経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 | 2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。 (1) 財政状態及び経営成績の状況 ① 経営成績の分析当第3四半期連結累計期間における世界経済は、好調な個人消費を中心に米国経済の底堅さが見られましたが、金融引き締めの長期化や地政学リスクの顕在化など、先行き不透明な状況が継続しております。また、日本経済は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行に伴い、外食や旅行を中心に消費が回復し、インバウンド需要は大幅に増加しました。一方で、エネルギーコストや原材料価格の高騰を背景とした物価上昇による企業収益の悪化や消費の低迷が懸念されています。このような環境下、当社グループは「もっとお客さまの近くで、多様な価値を創造し続ける企業グループに変革する」という基本方針のもと、中期経営計画「Value Up+」(2021年度-2024年度)に取り組んでいます。6つの重点領域で設定したCSV目標を成長ドライバーとして成長路線を加速させるとともに、“植物のチカラ®”を価値創造の原点に、社会との多様な共有価値の創造を通じた持続的な成長を目指しております。当社グループは、株主資本コストを上回るROE水準の達成を重要な経営目標としております。2022年度にはROICを経営目標に加え、今まで以上に収益性と資産効率性の向上に取り組んでおります。また、「成長性」「積極投資」「持続性」「効率性」の4つの視点でKPIと実行施策をフレームワーク(「達成チャート」)で整理し、2024年度の目標であるROE8.0%、ROIC4.6%の達成に向けた取り組みを進めております。当第3四半期連結累計期間の業績については、以下のとおりとなりました。 (単位:百万円) 前第3四半期連結累計期間当第3四半期連結累計期間増減額前年同期比売上高425,092390,542△34,55091.9%営業利益14,70119,457+4,756132.4%経常利益14,75518,711+3,956126.8%親会社株主に帰属する四半期純利益10,97213,834+2,861126.1% セグメント別の概況≪油脂事業≫油脂事業セグメントでは、油脂・油糧において、天候不順による減産懸念や円安ドル高の進行があるものの、原材料価格が一時期のピークからは下落基調となるなか、適正な販売価格の維持・形成に取り組みました。また、付加価値品の拡販に加え、新たな市場創造やソリューション提案の強化に注力しました。油脂事業セグメント全体では、海外加工油脂の販売単価下落等により減収となりましたが、国内油脂における適正価格での販売等により増益となりました。 ◆油脂・油糧 (単位:百万円) 前第3四半期連結累計期間当第3四半期連結累計期間増減額前年同期比売上高266,390245,113△21,27792.0%営業利益7,96913,575+5,605170.3% [原料の調達環境]原料の調達面では、ドル円相場が前年同期に対して円安ドル高で推移したものの、主要原料である大豆・菜種が歴史的高値となった前年同期と比較して下落したことから、大豆価格、菜種価格ともに前年同期を下回りました。<主要原料相場>大豆相場は、4月以降、ブラジル産の豊作見通しや米国での新穀作付が順調に進んだことで軟調に推移しました。7月には米国の作付面積減少や生産地の高温乾燥から15米ドル台まで上昇しましたが、9月には収穫期の売り圧力を受けたことで12米ドル台まで下落し、10月以降は13米ドル前後で推移しました。菜種相場は、4月以降、カナダ産の生産量回復、豪州産の豊作等、世界需給改善により軟調に推移しましたが、7月にはカナダ生産地の高温乾燥により800カナダドル半ばまで上昇しました。その後、天候改善や他油種に連れ安となり、12月には600カナダドル半ばまで下落しました。<為替相場>ドル円相場は、一昨年の10月に150円台まで円安ドル高が進行した後、米国の利上げ停止と日本の大規模金融緩和政策転換が意識されたことで、一時130円割れまで円高ドル安となりました。しかし、日米ともに金融政策の方向性に変更がないことから6月には140円台を回復し、米国利上げ長期化の見方が強まったことで10月には150円台まで円安ドル高となりました。その後、11月下旬からは徐々に米国の追加利上げ期待が後退し、12月には日銀による早期のマイナス金利解除観測が高まり、年末には140円台前半まで円高ドル安が進行しました。 [油脂の販売]業務用については、原材料価格が歴史的な高値から下落基調となるなか、適正な販売価格の維持・形成に取り組みました。また、「ニーズ協働発掘型営業」により、「最終製品の品質向上」「コスト抑制」「生産性の向上」などの課題解決の質の向上に継続的に取り組みました。商品面ではフライ油の酸化上昇や着色などを抑える「機能フライ油」や、メニューの品質を高める炊飯油や麺さばき油などの「機能性油脂」など、「付加価値型商品群」の積極的な提案による拡販に努めました。新型コロナウイルス感染症の5類への移行により外食需要や観光需要が回復し、販売数量は前年同期を上回りましたが、販売単価が下回ったことで減収となりました。加工用については、物価上昇を背景とした消費マインドの低下による各業界での生産減により、販売数量が前年同期を下回り、減収となりました。ホームユースについては、揚げ物の吸油を抑える「日清ヘルシーオフ」などの拡販により、食用油の価値向上と「新たな価格の均衡点」の形成に努めました。また、オリーブオイル・ごま油などの原材料価格高騰が続くなか、販売価格改定の取り組みに加え、「かけるオイルの定着」や「味つけオイルの市場創造」など付加価値品の継続的な浸透に努めました。この結果、販売単価は前年同期並みとなったものの、物価上昇による生活防衛意識の高まりの影響を受けて販売数量が前年同期を下回ったことから、減収となりました。以上の結果、国内油脂全体では売上高は減収となりましたが、油脂コストが低下するなか、粗利単価が改善したことで増益となりました。 [ミールの販売]大豆ミールについては、シカゴ大豆粕定期が前年同期比で下落したものの、ドル円相場が円安ドル高で推移したことにより販売価格は前年同期並みとなりましたが、搾油量が前年同期比で減少したことから、販売数量が減少し、減収となりました。菜種ミールについても、販売価格は前年同期並みとなりましたが、搾油量減少により販売数量が減少し、減収となりました。 ◆加工油脂 (単位:百万円) 前第3四半期連結累計期間当第3四半期連結累計期間増減額前年同期比売上高92,88478,042△14,84184.0%営業利益5,3804,099△1,28176.2% 海外加工油脂については、マレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.において、上期に船積みが遅れていた欧州主要顧客向けの出荷が回復したことに加え、国内地場取引先向けの販売が好調に推移したこともあり、全体の販売数量は前年を上回りました。一方、パーム油相場の下落に伴い販売価格が下落したことで減収となり、またパーム油時価評価益の減少などもあり、減益となりました。イタリアのIntercontinental Specialty Fats(Italy)S.r.l.においては、新規顧客への拡販が寄与し、増収となりました。また、利益面では前年同期のロシアのウクライナ侵攻によるパーム油の需要増に対する反動減があったものの、既存顧客への安定した販売に加え、新規顧客の獲得もあり、増益となりました。国内加工油脂については、物価上昇に伴う消費者の節約志向や取引先製品のダウンサイズ化・油脂使用量減少といった厳しい状況が続くなか、新規販売先の拡大および既存顧客での新規商品採用により販売数量が増加したこと、コストに見合った適正価格での販売と継続的なコスト改善に取り組んだことにより、増収増益となりました。 ≪加工食品・素材事業≫ (単位:百万円) 前第3四半期連結累計期間当第3四半期連結累計期間増減額前年同期比売上高48,10751,252+3,144106.5%営業利益4601,002+541217.6% 加工食品・素材事業セグメントでは、原材料価格やエネルギーコスト上昇の影響があったものの、チョコレート製品における販売数量増および適正な販売価格への改定により、増収増益となりました。 チョコレートについては、大東カカオ㈱において、新型コロナウイルス感染症の5類への移行に伴う土産市場の需要回復や製パン市場向け調製品の需要回復等により、販売数量は前年同期を上回りました。また、原材料価格やエネルギーコストが上昇するなか、コストに見合った適正な販売価格への改定を進めたことにより、増収増益となりました。シンガポールのT.&C. Manufacturing Co., Pte.Ltd.においては、日本国内における調製品の需要減少に伴い、販売数量が減少しました。インドネシアのPT Indoagri Daitocacaoにおいては、採算改善を優先しながらも既存顧客への販売が堅調に推移したことにより、販売数量は前年同期を上回りました。チョコレート全体では大東カカオ㈱の業績が貢献し、増収増益となりました。調味料は、ドレッシングの販売数量は前年を上回ったものの、原価率上昇や販管費増加の影響が大きく、増収減益となりました。 機能素材・食品は、「体脂肪燃焼体質化」をコンセプトとした機能性マーケティングを継続するとともに、加工食品メーカーとのMCT(中鎖脂肪酸)のコラボレーション商品の上市を進め、市場規模拡大に努めました。原材料価格の上昇に対する適正価格での販売に努めたものの、販管費の増加等により、増収減益となりました。大豆素材・食品は、大豆たん白等の販売において原材料価格の上昇に対する適正価格での販売により、増収増益となりました。 ≪ファインケミカル事業≫ (単位:百万円) 前第3四半期連結累計期間当第3四半期連結累計期間増減額前年同期比売上高15,74314,197△1,54690.2%営業利益1,2521,045△20683.5% ファインケミカル事業セグメントでは、欧州市場における先行き不透明感等により、欧州子会社での販売数量が減少し、減収減益となりました。 ファインケミカル製品については、化粧品向け新製品の上市やテクニカルサポートによるソリューション提案をグローバルで展開し、顧客開拓を進めました。国内化粧品向け需要は回復の兆しを見せています。また、中国市場ではコロナ禍からの回復による販売数量増により増収増益となりました。一方、欧州においては長引くインフレがようやく収束に向かっているものの、昨年好調だった欧州子会社の販売数量減の影響が大きく、減収減益となりました。環境・衛生については、アルコール製剤の需要減少により販売数量が減少し、また販売価格の改定を進めたものの、原材料およびエネルギーコスト高騰の影響が大きく、減収減益となりました。 ≪その他≫ (単位:百万円) 前第3四半期連結累計期間当第3四半期連結累計期間増減額前年同期比売上高1,9651,936△2998.5%営業利益328366+38111.6% 情報システムをはじめその他の事業セグメントは、減収増益となりました。 地域別売上高 (単位:百万円) 前第3四半期連結累計期間当第3四半期連結累計期間増減額前年同期比日本325,201309,447△15,75395.2%アジア50,83342,093△8,73982.8%その他49,05739,000△10,05679.5%海外売上高比率23.5%20.8%-△2.7P パーム油相場の下落を背景とした海外加工油脂製品の販売価格下落等の影響により、マレーシア、中国等のアジア向けおよび欧州、米国等のその他地域への売上高は減収となりました。 【参考】 売上高(単体) (単位:百万円) 前第3四半期累計期間当第3四半期累計期間増減額前年同期比油脂事業油脂・油糧240,804221,519△19,28492.0%業務用・加工用99,68194,474△5,20794.8%ホームユース58,00156,527△1,47497.5%油糧83,12070,517△12,60284.8%加工油脂10,02811,144+1,115111.1%小計250,832232,663△18,16892.8%加工食品・素材事業14,52616,337+1,811112.5%ファインケミカル事業4,3835,068+685115.6%その他256300+44117.3%合計269,998254,370△15,62894.2% ② 財政状態の分析当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べ154億75百万円増加し、3,899億29百万円となりました。主な要因は、売上債権が115億20百万円、投資有価証券が105億98百万円増加した一方で、棚卸資産が41億77百万円、有形固定資産が21億6百万円減少したことであります。負債は、前連結会計年度末に比べ27億90百万円増加し、2,058億25百万円となりました。主な要因は、仕入債務が80億92百万円、1年内償還予定の社債が100億円、未払法人税が5億97百万円、長期借入金が46億25百万円増加した一方で、短期借入金が193億10百万円、社債が50億円減少したことであります。純資産は、前連結会計年度末に比べ126億85百万円増加し、1,841億3百万円となりました。主な要因は、利益剰余金が94億36百万円、その他の包括利益累計額が26億21百万円増加したことであります。 (2) キャッシュ・フローの状況の分析当第3四半期連結累計期間末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ37億12百万円増加しましたが、会社分割に伴う減少11億56百万円があり、134億54百万円となりました。≪営業活動によるキャッシュ・フロー≫営業活動によるキャッシュ・フローは、274億52百万円の収入(前年同期は223億48百万円の支出)となりました。主な内訳は、税金等調整前四半期純利益201億93百万円、減価償却費69億72百万円、棚卸資産の減少48億91百万円、仕入債務の増加75億54百万円によるキャッシュの増加および売上債権の増加110億49百万円、法人税等の支払49億70百万円によるキャッシュの減少であります。≪投資活動によるキャッシュ・フロー≫投資活動によるキャッシュ・フローは、92億89百万円の支出(前年同期は45億86百万円の支出)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出96億47百万円によるキャッシュの減少であります。≪財務活動によるキャッシュ・フロー≫財務活動によるキャッシュ・フローは、146億96百万円の支出(前年同期は290億53百万円の収入)となりました。主な内訳は、長期借入による収入50億円、社債発行による収入50億円によるキャッシュの増加および短期借入金の純減193億36百万円、長期借入金の返済による支出4億86百万円、配当金の支払43億78百万円によるキャッシュの減少であります。 (3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。 (4) 研究開発活動当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は25億57百万円であります。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。 (5) 連結業績予想などの将来予測情報に関する説明 連結業績につきましては、2023年11月8日に公表した2024年3月期の業績予想の数値を修正しております。詳細につきましては、2024年2月9日に公表いたしました「通期業績予想の修正および期末配当予想の修正(増配)に関するお知らせ」をご覧ください。 |