究開発費は金額的な重要性があるだけでなく、研究開発が将来の収益獲得の源泉となる重要な活動であることから、質的な重要性も高い。さらに、会社は複数のテーマに関する研究開発活動を外部の受託企業に委託している。委託研究開発はその成果の受領が確認できたタイミングで費用計上されるが、委託する開発業務の種類や内容及び支払条件が多岐にわたり、いつの時点で開発の成果を受領したかについての判断が適切に行われないことにより、誤った期間に研究開発費が計上されるリスクが存在する。 上記の理由により、当監査法人は、委託研究開発費の期間帰属の適切性の検討が、監査上の主要な検討事項であると判断した。当監査法人は、委託研究開発費の期間帰属の適切性を検討するため、主として以下の監査手続を実施した。 ・委託研究開発費の期間帰属の適切性に関連する内部統制が適切に整備及び運用されていることを、経理マネジメント及び統制実施担当者への質問、関連文書の閲覧、実施証跡の確認により確かめた。・金額的に重要な委託研究開発については、経営者への質問、重要会議の議事録及び契約書等の関連証憑の閲覧により、その目的や進捗状況について理解を得た。・当期に計上されている金額的に重要な委託研究開発費について、テストサンプルを抽出し、請求書並びに委託先からの成果報告書等の外部証憑との突合を実施した。・前払金残高のうち金額的に重要な案件については、関連書類の閲覧により、当期中に研究開発費の計上が必要なものが含まれていないことを検証した。 その他の記載内容その他の記載内容は、有価証券報告書に含まれる情報のうち、財務諸表及びその監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査役及び監査役会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。当監査法人の財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。 財務諸表に対する経営者並びに監査役及び監査役会の責任経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。監査役及び監査役会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。 財務諸表監査における監査人の責任監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。・ 不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。・ 財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。・ 経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。・ 経営者が継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する財務諸表の注記事項が適切でない場合は、財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。・ 財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた財務諸表の表示、構成及び内容、並びに財務諸表が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。監査人は、監査役及び監査役会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。監査人は、監査役及び監査役会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去するための対応策を講じている場合又は阻害要因を許容可能な水準にまで軽減するためのセーフガードを適用している場合はその内容について報告を行う。監査人は、監査役及び監査役会と協議した事項のうち、当事業年度の財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。 <内部統制監査>監査意見当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第2項の規定に基づく監査証明を行うため、オンコリスバイオファーマ株式会社の2023年12月31日現在の内部統制報告書について監査を行った。当監査法人は、オンコリスバイオファーマ株式会社が2023年12月31日現在の財務報告に係る内部統制は有効であると表示した上記の内部統制報告書が、我が国において一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠して、財務報告に係る内部統制の評価結果について、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。 監査意見の根拠当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の監査の基準に準拠して内部統制監査を行った。財務報告に係る内部統制の監査の基準における当監査法人の責任は、「内部統制監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。 内部統制報告書に対する経営者並びに監査役及び監査役会の責任経営者の責任は、財務報告に係る内部統制を整備及び運用し、我が国において一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠して内部統制報告書を作成し適正に表示することにある。監査役及び監査役会の責任は、財務報告に係る内部統制の整備及び運用状況を監視、検証することにある。なお、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性がある。 内部統制監査における監査人の責任監査人の責任は、監査人が実施した内部統制監査に基づいて、内部統制報告書に重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、内部統制監査報告書において独立の立場から内部統制報告書に対する意見を表明することにある。監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。・ 内部統制報告書における財務報告に係る内部統制の評価結果について監査証拠を入手するための監査手続を実施する。内部統制監査の監査手続は、監査人の判断により、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性に基づいて選択及び適用される。・ 財務報告に係る内部統制の評価範囲、評価手続及び評価結果について経営者が行った記載を含め、全体としての内部統制報告書の表示を検討する。・ 内部統制報告書における財務報告に係る内部統制の評価結果に関する十分かつ適切な監査証拠を入手する。監査人は、内部統制報告書の監査に関する指示、監督及び実施に関して責任がある。監査人は、監査役及び監査役会に対して、計画した内部統制監査の範囲とその実施時期、内部統制監査の実施結果、識別した内部統制の開示すべき重要な不備、その是正結果、及び内部統制の監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。監査人は、監査役及び監査役会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去するための対応策を講じている場合又は阻害要因を許容可能な水準にまで軽減するためのセーフガードを適用している場合はその内容について報告を行う。 <報酬関連情報>当監査法人及び当監査法人と同一のネットワークに属する者に対する、会社の監査証明業務に基づく報酬及び非監査業務に基づく報酬の額は、「提出会社の状況」に含まれるコーポレート・ガバナンスの状況等(3)【監査の状況】
に記載されている。 利害関係会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。以 上
(注) 1.上記の監査報告書の原本は当社(有価証券報告書提出会社)が別途保管しております。2.XBRLデータは監査の対象には含まれておりません。
監査上の主要な検討事項、個別 監査上の主要な検討事項監査上の主要な検討事項とは、当事業年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。委託研究開発費の期間帰属監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由監査上の対応会社はウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬及び検査薬の販売を目指す研究開発先行型の創薬バイオベンチャーである。会社は現在保有する複数のパイプラインについて、市場販売の前提となる当局の新薬承認取得に向けて研究開発活動を継続的に行っている状況であり、その結果として1,351百万円の研究開発費が計上されているが、その金額は前期より増加している(損益計算書関係注記 販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費の総額)。会社が計上する研究開発費は金額的な重要性があるだけでなく、研究開発が将来の収益獲得の源泉となる重要な活動であることから、質的な重要性も高い。さらに、会社は複数のテーマに関する研究開発活動を外部の受託企業に委託している。委託研究開発はその成果の受領が確認できたタイミングで費用計上されるが、委託する開発業務の種類や内容及び支払条件が多岐にわたり、いつの時点で開発の成果を受領したかについての判断が適切に行われないことにより、誤った期間に研究開発費が計上されるリスクが存在する。 上記の理由により、当監査法人は、委託研究開発費の期間帰属の適切性の検討が、監査上の主要な検討事項であると判断した。当監査法人は、委託研究開発費の期間帰属の適切性を検討するため、主として以下の監査手続を実施した。 ・委託研究開発費の期間帰属の適切性に関連する内部統制が適切に整備及び運用されていることを、経理マネジメント及び統制実施担当者への質問、関連文書の閲覧、実施証跡の確認により確かめた。・金額的に重要な委託研究開発については、経営者への質問、重要会議の議事録及び契約書等の関連証憑の閲覧により、その目的や進捗状況について理解を得た。・当期に計上されている金額的に重要な委託研究開発費について、テストサンプルを抽出し、請求書並びに委託先からの成果報告書等の外部証憑との突合を実施した。・前払金残高のうち金額的に重要な案件については、関連書類の閲覧により、当期中に研究開発費の計上が必要なものが含まれていないことを検証した。
全体概要、監査上の主要な検討事項、個別 監査上の主要な検討事項とは、当事業年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。
見出し、監査上の主要な検討事項、個別委託研究開発費の期間帰属
その他の記載内容、個別 その他の記載内容その他の記載内容は、有価証券報告書に含まれる情報のうち、財務諸表及びその監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査役及び監査役会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。当監査法人の財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。

BS資産

未収入金51,781,000
長期前払費用135,000
投資その他の資産84,714,000

BS負債、資本

短期借入金127,776,000
未払金193,354,000
未払法人税等18,844,000
未払費用19,119,000
リース債務、流動負債7,565,000
資本剰余金1,209,590,000
利益剰余金-3,373,199,000
負債純資産2,040,598,000

PL

販売費及び一般管理費1,960,591,000
受取利息、営業外収益1,475,000
受取配当金、営業外収益3,000
為替差益、営業外収益27,598,000
営業外収益32,208,000
支払利息、営業外費用3,602,000
その他、流動資産9,000
営業外費用16,038,000
固定資産売却益、特別利益136,000
特別利益136,000
特別損失21,898,000
法人税、住民税及び事業税2,926,000
法人税等2,926,000

PL2

当期変動額合計-685,172,000

営業活動によるキャッシュ・フロー

減価償却費、営業活動によるキャッシュ・フロー2,286,000
受取利息及び受取配当金、営業活動によるキャッシュ・フロー-1,478,000
支払利息、営業活動によるキャッシュ・フロー3,602,000
為替差損益(△は益)、営業活動によるキャッシュ・フロー-24,090,000
棚卸資産の増減額(△は増加)、営業活動によるキャッシュ・フロー18,907,000
その他、営業活動によるキャッシュ・フロー20,812,000
小計、営業活動によるキャッシュ・フロー-1,359,074,000
利息及び配当金の受取額、営業活動によるキャッシュ・フロー又は投資活動によるキャッシュ・フロー616,000
利息の支払額、営業活動によるキャッシュ・フロー又は財務活動によるキャッシュ・フロー-3,836,000

財務活動によるキャッシュ・フロー

長期借入金の返済による支出、財務活動によるキャッシュ・フロー-194,444,000
リース債務の返済による支出、財務活動によるキャッシュ・フロー-4,540,000

投資活動によるキャッシュ・フロー

有形固定資産の取得による支出、投資活動によるキャッシュ・フロー-5,686,000
有形固定資産の売却による収入、投資活動によるキャッシュ・フロー136,000