財務諸表

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提出書類、表紙有価証券報告書
提出日、表紙2024-03-15
英訳名、表紙Veritas In Silico Inc.
代表者の役職氏名、表紙代表取締役社長 中村 慎吾
本店の所在の場所、表紙東京都品川区西五反田一丁目11番1号
電話番号、本店の所在の場所、表紙03-6421-7537(代表)
様式、DEI第三号様式
会計基準、DEIJapan GAAP
当会計期間の種類、DEIFY

corp

沿革 2 【沿革】
 当社の創業者である中村慎吾は、2000年代初頭に米国エール大学で行った最新のRNA※1生物学研究に発想を得て、武田薬品工業株式会社(以下「武田薬品」という)在職中の2004年、「メッセンジャーRNA(mRNA)※2を標的とする低分子創薬」の実現を目指すプロジェクトを立ち上げました。会社の方針転換によるプロジェクトの中断を受けて2011年に武田薬品を退職するにあたり、在職中の研究成果を武田薬品より譲り受けた後、改めて最新の科学に基づきRNA構造を研究する統計力学※3理論及び熱力学※4理論並びにその理論を解析に応用する計算ソフトウェアなど、当該創薬を実現するための基礎技術を構築しました。中村はこれと並行して、医薬品ビジネス及び医薬品製造、さらにはベンチャービジネスへの投資や経営の実務経験を積む中、「mRNAを標的とする低分子創薬」を広く製薬会社へ提供することが製薬業界に共通する課題への解決策になると確信し、2016年11月に株式会社Veritas In Silicoを設立しました。 当社設立以降の変遷は、以下のとおりであります。年月概要2016年11月東京都渋谷区に株式会社Veritas In Silicoを設立(資本金110万円)2017年5月三菱瓦斯化学株式会社及びベンチャーキャピタルの出資のもと(シリーズA資金調達)、当社のRNA構造解析技術を活かし、小規模なバイオテク企業でも取り組み可能なmRNAを標的とする核酸医薬品※5の創薬研究を主事業として開始2017年7月共同研究先である新潟薬科大学内(新潟県新潟市秋葉区)に研究拠点を開設2017年10月本店所在地を東京都品川区に移転2018年4月主事業を核酸医薬品からmRNAを標的とする低分子医薬品※6の創薬プラットフォーム事業に転換2018年4月mRNA標的低分子創薬研究のための研究拠点をかわさき新産業創造センター内(神奈川県川崎市幸区)に開設2019年3月mRNAを標的とする低分子医薬品の創薬プラットフォーム事業に注力する方針を決定(シリーズB資金調達)2020年10月RNAを標的とした低分子創薬のビジネスモデルに関する特許取得(日本)2021年7月東レ株式会社とmRNAを創薬標的とする低分子医薬品の創出を目的とした共同創薬研究契約を締結2021年11月塩野義製薬株式会社とmRNAを創薬標的とする低分子医薬品の創出を目的とした共同創薬研究契約を締結2021年12月新規技術の開発・導入等によるmRNAを標的とする低分子医薬品の創薬プラットフォーム事業の拡大方針を決定(シリーズC資金調達)2022年12月ラクオリア創薬株式会社とmRNAを創薬標的とする低分子医薬品の創出を目的とした共同創薬研究契約を締結2023年5月Oncodesign ServicesとmRNAを創薬標的とした低分子医薬品開発を目指す製薬会社のニーズに応えるため、事業協力に関する基本合意書(MOU)を締結2023年6月武田薬品工業株式会社とmRNAを創薬標的とする低分子医薬品の創出を目的とした共同創薬研究契約を締結2024年2月東京証券取引所グロース市場に株式を上場
事業の内容 3 【事業の内容】
当社は、どんな疾患の患者様も治療法がないと諦めたり、最適な治療が受けられないと嘆いたりすることのない、そんな希望に満ちたあたたかい社会の実現に貢献するため、メッセンジャーRNA(mRNA)を標的とする低分子医薬品(以下「mRNA標的低分子医薬品」という)の創出に取り組んでいます。mRNAを標的とする低分子創薬(以下「mRNA標的低分子創薬」という)は、従来のタンパク質を標的とする創薬技術では狙えなかった様々な疾患にも対応可能な新しい創薬アプローチであり、アンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療薬や治療法がなく未だ満たされない医療ニーズ)の充足につながることが期待されます。当社は、mRNA標的低分子創薬でより多くの医薬品を患者様にお届けするため、自社で少数のパイプライン※7を保有する「パイプライン型」のビジネスではなく、当社独自の創薬プラットフォーム「ibVISⓇ」(以下「ibVISⓇプラットフォーム」という)を活用し、複数の製薬会社と共同で創薬研究を実施する「プラットフォーム型」のビジネスを展開しています。なお、当社のセグメントは創薬プラットフォーム事業のみの単一セグメントであります。 (1) 事業の背景疾患の発症のメカニズムは多種多様ですが、主に疾患の原因となるタンパク質(以下「疾患関連タンパク質」という)の異常な働きによって引き起こされ、現在の医薬品市場は、直接疾患関連タンパク質に結合し、その機能を制御することで異常な働きを止める医薬品(低分子医薬品、抗体医薬品※8など)が主流です(図1)。しかし、これらの医薬品が創薬標的として狙うことのできる疾患関連タンパク質の数はもともと限られているため、長年にわたる医薬品の研究開発※9の結果、新薬開発が求められている医療ニーズの高い疾患に対して新たに医薬品を創出することが難しくなっています。このように、創薬標的となる疾患関連タンパク質が限られてきている現状、すなわち「創薬標的の枯渇」が、製薬業界共通の課題となっています。mRNAは、DNA※10から特定のタンパク質に関する遺伝情報を書き写した設計図です。疾患関連タンパク質の設計図であるmRNAの機能を制御することができれば、疾患関連タンパク質の機能を直接医薬品で制御する場合と同様に、その疾患関連タンパク質が原因となる疾患を治療することが可能になり、「創薬標的の枯渇」の解決策につながることが期待されます(図1)。mRNAを標的とする医薬品は、核酸医薬品(DNAやRNAといった遺伝情報を司る物質「核酸」そのものを利用した医薬品のこと)によって実現されています。しかし、核酸医薬品は経口投与が困難であるだけでなく製造コストが高く、市場の拡大には限界があると考えられます。当社は、低分子医薬品のように経口投与が可能で患者様の負担が少なく、開発・製造技術が確立している安価な医薬品でmRNA標的創薬を実現することが、製薬業界の真のニーズであり、mRNA標的低分子医薬品は今後の成長市場になる可能性があると考えております。それにもかかわらず、mRNA標的低分子医薬品はこれまでほとんど創出されておりませんでした。低分子創薬では、創薬標的全体の構造を精密に解析し、創薬標的上に低分子医薬品が結合して薬効を示すことが期待できる構造を最初に特定すること(このプロセスを、以下「ターゲット探索」という)が重要です。しかしながら、mRNAは1つの決まった構造をとらず、創薬研究を始める際に精密な構造の解析を行うことが困難であるため、mRNAを創薬標的にして低分子創薬を実施することは難しいという業界の常識がありました。このような状況において、当社の創業者である中村が2000年代前半より技術開発してきたインシリコ※11RNA構造解析技術により、mRNAを創薬標的としたターゲット探索が可能になり(詳細は「
(2) 当社の事業領域 ② ibVISⓇプラットフォーム c mRNA標的低分子創薬を可能にするインシリコRNA構造解析技術」を参照)、ターゲット探索の結果を活用した実用的な低分子化合物のスクリーニング※12法(様々な化合物の中からある一定の基準を満たす化合物を選択するためのプロセス)と合わせて、当社の創薬プラットフォームの基礎となっています。 図1. 現在の主な医薬品市場(タンパク質標的医薬品)と当社が取り組む今後の成長市場(mRNA標的低分子医薬品)
(注) mRNA標的低分子医薬品の研究開発は世界的に見てもほとんどが研究段階であり、 本創薬で上市された低分子医薬品はありません(2023年12月末現在)。 現在の医薬品市場の中心の一つであるタンパク質標的低分子医薬品とその創薬標的であるタンパク質の関係は、ちょうど「鍵」と「鍵穴」の関係に例えられ、低分子創薬とは、創薬標的上に「鍵穴」を探索し、様々な工程(「鍵候補」を見つけるスクリーニングなど)を経て「鍵穴」にピタリとはまる「鍵」を創出する一連のプロセスであると言えます(図2)。当社は、独自のインシリコRNA構造解析により、多くのmRNA上には局所的に低分子医薬品(「鍵」)が結合できる構造(「鍵穴」)があること(当社では、mRNA上に局所的に存在する構造を「部分構造」、そのうち標的として定める構造を「ターゲット構造」と呼んでおり、「鍵穴」は「ターゲット構造」に該当します)、しかも多くの場合、複数の「鍵穴」が存在することを見いだしました。また、これらの「鍵穴」に対して「鍵候補」を見つけるための独自改良したスクリーニング法の確立等により、タンパク質標的低分子創薬と同様に、新しい創薬アプローチであるmRNA標的低分子創薬の実施が可能になっています(図2)。 図2. 低分子創薬のターゲット探索(鍵穴の探索)とスクリーニング(鍵候補を見つけるプロセス) (注1) 様々な化合物の中から一定の基準を満たす化合物を選択するためのプロセス(鍵穴に対して鍵候補を見つけるプロセス)(注2) スクリーニングで一定の基準を満たした化合物(鍵候補) mRNA標的低分子創薬は、当社のインシリコRNA構造解析の技術を用いることにより、新薬開発のニーズが高いにもかかわらず、タンパク質を標的とした従来創薬ではこれまで医薬品の研究開発が不可能もしくは困難であった様々な疾患に適用できる潜在性を秘めており、疾患関連タンパク質において大きな割合を占めるブルーオーシャン(競争相手のいない又は競争相手の少ない未開拓な市場)を開拓できる創薬アプローチであると考えております(図3)。患者様、製薬業界、そして経済的観点から社会に望まれている低分子医薬品の創出に取り組むことができることから、mRNA標的低分子創薬は次世代創薬の本命の一つとして期待されています(詳細は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 経営環境」を参照)。 図3. mRNA標的低分子創薬によりブルーオーシャンの開拓を目指す 出典:The Human Protein Atlas, DrugBank, KS analysis, 2018 をもとに当社にて作成
(2) 当社の事業領域当社は、インシリコRNA構造解析技術をはじめとしたデジタル技術(informatics)と創薬技術(biology)を統合したibVISⓇプラットフォームを活用したmRNA標的低分子創薬を主事業としており、製薬会社との共同創薬研究を通じて、mRNA標的低分子医薬品の創出に取り組んでいます(図4)。また、将来の事業の多角化のため、インシリコRNA構造解析技術を応用した各種RNA関連創薬の取り組みも開始しています(図4)。 図4. Veritas In Silicoの事業領域 ① mRNA標的低分子創薬a mRNA標的低分子医薬品の作用メカニズム私たちの体は、各部位の機能に応じて、その機能を発揮するために必要なタンパク質で構成されています。各部位の細胞内では、細胞の核の中にあるDNAがもつ全ての遺伝情報から、各部位に必要なタンパク質の遺伝情報のみがmRNAに書き写されます(転写)。mRNAは核内から外に運び出された後、書き写されたタンパク質の遺伝情報を設計図として、リボソーム※13というタンパク質合成機構に遭遇することでタンパク質の合成が開始されます(翻訳)。タンパク質の翻訳の際、まずリボソームがmRNAの一方の端(5'末端)に取り付き、このリボソームがもう一方の端(3'末端)に向かって進行しながらmRNAの遺伝情報を読み取り、20種類のアミノ酸(タンパク質の構成要素)の中から遺伝情報に対応するアミノ酸をつなげていくことでタンパク質が生成されます(図5)。この時、mRNA上にある程度安定な構造があっても、通常ならリボソームが構造をほどいて翻訳していきますが(図5左)、より強固でほどけにくい構造がmRNA上にある場合には、リボソームによる翻訳反応の進行が妨げられます(図5右)。当社のmRNA標的低分子創薬は、mRNA上にある程度安定で低分子医薬品が結合できそうな部分構造を見いだしてターゲットとし、そのターゲット構造に結合し安定化する低分子医薬品によって、mRNA上により強固でほどけにくい構造体を意図的に構築させることで、リボソームによるタンパク質の翻訳を阻害もしくは制御することを狙っています。これにより、疾患の原因となる疾患関連タンパク質の生成を抑えられれば、従来の低分子医薬品や抗体医薬品等で直接疾患原因タンパク質の機能を阻害もしくは制御する場合と同等の効果が得られると考えられます。 図5. mRNA標的低分子医薬品の作用メカニズム
(注) 通常、ある程度安定なmRNA構造があっても、リボソームは構造をほどいてタンパク質を合成する。ある程度安定なmRNA構造が低分子医薬品によってより安定で強固になると、リボソームは構造をほどけずタンパク質の合成がストップする。 b mRNA標的低分子創薬の特徴 ― 研究開発 ―一般的に医薬品の研究開発は、創薬標的を決定した後、医薬品候補化合物※14を創出するまでの創薬研究(研究段階)後、非臨床試験、臨床試験、承認取得(開発段階)完了までに長い年月を要します(表1)。当社が製薬会社と実施しているmRNA標的低分子創薬では、タンパク質を標的とした従来の低分子創薬と創薬標的は異なりますが、最終目的物は同じ化学的特性をもつ低分子化合物であることから、表1に示す創薬研究以外の非臨床試験、臨床試験、承認審査、さらには承認後の製造・販売で必要となる技術及びインフラは従来の低分子創薬と共通しています。mRNA標的低分子創薬で臨床試験以降の開発に進んでいる例は世界的にみてもまだありませんが、化学的特性がタンパク質標的低分子創薬の医薬品候補化合物と同等であることに鑑みると、開発以降のリスクや成功確率は概ねタンパク質標的低分子創薬の医薬品候補化合物と同程度であると考えられます。また、低分子医薬品の場合には開発ガイドラインも確立されているため、開発段階以降の障壁は他の新規創薬技術と比較して小さいと考えられます。以上のことから、mRNA標的低分子創薬で重要なのは、医薬品として十分な効果・安全性等を示す医薬品候補化合物を創出するまでの創薬研究であると言えます。 表1. 一般的な医薬品の研究開発プロセス プロセス期間主な内容研究(注1)創薬研究2~4年創薬標的を決定した後、医薬品候補化合物創出までの創薬研究開発(注2)非臨床試験3~5年ヒトに用いる臨床試験を前提に、実験動物等を用いて有効性及び安全性等を国際的な基準のもとで最終確認する試験臨床試験3~7年第I相少数の健康な方を対象に安全性等を確認する試験第II相少数の患者様を対象に有効性及び安全性を探索的に確認する試験第III相多数の患者様を対象に有効性と安全性を検証的に確認する試験承認審査1~2年各国の規制当局による審査 (注1) 研究は、医薬品として十分な効果・安全性等を示す医薬品候補化合物を創出するまでの段階(注2) 開発は、創薬研究で取得した医薬品候補化合物の効果・安全性等を規制当局に証明していく段階 c mRNA標的低分子創薬の特徴 ― 薬物動態・安全性 ―医薬品の創薬研究では、タンパク質標的低分子医薬品の場合には疾患関連タンパク質の機能を抑制する効果など、医薬品の主作用(薬効)だけではなく、医薬品が投与されてから血中へ吸収されるか、血中から目的とする組織・細胞へ移行するかといった点や、医薬品が体内で代謝や排泄される過程、さらには安全性を確保するための毒性の低減、といった様々な課題について検討し、最適化する必要があります(医薬品を投与してから「吸収」「分布」「代謝」「排泄」される過程を「薬物動態」という)。mRNA標的低分子創薬の創薬研究においても同様に薬物動態や安全性等の検討・最適化が必要ですが、タンパク質標的低分子医薬品と比べてmRNA標的低分子創薬の研究過程に特有の検討課題は、細胞内で標的とするmRNAに作用して疾患関連タンパク質を減少させられるかという「細胞内での効果」の工程のみであり、それ以外はタンパク質標的低分子創薬と共通しています(図6)。つまり、創薬研究段階におけるmRNA標的低分子創薬の新規創薬技術として特有のリスクは、概ね「細胞内での効果」が得られるか、という点になります。もちろん他の工程にもリスクはありますが、そのリスクはタンパク質標的低分子創薬と同様であると考えられ、この点については、長年の創薬研究を通じて各製薬会社には技術やノウハウが豊富に蓄積されています。逆に言うと、「細胞内での効果」は十分にあっても、mRNA標的低分子創薬特有ではない薬物動態や安全性により、創薬研究が中断するリスクがあるため、かかるリスクに対応した上でmRNA標的低分子創薬により患者様に医薬品を届ける観点からは、長年の創薬研究を通じて蓄積された各製薬会社の技術やノウハウが重要であると考えられます。当社ではこのリスクを鑑み、mRNA標的低分子創薬により患者様に医薬品を届けるためには、より多くの製薬会社と共同創薬研究を実施することが重要であると考え、「プラットフォーム型」のビジネスに注力しています(詳細は「(3) ビジネスモデルの特徴」を参照)。 当社と製薬会社とのibVISⓇプラットフォームを活用した共同創薬研究において、当社が担当するのは表1の創薬研究の中でも標的とする「細胞内での効果」に関するもの(「ターゲットの探索」「スクリーニング」「ヒット化合物検証」「リード化合物最適化」で構成されます。詳細は「② ibVISⓇプラットフォーム b ワンストップで医薬品候補化合物まで取得」を参照)であり、それ以外の薬物動態や安全性研究、動物を用いた化合物の効果を検証するための実験、非臨床試験以降の開発段階については、タンパク質標的低分子創薬での経験や知見が豊富な提携先の製薬会社にて実施されます(製薬会社との役割分担の詳細は、「② ibVISⓇプラットフォーム b ワンストップで医薬品候補化合物まで取得」を参照)。 図6.低分子医薬品の創薬研究で検討が必要な課題 ② ibVISⓇプラットフォームa 多種多様な疾患に適応可能当社は、これまで国内外の多くの製薬会社に、当社のibVISⓇプラットフォームの創薬技術及びデジタル技術を紹介してきました。これらの製薬会社より、ibVISⓇプラットフォームでmRNA標的低分子創薬を実施したいと開示をうけた創薬対象遺伝子(Gene of Interest;GOI)の数は既に100を超え、そこから推定される疾患領域は、がん領域、中枢神経、各種希少疾患の順に多く、その他は循環器疾患、免疫疾患、感染症など多種多様です(図7)。これは、製薬会社という創薬の専門家から見て、ibVISⓇプラットフォームが様々な疾患に適応可能であると考えられていることを示唆していると当社では考えております。中でも市場の大きいがん領域の割合が突出しており、医薬品が血液脳関門(神経細胞に影響のある物質をブロックする保護システム。Blood Brain Barrier;BBB)を通過する必要のある中枢神経疾患の割合ががん領域に続いております。これらは、製造コストが低く巨大な市場にも供給可能であり、BBBを通過できる低分子医薬品の強みを活かせる疾患領域であると考えられます。 図7. 創薬対象遺伝子(GOI)からわかるmRNA標的低分子創薬の適用疾患領域
(注) 2023年12月末現在において製薬会社から開示されたGOIに基づき当社にて作成 b ワンストップで医薬品候補化合物まで取得当社のibVISⓇプラットフォームは、mRNA上に存在する低分子医薬品の「鍵穴」の候補となる部分構造を網羅的に解析し、その中から標的に適した「鍵穴」すなわちターゲット構造を定める「ターゲット探索」から、数万から数十万の低分子化合物の中からターゲット構造に対して結合が認められる化合物を実験的に選択する「スクリーニング」、スクリーニングで取得したヒット化合物※15とターゲット構造の結合の強度や結合の特徴を詳細に検証する「ヒット化合物検証」、ヒット化合物検証により取得したリード化合物※16を医薬品レベルにまで効果を高める「リード化合物最適化」により、最終的に非臨床試験以降に進める医薬品候補化合物を取得するまで、mRNA標的低分子創薬に必要な全ての創薬技術とデジタル技術を備えていると当社は考えております(図8、表2)。さらに、それらの創薬技術とデジタル技術が単に個々の技術としてではなく、一つの創薬システムとして統合されており、各製薬会社はibVISⓇプラットフォームを活用することで、mRNA標的低分子創薬で直面する多くの課題をワンストップで解決することが可能になると当社は考えております。特に当社の「ターゲット探索」は、独自のデジタル技術を活用したインシリコRNA構造解析により、製薬会社が任意に選択したmRNAから高速かつ正確に複数のターゲット構造を探索することが可能であり、当社の競争優位性の一つとなっています。 図8. 創薬技術とデジタル技術を備えたワンストップ創薬プラットフォーム (注)製薬会社は、当社が技術供与したスクリーニング法を使ったスクリーニングの実施及び細胞実験を主に担当します。 加えて製薬会社側では、化合物の合成展開※17、薬物動態及び安全性研究、化合物の効果を検証する動物実験などが実施されます。 表2. ibVISⓇプラットフォームの創薬技術とデジタル技術 創薬研究プロセス内容ターゲット探索・NCBIデータベースよりmRNA配列データ取得創薬対象とするmRNAを定め、NCBI※18(National Center for Biotechnology Information;国立バイオテクノロジー情報センター)の遺伝子データベースよりmRNA配列データを取得します。・コンピュータによるmRNA構造解析独自のRNA構造解析ソフトウェア「MobyDickⓇ」により、創薬対象に定めたmRNA上の部分構造を網羅的に解析します。・コンピュータによるターゲット構造の評価「MobyDickⓇ」に含まれる熱力学のエネルギー計算により、存在確率及び安定性の高い部分構造の中からターゲット構造候補を探索します。・NMRによるターゲット構造の確認ターゲット構造候補の妥当性を主としてNMR※19 (Nuclear Magnetic Resonance;核磁気共鳴)により実験的に確認し、ターゲット構造と定めます。・実験的スクリーニング系の確立次のプロセスのスクリーニングで、各種低分子化合物とターゲット構造の結合を検出するため、蛍光性のある物質を目印として付けたターゲット構造を合成し、そのターゲット構造がmRNA構造解析どおりの構造を実際に取っているか、スクリーニングで正常に動作するか等を実験的に確認します。 [製薬会社との役割分担]当社協力のもと製薬会社が創薬対象とするmRNAを定めた後の工程は、全て当社で担当します。スクリーニング・化合物ライブラリーの設計・準備製薬会社が保有する莫大な数の化合物を収める化合物ライブラリーからスクリーニングにかける化合物を選定します(フォーカストライブラリー)。・スクリーニングFRET※20(Fluorescence Energy Transfer;蛍光共鳴エネルギー移動法)による一般的なスクリーニング法を定量的解析ができるように改良した、当社独自のqFRET※21(Quantitative Fluorescence Energy Transfer;定量的蛍光共鳴エネル 創薬研究プロセス内容 ギー移動法)により、数万から数十万の低分子化合物の中から、陽性を示す(ターゲット構造への結合が検出された)化合物(ヒット化合物)を取得します。・統計解析高精度かつ定量的なスクリーニング及びスクリーニングの結果得られるデータの統計解析を可能とするために、複数の自社製作ソフトウェアを利用します。 [製薬会社との役割分担]当社協力のもと製薬会社が化合物ライブラリーの設計と準備をします。スクリーニングは製薬会社もしくは当社、あるいは両者で実施します。ヒット化合物検証 ・細胞実験による効果の測定スクリーニングで取得したヒット化合物の妥当性を検証するため、細胞レベルでの効果の確認を行います。・BLI/ITCによる結合の強度測定/NMRによる結合の特徴測定細胞実験にくわえて、BLI※22(Bio-Layer Interferometry;バイオレイヤー干渉法)、ITC※23(Isothermal Titration Calorimetry;等温滴定熱測定)などの熱力学的測定法※24、NMRなどの分光学的手法※25により、ターゲット構造に対するヒット化合物の結合の強度や特徴を解析します。・コンピュータによる副作用予測自社製作ソフトウェアを使った副作用予測により、ヒット化合物を評価します。・リード化合物取得上記の結果をもとに、ヒット化合物から次段階の化合物(リード化合物)を獲得するための基礎となる化合物を複数選択します。これらを出発化合物として化合物の合成展開及び本プロセスの検証を繰り返し、低分子医薬品として好ましい特性を持つリード化合物を獲得します。 [製薬会社との役割分担]細胞実験による効果の測定は、製薬会社によって行われる事が多いものの、当社で実施する場合もあります。その他の解析については、基本的に全て当社が担当します。リード化合物最適化・RNA-低分子の三次元構造決定ターゲット構造と化合物の複合体の三次元構造を、NMRやX線結晶構造解析※26により実測します。・量子化学※27計算による化合物最適化(医薬品候補化合物の取得)複合体の構造情報をもとにした量子化学計算を用いて医薬品を設計する手法等による化合物の最適化研究を行います。これにより、低分子医薬品としてリード化合物よりもさらに好ましい活性と物性を示す医薬品候補化合物の理論的創製が可能になります。 [製薬会社との役割分担]複合体の構造解析と量子化学計算による化合物の最適化研究は、当社が担当します。最適化研究に伴い必要となる化合物合成は、製薬会社が担当します。 c mRNA標的低分子創薬を可能にするインシリコRNA構造解析技術mRNAは分子内で相互作用して立体構造をとる巨大分子であり、細胞内の環境下では1つの決まった立体構造をとらず、様々なパターンの構造をとってそれらが混在するという性質があります。よって、一般的に一定の構造をとるタンパク質を標的とする既存創薬と同様の理論では、mRNA標的低分子創薬を実現することはできませんでした。 当社の中村は、約20年にわたる創薬研究の経験に基づき、1つの決まった状態をとらない事象を取り扱う統計力学理論及び熱力学理論がmRNAの性質を解析する上で有用な方法であることを見出しました。具体的には、統計力学理論によりmRNA上に局所的に存在する部分構造の存在確率を計算し、熱力学理論により各部分構造のエネルギー状態の計算から安定性・不安定性を評価します。このように、既存創薬の研究領域(化学~生物学)に統計力学理論及び熱力学理論を適切に応用することにより、mRNA上の各部分構造を存在確率や安定性・不安定などの各指標にもとづき定量的に評価する方法論を確立し、その結果、mRNA上にはいつも同じ構造を取ろうとする安定な部分構造が存在することを明らかにしました(図9)。 図9. mRNA標的低分子創薬実現への突破口 当社は、これらの方法論を実装した当社独自のRNA構造解析ソフトウェア「MobyDickⓇ」により、任意のmRNAから高速で網羅的に部分構造を発見し、低分子医薬品の標的に適したターゲット構造(一般的に、存在確率が高く安定であり、低分子化合物の結合が期待される部分構造)を定量的な評価にもとづき特定できるという強みを持っています。このターゲット探索の強みを活かして、製薬会社の幅広い創薬ニーズに応えるmRNA標的低分子創薬を可能にしています。 d 高い達成率を誇るターゲット探索とスクリーニング当社のibVISⓇプラットフォームは、ターゲット探索とスクリーニングにおいて高い達成率を誇っています。製薬会社との共同創薬プロジェクトでは、これまでに製薬会社が選定したがん、中枢神経疾患、感染症等に関連するmRNAに対してターゲット探索を実施し、ターゲット探索で得られたターゲット構造に対して数万から数十万の化合物ライブラリーを使用した高速・高感度スクリーニング(qFRET)を実施しました。その結果、ターゲット探索の達成率は約97%(39個中38個のmRNAでターゲット構造を複数同定)、スクリーニングの達成率は約98%(49個のターゲット構造に対してスクリーニングを実施し、48スクリーニングで当社が定義するヒット化合物を複数取得)であり(図10)、結果的に創薬対象とするmRNAの選定から約95%の成功率でヒット化合物を取得しています(2023年12月末現在)。 図10. 高い達成率を誇るibVISⓇプラットフォームのターゲット探索とスクリーニング (注1) ターゲット探索の図中のターゲット構造はイメージであり、実際の創薬研究で用いているターゲット構造ではありません。(注2) ターゲット探索とスクリーニングの達成率は2023年12月末現在のものです。 e ヒット化合物検証(細胞実験)ヒット化合物を得た後は、化合物の「細胞内での効果」を確認するため、細胞実験にてヒット化合物が対象となる疾患関連タンパク質の発現量に与える影響を確かめます。これまでの製薬会社との共同研究では、様々なヒット化合物が細胞実験により対象となる疾患関連タンパク質を減少させている、すなわち「細胞内での効果」を示す結果が得られています(図11)。この効果を示す化合物の濃度はまだ医薬品としては十分ではありませんが、この後の医薬品候補化合物の取得を目指した合成展開を開始するのに十分なスタート地点であると当社は考えております。また、こうしたヒット化合物の特性は、ibVISⓇプラットフォームの創薬技術に含まれるBLI/ITCによる結合の強度測定やNMRによる結合の特徴測定によっても確認されます。 図11.スクリーニングにより取得したヒット化合物の細胞内での効果検証(細胞実験結果) 左図:疾患関連タンパク質(c-Myc)のmRNA上に発見したターゲット構造に対してスクリーニングで取得した化合物(VSC0075)を細胞に添加することで、細胞内のc-Mycタンパク質量が下がっている(一般的なタンパク質の代表であるHSP90 betaにはほとんど影響がない)。右図:製薬会社のうち6社について、スクリーニングで取得した化合物(Compound A-H)の細胞実験結果をそれぞれ一例ずつ示している。 ③ その他のmRNA関連創薬の取組み当社のインシリコRNA構造解析は、mRNA標的低分子創薬のターゲット探索だけではなく、mRNAの構造を詳細に解析できるという一般性から様々な創薬への応用が可能であると考えております。当社は、事業の安定性を担保する観点から、主事業のmRNA標的低分子創薬に続く将来事業を準備しています。具体的には、これまで理論的な配列設計が困難とされてきた核酸医薬品の一種であるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)※28の配列設計にインシリコRNA構造解析を応用しております。当社のインシリコRNA構造解析により、短期間で医薬品候補化合物を取得でき(当社では最短8カ月で取得)、その結果研究開発費を抑えることが可能になると考えております。当社はこれまでに、ASOの創薬研究で医薬品候補化合物を獲得し、物質特許を取得した実績もあるため(詳細は「(4) プロジェクトの進捗状況 ③ その他プロジェクト(自社研究)」を参照)、将来的に社内でもパイプラインを保有する方針に転換(ビジネスモデル転換)する際には、低分子化合物と同様にASOを有力な自社パイプライン候補とすることを想定しています(詳細は「(3) ビジネスモデルの特徴 ④ ビジネスモデルの転換」を参照)。このように、主事業及びASOの創薬研究を通じてmRNAについて深く理解し、インシリコRNA構造解析技術を向上させたことで、新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチンに代表されるmRNA医薬品の体内での不安定性や凝集などの各種課題を解決する配列設計や、mRNA以外のRNA(以下「ncRNA」という)を標的とした創薬にもインシリコRNA構造解析技術の適用が可能になりました。これらmRNA医薬品とncRNA標的医薬品のプロジェクトも、初期的ではあるものの進行中であり(プロジェクトの進捗は「(4) プロジェクトの進捗状況 ③ その他プロジェクト(自社研究)」を参照)、製薬会社等から共同研究や事業協力の申し出があれば将来的に当社事業として組み込むことを想定しています。 (3) ビジネスモデルの特徴① ビジネスモデルの概要当社は、より多くのmRNA標的低分子医薬品を迅速に社会に届けるため、製薬会社の幅広いニーズに応える汎用性の高いibVISⓇプラットフォームを武器として、複数の製薬会社と多数の共同創薬プロジェクトを同時に進行させる「プラットフォーム型」のビジネスを展開しています(図12)。製薬会社との契約では、契約一時金、研究支援金にとどまらず、マイルストーン、ロイヤリティ等の対価を規定することにより、契約締結直後から長期的かつ継続した事業収益の確保を目指します。当社のようなバイオテク企業にとって、複数の共同創薬プロジェクトを同時進行するプラットフォーム型ビジネスは、安定した事業収益を確保する観点や、製薬会社との提携によってmRNA標的低分子医薬品の潜在的な市場のシェアを確保して数多くの医薬品を患者様にお届けする観点から、合理的なビジネスモデルであると考えております。当社は現時点において、このプラットフォーム型ビジネスのもと、主な事業収益の源泉となる製薬会社との共同創薬プロジェクトを効率的に進めるため、アカデミアとの共同研究をはじめ、各種機関・企業と業務提携を結んでいます(図13)。 図12. 創薬系バイオテク企業のビジネスモデル 図13. Veritas In Silicoの事業系統図
(注) 製薬会社から当社への対価の詳細は下記「②契約形式」をご参照ください。 ② 契約形式当社は、製薬会社と医薬品候補化合物を取得するまでの創薬研究を共同で実施する共同創薬研究契約を締結することを基本としています(図14)。共同創薬研究契約では、製薬会社から創薬対象とするmRNA(標的遺伝子)の情報を受領後、その標的遺伝子ごとにプロジェクトを設定し、各プロジェクトの進捗状況に応じて一連の継続的な事業収益が得られるように規定しています(図14、表3)。当社と製薬会社の共同創薬研究契約に基づくパートナーシップ(以下、当社と共同創薬研究契約等に基づき、共同で創薬研究を実施する製薬会社を「パートナー」という)は、当社技術を用いて当社とパートナーが共同で医薬品候補化合物を創出する創薬研究段階と、医薬品候補化合物の創製における当社貢献部分をパートナーに譲渡し、パートナーが医薬品候補化合物の開発・販売を行うことで、当社に事業収益が発生する開発・販売段階で構成されます(図14)。各段階において当社が計上する主な事業収益は以下の通りです。 図14. Veritas In Silicoの収益構造 (注1) 現時点(2023年12月末現在)、当社と製薬会社との協業から製薬会社による開発・販売段階にまで進んだ実績はありません。(注2) 上市までの期間については、実際の研究開発状況により大きく異なる可能性があります。(注3) ibVISⓇプラットフォームを使用した当社と製薬会社の協業は、創薬研究期間中に限られます。(注4) 開発・製造・販売ライセンスに関する取り決めについては、共同創薬研究契約に盛り込まれる場合もあります。 表3. 主な事業収益の内容 事業収益名内容契約一時金契約締結時に一時金として受け取る事業収益研究支援金研究実施等に対する対価として創薬標的ごとに受け取る事業収益マイルストーン研究・開発・売上の進捗に応じて、事前に設定したイベントを達成した際に受け取る事業収益ロイヤリティ医薬品販売開始後に年間の売上高に応じて受け取る事業収益 a 創薬研究当社の共同創薬研究契約では、通常締結時にibVISⓇプラットフォームの使用に対する技術アクセスフィー等として「契約一時金」をパートナーより受領します。研究開始後、研究実施に対する費用支援・対価等として標的遺伝子ごとに設定された「研究支援金」を研究期間中毎年受領します。また、創薬研究中に追加的な研究が必要となる場合には、追加の「研究支援金」を標的遺伝子ごとに受領します。さらに、パートナーと事前にいくつかの研究達成目標、すなわちマイルストーンを設定し、当該マイルストーンを達成した場合には、パートナーより「研究マイルストーン」を受領します。 b 開発・販売当社の共同創薬研究契約では、基本的に、創薬研究における成果の当社貢献度に基づき、当社が開発・販売において受領する「開発マイルストーン」、「ロイヤリティ」、「売上マイルストーン」等の経済条件についても以下のとおり規定しています。創薬研究で医薬品候補化合物を取得し、パートナーにより非臨床試験に進む判断がされた場合には、当社はこの段階で、最初の「開発マイルストーン」を受領します。その後、医薬品候補化合物の開発はパートナーに委ねられますが、パートナーによる開発が進み、臨床試験に移行した場合には、臨床試験の段階ごとに追加的に「開発マイルストーン」を受領します。さらに、最終的に医薬品として上市された場合には、売上金額に一定の料率を乗じて得られる金額を「ロイヤリティ」として受領します。加えて、上市された医薬品の年間の売上高が所定の売上額に達した場合には、「売上マイルストーン」を受領します。なお、2023年12月末現在において、当社とパートナーとの共同創薬研究は全て創薬研究段階であり、パートナーが単独で実施する開発・製造・販売にまで進んだ実績はありません。 ③ 知的財産戦略(特許及びソフトウェア著作権)当社は、ibVISⓇプラットフォームの「ターゲット探索」と「スクリーニング」の特許による権利化と、各種自社製作ソフトウェアで構成されるデジタル技術の秘匿化により、プラットフォーム全体の独占性を二重に担保しています(図15)。特許「RNAの機能を制御する化合物のスクリーニング方法」により権利化した技術は、デジタル技術の「MobyDick2D」と創薬技術の「qFRET」です。主に、これらの技術を利用するibVISⓇプラットフォームの「ターゲット探索」と「スクリーニング」では、権利化した特許によって他社の利用を排除でき、当社の優位技術として製薬会社に活用いただいています。創薬研究の各プロセスは、当社が独自開発し継続的にアップデートしている大量のデータ解析や実験のサポートをする自社ソフトウェアを使用することにより、はじめて実施可能となります。また、各プロセスに導入しているこれらデジタル技術により、並列処理による効率化と精度の高い創薬の実現にくわえ、製薬会社のニーズに応じた技術移転を容易とすることで、スケーラブルな創薬が可能になっています。 図15. ibVISⓇプラットフォームに係る知的財産権及び自社製作ソフトウェアによる独占性の担保
(注) 特許6781890号 RNAの機能を制御する化合物のスクリーニング方法 ④ ビジネスモデルの転換当社は、mRNA標的低分子創薬の潜在的な市場のシェアをある程度確保した後に、プラットフォーム型ビジネスにくわえ、自社でパイプラインの開発も進めるハイブリッド型ビジネスへの転換を計画しています。プラットフォーム型ビジネスによりパートナー数を増やし、パートナーから中長期的に充分な収益が見込めるようになった段階(当社では2026年頃と想定)で、自社パイプラインの開発を開始することを目指しますが、当面は、開発の早い段階で製薬会社にライセンスアウトする方針です。自社パイプラインの候補としては、「(4) プロジェクトの進捗状況 ② mRNA標的低分子創薬のプロジェクト(自社研究) ③ その他プロジェクト(自社研究)」のmRNA標的低分子医薬品及び核酸医薬品のプロジェクトのほか、当社では核酸医薬品の医薬品候補化合物を取得するまでに要する期間が最短8か月と短いことから、新規の核酸医薬品のプロジェクトも自社パイプラインとして有力な候補になると考えています。 (4) プロジェクトの進捗状況① mRNA標的低分子創薬のプロジェクト(共同創薬研究)mRNA標的低分子創薬のプラットフォーム型ビジネスを展開する当社は、多額の開発費を投入して少数の自社パイプラインを育てる代わりに、共同創薬研究のパートナー数を増やすとともに、各パートナーとのプロジェクトを進捗させることで、相乗的な事業拡大を図っています。当社はこれまでに、プラットフォーム型ビジネスの特徴を活かしたパートナーとの共同研究を通じてibVISⓇプラットフォームの技術力向上を達成し、より高収益の共同創薬研究契約の締結が可能になりました(図16)。現在、共同創薬研究のパートナー4社(東レ株式会社、塩野義製薬株式会社、ラクオリア創薬株式会社、武田薬品工業株式会社)とのプロジェクトが進捗しています。 図16. プラットフォーム型ビジネスを活用した技術力向上と事業拡大
(注) Oncodesign ServicesとはMOUのもと新規顧客獲得で協力関係にありますが、具体的な事業提携はしておりません(2023年12月末現在)。今後は、Oncodesign Servicesの医薬品開発業務受託機関(CRO)としての実力や実績を活かし、新規顧客獲得の協力にとどまらず、既存及び新規共同創薬研究のパートナーの創薬ニーズへの対応や、当社の将来の自社パイプラインの準備等で本格的に事業提携することを想定しています。 共同創薬研究中のパートナー4社とのプロジェクトが進捗しており、4社とのプロジェクト中で最も進んでいるプロジェクトは、現在「ヒット化合物検証」を実施中の段階です(図17)。 図17. 共同創薬研究中の製薬会社のプロジェクト進捗状況(注1) 製薬会社との共同創薬プロジェクトは契約上守秘義務があるため、プロジェクトで対象としている疾患及び    経済条件については、一部記載を「非開示」としています。(注2) 東レとの共同創薬研究では、医薬品候補化合物の権利は東レと当社で共有します。 当社は、共同研究及び共同創薬研究の契約にもとづき、これまでに合計6.4億円の事業収益を獲得しています(2023年12月末現在)。今後は、共同創薬研究中のパートナー4社との契約にもとづき、短期的(創薬研究期間中)には17.8億円(このうち6.4億円は取得済)の研究支援金又は研究マイルストーン、中期的(開発期間中)には80.5億円の開発マイルストーンを事業収益として獲得する可能性があります(図18)。さらに、医薬品が上市した場合には、長期的(販売期間中)に、1桁台前半パーセント(%)のロイヤリティ及び販売額に応じたマイルストーン収入(最大1,050億円)が見込まれます(図18)。ただし、東レの場合には、医薬品候補化合物の権利は東レと当社で共有することになっており、当社は化合物の持分に応じた収益を受領することになります。なお、研究・開発・売上のマイルストーンについては、いずれも既存のプロジェクトが全て成功した場合の最大値を示しています。創薬の成功確率は相対的に高いとはいえず、現実的に全てのプロジェクトが成功するわけではなく、一部又は全部のプロジェクトが成功に至らない場合や、成功に至った場合であっても当初想定した売上が達成できない場合等には研究・開発・売上のマイルストーンが減少する可能性がある点に十分ご留意ください。 図18. 既存の共同創薬研究契約から得られる事業収益のポテンシャル
(注) 取得済総額は、共同研究により取得した収益を含みます。マイルストーンは、いずれも既存のプロジェクトが全て成功した場合の最大値を示しています。創薬の成功確率は相対的に高くはなく、現実的に全てのプロジェクトが成功するわけではない点に十分留意が必要です。 ② mRNA標的低分子創薬のプロジェクト(自社研究)mRNA標的低分子創薬は様々な疾患への応用展開が可能なことから、共同創薬研究開始後、パートナーあたりのプロジェクト数が積み上がる場合がある一方、パートナー側の社内優先順位等の関係で、一部のプロジェクトが中止される場合もあります。当社は、パートナーとの契約締結の際に開発・製造・販売ライセンスに関する取り決めを盛り込む場合を除き、中止されたプロジェクトの成果の当社への譲渡について契約書に規定することにより、自社プロジェクトへ転用することを可能にしています。実際に、中止されたプロジェクトのうち有望なプロジェクトについては自社プロジェクトに転用しており、事業開発や創薬プラットフォームの技術開発のために活用しています。当社のmRNA標的低分子創薬のプロジェクトは、医療ニーズの高いがん領域が中心であり、将来的に当社のビジネスモデルをハイブリッド型に移行する際には、これらのプロジェクトが自社パイプラインの有力な候補になると考えております(図19)。現時点においては、一部のプロジェクトについて、事業開発や創薬プラットフォームの技術開発を目的とした社内研究を実施するにとどめており、具体的に自社パイプライン候補として進捗しているプロジェクトはありません(2023年12月末現在)。 図19. mRNA標的低分子創薬の自社プロジェクト進捗状況 (注1) 現時点(2023年12月末現在)、進捗しているプロジェクトはありません。(注2) これらのプロジェクトは、製薬会社との共同創薬プロジェクトを当社の自社プロジェクトとして譲り受けたものです。    自社プロジェクトとして再開する際には、事業の自由度を確保するために改めてスクリーニングから実施する必要があります。 ③ その他プロジェクト(自社研究)当社は、希少疾患を中心に、将来のハイブリッド型ビジネスを見据えた核酸医薬品 (核酸医薬品の一種であるASO) のプロジェクトを保有しています。また、mRNA医薬品及びncRNA標的医薬品のプロジェクトは、現在基礎研究(ターゲット探索)を実施中です(図20)。核酸医薬品のプロジェクトは、急性腎不全や脱毛症を対象疾患とした遺伝子p53に対するASO、及び東京慈恵会医科大学の岡野ジェイムス洋尚教授との共同研究により創出された、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患を対象疾患としたASOであり、両プロジェクトともに医薬品候補化合物を取得して物質特許を出願し、p53のASOについては日本で特許が権利化されました。mRNA医薬品(mRNA補充療法)では、タンパク質補充療法の実例があるファブリー病とハンター症候群に着目し、これら疾患の治療で補充すべきタンパク質の設計図となるmRNAをもとに、血中で安定し、自己凝集しないmRNA医薬の配列設計を開始しています。ncRNA標的医薬品のプロジェクトとしては、ncRNAの中でも機能が解明され、多発性骨髄腫への関与がわかっているncRNAに対して、核酸医薬品を創出するプロジェクトを開始しています。 図20. 核酸医薬品、mRNA医薬品及びncRNA標的医薬品の自社プロジェクト進捗状況
(注) 特許6934695号 核酸医薬とその使用 <用語解説> 用語解説※1RNA核酸(塩基と糖、リン酸からなるヌクレオチドが多数重合した生体高分子。DNA※10も核酸の一種)のうち、糖の部分がリボースからなる物質であり、リボ核酸とも呼ばれる。生体内において、遺伝情報の伝達など多くの生命現象にかかわっている。遺伝情報を伝達するメッセンジャーRNA(mRNA)※2、タンパク質の原料であるアミノ酸を運ぶ機能を担う転移RNA(tRNA)、リボソーム※13を構成するリボソームRNAなどに分類される。※2メッセンジャーRNA(mRNA)遺伝情報であるDNA配列を写しとって、タンパク質合成のために情報を伝達するRNA。mRNAは、細胞内でタンパク質が合成される際の設計図であり、各タンパク質に対応してそれぞれ個別のmRNAが存在する。※3統計力学統計物理学ともいう。物質を構成する多数の粒子の運動に力学法則及び電磁法則と確率論とを適用し、物質の巨視的な性質を統計平均的な法則によって論じる物理学の分野。当社は、RNAの構造解析にこれら統計力学の理論を適用できることを見出し、創薬に応用している。※4 熱力学熱力学とは、巨視的な立場から物質の熱的性質を研究する物理学の一分野であり、系全体のマクロな性質を扱う理論である。複雑な系である生物学には当てはまらないとされることが多い。当社は、RNAの構造解析にこれら熱力学の理論を適用できることを見出し、創薬に応用している。※5核酸医薬品DNAやRNAといった遺伝情報を司る物質「核酸」そのものを利用した医薬品であり、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)※28などがある。従来のタンパク質を標的とする低分子医薬品や抗体医薬品では狙えないmRNA等を創薬標的とすることができる。分子量は低分子医薬品と抗体医薬品の中間にあたり、中分子医薬品とも呼ばれる。商業製造法が確立途中であるため、製造コストは、高額と言われる抗体医薬品よりもさらに高額となる。また抗体医薬と同様に、主に注射により投与される。※6低分子医薬品一般的に分子量が500以下の医薬品。飲み薬や貼付薬など様々な投与方法に展開することが可能である。また製造は化学合成によるため、品質の管理が容易であり、また商業製造法が確立されているため、抗体医薬や核酸医薬品等と比べて極めて安価である。そのため最も一般的に流通し、医薬品市場の約半分を占めている。出典:内閣官房 健康・医療戦略室委託事業「令和二年度 医薬品・再生医療・細胞治療・遺伝子治療関連の産業化に向けた課題及び課題解決に必要な取組みに関する調査報告書」※7パイプライン非臨床試験・臨床試験など開発段階にある医薬品候補化合物(新薬候補)を当社ではパイプラインと呼び、非臨床前の創薬研究段階のプロジェクトと区別している。※8抗体医薬品体内に「抗体」を投与することで治療効果を得ようとする医薬品の総称。創薬標的にピンポイントで作用させることができるため、高い治療効果と副作用の軽減が期待できる。一方、抗体医薬品は製造工程が複雑で品質の管理が難しいため、製造コストが高く、薬価が高額となる。また核酸医薬品と同様に、現在は注射によってのみ投与されている。※9研究開発医薬品の研究開発とは、新しい医薬品を市場に投入するまでの一連のプロセスをいう。そのうち、研究(創薬研究、基礎研究)は、当社がibVISⓇプラットフォームにより技術提供が可能な「ターゲット探索」「スクリーニング」「ヒット化合物検証」「リード化合物最適化」に至る医薬品候補化合物※14を取得するまでのプロセスであり、開発は、医薬品候補化合物取得後の非臨床試験、臨床試験に加え、承認申請及び規制当局の承認を含む非臨床試験以降の全てのプロセスである。※10DNA核酸(塩基と糖、リン酸からなるヌクレオチドが多数重合した生体高分子)のうち、糖の部分がデオキシリボースからなる物質であり、デオキシリボ核酸とも呼ばれる。地球上のほぼ全ての生物において遺伝情報の継承を担う生体高分子である。※11インシリコインシリコ(in silico)は、生物学でいうin vivo(生体内)やin vitro(試験管内)とのアナロジーであり、「コンピュータを用いて」を意味する。すなわち、コンピュータを使った計算により、ゲノムをはじめとした生体分子の構造などを数値化し、生理的な条件を踏まえて研究することを指す。※12スクリーニング多数の化合物群(一般的に、数万種類以上の化合物からなるライブラリー)から、特定の条件を満たす化合物を選択するための実験方法のこと。※13リボソーム数本のRNA分子と50種類ほどのタンパク質で構成される巨大なRNAとタンパク質の複合体。大小2つの部分に分かれており、それぞれ 50Sサブユニット、30Sサブユニットと呼ばれる。あらゆる生物の細胞内に存在し、mRNAに転写された遺伝情報を読み取ってタンパク質を合成(翻訳)する機構として機能する。 用語解説※14医薬品候補化合物医薬品候補化合物は、リード化合物を化学合成によりさらに改善したものであり、当社の創薬研究ステップの最終成果物である。医薬品候補化合物は、動物等を用いた非臨床試験にて、その有効性と安全性を国際的な基準の下で確認した後、最終的に、ヒトを対象とした試験(臨床試験)に用いられる。臨床試験の結果を規制当局に申請後、審査を経て承認されると医薬品となる。※15ヒット化合物創薬で用いられる用語。本書においては、ヒット化合物は、創薬の初期のスクリーニングで発見された活性化合物のことを示す。※16リード化合物創薬で用いられる用語。本書においては、リード化合物は、ヒット化合物の次の段階の化合物であり、ヒット化合物を基礎に化学合成により手が加えられ、その活性が動物などで確認される等、ヒット化合物より良好な物性を示す化合物のこと。さらに、活性、溶解度などの物性、毒性、飲み薬にした場合に化合物が吸収されるかなど(薬物動態)の点を化学合成によりさらに改善する基礎になる化合物。ただし、その基準は各製薬会社でさまざまである。※17合成展開低分子医薬品の創出を目的として、低分子化合物を多数合成していくことをいう。具体的には、スクリーニングで取得したヒット化合物等を基点に、目的(活性の向上、薬物動態、毒性の低減等)に合うように新たに構造が類似した低分子化合物を多数設計し、有機化学的に合成して用意する。この新たに用意された低分子化合物に対し各種の試験を行い、より目的にかなう低分子化合物を選択し、その化合物を基点として合成展開は続けられる。このサイクルは、低分子医薬として充分なプロファイルを持つ化合物が得られるまで続けられる。※18NCBINCBI(National Center for Biotechnology Information;国立バイオテクノロジー情報センター)。米国国立衛生研究所の下の国立医学図書館の一部門として設立された公的機関。最も信用のおける遺伝子情報等のデータが蓄積されているため、当社では、使用するmRNAの塩基配列情報を主としてNCBIデータベースより取得している。※19NMR核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance)。分光学的測定法の一つ。磁場を与えられた状態の原子核に外部から電磁波を照射し、特定の電磁波を吸収する現象(共鳴現象)を観測することで、物質の構造的情報などを取得する方法。当社では、RNAの二次構造情報の取得に加え、ヒット化合物等の低分子化合物がRNAに結合する様子や、RNAの三次元構造の解析にも使用している。※20FRETFRET(Fluorescence Energy Transfer;蛍光共鳴エネルギー移動法)。物質間の距離の変化に応じて蛍光強度が変化する現象を利用した物質の形状変化をリアルタイムに測定する研究手法。生命科学研究において不可欠な技術となっている。※21qFRETqFRET(Quantitative Fluorescence Energy Transfer;定量的蛍光共鳴エネルギー移動法)。当社独自の実験プロトコル、実験機器、データ解析手法を統合することにより、蛍光共鳴エネルギー移動法に定量性を持たせた研究手法。※22BLIBLI(Bio-Layer Interferometry;バイオレイヤー干渉法)。熱力学的測定法の一つ。核磁気共鳴センサーチップ上に固定した生体分子と、溶液中の分子の相互作用を測定する装置。当社では、構造をとったRNAをセンサーチップ上に固定し、スクリーニングで取得したヒット化合物等の低分子化合物を流して、両者間の相互作用を測定することに使用している。高速に測定できるほか、ごく微量でも測定可能であることが特徴。※23ITCITC(Isothermal Titration Calorimetry;等温滴定型熱量測定)。熱力学的測定法の一つ。分子同士が結合する時に発生する微小な熱量変化を計測し、相互作用解析に用いる装置。当社では、RNAとスクリーニングで取得したヒット化合物等の低分子化合物との相互作用を測定することに使用している。一般的に、得られる相互作用の数値は他の手法よりも正確だといわれるが、測定に時間がかかり、多くの試料を要するというデメリットがある。※24熱力学的測定法熱力学的測定法は、等温滴定型熱量測定 (Isothermal Titration Calorimetry;ITC)等により、結合分子を創薬標的に滴下した際に起こる化学反応もしくは結合反応を観測する測定法。物質同士が結合する際には熱の発生もしくは吸収が起こるため、熱量変化を観測することにより、物質同士の結合を定量的に解析することができる。※25分光学的手法物理的観測量の強度を周波数、エネルギー、時間などの関数として示すスペクトル(測定結果の成分を、量の大小によって並べて、解析しやすくしたもの)を得ることで、対象物の定量あるいは物性を調べる研究手法である。日本語では「光」という漢字を使うが、必ずしも光を用いる測定法のみが分光学的手法ではない。 用語解説※26X線結晶構造解析タンパク質やRNAなどが三次元的に規則正しく並んだ結晶をつくり、その結晶にX線を照射することでそれらの三次元構造を解析する手法。X線結晶構造解析技術は、タンパク質やRNA単体はもちろんのこと、タンパク質-化合物複合体やRNA-化合物複合体の三次元構造情報を得るための手段の1つとして用いることができる。※27量子化学理論化学(物理化学)の一分野。主として分子や原子、あるいはそれを構成する電子などの振る舞いを、シュレディンガー方程式といった根源的な理論にもとづく数値計算によって解くことにより、分子構造や物性あるいは反応性を理論的に探究する学問分野である。※28アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)核酸医薬品のカテゴリーの一つ。一本鎖のDNAやRNAからなり、mRNAに結合して主にタンパク質の合成(翻訳)を制御する働きを持つ。ASOに安定性や機能などを追加することを目的として様々な化学的な修飾を導入することができる。
関係会社の状況 4 【関係会社の状況】
該当事項はありません。
従業員の状況 5 【従業員の状況】
(1) 提出会社の状況2023年12月31日現在従業員数(名)平均年齢(歳)平均勤続年数(年)平均年間給与(千円)1544.34.36,824
(注)1.従業員数は、臨時従業員(パート職員)を除いた就業人員数であります。2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。3.当社は創薬プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の従業員数の記載はしておりません。4.臨時従業員(パート職員)の総数が従業員数の100分の10未満であるため、平均臨時雇用者数の記載を省略しております。
(2) 労働組合の状況労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。 (3) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異 当社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)」の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。
経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。 (1) 経営の基本方針当社は、メッセンジャーRNA(mRNA)を標的とした低分子創薬(以下「mRNA標的低分子創薬」という)のプラットフォーム型ビジネス(独自の基盤技術を、共同創薬研究等を通じて複数の製薬会社へ提供)により、「どんな疾患の患者様も治療法がないと諦めたり、最適な治療が受けられないと嘆いたりすることのない、そんな希望に満ちたあたたかい社会を実現する」ことを経営理念(ミッション)としています(図21)。当社は、製薬業界で新たな領域を切り拓く先駆者、すなわち「パスファインダー(Pathfinder)」として、どんな疾患の患者様も最適な治療が受けられるように、より多くのmRNAを標的とする低分子医薬品(以下「mRNA標的低分子医薬品」という)を迅速に社会に届けていく方針です。 図21. Veritas In Silicoの経営理念(ミッション)
(2) 経営戦略当社は、mRNA標的低分子医薬品の将来市場の見通しを踏まえ、その時期に応じてビジネスモデルを変えることで長期持続的な成長を達成することを目指しています(図22)。短期的には、現在の「プラットフォーム戦略」により、現在進行中の共同創薬研究をさらに加速・拡大させて事業収益の獲得等による業績の安定化を図るとともに、より多くの国内外製薬会社とのパートナーシップを展開していく方針です(図22、図23 共同創薬プロジェクト)。2023年6月の武田薬品との提携を皮切りに、大手製薬会社や海外製薬会社をパートナー提携先として獲得し、さらなる事業拡大を目指します。中期的には、当社プラットフォームのさらなる技術開発と専門人材の獲得・社内育成により、現在は製薬会社が担当している創薬研究プロセスも自社で実施する体制を構築する方針です。海外大手製薬会社は、共同創薬研究よりもパイプラインをそのまま導入する取引を重視する傾向があるため、共同創薬プロジェクトを推進するプラットフォーム事業にくわえ、自社でパイプラインを創出するパイプライン事業を並行して進める「ハイブリッド型」のビジネスを展開することを計画しております。これにより、継続的な業績の安定化とパイプラインのライセンス等による企業価値の最大化を目指します(図22、図23 自社プロジェクト)。さらに長期的には、創薬研究に特化したバイオテク企業から、研究開発・販売機能等を備えた製薬会社(スペシャリティファーマ)に業態を転換することで、持続的な事業の成長を目指します(図22)。当社は、こうした短中長期の各成長ステージに合わせて適切な経営を行っていくことを経営戦略としています。 2024年度からの中期経営計画期間は、プラットフォーム事業を遂行する態勢を財政面や人材面でより頑強なものとし、加えて「ハイブリッド型」のビジネスに切り替える準備と実行の時期と位置付けております。 図22. プラットフォーム型ビジネスからスペシャリティファーマに至るまでの成長曲線のイメージ図
(注) あくまで当社が目標とする成長のイメージであり、実際の時価総額の推移を示唆するものではありません。 当社は、プラットフォーム型からハイブリッド型ビジネスへ移行する際には、mRNA標的低分子医薬品又は核酸医薬品のプロジェクトの中から自社パイプライン候補を選定のうえ研究を進め、自社パイプラインの創出につなげる方針です(図23、自社プロジェクト)。mRNA標的低分子創薬の場合には、様々な疾患に適用できるという特性を活かし、マーケット志向にもとづいて医薬品1品目あたり年間200億円以上の売上が見込める自社プロジェクトを選定する方針です。 図23. Veritas In Silicoの短中期成長戦略 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標当社は、当社のibVISⓇプラットフォームから創出された低分子医薬品の実用化により社会に貢献するとともに、製薬会社から医薬品候補化合物の開発の進捗に応じて受領する開発マイルストーン、上市後の製品販売に伴う売上マイルストーン及びロイヤリティ収入によって事業収益を拡大することを経営目標としています。 しかしながら、現時点において、製薬会社とのプロジェクトは全て研究段階であり、当社が開発・売上マイルストーン及びロイヤリティ収入を獲得可能となるのは早くても数年後となるため、短期的には、ROAやROEといった経営指標ではなく、製薬会社と締結する新規共同創薬研究契約の獲得数、並びに契約一時金、研究支援金及び製薬会社とのプロジェクト進捗に応じて得られる研究マイルストーンに基づく事業収益全体を、目標達成の判断基準(KPI)として掲げています(図23)。これらKPIは取締役会等に報告されており、目標達成に向けた組織のパフォーマンスの動向を把握できるようにしております。新規共同創薬研究契約数の目標を達成するための施策として、当社はこれまでに、製薬会社と秘密保持契約書(CDA)の締結からはじまる事業開発活動の実績を統計的に解析しています(図24)。その結果、全CDA締結数のうち本契約まで至った確率はおおよそ48%、CDA締結から本契約に至るまでの期間(中央値)は約14か月となっています(2023年12月末現在)。現時点において製薬会社4社とCDA下で契約交渉を進めているため、これらの解析にもとづき、2024年にはそのうちの2社と契約締結することを目標達成の指標としています。また、2025年以降も毎年2社と契約を締結するという目標のもと、その数に見合うCDA締結数を獲得するべく事業開発活動を実施しています。 図24. 契約締結の実績にもとづく事業開発の展開
(注) 契約締結数と契約交渉中のCDA数は2023年12月末現在の実績 (4) 経営環境内閣官房の健康・医療戦略室委託事業が2021年3月に発表した『令和二年度 医薬品・再生医療・細胞治療・遺伝子治療関連の産業化に向けた課題及び課題解決に必要な取組みに関する調査報告書』によると、世界の医療用医薬品市場は、2020年の約75兆円から、2030年には約103兆円に成長すると予測されています(図25)。近年、抗体医薬品やペプチド医薬品などの中分子・高分子医薬品が一定規模の市場を形成しており、今後も成長期市場として存在感を示すと考えられます。低分子医薬品は、既に成熟期に差し掛かっている市場であり、市場成長率は微増であるものの、2030年においても医薬品市場の約半分を占めると予測されています。低分子医薬品は、グローバル市場において、日本企業が占有率を高く保っている領域です。今後日本では、占有率の維持に向けて、低分子医薬品の創薬標的やターゲット構造の拡大、適応疾患の拡大、及び研究開発の効率化による低コスト化が重要視されると考えられます。 図25. 世界の医療用医薬品の市場予測 出典:内閣官房 健康・医療戦略室委託事業「令和二年度 医薬品・再生医療・細胞治療・遺伝子治療関連の産業化に   向けた課題及び課題解決に必要な取組みに関する調査報告書」をもとに当社にて作成 当社の属するmRNA標的低分子創薬の領域は、現在世界的に見ても研究段階であるため、2030年時点で市場が大きく形成されている可能性は低いと考えられます。しかしながら、従来のタンパク質標的低分子医薬品と競合することなく、全く新規の創薬標的に対して低分子医薬品の創出に取り組めるうえに、低分子医薬品は経口投与が可能で、製造コストが低く、規制体制及び商材としてのバリューチェーンも確立されているため、将来的には、mRNA標的低分子医薬品単独で新たな市場が形成されると考えられます。その市場規模は、将来のある時点において、既存のタンパク質標的低分子医薬品の市場と同等規模になると、当社は推定しています(図26)。 図26. mRNA標的低分子医薬品の将来市場の見通し(当社推定) (注1) 初期採用者とも呼ばれ、イノベーター(革新者)の次に商品やサービスを購入する人々 (注2) 前期追随者とも呼ばれ、アーリーアダプターからの影響を受ける人々 2010年代後半、米国を中心としてmRNAを標的とした低分子医薬品の創出を目指すバイオテク企業が相次いで立ち上がり、2017年11月には、科学系学術団体としては世界最大のアメリカ化学会の学会誌であるChemical & Engineering Newsに「The RNA hunters」として取り上げられました。さらに、近年の科学技術の発展に伴って低分子医薬品でアプロ―チ可能な創薬標的が拡大したことにより、2023年10月の同学会誌には「Is this a golden age of small-molecule drug discovery?」と特集されるなど、再度低分子医薬品の創出に対する注目が高まっています。その中で、RNA標的低分子創薬についても同学会誌に取り上げられており、創薬の専門家のコメントとして「個人的な見解ではあるものの次の大本命はRNA標的であり創薬の主流になりつつある」という記載がされております。このような流れを受けて、低分子医薬品の研究開発能力を持つ製薬会社はmRNA標的低分子創薬を検討しはじめ、mRNA標的低分子創薬に取り組むバイオテク企業間の競争は今後より一層激しくなると予想されます。その一方で、各社独自のビジネス展開により棲み分けが進んでいくものと考えられます。当社は、mRNA標的低分子医薬品の潜在的な市場のシェアをいち早く獲得するため、現時点において、製薬会社との提携数やプロジェクト数を増やすことを優先したプラットフォーム型ビジネスに集中しています。加えて、ibVISⓇプラットフォームの優位性を維持するため、短期的に更なる技術力の強化を図るとともに(図27)、中期的にハイブリッド型ビジネスに転換する際には、自社パイプラインの創出に必要なインフラを整備します(図27中の※印)。 図27. ibVISⓇプラットフォームの基盤技術の改良と新技術の増強 (注1) FMOによるCADDとは、量子化学計算の一種であるフラグメント分子軌道法(FMO)による計算を用いて医薬品を設計する手法 (computer-aided drug design:CADD)のこと。タンパク質標的低分子創薬でも用いられる最新の化合物設計手法です。(注2) 第一原理MDとは、非常に高いレベルの量子化学計算(第一原理計算)を用いた分子動力学法(Molecular Dynamics:MD)のこと。 RNA構造と低分子化合物がどのように動くかシミュレーションすることができ、医薬品を設計する手法(CADD)の精度が飛躍的に 上がることが期待されます。 (注3) RIBOTAC(ribonuclease-targeting chimeras)とは、リボヌクレアーゼ(RNA分解酵素)と結合する化合物と、mRNAに結合する 化合物をつないだ融合化合物のこと。当社にて取得したmRNA結合化合物の活性が十分でない場合でも、RIBOTACによりRNA分解 酵素を誘導することでmRNAの分解を促進することで、活性の飛躍的な向上が期待できます。 当社の知る限り、国内外の大手製薬会社20社以上がmRNA標的低分子創薬関連のバイオテク企業と提携済みであり(2023年12月末現在)、本創薬への流れは既に始まっていると考えております。当社では、mRNA標的低分子創薬関連に取り組むバイオテク企業の中で、以下に示す当社基準にもとづき、Arrakis Therapeutics、Ribometrix、及びAnima Biotechの3社を当社の主要な競合他社と考えております(図28)。 [競合他社の選定基準]・当社同様の作用機序に基づくmRNA標的低分子創薬を目指している企業・全てのmRNA標的低分子創薬に関する技術を保有していると考えられる企業・大型提携の実績をもつ企業 そのうえで、当社がもっとも注目している点は、公開情報等から競合他社が主に既知のターゲット構造を創薬対象としていると考えられるのに対して、当社は多種多様なターゲット構造を同定し、創薬対象とできることです(当社のターゲット構造を同定する技術の詳細は、「第1 企業の概況 3 事業の内容
(2) 当社の事業領域 ② ibVISⓇプラットフォーム c mRNA標的低分子創薬を可能にするインシリコRNA構造解析技術」を参照)。当社の「ターゲット探索」は、各製薬会社の新薬開発ニーズに対して、多種多様なターゲット構造を創薬対象とすることで応えられるため、創薬標的の枯渇という製薬業界の課題に対する抜本的な解決につながると考えております。したがって、当社のプラットフォーム技術は、競合他社に比べて「ターゲット探索」において優位性があると考えます。以上の点に加えて、当社は「ターゲット探索」の段階から多くの製薬会社と共同創薬プロジェクトを実施し、mRNA標的低分子創薬に関するノウハウを豊富に蓄積できている点でも、競合他社と比べて優位性があると考えます。mRNA標的低分子創薬の適用範囲は非常に広いため、少なくとも今後数年間は、当社とこれら競合他社は互いに競合する一方で、本分野のビジネスを相乗的に拡大させていくものと当社は考えております。 図28. Veritas In Silicoと競合他社のビジネスモデル等の比較(2023年12月末現在)
(注) 1USD= 140円として換算出典:Crunchbase及び各社ウェブサイト情報をもとに当社で作成 (5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題経営方針及び経営戦略を実行していくうえで、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。 ① 持続的・安定的な事業収益の獲得当社は、mRNA標的低分子創薬で事業提携している製薬会社のニーズを適宜把握し対応することで、滞りなく共同創薬研究を前進させるとともに、その成果を新規の製薬会社との事業提携につなげることで、持続的・安定的な事業収益の獲得を目指します。 ② 優秀な人材の確保・育成当社の事業を大きく発展させるためには、RNA研究に関する高い専門性や豊富な創薬研究経験を有する人材、及び事業開発の拡大に資する人材が必要となります。当社は、当社ウェブサイトの充実や人材紹介サービス会社の積極的な活用により、優秀な人材の確保に努めます。さらに、従業員が働きやすく、業務を通じて成長できるような環境を整備することで、当社の将来を担う人材の育成に努めます。 ③ 技術競争力の強化当社が取り組むmRNA標的低分子創薬の領域は、今後、国内外のバイオテク企業や製薬会社との競争の激化が予想されます。このような状況の中、当社は、製薬会社との共同創薬研究及び自社研究を通じて蓄積した知見を当社のプラットフォーム技術にフィードバックするとともに、大学との共同研究や他社との業務提携等により新技術を積極的に取り込むことで、プラットフォームの機能拡充による技術競争力の強化を図ります。 ④ 事業領域の拡大当社は、製薬会社との共同創薬研究及び自社研究を通じて、mRNA解析技術を飛躍的に向上させました。mRNA標的低分子創薬にとどまらず、核酸医薬品の創出やmRNA医薬品の設計など、新たな事業領域の拡大の可能性について検討します。 ⑤ 知的財産の保護当社は、競争力の確保や将来の事業展開のため、当社独自の創薬技術の特許権利化及び自社開発した各種ソフトウェアの秘匿化を進めています。引き続き、専門分野の弁理士・弁護士と連携しながら、新規技術の権利化や新規ソフトウェアの秘匿化に努めます。 ⑥ コーポレート・ガバナンスの強化当社は、急速に事業を拡大しており、上場後はさらなるコーポレート・ガバナンスの強化が課題となります。当社は、役員による業務執行に係る適正な意思決定を行い、法令や社内規程を遵守し、健全性と透明性の高い経営体制の構築に努めます。
事業等のリスク 3 【事業等のリスク】
当社の事業運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。中には当社として必ずしも重要なリスクとは考えていない事項も含まれておりますが、投資判断上、もしくは当社の事業活動を十分に理解する上で重要と考えられる事項については、投資家や株主に対する積極的な情報開示の観点からリスク要因として挙げております。当社はこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載も併せて、慎重に検討した上で行っていただく必要があると考えます。また、本項は投資判断のためのリスクを全て網羅したものではなく、これら以外にも様々なリスクを伴っていることにご留意いただく必要があると考えます。なお、文中の将来に関する記載は、提出日現在において当社が判断したものであります。 発生可能性発生する時期影響度(1) 医薬品の研究開発事業一般に関するリスク ①研究開発の不確実性に関する事項小不特定大②薬機法などの規制に関する事項小不特定小③提携先の製造物責任に関する事項小不特定小④医薬品行政に関する事項小不特定小
(2) 事業活動に由来するリスク ①同業他社との競合に関する事項小不特定中②研究用資材の調達に関する事項小不特定小③法的な紛争の可能性に関する事項小不特定小④製薬会社との共同創薬研究契約に関する事項小不特定小⑤研究所の使用に関する事項小不特定小⑥mRNA標的低分子医薬品市場の成長可能性に関する事項小不特定小(3) 知的財産権に関するリスク ①知的財産権の出願・取得に関する事項小不特定小②第三者知的財産権に関する事項小不特定小③知的財産に関する紛争に係る事項小不特定小(4) 業績、財務及び資本政策等に関するリスク ①資金繰りに関する事項小不特定小②資金使途に関する事項小不特定小③新株発行による資金調達に関する事項小不特定小④新株予約権に関する事項小不特定小⑤配当政策に関する事項小不特定小⑥収益の変動性に関する事項小不特定小⑦為替変動に関する事項小不特定小(5) 人材及び組織に由来するリスク ① 小規模組織に関する事項小不特定小② 人材への依存に関する事項小不特定小③ 情報セキュリティに関する事項小不特定小 発生可能性発生する時期影響度(6) 自然災害等に由来するリスク ① 災害等の発生に関する事項小不特定小② 感染症に関する事項小不特定小(7) その他に由来するリスク ① コンプライアンスに関する事項小不特定小② 社歴の浅さに関する事項小不特定小③ 風説・風評の発生に関する事項小不特定小 (1) 医薬品の研究開発事業一般に関するリスク① 研究開発の不確実性に関する事項医薬品の研究開発は、初期の創薬研究から上市に至るまで長期間を要するとともに、上市までに多額の研究開発投資が必要となります。また、有用な薬効を確認できない場合や副作用など安全性への懸念が生じた場合には、研究開発の延長や中止の判断が行われるなど、研究開発には不確実性が存在します。一般に医薬品の開発の成功の可能性は、他の産業と比較して相対的に低いものとされております。このような一般的な状況のほか、当社はプラットフォーム型ビジネスモデルのため、研究開発の進行が、自社のみではコントロールできず、提携先の方針等によって左右される点、現時点でリード化合物最適化までの創薬研究プロセスを完遂した実績がない点がリスクとして挙げられます。しかしながら、当社は、非臨床試験前の創薬研究を主な業務としており、製薬パートナーが行う非臨床試験以降の開発に係るコストを負担することはありません。また、当社は現状ではプラットフォーム型ビジネスモデルのため、開発・上市まで進捗しなくとも短期の一時金、研究支援金、研究マイルストーンの事業収益を計上させるような契約を締結することにより、安定的な業績確保を可能となるようにしております。さらに、当社の業務範囲である創薬研究は、その後の開発・販売と比較して期間が短く、「医薬品の研究開発」全期間と比較すると、リスクが限定されると考えております。当社は複数の製薬会社と複数の創薬研究プロジェクトを実施することで、契約一時金、研究支援金、マイルストーン等の多様な収益を獲得してリスクを分散し、軽減するよう努めております。しかしながら、研究開発の不確実性が当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 薬機法などの規制に関する事項医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬機法やその他の関連法令、ガイドラインにより様々な規制を受けております。当社は、製薬会社との共同創薬研究で医薬品候補化合物を取得した場合、当該製薬会社に化合物の権利を導出する予定であり、かかる場合には薬機法等の規制の影響を直接受ける可能性は低いと考えております。しかしながら、導出先の法域で特殊な法規制が存在する場合、各国の薬機法等の規制に今後大きな変更が生じ、導出した化合物の薬事承認の取得等に影響が出たり、当社が新たに規制の対象になった場合等には、計画どおりの事業収益が獲得できず又は当社に体制整備等の負担が生じ、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 提携先の製造物責任に関する事項当社は、医薬品の開発、製造及び販売を行っておらず、製造物責任の影響を直接受けることは基本的にはありません。しかしながら、将来的には、当社から導出し提携先の製薬会社により開発・上市された医薬品について製造物責任の問題が生じた場合には、当社は計画どおりの事業収益が獲得できない等により当社の収益が影響を受ける可能性があります。また、当社にレピュテーションリスクが生じる可能性があるほか、想定外の副作用等が発生した場合に当社に直接損害賠償請求等の訴訟が提起される可能性や提携先から損害賠償請求を受ける可能性があります。このように、提携先の製薬会社により開発・上市された医薬品について製造物責任の問題が生じた場合には当社も影響を受けることにより、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ④ 医薬品行政に関する事項医薬品の販売価格は、日本及びその他各国政府の医療保険政策など薬価に関する規制の影響を受けます。当社は、医薬品候補化合物を製薬会社に導出する方針であるため、これらの規制の影響を直接受けることはありません。しかしながら、今後、導出した医薬品候補化合物が最終的に医薬品として上市され、当該医薬品にとって想定外の薬価改定や医療保険制度の改定等が実施される等により、計画どおりの事業収益を獲得できなくなる可能性があり、あるいは中長期的に薬価が引き下げられた場合には、今後開始する共同創薬研究契約の条件が悪くなる可能性がある等により、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業活動に由来するリスク① 同業他社との競合に関する事項当社の創薬プラットフォームは、mRNA標的低分子創薬に必要な技術群をワンストップで提供します。特に、製薬会社のニーズの高い任意の遺伝子に対してmRNA上に種々の部分構造を発見し、ターゲット構造を定めることができる点に特徴があります。当社は引き続き、新技術の開発等を通じて創薬プラットフォームの技術力強化に努めますが、競合する他社技術の発生により当社の創薬プラットフォームの優位性が損なわれた場合や創薬プラットフォーム間での競争が激化する等した場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 研究用資材の調達に関する事項当社は、研究用資材を購入し研究を行っているため、研究用資材の調達先の多様化を進めており、現時点では、特定の調達先に依存しておりません。しかしながら、調達先における事故、生産地における災害発生等による被害、社会不安(テロ、戦争、感染症)等により、研究用資材の調達が困難になった場合や研究用資材が値上がりした場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 法的な紛争の可能性に関する事項当社の事業展開上、第三者の権利や利益を侵害した場合、又は相手側が侵害されたと考える場合には、損害賠償等の訴訟を提起されるなど法的な紛争が生じる可能性があります。当社は契約締結の都度、その内容を弁護士に相談し法的な紛争を回避するよう努めておりますが、当社と第三者との間に法的な紛争が生じた場合には、紛争の解決に労力、時間及び費用を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる等により、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ④ 製薬会社との共同創薬研究契約に関する事項当社は、パートナーと共同創薬研究契約を締結し、共同で研究活動を行っております。各パートナーにおける経営環境の変化や経営方針の変更など当社が制御し得ない要因によって当該契約が解除された場合、あるいは研究が中断・中止・遅延となった場合には、当社の事業戦略や事業計画が変更となり、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、相手先の事情等により共同創薬研究契約自体が締結できない場合も想定され、その場合には当社の事業戦略や事業計画が変更となり、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ 研究所の使用に関する事項当社は、新潟薬科大学の研究室及びかわさき新産業創造センターのインキュベーション施設の一部を、当社研究所として使用しております。このため、両施設の使用ができなくなった場合には、当社研究所の移転を余儀なくされ、追加的な設備投資や賃借料の発生などによって、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ mRNA標的低分子医薬品市場の成長可能性に関する事項当社は、主にmRNA標的低分子医薬品の創薬研究を行っております。mRNA標的低分子医薬品は創薬標的の枯渇という業界の課題を解決できると考えられ、また、創出される低分子医薬品は製造法なども確立していることから、次世代創薬の本命ととらえる企業もあり近年は多くの企業の参入があります。当社は、当該市場が引き続き成長すると期待しており、今後も継続的に業界動向の情報収集に努め、経営環境の変化に応じた事業運営を行う方針です。しかし、創薬標的がmRNAであることによる毒性リスクなどが顕在化したり、mRNA標的低分子医薬品以外の有力な次世代創薬の開発等による医薬品市場におけるmRNA標的低分子医薬品の位置づけが変化したりすることにより、想定どおりにmRNA標的低分子医薬品市場が拡大しなかった場合や、共同創薬研究に係る提携先が想定どおりに見つからなかった場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (3) 知的財産権に関するリスク① 知的財産権の出願・取得に関する事項当社は、事業運営上必要な特許権等の知的財産権の出願・取得を進めておりますが、現在出願中の全ての知的財産が登録査定を受けられるとは限りません。また、登録後も異議申立てや無効審判請求により、権利の一部又は全てが無効化されるなどの可能性があります。当社は専門分野の弁理士・弁護士と連携しリスクの軽減に努めておりますが、当社の事業運営上重要な特許権等が取得できない場合や権利の一部又は全てが無効化された場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 第三者知的財産権に関する事項当社は、第三者の知的財産権の侵害及び事業運営上第三者より使用許諾を受けた知的財産権の権利失効を、リスクとして認識し、専門分野の弁理士・弁護士と連携して、第三者の知的財産権の侵害や知的財産権の失効を回避するよう努めております。知的財産権の使用許諾については、許諾先との適切な契約締結により極力リスクを回避しておりますが、当社が予期せずに権利失効した場合には知的財産権が独占して使用できなくなります。また、第三者の知的財産権の侵害については完全に当社側で検知することは難しく、予期せず侵害した場合には、損害賠償請求、使用差止め、権利に関する使用料等の支払い請求等が発生します。このように、第三者知的財産権に関するリスクが顕在化した場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 知的財産に関する紛争に係る事項当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、現在、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社は、専門分野の弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。今後、当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、また、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる等により、このような事象が発生した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (4) 業績、財務及び資本政策等に関するリスク① 資金繰りに関する事項当社の属する医薬品業界では、一般的に多額の研究開発資金を長期にわたって先行投資する必要があります。当社は、非臨床試験以降の開発を行っていませんが、創薬プラットフォームの技術力強化のために先行投資をしており、今後も事業拡大のため必要に応じて設備投資等に資金を投じていく方針です。当社のプラットフォームビジネスに関して、コスト面では、主に研究開発費と販売費及び一般管理費が多くを占め、年度によって大きな変動はありません。しかし、将来は、プラットフォームビジネスと並行して、自社創薬ビジネスに取り組み、さらなる成長を目指すことを検討しております。そのような場合には追加で臨床試験等のコストが発生する可能性があります。収益面では、短期的にはプラットフォームビジネスをベースとした共同創薬研究契約に基づく、契約一時金収入、研究支援金収入、研究マイルストーン収入を確保しておりますが、将来、自社創薬ビジネスに取り組んだ場合は、ライセンス収入及び開発マイルストーン収入の獲得を目指します。当社は、自社創薬研究の要否及び今後の契約締結状況を鑑み、必要に応じて適切な時期に資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る方針ですが、適切な時期に資金調達ができない場合及び投資に比べ収益が小さい場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 資金使途に関する事項当社が上場時の公募増資により調達する資金は、プラットフォーム事業の強化のみならず、上場後に計画している自社創薬に係る研究開発費、それらに関連する設備・人材への投資等に充当する方針です。しかし、研究開発活動の成果が収益に結びつくには長期間を要するうえに、研究開発投資から期待した成果が得られる保証はありません。その結果、調達した資金が期待される利益に結びつかない場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 新株発行による資金調達に関する事項当社は、将来の事業拡大に伴い、増資を中心とした資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。 ④ 新株予約権に関する事項当社は、当社取締役、従業員及び社外協力者の意欲や士気を高め、また優秀な人材を確保する観点から、ストック・オプション制度を採用しています。当社の発行済み新株予約権の権利が行使された場合には、新株式が発行され、1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。今後も優秀な人材の確保のため、株式価値の希薄化に配慮しつつ同様のインセンティブ・プランを継続する可能性があります。 ⑤ 配当政策に関する事項当社は創業以来、株主に対する利益配当及び剰余金配当を実施しておりません。当面は、企業体質の強化及び研究活動の継続的な実施に備えた資金の確保を優先し、配当は行わない方針です。株主への利益還元については、当社の重要な経営課題と認識しており、将来的には財政状態及び経営成績を勘案しつつ利益配当及び剰余金配当を検討する所存ですが、収益計上額の大幅な変動又は収益計上の時期の遅延等により、将来的な利益配当及び剰余金配当が遅れる可能性があります。 ⑥ 収益の変動性に関する事項当社の収益構造は、契約一時金、研究支援金及びマイルストーンの達成等に伴う収入が中心です。収益の変動性が高く、契約を想定通りに締結できなかった場合、想定通りに契約を締結できた場合であっても提携先とのその後の研究方針の不一致等により共同創薬研究契約等が解消された場合、その他、新規契約の契約一時金、進捗に伴うマイルストーン収入(ロイヤリティ収入)の契約金額や計上時期により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ⑦ 為替変動に関する事項当社は、海外に拠点を置く製薬会社と共同創薬研究の締結を目指しております。また、共同創薬研究契約以外にも、海外拠点の弁護士事務所への相談等海外との取引が発生する可能性があります。これらの契約を締結し、また、取引が発生した場合には、外貨建取引の発生が見込まれることから為替変動リスクにさらされる可能性があります。したがって、急激な為替変動が生じた場合等には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (5) 人材及び組織に由来するリスク① 小規模組織に関する事項当社は、医薬品等の研究を行う企業としては小規模組織であるため、各役職員が担当する業務及び責任範囲は相対的に広範となる場合が多く、退職あるいは休職等に対応する補充要員が十分でない環境にあります。今後の事業拡大に伴い、必要な人員補強を図っていきますが、十分な人員の確保又は教育ができる保証はなく、また、多くの人材流出等があった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 人材への依存に関する事項当社は、小規模な組織であります。自社ソフトウェアの開発は、当社の創業者であり代表取締役社長である中村慎吾に多分に依存しております。当社では、過度に特定の人物に依存しない組織的な経営体制の強化を進めておりますが、何らかの理由により、当社代表取締役社長中村慎吾をはじめとする特定の経営陣や責任者等が当社の業務に従事することが困難になった場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 情報セキュリティに関する事項当社は、製薬会社の創薬ターゲットに関する情報をはじめ、社内外の技術、事業開発等に関する機密情報を有しています。これらの情報の外部への流出を防止するため、セキュリティシステムの継続的な改善を図るとともに、情報の取り扱いに関する社員教育、情報へのアクセス権限管理、及び内部管理体制の強化に取り組んでいます。しかしながら、予期せぬ事態により情報が流出する可能性は否定できず、このような事態が生じた場合には、社会的信用の失墜を招くなど、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (6) 自然災害等に由来するリスク① 災害等の発生に関する事項当社は、東京都品川区に本社、神奈川県川崎市幸区に基礎研究部門である研究所、及び新潟県新潟市秋葉区に応用研究部門である研究所をそれぞれ設置しております。現所在地の周辺地域において、地震、噴火、水害等の自然災害が発生し、当社設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 感染症に関する事項当社は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機に、役職員に感染リスクの軽減及び安全確保を目的として在宅勤務、時差出勤の推進、及びオンラインミーティングの活用を推進しております。しかしながら、将来的に新型コロナウイルス感染症やその他の感染症の感染拡大等により、本社・研究所の活動に影響が生じた場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 (7) その他に由来するリスク① コンプライアンスに関する事項当社は、法令等諸規則が遵守されるよう、役職員に対するコンプライアンスの徹底に関する教育・啓蒙等を行っておりますが、こうした対策が必ずしも有効に機能するとは限りません。法令違反等が発生した場合や事故や不正等を役職員が起こした場合、損失の発生、行政処分や当社の社会的信用の失墜を招くこと等により、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ② 社歴の浅さに関する事項当社は、2016年11月に設立された社歴の浅い企業であります。当社は、豊富な経験を有する経営陣及び各部門責任者により運営されているものの、企業としては未経験のトラブルが発生する可能性は否定できず、その場合の組織としての対応能力については、一定のリスクがあり、そのような未経験のトラブルが発生した場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 ③ 風説・風評の発生に関する事項当社並びに当社の関係者及び取引先に対する否定的な風説や風評は、それが正確な事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、当社の社会的信用に悪影響を与える可能性があります。マスコミ報道、アナリストレポート又はインターネット上の書き込み等によりこうした事態が発生した場合には、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。 ① 経営成績当社は創薬プラットフォーム「ibVISⓇ」を活用し、製薬会社との共同研究創薬研究を通じてmRNA標的低分子医薬品の創出に取り組むプラットフォーム型ビジネスを展開してまいりました(① mRNA標的低分子創薬事業)。また、当社のmRNA関連創薬の取組みにも進展がありました(② その他のmRNA関連創薬事業)。 ① mRNA標的低分子創薬事業当社のmRNA標的低分子創薬事業では、東レ株式会社、塩野義製薬株式会社、ラクオリア創薬株式会社(以下「ラクオリア創薬」という)、および武田薬品工業株式会社(以下「武田薬品」という)との共同創薬研究が進行中であり、当事業年度における主な進捗は以下のとおりであります。当社と武田薬品は、2023年6月に武田薬品が重点疾患領域に定める複数の遺伝性疾患に対して、mRNAを標的とする低分子医薬品の創出を目的とした新規共同創薬研究契約を締結しました。本契約では、創薬研究の初期から上市・販売にいたる全ての経済条件を定めており、本契約の締結に伴い当社が保有するプラットフォーム技術へのアクセスフィーとしての契約一時金にくわえ、研究支援金を武田薬品より取得しました。当社とラクオリア創薬は、2022年12月より、ラクオリア創薬が定めるがん疾患に対してmRNAを標的とする低分子医薬品の創出を目的とした共同創薬研究を実施しております。2023年12月には、本共同創薬研究において事前に定めた研究マイルストーンを達成したことから、マイルストーン収入をラクオリア創薬より受領しました。 ② その他のmRNA関連創薬事業核酸医薬品をはじめとしたmRNA関連創薬については、今なお技術開発が必要な分野であり、現時点において幅広い治療ニーズに十分応えられているとはいえません。当社と三菱瓦斯化学株式会社(以下「三菱瓦斯化学」という)は、2023年12月、核酸医薬品の研究・開発・製造を目指して共同研究契約の締結に向けた検討を開始することに合意いたしました。三菱ガス化学の2024年度から始まる次期中期経営計画「Grow UP 2026」においても“医・食”分野での事業を拡大する方向性が立案されていることから、核酸医薬品に関する共同研究契約の締結に向けた協議を進めてまいります。 以上のことから、当事業年度の事業収益は360,356千円(前年度は178,801千円)、事業費用は研究開発費136,552千円(前年度は148,332千円)を含む322,733千円(前年度は317,711千円)となりました。この結果、営業利益は37,623千円(前年度は138,909千円の営業損失)、経常利益は35,898千円(前年度は138,455千円の経常損失)、当期純利益は33,048千円(前年度は141,381千円の当期純損失)となりました。なお、当社は創薬プラットフォーム事業の単一のセグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。 ② 財政状態(資産)当事業年度末の総資産は1,655,531千円となり、前事業年度末に比べて56,954千円増加しました。その主な要因は、有形固定資産が24,037千円減少したものの、現金及び預金が64,679千円、売掛金が23,286千円増加したこと等によるものです。 (負債)当事業年度末における負債は79,892千円となり、前事業年度に比べて23,906千円増加しました。その主な要因は、その他に含まれる未払消費税等が21,714千円増加したこと等によるものです。 (純資産)当事業年度末における純資産は1,575,639千円となり前事業年度と比べて33,048千円増加しました。その要因は 当期純利益を33,048千円計上したことによるものです。 ③ キャッシュ・フローの状況当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ64,679千円増加し、1,549,111千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果、獲得した資金は68,710千円(前年同期は148,780千円の資金の支出)となりました。これは主な要因として税引前当期純利益35,898千円(前年同期は138,529千円の税引前当期純損失)、減価償却費の計上26,943千円(前年同期は30,484千円)等があった一方で、売上債権の増加額23,286千円(前年同期は増加額31,453千円)等があったことによるものであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果、支出した資金は2,031千円(前年同期は55,547千円の資金の支出)となりました。これは主な要因として有形固定資産の取得による支出2,031千円(前年同期は取得による支出54,939千円)があったことによるものであります。 (財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動の結果、支出した資金は2,000千円(前年同期は獲得・支出した資金はありませんでした)これは上場関連費用の支払いによるものです。 ④ 生産、受注及び販売の実績a.生産実績当社の行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載はしておりません。 b.受注実績当社の行う事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載はしておりません。 c.販売実績第8期事業年度における販売実績は、次のとおりであります。 第8期事業年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)セグメントの名称販売高(千円)前年同期比(%)創薬プラットフォーム事業360,356201.5合計360,356201.5
(注)1.当社は創薬プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。2.第7期及び第8期において、販売実績に著しい変動がありました。これはともに新規顧客との契約による契約金の収入及び既存顧客との契約によるマイルストーン達成による収入による事業収益の計上があったことによるものであります。3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。相手先第7期事業年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)第8期事業年度(自 2023年1月1日至 2023年12月31日)販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)興和㈱50,03028.0--塩野義製薬㈱90,00050.330,0008.3ラクオリア創薬㈱32,50018.280,00022.2武田薬品工業㈱--216,33360.0
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容当事業年度の事業収益は360,356千円(前事業年度は178,801千円)となり前事業年度より181,554千円増加しました。事業収益が増加した原因は主に新規の共同創薬研究契約の締結によるものです。当事業年度の事業費用は322,733千円(前事業年度は317,711千円)となり、5,022千円増加しましたが、これは主に外部委託していた研究を社内で行うなどをしたことにより、当事業年度の研究開発費136,552千円(前事業年度は148,332千円)が11,780千円減少したためであります。このような結果、当事業年度の当期純利益は33,048千円(前事業年度は当期純損失141,381千円)となりました。 なお、財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況 ② 財政状態」に含めて記載しております。 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。当社における主な資金需要は、研究開発費であります。これらの資金需要につきましては、自己資金を基本としつつ、必要に応じて、金融機関等からの借り入れによる資金調達にて対応する方針であります。なお、当事業年度末において、金融機関等からの借入金はありません。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、当事業年度末における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要とされております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。しかしながら実績の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。 当社の財務諸表を作成するに当たって採用した重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載のとおりであります。 また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、重要な会計上の見積りを要する項目はないと判断しております。 ④ 経営成績に重要な影響を与える要因について経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。 ⑤ 経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載しております。
経営上の重要な契約等 5 【経営上の重要な契約等】
(1) 製薬会社との共同創薬研究契約当社は、2021年以降、製薬会社と以下に示す内容の共同創薬研究契約を締結しております。相手先の名称相手先の所在地契約の名称契約締結日契約内容東レ株式会社日本共同創薬研究契約2021年7月15日長鎖RNA(mRNAを主とし、おおよそ長さ300塩基以上のRNA) に対して低分子医薬品の創出を目的とした共同創薬研究契約。医薬品候補化合物の取得にいたるまでの共同創薬研究実施。<研究期間>2021年7月12日から共同創薬研究の実施期間終了まで塩野義製薬株式会社日本共同創薬研究契約2021年11月16日長鎖RNA(mRNAを主とする長さ300塩基以上のRNA)に対して低分子医薬品の創出を目的とした共同創薬研究契約。医薬品候補化合物の取得にいたるまでの共同創薬研究実施。開発以降のマイルストーン及び販売実績に応じたロイヤリティについても規定。<研究期間>2021年11月16日から共同創薬研究の実施期間終了までラクオリア創薬株式会社日本共同創薬研究契約2022年12月22日mRNAを主とし、おおよそ長さ300塩基以上のRNAに対して低分子医薬品の創出を目的とした共同創薬研究契約。医薬品候補化合物の取得にいたるまでの共同創薬研究実施。開発以降のマイルストーン及び販売実績に応じたロイヤリティについても規定。<研究期間>2022年12月22日から共同創薬研究の実施期間終了まで武田薬品工業株式会社日本COLLABORATIVE RESEARCH AND LICENSE AGREEMENT2023年6月19日特定のmRNAに対して低分子医薬品の創出を目的とした共同創薬研究契約。医薬品候補化合物の取得にいたるまでの共同創薬研究実施。開発以降のマイルストーン及び販売実績に応じたロイヤリティについても規定。<研究期間>2023年6月19日から共同創薬研究の実施期間終了まで
(2) アカデミアとの共同研究契約当社は、新潟薬科大学と以下の共同研究契約を締結しています。この契約のもと、当社の応用研究部門を新潟薬科大学内に設置しております。大学名大学所在地契約の名称契約締結日契約内容新潟薬科大学日本共同研究契約2023年4月1日創薬標的に対してスモールガイドASO(sgASO)技術、ASO技術及びRNA結合低分子化合物技術による医薬品候補化合物の取得を目的とした共同研究契約。<研究期間>2023年4月1日から2024年3月31日まで(2017年より各年度更新) (3) その他の重要な契約当社は、三菱瓦斯化学株式会社との間で、投資契約に基づく権利について、以下に示す内容の契約を締結しております。相手先の名称相手先の所在地契約の名称契約締結日契約内容三菱瓦斯化学株式会社日本三菱瓦斯化学株式会社と株式会社Veritas In Silico間の覚書2021年12月17日当社が直接又は間接的に核酸化合物の製造を委託する場合における三菱瓦斯化学株式会社の優先交渉権等について規定。<契約期間> 2021年12月17日から契約失効まで継続<契約失効の主な条件>契約失効以下の事項のうちいずれか早い時点で終了する。・三菱瓦斯化学株式会社が終了することについて書面による合意をしたとき・2021年12月17日締結の「株主間契約書」終了後3年が経過した時
研究開発活動 6 【研究開発活動】
(1) 研究開発体制当社は、研究部門として、基礎研究部門及び応用研究部門を有しています。基礎研究部門の拠点である本社及び研究所(神奈川県川崎市幸区)では、主として製薬会社とのmRNAを標的とする低分子創薬事業のプロジェクト推進や、計算化学研究をはじめとしたibVISⓇプラットフォームの基盤技術強化に取り組んでいます。応用研究部門の研究拠点である研究所(新潟県新潟市秋葉区)では、医薬品候補化合物を取得するための細胞を用いた評価実験や、mRNA標的低分子医薬品の作用機序解析等に取り組んでいます。基礎研究部門と応用研究部門の研究結果を当社のプラットフォーム技術に取り入れることで、パートナーとの共同創薬研究契約に基づく研究を実施してきました。
(2) 研究開発費の状況当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は136,552千円となりました。基礎研究部門で研究に従事する従業員数は5名、応用研究部門で研究に従事する従業員数は4名です。研究開発費の主な内容は、研究員の人件費、アカデミア等との共同研究先への研究費の支払い、新技術導入のための委託業務費の支払い、及び研究に必要な試薬等購入の研究用材料費であります。
設備投資等の概要 1 【設備投資等の概要】
当事業年度において実施した設備投資等の総額は2,031千円であり、その主な内容は、工具、器具及び備品の購入に係るものであります。なお、当事業年度において、重要な設備の除却、売却等はありません。なお、当社は単一セグメントであるためセグメント別の記載はしておりません。
主要な設備の状況 2 【主要な設備の状況】
2023年12月31日現在事業所名(所在地)設備の内容帳簿価額(千円)従業員数(名)工具、器具及び備品ソフトウェア合計本社(東京都品川区)本社機能1,471-1,4716研究所(神奈川県川崎市幸区)研究施設18,88921419,1034研究所(新潟県新潟市秋葉区)研究施設3,2842263,5105
(注)1.現在休止中の主要な設備はありません。2.各事業所の建物は賃借しており、年間賃借料は、本社機能を有する東京都品川区の建物が5,961千円、研究施設である川崎市幸区の建物が4,061千円です。3.当社は単一セグメントであるためセグメント別の記載はしておりません。
設備の新設、除却等の計画 3 【設備の新設、除却等の計画】
(1) 重要な設備の新設等 事業所名(所在地)設備の内容投資予定額資金調達方法着手年月完了予定年月完成後の増加能力総額(千円)既支払額(千円)研究所(神奈川県川崎市幸区)研究機器40,000-増資資金2024年12月期中2024年12月期中(注)1
(注) 1.完成後の増加能力については、研究設備であり、合理的な算出が困難なため、記載しておりません。2.当社は単一セグメントであるためセグメント別の記載はしておりません。
(2) 重要な設備の除却等 経常的な設備の更新のための除却等を除き、重要な設備の除却等の計画はありません。
研究開発費、研究開発活動136,552,000
設備投資額、設備投資等の概要2,031,000

Employees

平均年齢(年)、提出会社の状況、従業員の状況44
平均勤続年数(年)、提出会社の状況、従業員の状況4
平均年間給与、提出会社の状況、従業員の状況6,824,000

Investment

株式の保有状況 (5) 【株式の保有状況】
該当事項はありません。

Shareholders

大株主の状況 (6) 【大株主の状況】
2023年12月31日現在
氏名又は名称住所所有株式数(株)発行済株式(自己株式を除く。)の総数に対する所有株式数の割合(%)
中村 慎吾東京都渋谷区1,400,00025.45
三菱瓦斯化学株式会社東京都千代田区丸の内二丁目5番2号731,25613.29
New Life Science 1号投資事業有限責任組合東京都港区虎ノ門五丁目13番1号556,44410.11
三菱UFJライフサイエンス1号投資事業有限責任組合東京都中央区日本橋二丁目3番4号512,6409.32
上村 孝東京都日野市400,0007.27
IEファスト&エクセレント投資事業有限責任組合東京都港区芝二丁目3番12号344,0006.25
梨本 正之新潟県新潟市西区298,3905.42
名古屋大学・東海地区大学広域ベンチャー1号投資事業有限責任組合東京都千代田区丸の内二丁目4番1号285,8345.20
エムスリー株式会社東京都港区赤坂一丁目11番44号240,0004.36
みずほ成長支援第3号投資事業有限責任組合東京都千代田区内幸町一丁目2番1号166,6663.03
計―4,935,23089.71
株主数-個人その他16
株主数-その他の法人3
株主数-計19
氏名又は名称、大株主の状況みずほ成長支援第3号投資事業有限責任組合
株主総会決議による取得の状況 (1) 【株主総会決議による取得の状況】
該当事項はありません。
株主総会決議又は取締役会決議に基づかないものの内容 (3) 【株主総会決議又は取締役会決議に基づかないものの内容】
該当事項はありません。

Shareholders2

発行済株式及び自己株式に関する注記 1.発行済株式に関する事項株式の種類当事業年度期首(株)増加(株)減少(株)当事業年度末(株)普通株式1,100,0004,401,314-5,501,314A種優先株式590,657-590,657-B種優先株式500,000-500,000-C種優先株式560,000-560,000- (変動事由の概要) 普通株式の増加数の内訳、A種優先株式の減少数の内容、B種優先株式の減少数の内容、C種優先株式の減少数  の内容は次のとおりであります。2023年7月31日開催の臨時株主総会の決議により、定款の一部変更を行い、A種優先株式、B種優先株式及びC種優先株式に関する定款の定めを廃止し、同日付でA種優先株式590,657株、B種優先株式500,000株及びC種優先株式560,000株をすべて普通株式に変更しております。これにより発行済株式総数のうち普通株式が1,650,657株増加しております。また、2023年7月31日開催の取締役会決議により、2023年8月17日付で普通株式1株につき2株の株式分割を行っております。 2.自己株式に関する事項 該当事項はありません。

Audit1

監査法人1、個別東 陽 監 査 法 人
独立監査人の報告書、個別 独立監査人の監査報告書 2024年3月15日株式会社Veritas In Silico取 締 役 会  御中 東 陽 監 査 法 人東京事務所指定社員業務執行社員公認会計士 中 野 敦 夫 指定社員業務執行社員公認会計士 川久保 孝之 監査意見当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている株式会社Veritas In Silicoの2023年1月1日から2023年12月31日までの第8期事業年度の財務諸表、すなわち、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書、重要な会計方針、その他の注記及び附属明細表について監査を行った。当監査法人は、上記の財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、株式会社Veritas In Silicoの2023年12月31日現在の財政状態並びに同日をもって終了する事業年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。 監査意見の根拠当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。 その他の記載内容その他の記載内容は、有価証券報告書に含まれる情報のうち、財務諸表及びその監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査役及び監査役会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。当監査法人の財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。 財務諸表に対する経営者並びに監査役及び監査役会の責任経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。監査役及び監査役会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。 財務諸表監査における監査人の責任監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。・ 不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。・ 財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。・ 経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。・ 経営者が継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する財務諸表の注記事項が適切でない場合は、財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。・ 財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた財務諸表の表示、構成及び内容、並びに財務諸表が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。監査人は、監査役及び監査役会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。監査人は、監査役及び監査役会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去又は軽減するためにセーフガードを講じている場合はその内容について報告を行う。 利害関係会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。以  上 
(注) 1.上記の監査報告書の原本は当社(有価証券報告書提出会社)が別途保管しております。2.XBRLデータは監査の対象には含まれていません。
その他の記載内容、個別 その他の記載内容その他の記載内容は、有価証券報告書に含まれる情報のうち、財務諸表及びその監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査役及び監査役会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。当監査法人の財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。

BS資産

工具、器具及び備品(純額)23,645,000
有形固定資産23,645,000
ソフトウエア440,000
無形固定資産1,414,000
投資その他の資産1,263,000

BS負債、資本

未払金24,464,000
未払法人税等2,850,000
資本剰余金1,452,590,000
利益剰余金33,048,000
負債純資産1,655,531,000

PL

販売費及び一般管理費186,181,000
受取利息、営業外収益14,000
営業外収益275,000
その他、流動資産1,539,000
営業外費用2,000,000
法人税、住民税及び事業税2,850,000
法人税等2,850,000

PL2

当期変動額合計33,048,000

FS_ALL

現金及び現金同等物の残高1,549,111,000
売掛金59,070,000
役員報酬、販売費及び一般管理費58,280,000
減価償却費、販売費及び一般管理費1,968,000
現金及び現金同等物の増減額64,679,000
株主資本1,575,639,000
研究開発費、販売費及び一般管理費136,552,000

営業活動によるキャッシュ・フロー

減価償却費、営業活動によるキャッシュ・フロー26,943,000
その他、営業活動によるキャッシュ・フロー28,518,000
小計、営業活動によるキャッシュ・フロー71,545,000
法人税等の支払額、営業活動によるキャッシュ・フロー-2,850,000

投資活動によるキャッシュ・フロー

有形固定資産の取得による支出、投資活動によるキャッシュ・フロー-2,031,000

概要や注記

連結財務諸表等の適正性を確保するための特段の取組み、経理の状況当社は、財務諸表等の適正性を確保するための特段の取組みを行っております。具体的には、専門的な情報を有する団体等からの印刷物やメールなどによる情報提供、各種セミナーへの参加、会計専門誌の定期購読を通じて、積極的に情報収集に努めることにより、会計基準等の内容を適切に把握し、変更への的確な対応を行っております。
有形固定資産の減価償却累計額の注記 ※2 有形固定資産の減価償却累計額 前事業年度(2022年12月31日)当事業年度(2023年12月31日)工具、器具及び備品74,286千円99,072千円
受取手形、売掛金及び契約資産の金額の注記 ※1 売掛金のうち、顧客との契約から生じた債権及び契約資産の金額は、財務諸表「注記事項(収益認識関係)3.(1)契約資産及び契約負債の残高等」に記載しております。
契約負債の金額の注記 ※3 契約負債については、流動負債の「前受金」に計上しております。契約負債の金額は、財務諸表「注記事項(収益認識関係)3.(1)契約資産及び契約負債の残高等」に記載しております。
主要な販売費及び一般管理費 ※3 販売費及び一般管理費のうち一般管理費に属する費用の割合は前事業年度100%、当事業年度100%であります。主要な費目及び金額は、次のとおりであります。 前事業年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)当事業年度(自 2023年1月1日至 2023年12月31日)役員報酬57,880千円58,280千円給与手当40,758千円44,818千円支払報酬23,421千円23,826千円減価償却費3,069千円1,968千円
顧客との契約から生じる収益の金額の注記 ※1 事業収益については、顧客との契約から生じる収益及びそれ以外の収益を区分して記載しておりません。顧客との契約から生じる収益の金額は、財務諸表「注記事項(収益認識関係)1.顧客との契約から生じる収益を分析した情報」に記載しております。
新株予約権等に関する注記 3.新株予約権等に関する事項     該当事項はありません。
配当に関する注記 4.配当に関する事項 該当事項はありません。
現金及び現金同等物の期末残高と貸借対照表に掲記されている科目の金額との関係 ※現金及び現金同等物の期末残高と貸借対照表に掲記されている科目の金額との関係は、次のとおりであります。 前事業年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)当事業年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)現金及び預金1,484,432千円1,549,111千円現金及び現金同等物1,484,432千円1,549,111千円
製品及びサービスごとの情報 1.製品及びサービスごとの情報 単一の製品及びサービスの区分の外部顧客への事業収益が損益計算書の事業収益の90%を超えるため、記載を省略しております。
売上高、地域ごとの情報 (1) 事業収益本邦以外の外部顧客への事業収益がないため、該当事項はありません。
有形固定資産、地域ごとの情報
(2) 有形固定資産 本邦に所在している有形固定資産の金額が貸借対照表の有形固定資産の金額の90%を超えるため、記載を省略しております。
主要な顧客ごとの情報 3.主要な顧客ごとの情報 (単位:千円)顧客の名称又は氏名事業収益ラクオリア創薬㈱80,000武田薬品工業㈱216,333
報告セグメントごとの負ののれん発生益を認識する要因となった事象の概要 【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】
 該当事項はありません。
貸借対照表 ① 【貸借対照表】
(単位:千円) 前事業年度(2022年12月31日)当事業年度(2023年12月31日)資産の部 流動資産 現金及び預金1,484,4321,549,111 売掛金35,783※1 59,070 貯蔵品16,03216,318 前渡金1,0021,522 前払費用1,7721,645 その他8,1571,539 流動資産合計1,547,1811,629,208 固定資産 有形固定資産 工具、器具及び備品(純額)※2 47,682※2 23,645 有形固定資産合計47,68223,645 無形固定資産 ソフトウエア1,100440 特許権1,189973 無形固定資産合計2,2891,414 投資その他の資産 差入保証金1,0801,067 その他342196 投資その他の資産合計1,4221,263 固定資産合計51,39426,323 資産合計1,598,5761,655,531 (単位:千円) 前事業年度(2022年12月31日)当事業年度(2023年12月31日)負債の部 流動負債 未払金24,18024,464 未払法人税等2,8502,850 前受金24,420※3 26,143 その他4,53526,434 流動負債合計55,98679,892 負債合計55,98679,892純資産の部 株主資本 資本金90,00090,000 資本剰余金 資本準備金1,364,9991,364,999 その他資本剰余金228,97287,591 資本剰余金合計1,593,9711,452,590 利益剰余金 その他利益剰余金 繰越利益剰余金△141,38133,048 利益剰余金合計△141,38133,048 株主資本合計1,542,5901,575,639 純資産合計1,542,5901,575,639負債純資産合計1,598,5761,655,531
損益計算書 ② 【損益計算書】
(単位:千円) 前事業年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)当事業年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)事業収益178,801※1 360,356事業費用 研究開発費※2 148,332※2 136,552 販売費及び一般管理費※3 169,378※3 186,181 事業費用合計317,711322,733営業利益又は営業損失(△)△138,90937,623営業外収益 受取利息1114 助成金収入347- 講義料90199 その他460 営業外収益合計454275営業外費用 上場関連費用-2,000 営業外費用合計-2,000経常利益又は経常損失(△)△138,45535,898特別損失 固定資産除却損74- 特別損失合計74-税引前当期純利益又は税引前当期純損失(△)△138,52935,898法人税、住民税及び事業税2,8512,850法人税等合計2,8512,850当期純利益又は当期純損失(△)△141,38133,048  
株主資本等変動計算書 ③ 【株主資本等変動計算書】
前事業年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) (単位:千円) 株主資本資本金資本剰余金資本準備金その他資本剰余金資本剰余金合計当期首残高790,0001,364,99959,1981,424,197当期変動額 減資△700,000 700,000700,000欠損填補 △530,225△530,225当期純利益又は当期純損失(△) 当期変動額合計△700,000-169,774169,774当期末残高90,0001,364,999228,9721,593,971 株主資本純資産合計利益剰余金株主資本合計その他利益剰余金利益剰余金合計繰越利益剰余金当期首残高△530,225△530,2251,683,9711,683,971当期変動額 減資 --欠損填補530,225530,225--当期純利益又は当期純損失(△)△141,381△141,381△141,381△141,381当期変動額合計388,844388,844△141,381△141,381当期末残高△141,381△141,3811,542,5901,542,590 当事業年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) (単位:千円) 株主資本資本金資本剰余金資本準備金その他資本剰余金資本剰余金合計当期首残高90,0001,364,999228,9721,593,971当期変動額 欠損填補 △141,381△141,381当期純利益又は当期純損失(△) 当期変動額合計 -△141,381△141,381当期末残高90,0001,364,99987,5911,452,590 株主資本純資産合計利益剰余金株主資本合計その他利益剰余金利益剰余金合計繰越利益剰余金当期首残高△141,381△141,3811,542,5901,542,590当期変動額 欠損填補141,381141,381--当期純利益又は当期純損失(△)33,04833,04833,04833,048当期変動額合計174,429174,42933,04833,048当期末残高33,04833,0481,575,6391,575,639
重要な会計方針、財務諸表 (重要な会計方針)1.棚卸資産の評価基準及び評価方法貯蔵品…先入先出法による原価法(貸借対照表価額については収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定) 2.固定資産の減価償却の方法(1) 有形固定資産定率法によっております。なお、主な耐用年数は次の通りであります。工具、器具及び備品 4年~15年
(2) 無形固定資産定額法によっております。特許権 8年なお、自社利用のソフトウェアについては、社内における利用可能期間(5年)に基づいております。(3) 少額減価償却資産取得価額が10万円以上20万円未満の少額減価償却資産については、法人税法の規定に基づき、3年間で均等償却を行っております。 3.収益及び費用の計上基準(収益の計上基準) 当社は、医薬品の研究開発を行っており、共同創薬研究等に基づく契約一時金収入、マイルストーン収入及び研究支援金収入を得ております。 当社の顧客との契約から生じる収益に関する主な履行義務の内容及び当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)は以下のとおりであります。① 契約一時金収入契約一時金収入は、履行義務が充足される一時点であるライセンスを付与した時点で収益を認識しております。② マイルストーン収入マイルストーン収入は、契約上定められた履行義務であるマイルストーンが達成された時点で収益を認識しております。③ ロイヤリティ収入ロイヤリティ収入は、契約相手先の売上収益等を基礎に算定された契約対価であり、契約相手先の売上収益等の発生時点で収益を認識することとしておりますが、現時点において当該収益は発生しておりません。④ 研究支援金収入研究支援金収入は、契約上定められた収入であるため対象期間にわたり収益を認識しております。⑤ 受託研究収入受託研究収入は、受託業務の完了時に収益を認識しております。 4.キャッシュ・フロー計算書における資金の範囲手許現金、随時引き出し可能な預金及び容易に換金可能であり、かつ、価値の変動について僅少なリスクしか負わない取得日から3ヶ月以内に償還期限の到来する短期投資からなっております。